地方創生・行財政改革調査特別委員長報告に対する反対討論
12日前 2025-03-13 この記事を印刷
日本共産党県議団を代表して、「第2期島根創生計画」を「了承する」とした、地方創生・行財政改革調査特別委員長の報告に反対の討論を行います。
「島根創生計画」は県の施策運営の基本的な指針とされるもので、「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」とのスローガンが掲げられ、県政運営にあたっての最上位計画に位置付けられています。
2020年3月に策定された第1期計画では、「放課後児童クラブの充実」や「子どもの医療費助成の拡充」など、子育て支援策の充実と引き換えに、それまで推進されてきた「小中学校での少人数学級編成」が縮小されました。
これは、「福祉を充実するために教育を縮小する」というパッケージでの提案であったため、子育ての充実を願う県民と、教育の充実を願う県民との間に、分断と対立を生じさせるものとなり、教育関係者や保護者、市町村をはじめ、多くの県民から強い批判が寄せられました。
今回の第2期計画では、一つに、子どもの医療費助成について、新年度からの県予算が大幅に拡充されると同時に、市町村との共同の事業として位置づけ、結果、すべての市町村において、助成対象が高校生年代まで拡大される見通しとなっています。19市町村のうち、15市町村が、高校生年代まで医療費窓口負担がゼロとなるなど、県全体で子育て支援策が底上げされることに、子育て世代をはじめ、多くの県民から喜びの声が寄せられています。これまで医療費助成の充実を求め、運動を続けられた市民団体や子育て当事者の方々はもとより、実現に尽力された行政関係者の皆様にも、心からの敬意を表するものです。
二つに、「島根創生」で掲げる将来像を実現するためとして、昨今のエネルギー・物価高騰の原因の一つとなっている、行き過ぎた円安を念頭に、「県民生活や県内事業者の経営に深刻な影響を与える為替水準の是正」、都市と地方の賃金格差を是正するため、中小企業がコスト上昇分を価格転嫁できるよう「大企業との取引環境の整備」、税制の見直しなど、「大胆な政策による東京一極集中の是正」を国に求める、と明記されているなど、地方自治体として、国に対し政策の見直し・是正を求める姿勢は、大いに賛同するものです。
自治体の役割は、地方自治法に規定されているとおり、住民福祉の増進、すなわち、県民の暮らしと福祉、安全を守ることであります。
今、物価高騰と国による社会保障の抑制で、県民の暮らしは厳しさを増しています。この30年間、賃金は上がらず、医療、介護、年金など、給付の抑制とサービスの縮減、さらには、消費税の増税が繰り返されてきました。
一部大企業を中心に賃上げの動きはあるものの、中小企業や医療・福祉の職場では、賃上げも見込めず、全体としても今の物価上昇に追いつくものとはなっていません。今回の高額療養費の負担上限額引き上げの動きや、昨年4月に強行された訪問介護の基本報酬減額、物価上昇に対応できない診療報酬にみられるように、社会保障給付の抑制・縮減が続けられていることに対し、現場から強い批判とともに支援を求める切実な声が相次いで寄せられています。
今、国の政治によって、憲法25条1項に規定される最低生活保障と、2項で規定されている、社会福祉、社会保障の向上及び増進が、骨抜きにされているではありませんか。
本県が、丸山知事を先頭に、国に対し、キッパリとものを言い、抜本的な対策を求める姿勢は、評価し賛同するところでありますが、国の政治がひどい時だけに、県は市町村とも共同し、自治体本来の役割を発揮すべく、県の施策をもとから再検証するとともに、住民のくらしを守る具体的な手立てを講じるべきであります。
例えば、企業誘致を主軸にした産業振興策を見直し、大企業を過度に優遇する助成制度を抜本的に改めることです。出雲市斐川町に本社を置く、(株)出雲村田製作所に対し、これまで、100億円を超す企業立地促進助成金が支払われてきました。このうえに、安来市内での新工場建設に対し、用地の造成を企業局が実施するなど、県が至れり尽くせりの全面的な支援策を講じています。労働力人口が減少する中、あらゆる業界で人手不足が深刻化し、すでに労働力の奪い合いが生じています。新設される工場では、将来的に1000人規模の雇用が計画されていることから、これがさらに激化することが予想され、既存企業はもとより、医療や福祉の現場からも懸念の声が寄せられています。
企業誘致のためとして続けられてきた破格の優遇策は、本県の雇用情勢とも合わないものと言わざるを得ず、これらの制度は抜本的に見直し、県民の暮らしを守る予算を確保すべきであります。
東日本大震災と福島原発事故から14年。事故はいまだに終息せず、今なお2万人を超える方が避難を余儀なくされています。しかし、政府は事故を忘れたかのように、原発回帰に突き進んでいます。1月に営業運転が再開された島根原発に対し、多くの県民が不安を感じています。医療、福祉の現場からは、「原発事故と地震や豪雨などの自然災害が重なれば、安全に非難することはできない」との声が寄せられます。直下には140キロもの活断層が存在し、いつ大地震が発生してもおかしくありません。避難計画は実効あるものとはいえず、核のごみの処分方法も未確立であり、将来に負担をつけ回すべきではありません。2号機は1989年2月の営業運転の開始から、すでに36年が経過した老朽原発にほかならず、経年劣化による予期せぬ事態も生じかねません。
人々の笑顔と幸せを奪ったのが原発事故であり、原発がある限り「笑顔で暮らせる島根」とはなりえないことを強調するものです。
よって、「第2期島根創生計画」を「了承する」とした委員長報告には賛成できません。
以上、討論といたします。