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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2025 年 6 月定例会一般質問 (高レベル放射性廃棄物・核のゴミの最終処分場について、島根半島震災対策事業と中国電力の負担金について、萩・石見空港東京線の 2 便運航について、米軍機の騒音による旭中学校防音対策事業について、コメ不足とコメの価格高騰について)

2025-06-17 この記事を印刷

 日本共産党の尾村利成でございます。

【1.高レベル放射性廃棄物・核のゴミの最終処分場について】

 質問の第一は、高レベル放射性廃棄物・核のゴミの最終処分場についてです。
 原発は技術的に未完成であります。それは、自分が燃やした核燃料の後始末ができないからであります。
 原発を動かせば、使用済み核燃料が発生します。しかし、使用済み核燃料をはじめ、核のゴミの処理方法は未だ確立されていません。国がすすめる核燃料サイクル政策は破綻しています。
 国は、これまで高レベル放射性廃棄物の最終処分方法として、「宇宙への投棄」「海洋底への埋設」「南極氷床への埋設」などを検討してきました。しかし、どの方法にも難点があり、断念せざるを得ませんでした。
 そこで、国は、核のゴミの最終処分場について、国土の65%が「好ましい」特性をもつとする「科学的特性マップ」を公表し、国が前面に立って立地調査を自治体に押し付けてきたのであります。
 しかしながら、核のゴミを巡っては、国が最大20億円の交付金で誘っても、これまで文献調査に手を挙げたのは北海道の寿都町、神恵内村、佐賀県の玄海町だけであります。多くの自治体は、最終処分場の適地を示した国の「科学的特性マップ」など信頼していません。
 日本学術会議は、地殻変動の活発な日本で「万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界がある」と警告しています。核のゴミの最終処分場の建設地などどこにも存在しないのであります。
 このような中、益田市の経済界有志が文献調査の受け入れの検討をすすめてきましたが、知事をはじめ地元の猛反対により、受け入れを断念しました。
 最終処分方法が定まらないまま、原発を推進する無責任な国の原発行政は、行き詰まっています。それなのに、県はこうした国の無責任な対応に追随し、島根原発2号機の再稼働を容認したのであります。
 そこで、伺います。
 第一に、知事は、昨年6月議会での私の質問に対し、「最終処分場につきまして、政府の責任で島根県以外の適地を選定し整備すべきである」と答弁されました。しかし、核のゴミは数万年にわたり管理し続けなければならず、その処理方法も保管場所も決まっていません。島根県はもちろんのこと、どこにも最終処分場の適地などないではありませんか。島根原発稼働により、核のゴミを排出することは、無責任な対応を続ける国と全く同じではありませんか。核のゴミの最終処分場がない以上、放射性廃棄物を発生させるべきではありません。島根原発稼働によって、処理方法のない放射性廃棄物を排出することは、将来世代に負の遺産を押し付けることとなります。島根原発稼働など許されないではありませんか。所見を伺います。
 第二に、核のゴミ処分場を巨額の交付金で押し付ける国のやり方は断じて許されません。カネの力で核燃料サイクル政策の押し付けはやめるべきであります。所見を伺います。
 第三に、使用済み核燃料の中間貯蔵施設誘致案が浮上した西ノ島町では、中国地方で唯一、2004年7月に放射性廃棄物や原子力施設を拒否する条例である「放射性廃棄物等の持ち込み及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例」が制定されました。この条例への知事の評価を伺います。また、県においても同様の条例を制定するなど、核のゴミを拒否する県の姿勢をさらに鮮明にすべきです。所見を伺います。

