日本共産党の尾村利成でございます。
【1.能登半島地震から島根県が教訓とすべき防災・安全対策について】
まず、能登半島地震から島根県が教訓とすべき防災・安全対策について伺います。
中国電力は、今年12月にも島根原発2号機を再稼働しようとしています。
今年1月の能登半島地震は、地震などの自然災害と原発事故が同時に起きる原発震災時の避難が難しいことを明らかにしました。
このまま本当に2号機を再稼働していいのでしょうか。県民の命と安全を守ることができるのでしょうか。私は、このことを自分の目で確かめるため、5月13日~15日にかけて石川県の志賀原発、輪島市などを調査、視察してきたところです。被災地の現実、被災者や医療、福祉関係者の生の声をご紹介します。
能登半島地震は、能登半島の沖合の150㌔に伸びる断層群が逆断層型にずれ動き、半島北部沿岸90㌔にわたって隆起による海底露出が確認されました。
私は、輪島市門前町の鹿磯(かいそ)漁港を訪問し、約4mも隆起した護岸を確かめてきました。もし、この隆起が島根原発直下、周辺で起こったら、どうなるのでしょうか。大規模な地割れや地盤の変異、隆起・沈降が起きた際、原発に何が起こるか誰も保証できないではありませんか
また、原発事故が起きた際、要配慮者が一時的に屋内退避する放射線防護施設においても大きな被害が発生しました。志賀町の町立富来小学校では、柱や天井が損傷し、外気を遮断する陽圧化装置が機能しない事態となりました。
また、町立富来病院では、地震により柱のコンクリートがはがれて鉄筋が露出し、陽圧化装置は吹き出し口が脱落して空調設備が使えなくなりました。これら施設は、新耐震基準を満たしているにも関わらず、放射線防護施設としての役割が果たせない事態となりました。
富来病院の72人の入院患者は、地震発生翌日の1月2日から4日間かけて、災害派遣医療チームの支援を受け、救急車28台で金沢より南の病院に移られました。
関係者からは「地震と津波だけでも大変でした。もし原発事故が重なったら、大変な事態となりました」と語られたのであります。
この他、様々なご意見をいただき、被災地の厳しい現実を確認しました。この場をお借りし、調査にご協力いただいた皆さんに、感謝の意を表するものであります。
そこで、能登半島を調査して、島根県として強化すべき防災対策を提案し、質問します。
❶まず、放射線防護施設の耐震化についてです。
志賀原発から30㌔圏内には、21の放射線防護施設(屋内退避施設)があります。しかし、そのうち6施設において損傷や異常が起き、防護エリアの気密性が維持できなくなりました。さらに21施設すべてが断水しました。
島根原発30㌔圏内には、19の放射線防護施設があります。これら19施設は、新耐震基準を満たしています。しかし、志賀町において、新耐震基準を満たした建物でも施設の継続的利用が困難となった教訓に立てば、追加的な耐震対策が必要であります。さらに、耐震基準が定まっていないガス、上下水道、電気などの建物付属設備の老朽化対策の総点検が必要ではないでしょうか。所見を伺います。
❷次に、孤立集落対策についてです。
能登半島地震では、避難ルートの大半が通行止めになり、孤立集落が相次ぎました。志賀原発30㌔圏内の14地区で154人が最長16日間孤立したのであります。もし原発事故が発生していたならば、避難できず、被ばくの危険があったのであります。
島根原発直下を走る宍道断層(39㌔)の真上・近傍には、1236カ所もの土砂災害危険箇所があります。宍道断層が動けば、この地域においても孤立の事態となる恐れがあります。
県は島根半島の孤立集落対策として、陸上自衛隊の協力を得て、臨時ヘリポート調査を実施し、約70カ所をヘリポートの離着陸可能適地としています。
陸上自衛隊の協力と県の迅速なる取り組みに敬意を表します。
そこで伺います。
今後、関係自治体や関係者との協議をはじめ、必要なる整備、さらに、孤立への不安解消を含めた関係住民の意見を聞く場を設定するなど、救援計画の実効性を高める対策が必要であります。所見を伺います。
❸次に、被害想定についてです。
