【知事提出議案、島根原子力発電所2号機の特定重大事故等対処施設等の設置に係る事前了解を了とした委員長報告に対する討論】
日本共産党の尾村利成でございます。
日本共産党県議団を代表して、予算案5件、条例案8件および島根原子力発電所2号機の特定重大事故等対処施設等の設置に係る事前了解を了とした委員長報告に対し、反対の討論を行います。
【第3号議案「令和7年度島根県一般会計予算」】
まず、第3号議案「令和7年度島根県一般会計予算」についてであります。
「財界・大企業の利益優先」の国政のゆがみは、島根県にも暗い影を落としています。
今、県内においては、住民のくらしの困難、福祉、医療、農林水産業の危機、地域経済の衰退など深刻な課題に直面し、さらに、物価高騰で、医療、福祉の現場、中小業者の経営はもとより、広く県民生活が疲弊しています。
県の来年度予算案で、県が子どもの医療費助成事業を拡充したことにより、県内すべての市町村で18歳までの医療費助成を行うこととなりました。わが党は、この助成事業拡充を評価するものであります。
一方、医療・介護の現場では、サービス提供体制の崩壊ともいうべき危機的状況が進行しています。医師・看護師・介護職員は恒常的に不足し、現場の疲弊は、患者・利用者にも悪影響をもたらし、必要なサービスが受けられない危機的状況が広がっています。
昨年4月から訪問介護の基本報酬が引き下げられ、中山間地域の介護サービスが崩壊の危機に陥っています。県内において、「十分な医療や介護が受けられない」「バスの減便で移動できない」など、過疎地を中心にナショナルミニマムが保障されない事態が年々拡大しています。
自治体の使命は、国のひどい政治から住民のくらしと命を守る防波堤となることであります。よって、国にモノを言い、対策を求めるとともに、県民の命と健康を守るために、県と市町村が連携して、くらしを守るための独自策を講じるべきであります。
安全・安心の島根をつくるために、予期せぬ自然災害に備え、経済効率優先の大型開発は見直し、住民の命と安全を守る防災・減災型の公共事業を最優先すべきであります。宍道断層近傍に計画されている松江北道路建設事業の見直しを求めるものであります。
来年度予算案では、中国電力から原子力関係業務に従事する職員人件費負担金が計上されています。その中身は、5億円の負担金のうち、県が3億4000万円活用し、残り1億6000万円を県から立地・周辺4市へ交付するものであります。
法令違反を繰り返す中国電力からの企業献金とも言うべき負担金受領は、原発マネーに依存する県の財政構造をさらに加速させるものであり、島根県政のあり方を歪めるものであることを指摘するものであります。
県民の命と安全を守ることこそ県政の最大の使命です。島根原発2号機再稼働に対する県民の理解と納得はありません。原発のない島根の実現こそ、島根創生成功に向けた確かなる道であることを強調するものであります。
【第9号議案「令和7年度島根県国民健康保険特別会計予算」】
次に、第9号議案「令和7年度島根県国民健康保険特別会計予算」についてです。
国民健康保険加入者からは「保険料が払えず保険証を取り上げられた」「滞納を理由に年金や生命保険を差し押さえられた」などの悲鳴が上がっています。
令和6年10月1日現在、県内における国保加入世帯数は約7万5700世帯であり、そのうち保険料滞納世帯は約5300世帯にも上り、加入世帯の14世帯に1世帯が保険料を滞納しています。
そして、滞納世帯への制裁措置として、346世帯に資格証明書が発行され、命綱の保険証が取り上げられています。保険料を払いたくても払えない滞納者への厳しい対応は改め、短期保険証はもとより、保険証取り上げはやめるべきであります。
高い保険料を引き下げるために、国庫負担金を増額し、市町村は一般会計から国保会計への繰入れを行い、ため込んだ基金を取崩すべきであります。県としても、保険者としての責任を果たすべく、国保会計への独自財源投入を決断すべきであります。
【第17号議案「令和7年度島根県病院事業会計予算」】
次に、第17号議案「令和7年度島根県病院事業会計予算」についてです。
県立中央病院では、看護師の2交代勤務が行われています。2交代勤務は、看護師の健康の悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては安心・安全な看護の提供の面からも有害であります。
県民誰もがひとしく安心して県立病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の徴収など、保険外負担の選定療養費徴収は廃止すべきであります。
島根県立中央病院は、救急医療、地域医療、災害医療など政策的医療を推進し、県民にとってかけがえのない宝の病院であります。
