前に戻る

議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2004 年 6 月定例会 知事提出議案、請願、議員提出議案に対する討論

2004-06-22 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。条例案4件、一般事件案10件、議員提出議案2件、請願3件について委員長報告に反対する討論を行います。以下その主な理由を申し述べます。

(市町村合併関連議案について)

まず、第74号議案「市町村合併に伴う関係条例の整理に関する条例」、ならびに、第84号議案、第87号議案「市町村の廃置分合について」、第85号議案、第86号議案の「市町の廃置分合について」、第88号議案「町の廃置分合について」、第89号議案、第90号議案、第91号議案の「町村の廃置分合について」の市町村合併関連の9つの議案についてであります。

市町村合併は、それぞれの自治体の歴史に終止符を打ち、新たな自治体をスタートさせる一大事業であり、住民にとって重大な岐路といえる決断であります。合併の成否は、住民に正確な情報が提供され、住民合意が十分になされたかどうかにあります。

今回の市町村合併は、「住民自治」の主体者である地域住民の意思から生まれたものでも、「団体自治」の担い手である地方自治体の意思から生まれたものでもなく、国による上からの押しつけであることは明白です。この間の政府による、市町村を無理やり合併に追い込む財政締めつけや、小規模自治体の交付税削減、そして、三位一体改革の名のもとの地方交付税の大幅削減など、地方自治体切り捨ては、目に余るものがあります。

このたびの合併に私が反対するする理由は、一つに、市町村合併によって自治体リストラをすすめ、中長期的には国の地方への財政支出の大幅な削減を図りつつ、一方、大型開発をより効果的にすすめる体制づくりを狙っていること。二つに、自主的合併を言いながら、実際は、国による押しつけ、強力な誘導策が施され、地方自治の精神に反するものだからであります。

一例をあげれば、松江市・八束郡7町村の合併協議は、合併特例法の法期限をもとに、期日逆算方式で強引に進められました。「市の広報などを見ても合併についてよくわからない」「行政ばかりあせって進めているように見える」との市民の声にあるように、一方的な説明はやられたものの住民論議、住民合意は不十分でした。
また、合併の是非を問う住民投票には背を向け、住民意思を確認する場がありませんでした。

新市建設計画をみると、放射道路、環状道路をはじめ、大型開発事業が目白押しで、今回の合併に追い込まれた地方財政破綻を、今度は合併の名のもとで再び繰り返す内容となっています。しかも、中心市街地への莫大な投資計画が中心であり、周辺部がさびれるのではとの懸念が広がっています。そして、それを意識してか、八束郡内では、合併を前にした役場の建設、箱もの建設などの駆け込み事業が軒並み計画されており、モラルハザードを起こしている状況です。

松江市内において水道の給水の停止実施件数が434件、国民健康保険証が手元にないという世帯が約800世帯にものぼっており、市民の命が危険にさらされているのにその解決策は新市の計画では明示されておらず、くらし充実の市民の願いに応えていません。

このように今回の合併は、住民の利益を守り、住民の自治を広げ尊重する見地が欠落しており賛成できないのであります。

(県税条例の一部を改正する条例)

次に、第76号議案「島根県県税条例の一部を改正する条例」についてであります。
今回の地方税法改正は、個人住民税増税にあります。均等割は、個人住民税の基礎をなしており、低所得者への配慮がとりわけ重要であり、非課税措置の廃止は、住民負担の引き上げとなり適当ではありません。よって、法改正に伴う本条例改正には反対であります。

(島根県行政手続き等における情報通信の技術利用に関する条例)

次に、第79号議案「島根県行政手続き等における情報通信の技術利用に関する条例」についてであります。

行政手続きオンライン化による電子申請等受付システムは、開発から保守管理、運用まで民間に一括委託されるものです。住民基本台帳ネットワークシステムによる行政オンライン化は、集約された情報がどこで漏れるかわからず、プライバシー権や個人情報保護の点から問題があります。効率化・利便性を住民福祉の向上、個人情報保護に優先させることは許されず、本条例は容認できません。

(隠岐空港整備事業用地造成工事の契約の締結について)

次に、第92号議案「隠岐空港整備事業用地造成工事の契約の締結について」であります。

隠岐島における民生安定、地域振興を図ることは当然です。しかし、隠岐空港において、利用者が減少しているのに、現在の2.5倍の利用客を見込み、事業がすすめられています。今日時点において、本事業は勇断を持って事業全体の見直しを検討すべきであります。よって、事業推進をすすめる用地造成工事契約の締結は容認できません。

(島根県芸術文化センター建設工事の変更契約の締結について)