石川県の能登半島沖断層による地震被害想定は1998年に公表された後、見直しがされてきませんでした。マグニチュード7の地震が発生しても、「局所的な災害で、災害度は低い」とし、死者数を7人と想定していました。実際の被害と想定があまりにも乖離したのであります。このことを受けて、石川では被害想定の見直しが始まっています。
見直し内容は、地震が元日に発生したことを受け、地震発生時間帯の想定条件に帰省や観光などで人口が増加する「正月の夕方」と「ゴールデンウィークの正午」を追加することにしています。さらに、被害想定項目に「宅地の液状化」「介護・福祉機能の支障」「海岸施設被害」の3項目を追加することとしています。
そこで伺います。
島根県も、地震発生想定シーンに帰省客や観光客を考慮した時期を取り入れるべきです。被害想定項目に「介護・福祉機能の支障」を追加し、さらなる被害想定の精緻化を進めるべきであります。
❹次に、マンパワーの確保についてです。
私は2月議会において、市町村支援も含めて、災害時に十分な機能と役割が発揮できる体制を強化するため、土木技術職員を十分に確保する必要性を質しました。能登半島で、全国の応援職員が奮闘する姿を見聞きし、改めてその重要性を再認識したところであります。
平成の大合併による統廃合と公務員の削減が防災力低下を招きました。災害時の安否確認や救援活動、被災調査、復旧・復興事業に大きな支障を来たしているのであります。
現在、地方自治体の土木技術職員の確保は、ますます困難になっています。令和6年度や近年の採用試験における土木技術職員の受験倍率等はどのような状況ですか。また、今後、土木技術職員の採用を安定的に確保していくための取り組みが必要と考えます。所見を伺います。
❺次に、医療と介護体制の強化についてです。
能登半島地震では、病院や福祉施設に勤務する多くのスタッフも被災しました。能登半島北部の4つの公立病院で看護職員の退職が相次ぐなど、被災地ではぎりぎりの体制で医療・介護サービスが続けられています。もともと医療・福祉施設の人手不足が常態化している過疎地域において、能登半島地震のような災害が発生すれば、医療・福祉施設の存続そのものが危ぶまれる事態となります。
大規模災害が発生した場合において、発災直後の短期的な支援はもとより、中・長期的に医療・福祉施設が継続的に運営できる人員確保や経営支援の仕組みづくりを国に求めていくべきであります。所見を伺います。
❻次に、漁港・港湾の耐震化についてです。
今回の震災で、石川県内69漁港の約9割にあたる60漁港で岸壁や防波堤が被害を受けました。志賀、輪島、珠洲の3市町22漁港で大きな地盤の隆起が起き、漁船は265隻以上が転覆、沈没、座礁し、多くの港湾施設も被災しました。
港湾施設は、大規模地震時等における津波被害の軽減や救援・復旧物資輸送の確保に重要な役割を担っています。大規模地震・津波に対し、防災・減災効果を発揮する岸壁の耐震化の促進が求められています。現時点の整備状況ならびに今後の取り組みについて所見を伺います。
❼次に、住宅の耐震対策についてです。
補正予算案では、地震発生時に家屋倒壊から生命を守るため、部分的に耐震性能を向上させる改修工事に要する経費の一部を助成する事業費が計上されています。一般的に耐震改修は高額な費用を要するものであり、特に高齢者において、この家に住むのは自分限りという方は、なかなか耐震改修の決断ができません。この度の部分的耐震補強リフォーム助成は、少ない費用負担で取り組める対策として、高齢者が木造住宅の耐震改修を進める上で有効な事業であり、本事業を、高齢者をはじめより多くの方に利用していただくための工夫が必要であります。所見を伺います。
❽次に、災害廃棄物対策についてです。
能登半島の被災地において、復興の妨げになっている課題の一つとして、災害廃棄物の処理があります。島根県においては、平成30年3月に「災害廃棄物処理計画」が策定され、大規模災害時の災害廃棄物処理対策の備えを行っています。
能登半島地震や被災地に派遣された職員の知見を踏まえ、災害廃棄物発生量や、し尿発生量の算定の見直しなど、本計画をより実効あるものにしていく必要があると考えます。所見を伺います。
