日本共産党の尾村利成でございます。
【1.島根創生計画について】
質問の第一は、島根創生計画についてです。
わが党は、日本の政治には2つのゆがみがあると考えます。一つは「アメリカいいなり」の政治のゆがみ、二つは「財界の利潤を最優先」とする政治のゆがみであります。
このゆがみは、島根県においても様々な形であらわれています。「アメリカいいなり」では、県西部地域での米軍機の無法な低空飛行訓練であります。さらに、浜田市の陸地上空で目撃された米軍岩国基地の軍用機による危険な空中給油訓練であり、東部地域での美保基地への空中給油機配備など基地機能強化のきな臭い動きであります
「財界の利益最優先」のゆがみでは、原発メーカーが求める国の原発推進政策、それに基づく島根原発2号機の再稼働、農産物輸入自由化路線による農村地域の疲弊、さらに社会保障費削減による地域医療体制の危機、そして介護サービス提供体制の弱体化であります。
来年度の国の概算要求を見ても、軍事費は文教関係予算の2倍以上の9兆円近くにのぼっています。平和を脅かし、くらしを押しつぶす軍事拡大路線にストップをかけなければなりません。
笑顔で暮らせる島根の実現、島根創生計画の成就のために、このゆがみをただすことが重要と考えるものであります。
さて、来年度からスタートする第2期島根創生計画の策定にあたって、2020年度からスタートした第1期島根創生計画の総括と検証が必要であります。
第1期島根創生計画は、コロナ禍や度重なる大雨災害への対応など県政に大きな試練が相次ぎました。また、少人数学級の後退や島根原発2号機の再稼働同意など、県民合意が十分に得られない状況下での政策決定が行われました。
第2期島根創生計画を成功させるためには、「オール島根」で県政を前に進めていかなければなりません。そのためには、原発の再稼働同意や少人数学級後退など、県民の合意が十分に得られない中での政策決定があったことを教訓にし、政策決定は県民への説明責任を十分に尽くし、県民合意を得るための最大限の努力を尽くすべきであります。所見を伺います。
放課後児童クラブや子どもの医療費助成の拡充と引き換えに、少人数学級編制を縮小するという「パッケージ」での提案によって、県民の中に対立と分断が持ち込まれました。こうした県民に対立と分断を持ち込むような政策手法は厳に慎むべきと考えます。所見を伺います。
原発の再稼働判断など、県民の命と安全に関わる政策決定にあたっては、国の方針に忖度したり、近視眼的な財政論や地域振興論に惑わされるのではなく、何よりも県民の命と安全を守ることを最優先にして、その是非を判断すべきと考えますが、如何ですか。
近年、地球温暖化で台風が大型化し、災害が激甚化、頻発化しています。日本列島各地で地震も相次いでおり、災害への備えを抜本的に強化しなければなりません。施策、事業を推進する前提には安全・安心が不可欠です。笑顔で暮らせる島根の実現と人口増の大前提は、安全・安心にあります。島根創生計画の土台に、安全・安心の県政を実現する県の責務、決意を太く位置づけるべきと考えます。所見を伺います。
【2.教育問題について】
次に、教育問題についてです。
今、島根の教育は、大きな岐路に立たされています。教育の担い手である多くの教員が長時間労働を強いられ、さらには若者の教員離れが進むことで、学校現場の教員不足に拍車がかかっています。また、いじめと不登校の子どもの数が増加するなど、子どもたちが安心して学び過ごせる場であるはずの学校が、子どもたちにとって居心地の良い場所ではなくなりつつあることが危惧されています。
日本の政治のゆがみの一つである「財界の利益最優先」の政治は、教育にまで踏み込んできました。政治の教育への介入であります。子どもたちの尊厳に背を向け、 国や財界にとって都合の良い人材育成が教育の至上命題にされようとしているのであります。その一つが、2007年から始まった「全国学力テスト」であります。
ここで「全国学力テスト」がどのような経緯、目的で導入されたのか振り返ってみたいと思います。
