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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2024 年 2 月定例会 知事提出議案に対する討論

2024-03-14 この記事を印刷
 日本共産党の大国陽介です。
 日本共産党県議団を代表して、予算案6件、条例案6件、請願1件についての委員長報告に対し、反対の討論を行います。

【第2号議案「令和5年度島根県一般会計補正予算(第9号)」、第4号議案「令和6年度島根県一般会計予算」、第22号議案「令和6年度島根県宅地造成事業会計予算」、第44号議案「島根県企業局職員定数条例の一部を改正する条例」】

 まず、第4号議案「令和6年度島根県一般会計予算」についてであります。

 今、諸物価の高騰によって、県民のくらし、中小企業、農家の経営が脅かされています。同時に、予期せぬ自然災害や感染症の拡大、さらには島根原発再稼働に向けた動きによって、命、そして、くらしが脅かされることへの不安が渦巻いています。
 県民に希望と安全・安心の島根を発信することが島根県政の使命であり、なにより県民の命と暮らしを守ることが県政の基軸に据えられるべきと考えます。
 新型コロナ危機を通じて、県内の医療や公衆衛生が脆弱であるということが明らかとなりました。県内各地で医療や福祉のマンパワー、そしてベッドが不足し、救急医療を制限するという事態も生じました。県内の病床数は、地域医療構想に基づいて、2013年度の9,175床から2022年度には7,776床へと1,399床も減らされました。そして、2025年度の必要病床数は6,569床と想定されており、さらなる削減が計画されています。
 今、県政に求められるのは、未知なる感染症に備えるため、医療提供体制を整えること、保健所の専門職をはじめとした人員を増やし、保健所の体制を強化すること、そして、病床を削減する地域医療構想を見直すこと、コロナ禍で減収となった医療機関、福祉事業所に財政支援を行うことではないでしょうか。
 しかしながら、県民の命と健康を守るための社会保障が十分とは言えず、負担増と給付の抑制によって、むしろ生活を苦しめています。
 国民健康保険においては加入世帯の約7%が保険料を払えず、介護保険においては、保険料未納者数が2700人に達し、未納による制裁措置として令和4年度、56人が給付減額措置となり、3割の利用料の負担が課せられました。
 すなわち、貧困と格差が拡大し、生活困窮者が社会保障制度から排除されて、必要な医療や介護が受けられないという深刻な事態が起きています。県政は、県民の苦しみを直視して、民生費、衛生費など、社会保障予算を抜本的に充実すべきであります。
 地域に根を張って頑張る地場産業育成にこそ、商工予算の柱をシフトし、農林水産業を基幹産業と位置づけるとともに、地域資源を生かした、内発型、循環型の振興策を強力に推進すべきであります。
 消費税の増税、インボイス、諸物価の高騰、人手不足などによって、業種を問わず県内の中小企業・小規模事業所の多くが苦境に立たされ、支援策が強く求められている中、株式会社出雲村田製作所による安来工場の新規立地に対し、異例ともいえる優遇が予定されています。破格の助成金を用意するにとどまらず、本来保護されるべき優良で広大な農地を、本来保護すべき県が、事業者に成り代わって開発・造成しようとするなど、これらは、住民福祉の増進という自治体本来の役割に照らすとき、目に余るほどの行き過ぎた大企業優遇の県政だと言わざるを得ません。
 子どもたちの学びを保障するために、多忙を極めている教職員の勤務環境を改善し、少人数学級を一層推進させるなど、教育環境の充実を図ることが必要です。子どもと学校・教職員を序列化し、競争に駆り立てる全国及び県の学力テストは中止すべきです。
 また、豪雨、地震など頻発する自然災害を踏まえ、経済効率優先の大型開発は見直し、防災・減災型の公共事業を重点化すべきであります。そのためにも、松江北道路建設については、改めて建設の是非を全市民的に議論すべきと考えます。
 県民の笑顔と幸せを奪い去るのが原発事故です。3月11日で福島原発事故から丸13年を迎えました。事故はいまだ収束せず、事故の原因もいまだ未解明であります。福島事故の教訓は、安全な原発などあり得ないということです。能登半島地震の現状をみても、避難計画は実効あるものとはとても言えません。核燃料サイクルの破綻は明瞭であります。猛毒物質プルトニウムを燃やす島根原発2号機でのプルサーマル運転など絶対に認めるわけにはなりません。
 島根原発2号機の再稼働同意は、今からでも撤回すべきです。原発ゼロを決断し、使用済み核燃料や原子炉の処理が終われば、原子力防災訓練を実施する必要はなくなります。そればかりか、原発事故に備えた避難計画の策定も不必要となります。島根の希望ある道は、技術的に未完成な原発からの撤退を決断し、省エネ、再エネ推進で新たな雇用と産業を創出することにあると考えます。
 島根県政は、今こそ、住民福祉の機関の役割を発揮し、住民の意思、民意を尊重し、暮らしを守る防波堤の役割を果たすことを強く求めるものであります。
 以上の理由により、可決とした委員長の報告には反対であります。
 合わせて、出雲村田安来工場の新規立地に向けた用地の造成にともなう、第2号議案「令和5年度島根県一般会計補正予算(第9号)」、第22号議案「令和6年度島根県宅地造成事業会計予算」、並びに、第44号議案「島根県企業局職員定数条例の一部を改正する条例」についても可決とした委員長の報告には賛同できません。