災害拠点病院でもある中央病院は、大規模災害や感染症のまん延に備え、必要なる病床を確保して、県民の最後のとりでとしての役割が求められています。
救急医療、政策医療、不採算医療を担う県立病院に対する県の助成措置を抜本的に強化すべきことを求めるものであります。
【第20号議案「令和7年度島根県水道事業会計予算」】
次に、第20号議案「令和7年度島根県水道事業会計予算」についてです。
江の川水道用水供給事業や島根県水道用水供給事業の最大の問題点は、積算根拠、需要予測を見誤ったことにあります。
そのため、使わない水まで住民負担となり、高い水道料金に住民から悲鳴が上がっています。県として、高い水道料金を引き下げるため、一般会計から水道事業会計への繰り出しを求めます。
【第21号議案「令和7年度島根県宅地造成事業会計予算」】
次に、第21号議案「令和7年度島根県宅地造成事業会計予算」についてです。
県は、株式会社・出雲村田製作所の新工場設置に向け、用地確保や用地造成事業に着手しています。当該企業の新工場設置の概算事業費は約108億円を見込み、令和12年頃の工場完成をめざし、操業時は200人程度、将来的には1000人規模の雇用が計画されています。
限られた労働力人口のもと、すでに労働者の争奪戦が県内各地で顕在化しており、新工場完成によって、地場企業・既存事業所の人手不足に拍車がかかることが懸念されます。
当該企業には、これまでに100億円を超す助成金が交付されており、こうした一部大企業への至れり尽くせりの優遇は見直すべきであります。
【第25号議案「職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例」】
【第30号議案「県立学校の教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例」】
【第31号議案「市町村立学校の教職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例」】
【第39号議案「島根県企業局職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例」】
【第49号議案「島根県病院局職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例」】
次に、第25号議案「職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例」、第30号議案「県立学校の教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例」、第31号議案「市町村立学校の教職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例」、第39号議案「島根県企業局職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例」、第49号議案「島根県病院局職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例」についてです。
これら議案は、人事委員会の勧告を受けて、県職員や教職員などの諸手当を改正するものであります。
その中身は、配偶者にかかる手当てを廃止し、子にかかる手当ての月額を引き上げるものであります。
配偶者の扶養手当廃止は、子の手当て拡充とセットのものであり、世代間に分断を持ち込むもので、中高年層の賃下げにつながるものであります。子育て支援としての手当て拡充は、そのための財源を別に確保すべきであります。
島根県内における民間事業所における配偶者に手当てを支給する事業所は52.6%であります。公務員の給与水準は、民間準拠の原則を基本に決定されるべきことに鑑みれば、今回の改正が民間事業所においても配偶者手当を廃止する方向を加速させかねないことを指摘するものであります。
よって、これら条例改正案には反対であります。
【第32号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」】
次に、第32号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例案は、児童数及び生徒数の変動等に伴い、職員定数の改正を行うものであります。
現在の教職員定数は、教員が本来の仕事をする上で絶対的に不足しています。教員の多忙化解消、行き届いた教育の実現、教職員がいじめに向き合う条件を整備するためにも、職員定数の大幅拡充が求められています。
県教育委員会として、教員の未配置の現状を改善・解消させることはもとより、少人数学級を推進するなど、教職員定数を抜本的に拡充させることを求めます。