今から20年前の2004年11月の経済財政諮問会議で、当時の文部科学大臣であった中山成彬氏は、次のように発言しました。その内容は、「人材こそが資源であるため、日本の学力をトップに押し上げるような教育改革をしたい。子どもの頃から競い合い、お互いに切磋琢磨する、といった意識を涵養する。」というものであります。この発言が発端となって、競争意識涵養のための全国学力テストが始まったのであります。
全国学力テストは、全員を対象としてきたことで、回を重ねる度に点数競争が激化し、問題を広げてきました。文科省が明言しているように、テスト結果は「学力の特定の一部分」「教育活動の一側面」でしかなく、テスト結果に一喜一憂すべきではありません。
ところが、各教育委員会では、「全国の平均点より上に」などと学校と教師をあおり、その結果、自治体独自の学力テストも広がっています。
学校現場は、子どもたちに過去の問題や類似問題を繰り返しやらせるなどの「学力テスト対策」に追われ、「本来やるべき授業ができない」など深刻な問題も発生し、その弊害として、教育内容が画一化され、子どもに生きた学力をつけようとした創意工夫した授業をする自由が奪われ、子どもたちの尊厳を傷つけ、教師のやる気が奪われています。
子どもに競争をあおり、学校現場への管理・競争を強める日本の教育政策に対し、国際社会から厳しい目が向けられています。
国連・子どもの権利委員会は1998年、日本政府に最初の勧告を出しました。そこでは、「競争的な教育システムが子どもから休む時間、体を動かす時間、ゆっくり遊ぶ時間を奪い、子どもの発達をゆがめている」ことへの懸念が示されました。さらに、2019年には、「社会の競争的な性格によって子ども時代と発達が害されることなく、子どもがその子ども時代を享受することを確保するための措置」を取るよう勧告が出されました。
今こそ、この勧告に真摯に向き合う時です。一人ひとりの子どもに教員の目が行き届き、様々な課題を抱える子どもにも丁寧に対応でき、教員の多忙化を解消して、創意あふれる授業ができる環境を取り戻すことが求められています。
こうした立場から伺います。
文科省は、全国学力テストについて「数値データの上昇のみを目的にしていると取られかねないような行き過ぎた取り扱いがあれば、それは調査の趣旨・目的を損なう」とする通知を出しています。しかし、「行き過ぎ」は全国の子どもをテストして点数を比べるという制度そのものに原因があり、抽出調査にする以外に解決の道はないと考えますが、如何ですか。
子どもの自己肯定感を損なわせ、不健全な競争教育に繋がりかねない国の全数調査による結果公表は行うべきではないと考えます。ましてや、学力調査に関する数値目標を設定することなど論外と考えますが、教育長の所見を伺います。
現在、国が4月に全国学力テストを実施し、県が12月に学力調査を実施しています。その上、益田市や出雲市など県内の市町でも学力調査を実施しているところがあります。テストを受けるのは子どもたちであり、子どもにとって、国であろうと県であろうと市町であろうとテストを受けることに変わりはありません。
島根県学力調査については、子どもたちや学校現場への負担となっていないかなどの弊害についての検証を行うべきです。その上で、必要なる見直しを行うべきと考えます。所見を伺います。
教員が専門職としての役割を発揮し、子どもたちに向き合うには、教員の異常な長時間労働をなくす必要があります。現状を放置すれば、専門性が発揮できないばかりか、過労死や教員不足をますます悪化させます。現場の要求は、授業の持ち時間数の上限を定め、教員の基礎定数を増やすこと、残業代不支給制度の廃止に取り組むことです。
文部科学省は、来年度の概算要求で、残業代不支給の代わりに、月給に一律4%上乗せする「教職調整額」を13%にするとしますが、この措置は、残業代を固定化することによって、「定額働かせ放題」になっている問題の根幹を固定化し、長時間労働の常態化を放置するものと考えます。所見を伺います。