【2.島根半島震災対策事業と中国電力の負担金について】
 
 次に、島根半島震災対策事業と中国電力の負担金についてであります。
 県は島根半島の防災対策として、今後10年間で約100億円をかけて、震災対策事業を実施することを公表しました。
 私は、能登半島地震の教訓を踏まえた島根半島の防災対策については、賛同します。しかしながら、その財源として、原発を推進する中国電力から年5億円を目安に10年間で50億円もの負担金を受領することについては、反対であります。それは、島根県政が原発マネーに汚染されて、県民の命と安全を守る使命を全うできなくなるからであります。
 今年度の島根県当初予算には、中国電力からの原子力関係業務に従事する職員人件費負担金が5億円計上されました。私は2月議会で、この法的根拠が極めて疑わしい中国電力からの企業献金とも言うべき負担金受領は、原発マネーに依存する県の財政構造をさらに加速させ、島根県政のあり方を歪めるものであると指摘したところです。
 なぜなら、中国電力からの負担金原資は、電力利用者が支払う電気料金であり、それは結果として、電気料金として住民が負担するものであります。すなわち、その実態は、島根県民を含めた中国電力利用者である一般市民からの負担金であります。そうである以上、その負担金のあり方は、県民に対する説明責任を果たさなければなりません。
 さて、人件費負担金とあわせて、今後、毎年、中国電力が県に10億円もの負担金を支払う背景には何があり、中国電力のどんな意図、狙いがあるのでしょうか。
 県民の命を守るためにも、この狙いを見定めることこそ政治家の使命であります。
 住民からは、県が、中電から負担金を受領することにより、島根原発2号機でプルサーマルが実施され、さらには、3号機の新規稼働を安易に県が容認するのではないか、との不安の声が上がっています。
 国は第7次エネルギー基本計画で、財界・大手電力会社の要求を丸のみにし、原発の最大限活用を明記しました。計画では、現在、稼働している14基の原発を、2040年度には30基にする計画であります。すなわち、それは、島根原発2号機は60年を超えて稼働させ、島根原発3号機を新規に稼働させるという国の宣言ではありませんか。
 以上の立場から、5点伺います。
 第一に、中国電力からの負担金は、結局、島根県民を含む中国電力利用者の電気料金という形で物価高に苦しむ住民負担の増加につながるのではありませんか。所見を伺います。
 第二に、負担金受け入れの積算根拠、負担金受領の妥当性など中電との交渉経過等について県民への説明責任を果たし、県民の意見を聴取すべきであります。所見を伺います。
 第三に、営利を目的とする企業が、個人をはるかに超える強大な財力で、カネの力で政治に影響を与えることは、県政を歪めることではありませんか。島根県は中電に対して毅然たる対応が取れなくなるのではありませんか。如何ですか。
 第四に、このように中電への県の財政依存が強まる中で、防災部の原子力安全対策課の中に、負担金に関して中電との交渉窓口になっている原子力立地対策室があることに対して、県民から疑問の声が上がっています。
 それは、これまでの原子力立地対策室の業務は、国からの交付金等を分配するものでありました。しかし、現在の原子力立地対策室の業務は、中電からの負担金の交渉窓口になっており、中電からの受益調整を行うこととなっているのであります。
 原子力安全対策課の中に、中電を指導・監督する部門と中電からの受益を調整する部門が併存することは、規制と推進を同じ組織の中で担っていることであり、かつての国の原子力安全・保安院が機能不全に陥ったのと同様であります。規制と推進を分離する適切なる組織改正を求めます。所見を伺います。
 第五に、知事は、原発はなくした方がいいと発言されながらも、10年間にわたって中電から負担金を受け取り続けるならば、今後10年間は原発を稼働し続けることを宣言したことになるではありませんか。所見を伺います。
 不正、トラブルを続ける中電に対する県の厳正な指導・監督を求めて次の質問に移ります。