【2.中国電力の不適切事案について】
次に、島根原発2号機の再稼働は認められないことについて伺います。
まず、中国電力は不適切事案を繰り返し、原発を運転する資質がないことについてです。
原子力規制委員会は5月30日、中国電力に対し、島根原発2号機の原子炉施設保安規定変更を認可しました。それは、すなわち、中電が原発の運転管理の体制や手順など保安のために必要な運営に関する事項について適格としたのであります。
しかし、県民は、この間も不適切事案が相次ぐ中電の安全文化醸成の取り組みを了とはしていません。中電への安心と信頼は得られていないのであります。
中電は4月30日、島根原発2号機のタービン建物内で仮設分電箱に焦げた跡があることを作業員が確認したと発表しました。昨年12月には、2号機の廃棄物処理建物で、協力会社の作業員が落下したコンクリート塊の下敷きになり、亡くなられる痛ましい事故が発生しました。
この度の火災は、3年前に原発管理事務所で発生した投光器用バッテリーの火災に続くものであります。
中電はこの5月、作業員が誤って動力ケーブルを切断し、切断されたケーブルが接触した通路に焦げ跡が発生しました。4月の仮設分電箱の火災発生、5月の動力ケーブルの切断など、中電は電力事業者としての基本中の基本、イロハのイができていないではありませんか。なぜ、このような初歩的なミスが繰り返されるのでしょうか。「中電には安全に原発を運転する資質がない」との県民の不安と疑念が高まっていると考えます。所見を伺います。
また、中電は、これまでに島根原発内で何度の火災を起こしているのですか。火災原因はどこにあるのか、また、如何なる再発防止対策が講じられているのか伺います。
私は、中電が不正・不祥事を繰り返す根本的原因として、一つに、電力業界の利潤第一とする国の原発推進政策、二つに、この地域で電力供給をほぼ独占する特権意識とおごり、三つに、原発は事故を起こさないという「安全神話」に浸っていることを指摘してきました。
この指摘に対し、知事は、昨年の6月議会で「中電は原発の安全に対する意識が十分ではなく、緊張感と責任感が不足していた」と答弁されたところであります。
知事に伺います。
中国電力の緊張感と責任感の欠如は改善されたでしょうか。また、原発の安全に対する意識改革は、協力会社も含め、徹底されていますか。現時点での認識を伺います。
【3.核燃料サイクル政策と円滑なる避難について】
次に、核燃料サイクル政策と円滑なる避難について伺います。
まず、核のごみ、使用済み核燃料の最終処分についてです。
知事は5月9日の定例記者会見において、仮に、島根県内で核のごみの受け入れの動きがあった場合には、断固反対すると述べられました。私は、その判断について大いに賛同するものであります。
会見での発言は、次の通りであります。
核のごみの最終処分場の建設地選定に関して、「原発を抱える島根県として、そんな話があったら全力で反対する。島根県知事としてできることは全部やって反対する」と述べられました。その理由としては、「原発の再稼働を認めること自体で他の地域が負わなくていいリスクを負っている」と強調し、「万が一の事故の際、避難計画をもとにして円滑に避難してもらうという責任を果たすので手いっぱいです」と述べられました。
私はこの会見を聞いて、「知事は、国の核燃料サイクル政策が行き詰まっていることを理解している」、さらに「避難計画の実効性については、知事自身の確信が揺らいでいる」と受け止めました。
核のごみを巡っては、国が最大20億円の交付金で誘っても、文献調査に手を挙げたのは、北海道の寿都町、神恵内村、佐賀県の玄海町しかありません。多くの自治体は、最終処分場の適地を示した国の「科学的特性マップ」を信頼しておらず、最終処分場の建設地など、どこにもないのであります。
県内においても、2004年7月に西ノ島町で、放射性廃棄物や原子力施設を拒否する条例である「放射性廃棄物等の持ち込み及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例」が制定されているのであります。
