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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2024 年 2 月定例会一般質問 (「地震・津波被害想定」「防災備蓄物資整備」の見直しについて、災害に強い県土づくりと耐震対策の促進について、避難体制のあり方について、原発震災時における避難計画と原発の安全性の再検証について)

2024-02-28 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

【1.「地震・津波被害想定」「防災備蓄物資整備」の見直しについて】

 まず、地震・津波被害想定、防災備蓄物資整備の見直しについて伺います。
 1月1日午後4時10分頃に石川県・能登半島を震源とする大地震が発生しました。最大震度7、最大マグニチュード7.6を観測し、石川県では、2月26日時点で、死者は241人、住家被害は約7万8千棟を超え、今なお約1万2千人の方が避難生活を余儀なくされています。
 犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被災されたみなさまにお見舞いを申し上げます。
 各県では、大規模災害に備えるため、地域防災計画の前提となる被害想定を行っています。しかしながら、残念なことに、石川県においては、最新の被害想定が行われてきませんでした。
 石川県が策定した「能登半島沖の断層」による地震被害想定は1998年のものであり、マグニチュード7.0の地震発生で「ごく局地的な災害で災害度は低い」と評価されていました。想定では、死者7人、負傷者211人、建物の全壊は120棟、半壊は1689棟、避難者は2781人となっていたのであります。
 能登半島では、2020年12月頃から地震が活発化しており、昨年5月にも震度6強を観測しました。しかしながら、26年前の被害想定は見直されることなく、実際の被害と想定に大きな乖離が生じたのであります。
 この事実を鑑みた時、島根県政は、能登半島での大地震を教訓に、最大規模の被害を想定し、県民の命と安全を守る万全の対策を取るべきであります。
 近年発生した島根県や山陰地方の地震を振り返ってみますと、2000年に鳥取県西部地震(M7.3、最大震度6強)、2016年に鳥取県中部地震(M6.6、最大震度6弱)、2018年には島根県西部地震(M6.1、最大震度5強)が発生しています。
 専門家は、島根県西部地震は「ひずみ集中帯」といわれる山陰特有の地下構造に起因すると指摘し、この「ひずみ集中帯」は鳥取県から島根県にかけての地下にもあり、大地震を引き起こす未知の活断層の存在を警告しています。また、2016年の熊本地震など、西日本で地震が多発しているのは、南海トラフ巨大地震の前兆現象と警告しています。
 政府の地震調査研究推進本部は、2017年に島根原発直下を走る宍道断層は、マグニチュード7級以上の大地震を引き起こす可能性がある「主要活断層帯」に指定しました。
 この宍道断層が動いた際の被害想定は、①建物被害では地震の揺れによる全壊が2537棟、半壊が8954棟、②人的被害では死者数102人、負傷者数1322人、③孤立集落は3地区の発生、④経済被害は約6800億円と試算しています。
 しかしながら、この被害想定は宍道断層を22キロと評価したものであり、過小評価と言わざるを得ません。なぜなら、原子力規制委員会は、2017年に宍道断層の評価を39キロに見直しているからであります。さらに、39キロの宍道断層が98キロの鳥取沖断層と連続・連動すれば、140キロもの活断層となるのであります。
 島根原発はもちろん、日本列島のどこにも大地震や大津波の危険性のない「安全な土地」と呼べる場所はありません。為政者は、地震など自然の脅威に対して謙虚であるべきであります。
 22キロと評価している宍道断層の被害想定は39キロに評価し、宍道断層と同一線上にある鳥取沖断層との連動性を再評価し、これら断層が連動した際の被害想定を地域防災計画の前提条件とすべきであります。
 そこで伺います。
 被害想定は、防災対策を講じる上での大前提です。能登半島地震での断層帯の連動状況など最新の知見や活断層評価に基づき、最大規模の被害を想定し、計画を不断に見直すべきであります。所見を伺います。
 県は、最大規模の被害想定に基づき、「島根県備蓄物資整備計画」を策定しています。計画では、必要な備蓄品目、目標数量などを定め、被災者等の生命維持に最低限必要な食料、飲料水、生活必需品、救助用敷材などを備蓄、更新しています。
 例えば、食料の備蓄では、基本的な考え方として、県と市町村で1日分、各家庭で1日分の合計2日分の備蓄を目標としており、3日目以降は、業者からの調達や県外からの応援で対応することとしています。
 能登半島地震で不足した簡易トイレは、県が556個を備蓄し、市町村で2563個、合計で3119個の備蓄となっています。
 県が最大の被害を想定するマグニチュード7.7の「島根半島沖合断層の地震」において、災害用トイレの必要個数は768個の想定となっています。しかし、避難所での生活が長期化すれば、この備蓄数量では不足することは明らかではないでしょうか。
 備蓄について、市町村から、新規備蓄や更新等の予算確保、備蓄場所の確保や管理などの課題があるとの声も出されています。
 そこで伺います。
 現在の「島根県備蓄物資整備計画」は、島根半島沖合断層の地震を最大の被害想定に設定し、備蓄数量の目標を定めています。また、市町村は、それぞれの地域防災計画に基づき、地域の実情に応じ、必要な品目・数量を確保しています。しかし、市町村によって品目や数量にばらつきがあります。
 よって、県と市町村の備蓄状況を共有し、オール島根での備蓄連携体制の強化が必要ではないでしょうか。
 能登半島地震では、道路の寸断などによって、数日間にわたって多くの孤立集落が生まれた教訓を踏まえ、防災備蓄物資の整備状況、備蓄目標を再検証すべきであります。所見を伺います。