次に、本県学校教育において、重要な役割を果たしている私学についてです。まず、県内の私立高校の教員の離職状況の推移を伺います。文部科学省は、物価高騰や賃金の上昇を踏まえ、私立高校の補助単価の引き上げを概算要求に盛り込んでいます。県としても、物価高騰対応や私立高校の教員の賃金引き上げをすすめる観点から、私立高校への補助金引き上げを行うべきと考えます。所見を伺います。
【3.コメ不足と価格高騰対策について】
次に、コメ不足と価格高騰対策についてです。
この夏、「スーパーにお米がない」「米屋も手に入らない」など、コメの急激な品薄と価格高騰に市民の不安が広がりました。コメ農家に生産調整と低米価を押し付ける「コメ政策」が、過剰と不足、価格の変動を招き、生産と流通を混乱させたのであります。
今日の食と農の危機は、食料は安い外国から輸入すればいいと、農産物輸入を際限なく拡大してきたことにあります。政府は「需要に応じた生産」の名でコメの消費が毎年減ることを前提に、生産量の削減を現場に押し付け、需給と価格を市場任せにしてきたのであります。
日本の穀物備蓄はわずか1.5か月から2か月分しかなく、食料危機に対する準備ができていません。肥料や種子の自給率の低さを考慮すると、カロリー自給率は38%どころか、10%あるかないかの「砂上の楼閣」であり、海外からの物流が停止したら、餓死者も出かねない危機的状況にあります。
今、必要なことは、不作や国際的な需給変動があっても、国民が安心して国内産米を食べ続けられるようにするために、国内増産と食料自給率向上、食と農の再生に取り組むことではないでしょうか。
コメの収穫は、基本的に1年に1回であります。気象条件による生産の増減や、社会情勢、経済情勢の変化により、需要と供給にギャップが生まれるのは避けられません。この度のわずかの需給変化でコメ流通の混乱が発生し、価格が乱高下する現状は、コメを市場に委ねることの危険性を改めて示したと考えますが、所見を伺います。
政府がコメの需給と価格安定に責任を持ち、多少の不作や需要増でも不足しないよう、ゆとりをもって生産量や備蓄を確保すべきであります。豊作などで供給が上回った場合には、国が買い上げ備蓄に回すことが必要と考えます。如何ですか。
コメ農家は、生産費を割り込む低米価に加え、資材費高騰に苦しめられ、コメをつくっても稲作からの撤退が止まりません。この状態を放置すれば、地域から稲作が消えてしまいます。
コメの安定供給を確保し、地域を守るためにも価格保障や所得補償政策を拡充し、農家が安心してコメづくりに励める条件整備が必要と考えますが、如何ですか。
【4.島根原発の問題について】
最後に、島根原発の問題についてです。
8月29日、日本原燃の増田尚宏社長は、六ケ所再処理工場の2024年度上期での完成を断念し、完成目標を2年半伸ばし、2026年度内にすると表明しました。
元々、六ケ所再処理工場は1993年に着工し、1997年に完成予定であったはずです。しかし、事故やトラブルが続出し、今回の27回目の完成時期延期となったのであります。30年経っても、使用済み核燃料の処理技術は未完成なのであります。
ここで、この間の使用済み核燃料を巡る島根県政での議論を振り返ってみたいと思います。
中国電力は、今から7年前の2017年7月の島根県議会において「2018年度に六ケ所再処理工場が稼働する」と表明し、さらに「2029年度までには使用済み核燃料を全量搬出する」と言明しました。しかし、この表明は叶わず、昨年9月の島根原発1号機廃止措置計画変更願いにおいて「使用済み核燃料の全量搬出を2029年度から2035年度へと6年延長したい」と願い出たのであります。そして、その際、六ケ所再処理工場は2024年度の上期、すなわち、本年9月までに稼働すると強弁したのであります。日本原燃社長の再処理工場稼働断念表明によって、この約束も踏みにじられたではありませんか。