【3.萩・石見空港東京線の2便運航について】

 次に、萩・石見空港東京線の2便運航についてです。
 萩・石見空港については、2便運航継続に向けたリスク分担制度として、年間の有償旅客数が「12万7000人を下回った場合」に、その不足人数に応じた一定額を地元と航空事業者が折半して負担する仕組みが設けられていました。
 こうした中、4月25日に航空事業者から、運航費用が増加しているため、リスク分担算定基準を現行の「12万7000人」から「14万5000人」に引き上げてほしいとの申し出がありました。
 この申し入れがあった14万5000人という数字は、昨年度、有償旅客数実績の13万4437人より1万人増の非常に高い数字であり、14万5000人を下回れば、最大2億600万円もの地元負担が生じるものであります。
 ここで、石見空港が建設された経緯を振り返ってみます。
 島根県が国に飛行場設置許可を申請したのは、今から約40年前の1987年、昭和62年であり、その年の12月に設置許可が下りました。
 設置許可申請書では、石見・東京路線の航空需要予測値として、1995年には18万4000人、2000年には21万7000人、2005年には25万6000人とし、右肩上がりの搭乗者数が掲げられていました。すなわち、現在の利用実績の2倍近い航空需要予測を立てていたのであります。
 そこで、伺います。
 第一に、県西部地域は年々人口が減少するなど、航空需要を拡大するには限界があります。県西部唯一の空港である萩・石見空港の東京線は、東京一極集中を是正し、地方を活性化させるためにも、いわばナショナルミニマムとも言うべき路線であります。政策コンテストというような羽田空港の限られた発着枠を地方同士で奪い合う制度で、その存続の可否を決定するのではなく、国の責任において維持されるべきと考えます。所見を伺います。
 第二に、地元の財政負担が生じるリスク分担スキームが設けられている中、それを回避し、萩・石見空港の利用を拡大するためにも、山口県側も含めて、地元住民の声を丁寧に聞き、2便運航継続への幅広い理解と協力を得るべきと考えます。所見を伺います。
 第三に、東京線2便化継続については、今後とも航空事業者からの有償旅客数の算定基準の引き上げが懸念されます。さらに、他の航空路線維持や離島航路などの課題もあります。そして、タクシーやバスをはじめとする地域公共交通が危機的状況にある中で、3億円を超す東京線2便継続に向けた県費支出への県民合意があるのでしょうか。多額の県費支出を伴う中で、東京線の2便運航の必要性や意義、さらなる県民負担が生じるリスクを伝え、理解を得る必要があると考えます。所見を伺います。

【4.米軍機の騒音による旭中学校防音対策事業について】

 次に、米軍機の騒音による旭中学校防音対策事業についてです。
 米軍機の低空飛行訓練による県西部の騒音件数が2024年に2090件に上り、過去最多を更新しました。
 米軍機の低空飛行訓練によって、子どもたちは爆音に怯え、住民の安全が脅かされ続けています。特に、小・中学校や保育施設をはじめ、介護施設や医療施設などの上空を飛行し、乳幼児、高齢者、病気療養中の方からは、突然聞こえてくる轟音により極度のストレスや不安を訴える声が後を絶ちません。低空飛行訓練は騒音測定器の測定結果からも「住民に与える影響を最小限にし、安全性を最大限確保する」とした「日米合意」に反する訓練が行われていることは明白であります。
 浜田市旭中学校では「授業が全く聞こえない」「騒音や振動に恐怖を感じた」との声が上がり、2022年12月に中国四国防衛局が一定期間、旭中学校の騒音測定を実施しました。その測定結果から、騒音レベルが国の補助基準を超えていることが判明し、浜田市は2023年5月に中国四国防衛局に旭中学校の防音対策にかかる補助事業計画書を提出しました。
 しかしながら、昨年5月に中国四国防衛局は「県西部の訓練空域は防衛施設ではない」とし、旭中学校の防音工事に対する補助を行うことは困難であると連絡してきました。
 中国四国防衛局によれば、管内で防音対策を補助した教育施設は281施設あり、その補助の大半が岩国市の米軍岩国基地などの基地周辺施設であり、訓練空域内の補助施設はないとのことであります。
 住民に耐えがたい被害を与え、騒音のレベルが同じでありながらも、訓練空域と基地周辺という形式的な物差しにおいて、国の補助対象とするかどうか、区別する国の対応は論外と言わざるを得ません。
 そこで、伺います。
 第一に、県西部の訓練空域の住民の不安や被害を直視せず、訓練空域と岩国基地周辺という形式的な物差しに固執する国の態度は、住民の利益と福祉を著しく軽視したものであり、国と地方の信頼関係を大きく損なうものと考えます。国に対し、防音対策工事や被害解消に向けた対策を実施するよう強く要求すべきであります。如何ですか。
 第二に、米軍の低空飛行訓練の被害が増大する根幹には、「日米同盟絶対」でアメリカの言いなりを続ける国政の歪みがあります。国が他国の領土にミサイルを撃ち込む「敵基地攻撃能力」の保有や5年間で43兆円もの軍事費をつぎ込む大軍拡に突き進んでいる中、今後、さらなる被害拡大が懸念されます。県民の命を守るためにも、国に無法な米軍機の低空飛行訓練をやめるよう強く主張すべきと考えます。所見を伺います。