【2.災害に強い県土づくりと耐震対策の促進について】

 次に、災害に強い県土づくりと耐震対策の促進についてです。
 県内の土砂災害要対策箇所の整備率は19.2%、落石等通行危険箇所の整備率は9.9%、県管理河川の整備率は32%であり、災害に強い県土とは言えません。災害の激甚化・頻発化に備え、ソフト・ハード両面での防災安全対策の強化が求められています。
 今、県は松江北道路建設を進めていますが、勇断を持って中止、見直すべきと考えます。
 なぜなら、松江北道路建設ルートと宍道断層の距離は最短で約1.3キロしかなく、活断層である宍道断層と並行する道路建設などあり得ないからであります。住民合意のない大型事業ではなく、住民の命と安全を守る防災・減災事業こそ最優先に実施すべきであります。
 宍道断層の真上・近傍には1236カ所の土砂災害危険箇所があります。その内訳として、旧松江市・橋北地区には793カ所、旧鹿島町には176カ所、旧島根町には96カ所、旧美保関町には171カ所もの危険箇所があるのです。さらに、山地災害危険地区が旧松江市・橋北地区には147地区、旧鹿島町には46地区、旧島根町には45地区、旧美保関町には72地区、合計で310地区も存在しています。早急なる対策が必要ではありませんか。
 住宅耐震化の促進も急務です。
 島根県の住宅の耐震化率は約75%(全国平均は87%)です。県内全市町村で耐震診断や改修の補助制度を設けているものの、費用負担が足かせとなり、耐震化が進んでいません。また、多数の人が利用する建築物や上水道などのライフラインが大規模地震で倒壊・破損したり、緊急輸送道路を閉塞する恐れのある建築物の耐震化も喫緊の課題であります。
 そこで五点、伺います。
 一つに、宍道断層の真上ならびに近傍に存在する1236カ所の土砂災害危険箇所、内訳として土石流危険渓流408カ所、急傾斜地崩壊危険箇所803カ所、地すべり危険箇所25カ所の整備を推進すべきであります。
 二つに、県内の土砂災害危険個所での災害を未然に防止するため、砂防関係事業の予算を拡充するべきと考えます。
 三つに、緊急輸送道路沿いにあり、倒壊すると通行障害となる恐れがあり、「島根県建築物耐震改修促進計画」の対象となっている建築物の耐震化の促進、さらなる上水道施設の耐震化に向けての対策を講じるべきであります。
 四つに、県が行っている耐震の出前講座や耐震学習会、広報紙などを活用しての木造住宅の耐震化促進に向けて県民への普及・啓発の強化を求めます。
 五つに、自治体リストラで土木・建築技術者も削減され、現場の技術力が低下しています。また、必要な土木・建築技術者が確保できない市町村も生じています。市町村支援も含めて、災害時に十分な機能と役割が発揮できる体制を強化するため、土木・建築技術職員を十分に確保すべきであります。所見を伺います。

【3.避難体制のあり方について】

 次に、避難体制のあり方についてです。
 能登半島地震で避難した住民からは「水も食料もない」との悲痛な訴えが相次ぎました。山の多い半島でがけ崩れが多発し、道路は至るところで損壊し、交通の途絶が救援物資の輸送や車両の往来を妨げました。孤立地区や避難所にたどり着けない住民に救援物資を届けるため、空からの輸送などあらゆる手段を使って、すべての被災者に物資を届けることが必要となりました。上下水道の復旧には時間がかかり、トイレも深刻な問題となりました。
 また、高齢者や子どもを中心に、体調を崩す避難者が続出し、インフルエンザなどの感染症対策や精神面のケアも重要な課題となりました。
 そこで、避難所運営や避難体制について、四点伺います。
 一つに、学校施設は、子どもたちの学習・生活の場であるとともに、被災地において、地域住民の避難所等として、重要な役割を果たしており、その安全性の確保と防災機能の強化は極めて重要な課題であります。こうした課題を受け、避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査が実施され、昨年7月に文部科学省がその結果を公表しました。この調査結果や能登半島地震の教訓を踏まえ、今後、避難所となる県内公立学校の防災機能強化をどのように進めていくのか伺います。
 二つに、能登半島地震の被災地では、高齢者や障がい者等の介護施設が損壊、断水で衛生状態が悪化し、職員も避難を迫られる中、受け皿となるべき福祉避難所の開設がなかなか進まない実態が明らかになりました。そもそも、平常時においても、介護施設のマンパワーが不足している中で、このような大規模災害が発生すれば、被災地の介護従事者だけでは対応できないことはもちろん、広域的な支援を行うための人材も十分に確保できないことは容易に想像できたはずであります。
 能登半島地震を踏まえ、施設の耐震化や断水、停電時の備え等、介護施設の災害対応力の強化を図るべきです。平常時から介護職員のマンパワーが十分に確保できるよう、介護職員の処遇や職員配置基準を抜本的に改善すべきと考えますが、如何ですか。
 三つに、避難所における感染症対策を徹底できるよう、消毒液やマスク、仮設トイレ、段ボールを活用したベッドや間仕切りなど備蓄状況の再点検及び改善を図る必要があります。女性、子ども、高齢者、障がい者のニーズを把握し、ジェンダー平等や災害弱者の視点に立って、安心できる生活環境の整備を図るべきであります。
 四つに、孤立する可能性の高い中山間地域等においては、人口減少で給油所が減っている現状を踏まえ、緊急時の移動手段や暖房等不可欠なガソリンや灯油の確保を見据えた、平常時からの対策を講じるべきであります。所見を伺います。

