2004 年 2 月定例会 知事提出議案、請願等に対する討論
2004-03-15 この記事を印刷
知事提出議案、請願等に対する討論
日本共産党の尾村利成でございます。通告いたしておりますとおり、予算案7件、条例案6件、一般事件案3件、議員提出議案3件、請願4件について委員長報告に反対する討論を行ないます。
以下、その主な理由を申し述べます。
まず、第一号議案「平成16年度島根県一般会計予算」についてです。予算は、政治の顔、政治の鏡だと言われています。
予算は県民の置かれている苦しみの実態を直視し、地方自治法第二条に規定する「住民の安全、健康及び福祉を保持する」との立場から編成されるべきであります。
来年度予算は、無駄な大型公共投資により破綻寸前の県財政を健全化するとの理由で、一律にマイナスシーリングを設定し、福祉・教育・医療の予算を削減し、県民が求める事務事業の見直し、廃止を強行しています。
わずか年間予算300万円弱の生活保護世帯への見舞品事業の廃止、母子家庭への入学・就職支度金事業の廃止、私立学校補助金の削減など県民に痛みを押し付けながら、県民合意のない芸文センター、歴博整備事業には100億円を計上、合併誘導の合併支援交付金には120億円を計上するなど到底容認できません。
県民のくらしの実態は深刻です。自殺者数は年々増加し、国民健康保険証が取り上げられている県内世帯は、1,100世帯を超え、高校生の就職内定率は80%にとどまっています。
県民が求めているのは、くらし、福祉、教育を充実させ、未来に希望が持てる予算です。この立場から第一号議案には反対します。合わせて、請願第33号「母子家庭等入学支度金制度の存続を求める」請願並びに請願第55号「私立学校助成費削減の中止を求める」請願は不採択ではなく採択すべきことを主張します。
次に、第13号議案「平成16年度島根県病院事業会計」、第14号議案「電気事業会計」、第15号議案「工業用水道事業」、第16号議案「水道事業会計」、第17号議案「宅地造成事業会計」の公営企業会計予算についてであります。
病院事業会計におけるPFI事業による設計、建設、維持管理費用の債務負担行為は、県民サービスの後退が危惧されます。また、供給見込みの立たない神戸川工業用水道事業、使わない水まで住民負担となっている江の川水道事業、水需要予測の見直しが求められる斐伊川水道事業など、住民負担軽減や事業の見直しによる適正化が措置されていない予算には賛同できません。
次に、第21号議案「安来市、能義郡広瀬町及び同郡伯太町の合併による安来市の設置に伴う関係条例」、第44号議案「市町の廃置分合について」です。
私は、合併に一律に反対するものではありません。しかし、市町村合併はそれぞれの自治体の歴史に終止符を打ち、新たな自治体をスタートさせる平成の一大事業であり、住民にとって重大な岐路といえる決断であります。
合併の成否は、住民に正確な情報が提供され、住民合意が十分になされたかどうかにあります。
この視点から新安来市への合併協議の経緯をみたとき住民の合意が不十分です。合併の是非を問う住民投票には背を向け、中心部と周辺部との格差拡大、住民負担増の不安、議員の在任特例の扱いなど、強い不満の声が渦巻いています。よってこれらの議案には反対であります。
次に、第30号議案「使用料及び手数料の額の改定等に関する条例」、第37号議案「島根県立高等学校条例の一部を改正する条例」についてです。
県立学校の授業料滞納者数は、平成12年度5月末時点で63人、平成13年度5月末時点で91人、平成14年度5月末時点で146人と年々増加傾向にあります。県立学校の授業料は私立学校の授業料に連動し、教育の機会均等、今日の不況下のもと値上げすべきではありません。高等看護学院授業料値上げなど使用料の改定は容認できません。
合わせて請願第34号「県立高等学校の授業料値上げの中止を求める」請願は、不採択ではなく、採択すべきことを主張します。
次に、第31号議案「所得税法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例」についてです。
総額表示の義務化は、政府による消費税の痛税感隠しによる税率アップが狙いです。
よって、法律改正に伴い使用料等の額について、消費税相当額を含んだ総額表示を求める条例改正には反対であります。
次に、第35号議案「県立学校の職員定数条例の一部を改正する条例」、第36号議案「市町村立学校の教職員条例の一部を改正する条例」についてです。
行き届いた教育、ゆとりある学校実現のために教員定数の削減は認められません。