よって、本条例案には賛同できません。
【第41号議案「島根県立自然公園条例の一部を改正する条例」】
次に、第41号議案「島根県立自然公園条例の一部を改正する条例」についてです。
本条例改定は、自然公園法の改定等に伴うものです。
今回の改定案は、「利用拠点の質の向上のため」として「整備改善に関する協議会を組織することができる」とされています。
この「協議会」は、自然公園内で宿泊施設等の営業を行いたい事業者が中心となって、市町村や都道府県とともに構成されるもので、この協議会が計画を策定し、県知事に申請することになります。計画が認定されれば、例えば、事業者が自然公園内で行うホテル建設などの開発事業に伴う各種許認可手続きが不要になります。
自然公園の環境保護のため、利用と規制を定めているのが「公園計画」です。しかし、今回の改定では、事業者を中心に組織された協議会が、利用拠点改善整備計画等を策定するにあたって、「公園計画」の変更を提案できるとされており、協議会による事業計画が優先され、本来の目的である、自然環境の保護がおろそかになることが懸念されます。
さらに、この協議会を、事業を実施する企業等の事業者と自治体だけで構成することが可能となっており、地域の環境保護団体や有識者、地域の住民の参加は自治体が認めた場合に限られ、参加させなくてもよい仕組みになっています。
今回の法改定と条例改定によって、本県が誇る県立自然公園の開発が促進され、貴重な自然・生態系が壊されるのではないかと、危惧するものです。
よって、本条例案には賛成できません。
【第46号議案「島根県幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」】
次に、第46号議案「島根県幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」についてです。
本条例改定は、副園長又は教頭を職員の数に参入する場合について、資格要件にかかる特例の期間をさらに2年間延長するものであります。
幼保連携型認定こども園において、職員の数に算入することができる者は、原則として、幼稚園教諭免許状を有し、かつ保育士の登録を受けた保育教諭とされています。
しかし、両方の免許等を受けている者が不足状況にあるなどの理由で特例が設けられ、いずれか一方の免許等を受けている者でよいとされてきました。こども園の質を保障するため、特例期間を延長するのではなく、資格等の取得促進の取り組みこそ強めるべきであります。
この立場から、本条例案には賛成できません。
【島根原子力発電所2号機の特定重大事故等対処施設等の設置に係る事前了解に関する調査結果報告について】
最後に、島根原子力発電所2号機の特定重大事故等対処施設等の設置に係る事前了解に関する調査結果報告についてです。
特定重大事故等対処施設は、故意による大型航空機の衝突やその他のテロリズムにより炉心の損傷が発生する恐れがある場合などにおける安全対策のさらなるバックアップとして、原子炉格納容器破損防止対策に対する信頼性をさらに向上させるために設置するものであります。
わが党は、特重施設等の設置自体に異を唱えるものではありません。しかし、新規制基準は、特重施設の設置を義務付けており、特重施設は原発を再稼働するための設備であることを指摘するものであります。
原発をなくすことこそ、県民の命と安全を守る確かな道であります。
特重施設の問題点を何点か申し述べます。
特重施設は、2013年7月の新規制基準施行後、5年以内に設置することとなっていたはずです。すなわち、5年以内といえば、2018年7月までの設置が必要であったわけであります。
しかし、原子力規制委員会は、審査に時間がかかることなどを理由に、設置期限を工事計画認可から5年へと変更したのであります。
島根原発2号機において、工事計画の認可日は2023年8月30日であり、設置期限は2028年8月29日までとなります。設置の猶予期間を延長することは、安全対策を軽視することではありませんか。原子力規制委員会が電力会社の虜になっていることを指摘するものであります。
さらに、政府は、新規制基準は「世界で最も厳しい基準」と言っています。しかし、新基準は海外の新型原子炉の標準装備と比較して、安全設備が劣っています。
例えば、新基準では、大型航空機の衝突に耐える二重構造の格納容器や溶融燃料を受け止めるコアキャッチャーの設置要求がされていません。新基準は、安全設備が脆弱であります。
県民の命と安全を守る確かな保証は、原発をなくすことであり、原発ゼロこそ最大の安全対策であります。
よって、島根原子力発電所2号機の特定重大事故等対処施設等の設置に係る事前了解を了とした委員長報告には反対であります。
以上で討論を終わります。