中電は「2024年度の上期に六ケ所再処理工場が竣工する確度は高い」と強弁しましたが、六ケ所再処理工場稼働の目途は立っていません。核燃料サイクル政策は完全に行き詰まっています。
知事に伺います。
島根県として、原発から出る高レベル放射性廃棄物・核のごみの最終処分場は受け入れないことを改めて本議場にて宣言してください。知事が会見で吐露された「万が一の事故の際、避難計画をもとにして円滑に避難してもらうという責任を果たすので手いっぱいです」との発言の真意はどこにあるのですか、伺います
【4.実効ある避難計画と原発再稼働への県民合意について】
最後に、実効ある避難計画と原発再稼働への県民合意についてです。
私は、先の2月県議会で「能登の地震を受けて、現行の避難計画を再検証すべきこと、危険な原発を廃炉にすることこそ、県民の命を守る確かな保証である」と質しました。しかし、丸山知事は「再稼働同意の判断は変えない」「避難計画は、政府、県、そして関係市が一体となって実行できる内容と認識している」と強弁されました。
私は、能登半島の視察と並行して、島根半島の現地調査も行い、生の声を伺ってきました。
美保関町では「避難ルートとなっている道路の真下に宍道断層が走っています。地震が怖い。本当に安全に避難できるのでしょうか」との声が寄せられ、島根町では「今の避難計画は、原発の方向に向かうルートになっている。県道21号の持田トンネルのすぐそばに宍道断層が走っており、土砂崩れやトンネル崩落が心配です」との不安の声が寄せられました。
平田の伊野地区・地合町からは「道路が寸断されて孤立した際、すぐに助けに来てもらえるのでしょうか」など、能登半島地震の過酷な現実を我が事とする不安の声が寄せられたのであります。
私は能登の視察、さらに島根半島調査を通じ、改めて自然災害と原発事故が重なる複合災害時には、間違いなく大混乱となることを確信しました。能登では、多くのみなさんが異口同音に「地震・津波と同時に、志賀原発で事故が起こっていたら大惨事となっていた」と語られました。
視察を通じての結論は、地震、津波は止めることはできないけれども、原発は止めることができるということであります。原発は止めなければなりません。
知事は2年前の6月2日、島根原発2号機再稼働にゴーサインを出した際のコメントで、次のように述べられました。
「福島の状況やどのような安全対策を行おうとも、リスクがゼロにはならないことを踏まえれば、原発の再稼働に不安を抱かれる県民の方々がおられるのも当然であり、また避難対策についても、自然災害とは異なる避難方法などに不安や疑問を抱かれる住民の方がいらっしゃるのも事実であります。不安や心配のない生活を実現するためには、原発はない方がよく、なくしていくべきだと私も考えています」と言われたのです。
あれから2年が経過しました。知事の思い、判断はどうなりましたか。能登半島地震発生など、この2年間を通じて県民の命と安全を守る上で如何なる思い、決意を固めたのですか。
さらに、知事は「県民が抱かれる不安や心配の原因となっている原発の課題につきましては、県として解決や改善に向けて最大限取り組んで参ります」と述べられました。そうであるなら、2年前と比べ、能登半島地震を通じ、格段に高まった県民の不安に思いを寄せるべきであります。
トップである知事自身が能登の現実を調査すべきであります。さらに、地元のありとあらゆる声を直接聞くべきであります。住民の不安、懸念、要望に最大限寄り添って、説明責任を尽くすべきであります。所見を伺います。
能登半島地震を経て、複合災害への県民の不安は以前よりも大きくなっています。島根原発2号機再稼働に対する県民の理解と納得はなく、再稼働への県民合意は得られていません。知事はどう考えますか。
県民の合意なきまま再稼働に突き進めば、県政への信頼は失墜し、オール島根での笑顔で幸せに暮らせる島根創生など実現できないではありませんか。所見を伺います。
原発事故は、県民の笑顔と幸せを奪い去ってしまいます。原発ゼロの政治決断こそ希望ある島根の道であることを強調し、質問を終わります。