【第10号議案「令和6年度島根県国民健康保険特別会計予算」】

 次に、第10号議案「令和6年度島根県国民健康保険特別会計予算」についてです。
 国民健康保険加入者からは、「保険料、税が払えず保険証を取り上げられた」「滞納を理由に年金や生命保険を差し押さえられた」、こういった悲鳴が上がっています。令和5年10月1日現在、県内において約7万9000世帯が国民健康保険に加入し、そのうち保険料、税滞納世帯は約5400世帯にも上っており、国保加入世帯の15世帯に1世帯が保険料、税を滞納する事態となっています。そして、その制裁措置として、300を超える世帯に資格証が発行され、事実上、保険証が取り上げられています。滞納者に対する厳しい対応は改めるとともに、すべての人に等しく医療が提供されるよう制裁措置は是正し、短期証、資格証の発行は中止すべきであります。
 高い国保料を引き下げるためにも、国庫負担金の増額、市町村の一般会計からの繰入れ、そして基金の取崩しは待ったなしの課題であります。県も保険者としての責任を果たすべく、高い保険料を引き下げるため、独自財源の投入を決断すべきであります。

【第18号議案「令和6年度島根県病院事業会計予算」】

 次に、第18号議案「令和6年度島根県病院事業会計予算」についてです。
 県立中央病院では、看護師の2交代勤務が行われています。2交代勤務は、看護師の健康の悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては安心・安全な看護の提供の面からも有害と考えるものであります。
 県民誰もがひとしく安心して県立病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の徴収など、保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証1枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきであります。
 新型コロナウイルス感染拡大を経て、県立病院の重要性が改めて明白になりました。島根県立中央病院は、救急医療、地域医療、災害医療、周産期医療など政策的医療を推進し、県民にとってかけがえのない命綱の病院であります。災害拠点病院である中央病院は、大規模災害や感染症のまん延に備えて、全県的な立場に立って必要な病床を確保して、県民の最後のとりでとしての役割を果たすべきであります。

【第21号議案「令和6年度島根県水道事業会計予算」】

 次に、第21号議案「令和6年度島根県水道事業会計予算」についてです。
 江の川水道用水供給事業や島根県水道用水供給事業の最大の問題点は、積算根拠、需要予測を見誤ったことにあります。そのため、使わない水まで住民負担となり、高い水道料金に住民から悲鳴が上がっています。県として、受水団体への資本費負担軽減を図るなど、料金軽減策を講じるべきであります。

