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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2004 年 2 月定例会 一般質問 (知事の政治姿勢、財政健全化、県政のあり方、公共事業策前に伴う建設業の不況対策、斐伊川水道事業、乳幼児医療費助成事業、馬潟工業団地ダイオキシン問題)

2004-03-02 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

(知事の政治姿勢について)

 質問の第一は、知事の政治姿勢についてです。

 まず、平和と憲法問題について伺います。
 今、自衛隊のイラク派兵に対し、3つの深刻な矛盾が広がっています。
 その第一は、世界の平和のルールとの矛盾です。米英両国はイラクが大量破壊兵器を保有していると決めつけ、それを開戦の口実にしました。ところが大量破壊兵器は今に至るも発見されていないどころか、米のイラク調査チームの責任者が「もともと大量破壊兵器は存在しなかった」と証言しました。

 結局、イラク戦争は大義なき国連憲章を踏みにじった侵略戦争でした。その戦争が占領という形で続くイラクへの自衛隊派兵は、侵略戦争への加担であり、世界の平和のルールへの挑戦にほかなりません。

 第二は、日本国憲法との矛盾です。イラクに派兵された自衛隊は、法的に占領軍としての地位が保障され、占領軍の指揮下におかれ、米軍の軍事作戦の一翼を担わされます。軍事占領と軍事作戦に加わることは憲法9条に真っ向から違反するではありませんか。

 第三は、派兵の根拠としたイラク特措法との矛盾です。国際法上イラク戦争は終結しておらず、戦争状態が続いているもとで非戦闘地域などありえないことはイラクの現実に照らせば明白です。

 私は、イラク問題解決の道は、米英軍主導の軍事占領支配を一日も早くやめさせ、国連中心の枠組みによる復興支援に切り替え、イラク国民に速やかに主権を返還することだと考えます。そして、憲法9条を持つ日本のとるべき道は、そのための外交努力を行なうことであり、自衛隊派兵ではありません。
 
 そこで知事に伺います。
 知事は、イラクの事態をどう捉え、その解決策はどうあるべきと考えておられますか。自衛隊のイラク派兵に反対し、イラクからの撤退を政府に主張すべきと考えますがいかがですか。また、憲法9条を守り抜く決意をお聞かせください。

 次に、地方自治の発展と地方財政確立について伺います。
 今回の地方交付税大幅削減に対して、広島県知事は「詐欺行為だ」といい、鳥取県知事は「闇討ち、だまし討ちだ」とし、国に強く物申す姿勢であります。自治体財政の安定的確立の第一義的責任は国にあります。

 地方交付税の財源保障機能の縮減を許さず、交付税総額の確保と拡充について、県下59市町村にも呼びかけて、島根県ぐるみで国へ向けた一大要求運動を起こすべきと考えますが、いかがですか。

 知事は、昨年12月、三位一体改革の補助金削減の決着に際し全国の知事から政府批判が相次ぐ中、「地方の意見を尊重し、現行負担割合が維持され、一定の評価ができる」と小泉改革を評価していました。

 あたかも地方自治を拡充するかのように装って国の財政赤字のつけを地方に回す三位一体改革の本質が明らかになった今日、この改革なるものへの見解とあるべき地方財政の方向性についての見解を伺います。


(財政健全化、県政のあり方について)

 質問の第二は、財政健全化と県政のあり方についてであります。
 県民の営業とくらしは、長引く不況と小泉内閣の痛みの押しつけによって、かつてない深刻な事態となっています。県民が県政に期待していることは、地方自治法第2条に規定されている「住民の安全、健康及び福祉を保持する」という地方自治法の精神です。

 私は、予算案発表後、生活保護世帯、母子家庭世帯、中小建設業者、農家など多くの県民の要望を聞いてきました。今日の不況にもがき苦しみ、温かい政治を切望している県民の思いを代弁し質問をいたします。

 来年度予算案は、県民の生活不安、将来不安、雇用不安を解消するどころか、県政への失望とさらなる不安を与えるものです。ある人は、予算案の発表にあたり本県予算を一言でいい表しました。「思いやりのない予算」「県民に愛情がない予算」だと。