【4.原発震災時における避難計画と原発の安全性の再検証について】

 最後に、原発震災時における避難計画と原発の安全性の再検証についてです。
 北陸電力・志賀原発では、観測した揺れの加速度が設計上の想定を一部で上回り、変圧器が故障し、外部電源が一部使えなくなり、絶縁や冷却のための油が漏れ出し、使用済み核燃料プールのポンプが止まり、一時的に冷却が停止するなどの事態が発生しました。また、放射線量を監視するモニタリングポストが一部測定不能となりました。
 原子力規制委員会は「大きな異常はなかった」としていますが、それはたまたま原発敷地内に指摘される活断層と連動しなかった不幸中の幸いでしかありません。福島原発事故の再来の恐れがあったわけであります。
 能登半島地震は、原子力防災の問題を改めて浮き彫りにしました。今回の地震では、避難ルートとなっている山間部や沿岸の道路で隆起や陥没が発生し、土砂崩れなどで通行不能となりました。
 さらに、屋内退避する場合、窓を閉め、換気を止めるなど放射性物質を含むプルーム被害を防ぐこととしていますが、全壊をはじめとする住家被害が7万棟を超え、屋内退避ができないことがはっきりしました。
 こうした事態を受け、原子力規制委員会は、地震・津波と原発事故が重なる複合災害での屋内退避について「原子力災害対策指針」を見直す方針を決めざるを得ない事態となりました。
 現行の指針では、原発事故が起きた場合、原則として、原発5キロ圏内の住民は避難、5~30キロ圏内の住民は、まずは屋内退避を実施することになっています。しかし、ある委員は、「屋内退避がそもそも成立するのか、孤立地域にどうやって対応するかという問題がある。地域の避難所は耐震性を備えてほしい」と指摘しています。また、別の委員は「一般家屋への退避は2日、3日が限界。最も有効に退避するために、開始のタイミングや範囲は改めて議論する必要がある」との意見を述べています。
 今後、原子力規制委員会は、来年3月までに「屋内退避の考え方をより明確に示す」としていますが、今回の能登半島地震は、原発で重大事故が起これば、安全に避難などできないことを明らかにしたのではないでしょうか。
 危険な原発を廃炉にすることこそ、国民の命とくらしを守る確かな保障であることを強調するものであります。
 知事に伺います。
 今回の能登半島地震は、地震・津波などの自然災害と原発事故が同時に起きる原発震災、複合災害時の避難が難しいことを実証しました。また、家屋が倒壊し、屋内退避ができなければ、段階的避難は不可能であります。知事は、2022年6月2日に島根原発2号機の再稼働同意を表明した際、「県民の様々な不安や疑問など、一つ一つの声を参考にしながら、避難計画の実効性を高めるための取り組みを継続していく」と述べました。能登半島地震を受け、県民の不安はさらに高まり、不安を抱いている県民の声をより丁寧に聞くべきであります。現行の避難計画の実効性について再検証すべきであります。如何ですか。
 能登半島地震は、断層の評価や断層の連動の可能性などについて、科学的な検討の必要性を明確にしました。さらに、大規模な地割れや地盤の変位・隆起・沈降が起きた場合に原発に何がおこるか保証できないことを明らかにしました。島根原発の安全性を判断するにあたっては、隆起のメカニズムの解明を徹底すべきであります。所見を伺います。
 家屋が倒壊し、屋内退避ができなければ、段階的避難などあり得ません。原発事故が起きた場合、5キロ圏内の住民は避難、5~30キロ圏内は屋内退避を実施するとする「段階的避難」論の破たんは明白であります。未知なる活断層の存在も懸念される中で、原発再稼働など許されません。島根原発2号機の再稼働同意は撤回すべきであります。所見を伺います。
 島根半島及び島根原発を抱える島根県として、石川県・能登半島が直面している諸問題を直視すべきであります。島根県政は、地震・津波など災害に強い県土づくりを進めるとともに、原発ゼロの政治決断を行うことを求めて、質問を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画