2003 年 9 月定例会 一般質問 (芸術文化センター、教育問題、雇用問題)
2003-09-17 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
(芸術文化センターについて) 質問の第一は、環境基準値を上回るヒ素が検出された益田市の芸術文化センターの問題であります。
今回のヒ素検出は、地元住民はもちろんのこと県内に大きな衝撃を与えました。
工事開始に伴い、搬出した残土に不安を抱いた住民は、県に土壌調査を要望しました。そして、その結果、搬出残土から基準値を超えるヒ素の存在が明らかになったのです。即ち、住民が県に調査を求めなかったなら、今回のヒ素検出はありえなかったかもしれません。土壌、水質、井戸水の汚染など健康や環境へのヒ素被害の拡大を想像するとき、背筋が寒くなる思いであります。
そこで知事に伺います。第一に、県にとって厳しい財政状況の中、ヒ素検出によって、新たに残土処理に要する費用として、総額9億2千6百万円もの県民の貴重な血税が投入されるわけですが、財政再建に取り組んでおられる立場からどう受け止めておられますか伺います。
第二に、地元住民の皆さんからたくさんの不安の声や県に対しての不信の声があがり、また、汚染残土搬入先に指定された出雲市からも懸念の声があがっています。この点で、県民の安全を守る立場にある知事の所見を伺います。
次に、ヒ素の原因究明について伺います。それは、ヒ素の原因を一刻も早く特定することが、住民の不安を取り除くことになり、原因いかんでは、用地選定した県の責任そのものが問われるからです。ヒ素の原因をこの用地にあった合板製造過程で、ヒ素が含まれる薬剤による人為的なものか、それとも、自然由来によるものかを特定するために、ヒ素の組成検査を求めます。
これは、残土処理に伴う県費支出の正当性を問う点からも、必要と考えますが、いかがですか。
次に、今回のヒ素の原因として、海成層による自然由来のものではないか、との説もありますが、もしそうであるならば、この間、本県において行われた公共事業において、あちらこちらでヒ素を含有する土壌が、残土として処分されたことも懸念されるではありませんか。
この点から、これまでの事業の総点検を求めます。そして、今後の事業においては、海成層の調査を行ったうえですすめることが必要ではないかと思いますが、いかがですか。
次に、残土処理及び周辺住民への対策について伺います。建設残土は、ダンプカーで六千台~八千台に相当します。搬出に伴う土壌の飛散、交通対策など住民の不安は大きいものがあります。また、周辺のぶどうや野菜に対しての風評被害も懸念されています。搬出先を含め、この点での今後の対応方針を伺います。
最後に、芸文センターの建設の経緯について伺います。建設予定地が有明町の「西日本木材跡地」と決定され、厳しい財政事情のもと、18億円もの用地買収費用を要したわけですが、有明町の用地のほかに適切な用地はなかったのですか、他の候補地としてどこがあったのですか。
地元の益田市との相談状況も含め、選定の経緯、及び選定理由をお示しください。
また、もともとこの計画は「海の見える美術館」として計画されていましたが、大ホール・小ホールを含む複合施設となり、事業規模が拡大しました。この地には文化ホールとしての立派な石西県民文化会館があるのに、県財政が窮する中での計画変更に疑問の声もあがっていました。計画変更の経緯とその理由を伺います。
(教育問題について) 質問の第二は、教育問題についてです。
学校現場における教育を考える際、三つの角度から考える必要があります。一つには学校の主人公である子供たちの状況はどうなのか、二つには、子供たちを支える教職員の実態はどうであるのか、三つに、子供たちが学ぶ学校設備、校舎の安全が充足されているのか、の三点であります。
昨年四月から実施された学習指導要領と学校完全五日制をきっかけとして、子供も教職員も一日が過密状態になり、慌ただしさが増しています。「朝から先生が走り回っている」、「授業が過密で子供はぐったりしている」との声もお聞きしたところです。
今日の教育の危機を解決するにあたって、子供にも教職員にもゆとりが必要です。命を輝かせる教育という営みから見て、教職員が人間らしく心身ともに健康であってこそ、子供たちの豊かな発達を保障できるのではないのでしょうか。
さて、小・中学校の教員を対象に県立松江教育センターが実施したアンケート「教員の多忙感に関する調査研究」では、九十%以上の教員が多忙であると回答しています。そして、「多忙であることが教育活動にどのような影響を与えていると思いますか」という質問に対しての回答では、「子供たちに辛くあたってしまう時がある」、「児童との距離が離れていく」、「子供のペースよりも自分のペースに合わせて教育活動をすすめているように思う、これは子供にとってよくない」、「忙しさを抱えていると、子供が訴えていることを十分に感じ取る力が減り、見逃したりいい加減に対応をしたりするようになると思う」、「結局、教師と子供の信頼関係が崩れ、学校が荒れてしまうようになると思う」などの教員の苦悩がたくさん出されています。
そこで伺います。
第一に、県教委は、教員の勤務実態を、多忙とはせず、多忙感があるとされます。多忙とするのか、多忙感があると認定するのか、によって現状認識が異なり、当然とるべき教育施策が違ってきます。教員の実態を多忙であると認定されないのはなぜですか。その根拠をお示し下さい。