【5.コメ不足とコメの価格高騰について】

 質問の最後は、コメ不足とコメの価格高騰についてです。
 政府が備蓄米の放出に踏み切って以降も、コメの値段が高騰したままです。今回の異常事態の根本原因は、コメ生産の総量が圧倒的に足りていないコメ不足にあります。
 2023年のコメ需要量705万トンに対して、生産量は661万トンしかなく、44万トンも不足し、民間在庫が史上最低に落ち込みました。その結果、コメ不足が顕在化し、買い付け競争が過熱し、コメの価格が高騰したのであります。
 しかし、政府はコメ不足を認めようとせず、「新米が出れば落ち着く」と言って、無責任な対応に終始し、今年に入っても、「コメは足りている」「流通に目詰まりが起きている」とし、コメの供給量不足を認めませんでした。
 このように、かたくなにコメ不足を認めない姿勢が備蓄米の放出が後手後手になるなど対応が遅れる要因となったのではないでしょうか。
 コメ不足と価格高騰を打開する道は、減反・減産から増産への転換、市場任せから国が責任を持って安定供給を進める農政へ転換することであります。
 そのためにも、一つに、増産でゆとりある需給・備蓄を確保すること、二つに、生産者に再生産可能な所得・価格を保障し、消費者には納得できる手ごろな価格で提供すること、三つに、コメ不足を口実にミニマムアクセス米の主食枠拡大などコメの輸入拡大など行わないこと、そして、何より、アメリカとの関税交渉において、農産物の輸入拡大など絶対に行わないこと、軍事費の4分の1しか措置されていない国の農水省予算を大幅に増やすことであります。
 以上の立場から、2点伺います。
 第一に、コメをめぐる異常事態は、コメの価格や流通に政府が関与しないという「市場任せ」政策にあります。不作や経済変動などが生じても、コメ不足にならないよう、政府がコメの価格や流通の安定に責任を持ち、コメ需給計画はゆとりある生産量を確保するべきです。所見を伺います。
 第二に、長年の低米価に苦しんできたコメ農家は、資材価格高騰や過去の赤字の穴埋めで余裕がなく、小売価格の高騰が消費者のコメ離れを招くとの不安を抱えている人も少なくありません。水田は、災害防止、水源涵養、景観維持など県土や環境を保全する大切な役割を果たしています。コメ農家が安心して生産に励める条件を整え、農業者減少に歯止めをかけるためにも、再生産可能な価格や所得の補償が不可欠と考えます。所見を伺います。
 安全な食料は日本の大地から、島根の大地からつくるべきです。近年の世界的な食料危機が警告するように「食料はカネさえ出せば、輸入できる」時代ではありません。
 農業と農村の再生、食料自給率の向上に本格的に踏み出すことこそ、国民の生存、社会の存続にかかわる待ったなしの課題であることを強調し、質問を終わります。

議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画