【第33号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」】

 次に、第33号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてであります。
 本条例案は、児童数及び生徒数の変動等に伴い、職員定数の改定を行うものであります。
 現在の教職員定数は、教員が本来の仕事をする上で絶対的に不足しています。教員の多忙化解消、行き届いた教育の実現、教職員がいじめに向き合う条件を整備するためにも、職員定数の大幅拡充が求められています。
 県教育委員会として、教員の未配置の現状を改善・解消させることはもとより、少人数学級を推進するなど、教職員定数を抜本的に拡充させることを求めるものであり、本条例案には賛同できません。

【第38号議案「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例等の一部を改正する条例」】

 次に、第38号議案「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例等の一部を改正する条例」についてです。
 本条例改定は、法律の改定に伴い、条例の定義規定を変更し、行政が保有する個人情報の利用にあたって、対象となる事務を単に「省令で定めるもの」と改めようとするものです。また、医療費の助成に関する事務において、マイナンバーの利用拡大を図るものであります。
 マイナンバーは、従来、社会保障、税、災害の3分野に限定して使用し、利用する事務・情報連携も法律で規定、マイナンバーを含む個人情報の収集・保管は、本人同意があっても禁止してきました。しかしながら、昨年の法改定では、これを大転換し、マイナンバー利用の限定を外して、すべての行政分野において利用を推進し、法定事務に準ずる事務や条例で措置した自治体事務は、法律で規定されなくとも利用できるようになりました。
 すなわち、マイナンバーの情報連携は、法の改定なしに拡大が可能となったということであります。プライバシー侵害の危険性を一層高めるものに他ならず、容認できるものではありません。よって、本条例改定には賛同できません。

【第40号議案「住民基本台帳法施行条例の一部を改正する条例」】

 次に、第40号議案「住民基本台帳法施行条例の一部を改正する条例」についてです。本条例改定は、住基法の改定に伴い、住基ネットを用いた本人確認情報の利用及び提供等を可能とするための規定の整備や本人確認情報の利用に係る事務等を追加しようとするものです。
 住基ネットは、マイナンバー同様、個人情報漏洩などの懸念は払しょくされておらず、その利用拡大には、賛同できません。

【第84号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備、及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」、第85号「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」】

 次に、第84号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備、及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」、第85号議案「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」についてです。
 これらの条例は、国の基準が変更されたことに伴うものであり、身体的拘束の適正化のための措置や口腔衛生の管理体制の整備などが規定される一方で、職員の配置基準が緩和されます。高齢者福祉や障がい者福祉の施設等において、職員の配置基準を緩和することは、サービスの低下につながりかねません。職員配置はむしろ強化すべきであり、安易に緩和すべきものではありません。
 よって、これらの条例改定には賛成できません。

【請願第7号「健康保険証廃止の撤回を求める意見書の採択を求める請願」】

 次に、請願第7号「健康保険証廃止の撤回を求める意見書の採択を求める請願」についてです。
 本請願は、マイナンバーカードと健康保険証とを一体化させた、いわゆる「マイナ保険証」について、一つに、「取得は申請による任意の判断のみに基づくとの原則を明確にすること」、二つに、「現行の健康保険証の廃止を撤回し、存続させること」を求めています。
 「マイナ保険証」をめぐっては、全国の医療機関で「顔認証」ができない、保険資格が確認できないなどのトラブルや、医療情報の紐づけ誤りなど、国民の健康に重大な影響を及ぼしかねない問題が相次いで生じています。国民からの批判と不安は根強く、マイナカードの保有率が約7割に達する一方、医療機関でマイナンバーカードを保険証として利用する割合は、昨年10月時点でわずか4.49%にすぎず、マイナ保険証が国民に信頼されていないことは明らかです。
 政府は、マイナ保険証の利用押し付けと保険証廃止は撤回すべきであります。
 よって、「不採択」とした委員長の報告には賛同できません。

 以上で討論を終わります。

議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画