 県民が望んでもいない市町村合併支援の交付金に120億円を計上、県民合意のない芸文センター、歴博整備事業には100億円の計上です。一方、県政世論調査で明白になった県民が県政に一番望んでいる社会福祉には、大ナタを入れる冷たいものになっています。

 わずか年間予算300万円弱の生活保護世帯への見舞品事業を廃止し、2,000万円の母子家庭世帯への入学・就職支度金事業も廃止、そして、私立学校補助金を削減するなどおよそ県民の理解と納得が得られるものではありません。

 生活保護を受けている人からは「保護費だけでは家計が足らず、食事を減らしています。ここ何年も洋服を買っていません」と言われました。母子家庭のお母さんからは、「国からは、児童扶養手当の改正で、手当てを削減され、今度は県から入学祝金を廃止される。行政は母子家庭の生活実態と苦しみがわかっていない」「正規で雇用してくれる所はありません。

 セーフティーネットが不十分なのに、給付から自立へなどの美辞麗句は言わないで欲しい」との悲痛な訴えをお聞きしたところです。

 以下、県民生活を擁護し、県財政健全化に向けた取り組みを充実する立場から伺います。

 第一に、県は長年にわたり有利な起債などといって、国言いなりの大型開発を推進してきました。このような財政運営が今日の県財政危機をつくりだしたではありませんか。知事は、今日の財政危機の原因は何であったとお考えですか。ご自身の責任はお認めになりませんか。伺います。

 第二に、知事は施政方針で「県民の福祉の安定・向上を図る責任を有するものとして辛苦の極み」と言われました。母子福祉施策の切り捨て、私学助成金の削減など福祉、教育施策の後退に県民の理解が得られるとお考えですか。地方自治の精神に反し、県民の県政への不信を広げるのではないですか。福祉、教育切りすての撤回を求め、所見を伺います。

 第三に、私は古代の歴史や文化の伝承、また、芸術文化を否定するものではありません。しかし、聖域なき歳出削減の掛け声のもと、福祉、教育、医療の予算を切り捨ててまでも、県民合意のない歴博や芸文センター整備事業への巨額な県費支出を県民は納得しているのでしょうか。

 知事は「島根の将来のためとか、観光の起爆剤となる、そして、10年、20年先を見据えた事業」と言われます。政治家として、将来の島根を考えることは当然ですが、今日の県民の実態は「明日のくらしをどうしようか」ということであります。

 これら2つの事業を凍結し、県民の貴重な税金はくらしや福祉にこそ回すべきと考えますがいかがですか。また、医療、福祉、教育の削減も聖域化しないといわれますが、この分野の削減が県民のくらしの悪化、県経済の衰退、定住化への逆行、ひいては県税収入のさらなる減少につながるのではないですか。所見を伺います。

 第四に、無駄な歳出の総点検を求めます。県民合意のない不要、不急の公共事業の見直し、中止こそ必要であります。全国では、国が決めた一律の基準ではなく、地方の実情に合う公共事業改革がすすめられています。

 和歌山県では渋滞緩和策として、交差点部分を集中的に工事する手法、岐阜県では自然共生を取り入れた河川改修を研究しています。広島市では「公共事業見直し委員会」を設置し「10億円以上の公共事業はすべて白紙状態から見直す」ことを基本方針にしています。これら先進地の取り組みを研究し、本県での実施を検討すべきではありませんか、伺います。

 第五に、事業の必要性、採算性、環境への影響について県民参加で検討する公共事業事前評価制度の創設を求めますがいかがですか。また、公共事業再評価委員会に県民の意見をより広く反映させるために、公募委員の大幅増員を求め、次の質問に移ります。


(公共事業削減に伴う建設業の不況対策)

 質問の第三は、公共事業削減による建設業者への不況対策についてです。
 今、中小建設業者の営業は困窮の度を深めています。私は、この間、建設業者から様々なお話をお聞きしました。その声は、「社会保険料の事業主負担が大変で、従業員には申し訳ないけど、政府管掌保険から国民健康保険へ切り替えてもらいました」「仕事がなく借り入れ返済が遅れています。ボーナスが出せませんでした」などの苦悩です。

 県は、公共事業削減に伴い研修会の開催、相談窓口設置、新分野進出、建設業者間の合併支援策を進めていますが、当の建設業者のニーズとの間にギャップがあります。業者が真に求めているのは仕事と利益の確保であります。