昨年五月、全日本教職員組合が実施したアンケート調査によると、教職員の平均超過勤務時間は一ヶ月平均で、八十時間十分という驚くべき長時間過密労働の実態が明らかになりました。私自身も多くの教員の皆さんから、多忙の実態をお聞きしたところであります。
教職員の多忙を原因として、子供に悪影響を与えてはなりません。そのためにも、教職員の勤務実態を正確に把握する必要があると考えます。
私は、2001年4月6日の厚生労働省通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」に基づき、本県教職員の勤務実態の把握と改善を強く求めます。
本年七月に小中学校の教員を対象に実施された退庁時刻調査は、各市町村一校ずつを抽出した調査にすぎません。全ての学校において実施されることを求めます。その際、調査の目的・趣旨を文書で職員に周知するとともに、調査日は連続性を持たせ、そして、この調査結果の公表を求めるものです。この点での所見を伺います。
また、県立高校では、同様の調査が実施されていません。県立高校では、ゼロ限授業、マイナス限授業といわれるような早朝からの勤務実態があり、放課後は勤務時間をすぎての補習授業が行われているではありませんか。退庁時刻調査ならびに登庁時刻調査を実施し、この調査結果の公表と具体的改善策を求めますが、いかがですか。
第二に、本県の教員の病気休職者数は教員数が減少しているのにもかかわらず、平成十一年以降、増え続けています。そして、休職理由も精神疾患によるものが六十%を超え、全国平均を大きく超えています。県としてこの事態をどう認識され、原因はどこにあるとお考えですか、所見を伺います。
第三に、小・中学校の児童生徒数が減少する中でも、公立の小・中学校の不登校人数は増え続けています。平成十四年度、県内小学校の不登校人数は303人であり、その割合は0.7%で、全国平均の0.36%の二倍近い状況です。全国的に不登校率が減少している中で、本県においては、逆に増加しているのは大きな問題です。全国と比較して、この不登校割合が高いのはなぜだと認識されていますか。スクールカウンセラーの養成・配置に県として努力すると同時に、在宅の子供に学習権を保障するための積極的な施策を求めますが、いかがですか。
一人ひとりの児童に目が届き、どの子にも行き届いた教育を実践し、不登校を減らすためにも、教員数を増やし、三十人学級を拡大すべきです。先に申しました松江教育センターのアンケートでも、多忙感のために必要なこととして、一番目に「教職員の数を増やす」二番目に「一学級の生徒数を減らす」との回答となっていることを付言し、所見を伺います。
第四に、学校校舎の老朽化について伺います。
私は、この間、学校施設の現地調査を行いました。鳥取県西部地震の被災地である伯太中学では、地震の液状化で校庭の補修が不完全なため水はけが悪く、雨の翌日にはスポンジとバケツで水処理をする状況をお聞きしました。
また、築後四十年になる江津中学校の老朽化はひどいものでした。校内いたる所でひび割れした犬走り、腐食して途中が欠けた雨どい、壁がはげ落ち、むき出しになった鉄筋などが見られました。
関係者から「ベランダに子供が出ると揺れます」、「雨漏りがするため滑りやすく危険」、「コンクリートブロックの塊が2回落ちてきました」など命にかかわる事態もお聞きしたところです。
そこでお尋ねします。知事は「時代を担う子供たちの教育は重要である」と力説され「それぞれの地域で安全安心な生活ができる国造り」を強調されました。
学校が危険な場所であるという状態は、一刻も早く改善しなければなりません。事故が起こり、犠牲者が出てからでは遅いのです。伯太中の校庭補修ならびに江津中の改築計画についての方針を伺います。また、県として県内すべての危険・老朽校舎の実態を調査し、その改善策を求めますが、いかがですか。
小中学校の耐震診断経費について、埼玉県や高知県など四県で補助が実施されています。県として市町村への補助を実施し、子供の命と安全を守る県の強い決意を市町村に示されることを求めますが、いかがですか。
また、県内には災害時、約三千ヵ所の緊急時避難先が指定されています。この避難先に江津中学などの危険校舎も指定されているのであります。避難先が危険な場所では住民は安心できません。この点からも早急な安全総点検を求めますが、いかがですか。
(雇用問題) 最後に、高校卒業予定者の就職問題をはじめ雇用問題について伺います。
来年三月高卒予定者が対象の求人は、七月末現在、昨年同期比で12.1%減の厳しい状況です。松江商業高校では、「県内への就職希望88人に対して現在の求人は47企業しかない。職場開拓に歩いても高校生は採らないという企業もある」とのお話でした。ハローワークの担当者からは、「高校生にはあきらめて欲しくない。手分けして事業所に高校生の思いを訴えて回っている」などの状況をお聞きしたところです。
21世紀の島根を担う若者や、県民の雇用確保のために県政の果たすべき役割は重大です。
そこで伺います。
平成元年以降、60社の企業に74億円もの企業立地助成金が助成されています。この助成を受けた企業に対し、県としてその社会的責任を全うする上でも、雇用確保を強く求めるべきですが、いかがですか。また、高卒予定者をはじめ、県民の雇用確保に向けた県の取り組みを伺います。
大不況の今、夢と希望が持て安心できる雇用環境を創ることは、政治の責任です。このことを強調して私の質問を終わります。