学習指導要領の改訂と学校五日制によって教員は超多忙の状態にあり、教職員の増員こそ実施すべきであります。
次に、第45号議案「公の施設の指定管理者の指定について」です。
この議案は、公の施設である花ふれあい公園の管理を民間に代行させるものです。4月1日からの管理代行にあたり、今日時点においてもその事業計画が明らかにされていません。また、指定管理者が業務上知りえた個人情報を漏らした際の罰則が現時点で未整備であるなど県民サービスの確保と公共性が担保されておらず、賛成できません。
次に、第55号議案「平成15年度島根県一般会計補正予算」についてです。
政府の「道路四公団民営化」方針は、無駄な高速道路建設に全く歯止めをかけない点でも40兆円もの巨額の債務のツケを国民に押しつける点でも、天下りやファミリー企業などの政官財の癒着構造を温存する点でも改革の看板に値しません。
道路特定財源を注ぎ込んで採算性のない高速道路を造り続ける新直轄方式は中止すべきです。
よって、国の新直轄事業推進に伴う直轄負担金を計上する予算には賛成できません。
なお、採算性がなくても地域経済や福祉・医療などの観点から必要な高速道路については、交通需要や赤字額などを公表し、それらを含め国民合意が得られるならば建設すべきと考えるものです。
次に、議員提出第2号議案「島根県政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例」についてです。この議案の討論にあたり、議員提出第一号議案「議会の議員の報酬の特例に関する条例の一部を改正する条例」と合わせて討論いたします。
議員報酬は、議員として住民要求実現のために議会内外の活動費や、自らの生活費にあてるものです。
今日の県財政危機の原因は、国の誘導策に乗り、大型開発、大規模プロジェクトを長年にわたり続けてきたことにあり、知事の責任は大きいものがあります。また、同時に議会として、県政に対する監視機能、チェック機能が果たせていなかったことにもあります。政府は、90年代、大型公共事業を自治体に押しつけてきました。これに対し、本県予算も大型開発偏重となりました。この予算に対し、平成10年度当初予算、平成11年度当初予算、平成12年度当初予算、平成13年度当初予算、平成14年度当初予算が全て、全員賛成で議会を通過してきたのであります。
この点から、県財政健全化に向け、知事はもちろんのこと議員報酬の削減はやむを得ないものと考えます。ただし、この議員報酬削減を契機として、県職員の給与引き下げを即、連動させるべきではないことを付言します。
次に、政務調査費の削減についてです。
政務調査費は、地方分権の進展の中、議会、議員が活発な政務調査活動を行い、具体的な政策立案を行なうための必要経費です。この調査費を十分な審議なく削減することは、議会としての調査活動を否定することになりかねません。
しかし、本県の政務調査費の交付に関する条例では、領収書添付が義務付けられておらず、使途の透明性が確保されていないため、県民からその取り扱いに対し、強い批判があっています。領収書添付の義務付けなど透明性を高めることが急務です。
以上の点を総合的に勘案し、今日の県財政の状況をみたとき、政務調査費の削減はやむを得ないものと判断します。
次に、議員提出第3号議案「竹島の領土権確立に関する意見書」についてです。
竹島は1905年に日本に編入され、国際的にも日本領として扱われるようになり、現在は島根県隠岐郡五箇村に属するとされています。
一方、韓国は、この時期は日本による韓国併合の進行過程であったことから、日本の領有手続きそのものが無効だと主張しているなど、検討すべき課題もあります。
しかし、韓国は、第二次大戦後の1952年、一方的に武装占拠し、1988年の領海12カイリ宣言以降は日本漁船は韓国側に排除されています。意見書案にあるように、韓国は昨年の郵便番号の付与、郵便ポストの設置、さらに竹島切手の発行など実効支配の既成事実化をすすめています。このような韓国のやり方に道理はありません。
竹島問題の解決は相互の主権を尊重し、平和友好の精神を貫きながら、粘り強く交渉し解決すべきと考えます。
最後に請願第19号「自衛隊のイラク派兵に対する意見書の提出について」です。
イラク問題解決の道は、米英軍主導の軍事占領支配を一日も早くやめさせ、国連中心の枠組みによる復興支援に切り替え、イラク国民に速やかに主権を返還することです。憲法9条を持つ日本のとるべき道は、イラクへの自衛隊派兵ではありません。よってこの請願は不採択ではなく、採択を主張します。
以上で私の討論を終わります。