 平成14年度島根県土木部所管の事業実績をみると総受注件数2,469件のうち、事業種別受注件数において道路は、1,311件の53%、砂防は323件の13%であります。一方、住宅は52件の2%、公園は37件の1.5%、下水道は18件の0.7%でしかありません。受注金額ベースでみると総受注金額911億円のうち道路は416億円の46%、ダム、港湾は合わせて92億円の10%であり、住宅は10億円の1%、公園は7億6千万円の0.8%、下水道は1億1千万円の0.1%でしかありません。

 また、目的別行政投資額の構成比からみてみると、行政投資に占める生活基盤投資の構成比率は、全国平均で46%、鳥取と山口は38%、広島は46%、岡山は50%であるのに対し、本県島根は33%と極端に低いのであります。このことから明らかなように本県の公共事業の主役が産業基盤重点になっています。

 そこで伺います。本県の公共投資の特徴は長年、産業基盤型に重点投資されてきました。港湾、空港、ダムなどの産業基盤型事業は1件あたりの金額が大きく、事業費が膨れ上がり、一方受注企業は大手が独占し、地元業者の利益は少ないものでした。県民に喜ばれ、地元が潤う事業は住宅や学校、特養ホームや保育所の整備、公共施設や県営住宅のバリアフリー化など生活改善型・定着型の事業です。産業基盤型から生活密着型へと公共投資の質的転換、予算配分の転換を求めます。この転換は、事業総額を減らしても地域経済の活性化や雇用確保と両立できます。この点での所見を伺います。

 次に生活密着型事業の一手法として住宅リフォーム助成事業の創設を提案します。兵庫県明石市では、市民が市内の業者を利用して自宅をリフォームすれば10万円を上限に工事費の一割を助成しています。埼玉県内では20自治体がこの制度にふみきり、今年度の助成数は全県で1,239件、助成総額8,436万円余りで工事費総額は13億8,286万円余りにのぼり、助成額の14倍の経済波及効果を生んでいます。

 この制度は大手ゼネコンが受注の中心となる大型公共工事と違って、自治体のわずかな予算で助成金を薄く広く補助することにより地元の中小建設業者に仕事が回り、中小業者も利用者にも喜ばれ、雇用拡大、地域経済の活性化につながります。実施に向けた所見と本事業の実施効果についての所見を求め、次の質問に移ります。


(斐伊川水道事業)

 質問の第四は、斐伊川水道事業についてです。
 本事業にあたって最大の留意すべきことは、水需要予測を誤り、受益者に多大な負担を押しつけている江の川水道事業の二の舞にならないことであります。

 今、無駄と環境破壊の典型として問題になっているのが大型ダム事業です。
欧米では90年代の初めからダムだけに頼らない利水・治水対策にきりかえました。アメリカでは「川の再生」をテーマに500をこえるダムを撤去し、大規模ダムを取り壊して生態系を漁業の回復や観光振興に図ろうとしています。

 鳥取県の片山知事は、治水と利水の両面から中部ダムは必要がないと判断し中止を決め、さらに、水没予定地域を対象に、河川改修と定住促進策を含む地域振興計画案を住民に提示しました。長野県の田中知事は、脱ダム宣言を発表し、自然と共生した治水・利水の道を選択しました。

 今、必要なことは、大型ダムに固執し建設中のダム建設を強行するのではなく、建設中のダムであっても住民参加のもとで事業を再検証し目的と必要性、採算性を再評価することです。
この見地から斐伊川水道建設事業をみた時、様々な疑問と先行き不安が生じてきます。

 そこで伺います。
 第一に、尾原ダムの総事業費は、平成5年、建設省とダムの負担割合を決めたときは980億円、現在は1,510億円となり当初計画の1.5倍を超える事業費に膨張しました。その中でも総事業費の5%と決められた水道関係ダム工事負担金は、当初計画の49億円から75億5千万円になり、水道施設総事業費は、当初計画の364億円から379億5千万円へと増加しています。