私は、中電が「2024年度の上期に六ケ所再処理工場が稼働する確度が高い」と強弁し続けるのは、中電の願望と希望的観測に過ぎないことを厳しく指摘してきました。中電が六ケ所再処理工場が稼働すると強弁する理由は、島根原発2号機を再稼働したいからであると指摘してきたところであります。六ケ所再処理工場が稼働しないと、使用済み核燃料が処理できず、溜まり続けるからであります。
この度の延期に対し、日本原燃の増田社長は、青森県の宮下宗一郎知事に「26年度内の完成目標は非常に確度が高い」と説明しましたが、宮下知事は「延期は27回であり、新しい工程を信頼できない。原燃の楽観的な独自見解としか受け止められない」と原燃を突き放しました。私の認識も、宮下青森県知事と同一であります。
再処理は、使用済み核燃料をせん断・溶解させてプルトニウムとウラン、高レベル放射性廃棄物に分離させるもので、この処理そのものが極めて危険なものであります。世界各地の再処理工場では、爆発事故などが相次ぎ、工程自体、未だ確立されていません。危険な六ケ所再処理施設は閉鎖すべきであります。処理方法のない使用済み核燃料は、増やすべきではありません。
知事に伺います。使用済み核燃料の処理方法が未確立のもとで、新たな核のごみを増やすことは無責任極まりないものであり、許されないではありませんか。これ以上、核のごみを増やしてはなりません。島根原発2号機の再稼働などあり得ないではありませんか。所見を伺います。
12月に予定される島根原発2号機の再稼働に、県民の不安が高まっています。それは、福島原発事故、1月の能登半島地震、迫り来る南海トラフ地震をはじめ、頻発する各地の地震に対する恐怖です。
医療や福祉関係者からは「大雨、地震、それに原発事故が重なれば、大変なこととなります。現場のマンパワーも全く足りません」「移動すること自体、病気の人や高齢者にとって、命の危機につながります」との悲痛な声が出されています。
なぜ病気で苦しみ、重篤な人たちが転院・移動しなければならないのでしょうか。長年、この島根で暮らす人がなぜ避難しなければならないのでしょうか。島根から離れざるを得ないこと自体、県民の笑顔を奪うではありませんか。
そこで、現時点での災害弱者対応を伺います。
避難行動要支援者の安全な避難のための個別避難計画の作成状況は如何ですか。原発事故時の複合災害時への対応は実効あるものとなっていますか。
また、事故、災害時の人工透析継続に向けてのマニュアル作成をはじめ、連携体制の構築はできていますか。伺います。仮に、12月に再稼働をするというのであれば、万全なる計画作成は必須であることを強調するものであります。
私は、病気の人が転院しなければならない原発事故による避難計画はある意味、「冷酷なる計画」であることを厳しく指摘するものであります。一人ひとりの不安の声に寄り添い、実効ある避難計画策定への最大限の努力を尽くすべきであります。知事の所見を伺います。
言うまでもなく、県政の使命は県民の命と安全を守ることです。安全協定第12条には、適切措置要求権が規定されています。第12条では、県は周辺地域住民の安全確保のため、特別な措置を講ずる必要があると認める場合は、中国電力に対し、原子炉の運転停止を含む適切な措置を講ずることを求めることができると規定しています。この規定は、県民の命と安全を守る規定であります。
本年4月のタービン建物内での火災に続き、9月7日、またもや火災が発生しました。この度は、島根原発2号機屋外でのコンクリート養生マットからの出火であります。これで、この20年間で8度目の火災であり、適切なる管理体制など全くできていないではありませんか。
島根原発2号機は運転開始から35年を超えた老朽原発です。圧力容器やパイプ、配管の劣化は進んでおり、事故のリスクは増大しており、いつ不測の事態が起きるかもしれません。
中国電力の運転の安全性に疑念が生じ、適正運転が担保できない際には、適切措置要求権を躊躇なく発動し、原子炉停止を決断すべきであります。県民の命を守る知事の決意を伺います。
国は原発推進に前のめりであります。中電は度重なるトラブル、不祥事を繰り返しています。だからこそ、県が毅然たる態度を取るべきことを強く求めるものであります。
以上で質問を終わります。