 これら事業費の増加は市町村負担の増加であり、結局は住民負担の増加、即ち水道料金高騰へと連動するのであります。

 この事業費の増加について、各市町村に正確な情報は伝わり、負担増加についての協議と対策は行なわれていますか。あわせて、行なわれているのなら参画市町村から出されている意見はどのようなものですか、伺います。

 第二に、10市町村の参画水量である日量35,400#13221;は、今から12年前の平成4年2月に決定されたものです。この時の希望参画水量が、12年たち社会情勢や人口動態が変化した今日時点においても不変の希望水量となっていますが、その見通しに甘さと誤りはないですか、伺います。また、平成4年以降の関係市町村との希望水量についての協議状況を伺います。

 第三に、水需要予測が適切なのかという問題です。関係市町村の水需要量は、今から7年後の平成23年に21,400#13221;、20年後の平成35年に35,400#13221;となっています。この需要予測の一つに人口の将来推計が基礎となっています。
 
 松江市は当初、人口20万人予測の対応でしたが、今日時点の人口推計と比較すれば、いかに実態とかけ離れているのかがわかります。松江・八束合併協議会の資料では、尾原受水を希望する八束郡内の町村人口は、20年後に6,000人減とされていますが、尾原受水計画では、ほとんど人口に変化がないとされています。この点からもいかに尾原受水の人口推計が実態にあってないかがわかります。

 また、合併の是非は別にして、出雲圏域との合併を摸索している平田市は3,600#13221;の受水計画でありますが、合併によって受水計画の再検討が必要ではないでしょうか。将来の人口推計、社会情勢の変化、合併など今日時点において本事業の再検討と計画の見直し、関係市町村との再協議を求めますが、いかがですか、伺います。


(乳幼児医療費助成事業)

 質問の第五は、乳幼児医療助成事業についてです。
 今、乳幼児医療費の助成制度は、全国の全市町村で取り組まれています。県段階では、東京都や栃木県など6都県で、通院、入院とも小学校就学前まで助成しており、滋賀県は、21世紀を子供の世紀と位置づけ、通院、入院とも就学前までの無料化を計画し、広島・山口県も来年度から通院、入院とも就学前までの医療費助成に踏み出します。就学前までの助成は全国の大きな流れになっているのではないのではないでしょうか。

 子育て中のお母さんからは「医療費が無料になるということは、経済的に助かることに加え、子育てを社会が応援してくれていると感じる」「島根も是非とも無料化し、子育てに温かい県としての姿勢を表明してほしい」との声が出されています。

 そこで伺います。
 第一に、子育て中の親の願いは、医療費助成の拡充です。乳幼児医療費助成は子育て支援の重要な施策と考えますが、知事の所見を伺います。

 第二に、知事は「子育てするなら島根が一番」と言われます。この島根でまさしく一番の子育て支援策を実現するために入院、通院とも就学前までの無料化を決断されることを求めますが、いかがですか。

 第三に、来年度、乳幼児医療費助成制度の見直しにあたり、子育て支援に逆行する負担増は行なわないことを表明してください。制度見直しにあたっては、現に子育て中の親をはじめ、県民の意見を十分に聞かれることを求めます。


(馬潟工業団地ダイオキシン問題)

 質問の最後は、馬潟工業団地ダイオキシン対策についてです。
 馬潟工業団地の公害は長年住民を苦しめてきました。住民は平成8年から行政に助けを求め悪臭、黒煙、川の汚染など改善策を求めてきました。

 今回の汚染底泥対策にあたり、住民の願いは、「樋ノ口川を元のきれいな川に戻して欲しい」ということであります。樋ノ口川は昭和40年代水深1mあり、ウナギが採れるほどのきれいな川でした。それが今や、ヘドロとダイオキシンの川となったのであります。

 そこで伺います。
 第一に、除去対策事業の内容と今後の実施スケジュールはどのような予定ですか伺います。

 第二に、住民は、汚染底泥の除去を求めています。汚染底泥のコンクリート固化では、水深が浅くなり魚が溯上できません。今回の対策事業の柱に原状復帰を柱に据えるべきですが、いかがですか。

 第三に、周辺住民への不安を払拭し、行政に対する信頼回復のためにも事業実施にあたり、住民説明会を開催し、事業についての住民の意見・要望を集約し住民に納得のいく事業とすべきですが、いかがですか、このことを伺って、私の質問を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画