次に、第93号議案「島根県芸術文化センター建設工事の変更契約の締結について」であります。

私は、芸術や文化の振興を否定するものではありません。しかし、聖域なき歳出削減のもと、福祉、教育、医療の予算を切り捨ててまでも芸術文化センター整備事業への巨額な県費支出に県民は納得していません。県財政がひっ迫している折、不要不急の事業は見直すべきです。よって、本事業は凍結すべきであり、この変更契約締結には反対であります。

(職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例)

次に、第96号議案「職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。

本条例の提案理由は、県財政が極めて厳しい状況であり、財政改革の具体的取組みとして職員の給料について更なる縮減を行うとされています。

私は、県財政の悪化のツケを安易に職員に転嫁するやり方には、反対であります。
それは、第一に、今回の県財政の悪化は、身の丈を超えた公共事業を長年続けてきたことに原因があるからであります。財政健全化と称し、総人件費の抑制や事務事業の見直し・削減にフレームを設定し、削減額目標を定めるべきではありません。まず、すべきは、既存・継続中の大型公共事業を県民参加で見直し、無駄がないのか、また、不要・不急の事業はないのか等の検証こそすべきであります。一例をあげれば、総事業費140億円の巨費を投入する都市計画道路「城山北公園線」の道路拡幅事業など住民合意のない事業は、中止すべきであります。

第二に、相次ぐ職員給与の削減が職員の士気や組織の活性化、行政能力の低下につながりかねないことを危惧するものであります。

第三に、県職員給与は公務員労働者の生活だけでなく、年金、恩給の基礎となり、この引き下げは広く県民生活に影響を与えるものであります。そして、この引き下げは、何より民間賃金に波及し、影響を与えるもので、賃下げの悪循環を招くものであります。よって、本条例には、反対であります。

あわせて、深刻な不況の打開、地域経済の活性化を図る観点から、民間企業など地場賃金にも影響する寒冷地手当の見直しを行わず、改善を求めた請願第29号「寒冷地手当の見直しを行わず、改善を求める意見書採択について」の請願は、不採択ではなく採択すべきことを主張します。

(教育基本法について)

次に、教育基本法に関連する請願、及び議員提出議案についてであります。
昨年3月、中央教育審議会が「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興計画のあり方について」の答申を出し、その後、教育基本法の改悪に向けた動きが本格化しています。

答申が出された当日、日本弁護士連合会はただちに会長声明を発表し、憲法や子どもの権利条約などが示す国際準則に照らし、一つ、人権としての教育の権利の実現を危うくするものである。二つ、公教育の場において「国を愛する心」を押しつけて個人の内心の自由を保障する憲法19条に抵触する恐れがある。三つ、教育行政が「教育内容」にも積極的に介入することは、最高裁判決にも反するものである等々、7項目にわたる問題点を指摘しています。

また、与党が合意した教育基本法の改正案は、教育振興基本計画を教育基本法に取り入れ、政府が中長期的な教育目標を決めて教育現場に指示するなど政治による教育介入に法的根拠を与えるものであり、さらに、本来、個人の見識や社会の自主性に委ねられるべき愛国心を教育基本法として強制しようとしており、断じて認められません。

今回の請願は、このような問題点を指摘しつつ、子供と教育をめぐる諸問題は、教育基本法にその原因があるのではなく、むしろ教育基本法を尊重してこなかったことに原因があるということ、そして、今、求められるのは、学校教育の真のゆとりであり、30人学級の完全実施や安心できる学校施設の整備・拡充など、教育基本法に基づく学校教育の充実であるとしています。

これら請願の願意は、当然であり、請願第4号「教育基本法の改正ではなく、その理念の実現を求める意見書採択について」の請願、および、請願第7号「教育基本法改正に反対する国への意見書採択について」の請願は不採択ではなく採択すべきことを主張します。

一方、議員提出第12号議案「教育基本法の早期改正を求める意見書」は、子供と教育について生じている諸問題をあげながら、それと教育基本法との関係の説明はせずに、「法制定から半世紀以上が経過」、「新しい時代にふさわしい教育を」というだけで教育基本法の改正を求めておられます。県民の願いは、教育基本法の拙速な改正ではなく教育基本法を生かした教育の実現であります。
よって、本意見書の採択には反対であります。

(「社会資本整備に関する意見書」について)

最後に、議員提出第11号議案「社会資本整備に関する意見書」についてであります。

意見書にあるように、本県の社会資本整備は遅れており、その整備は必要であります。しかし、この間の高速道路、港湾、空港、ダムなど産業基盤型重点の公共投資が、今日の県財政危機の原因でもあり、事業の必要性や採算性の面から県民の理解が得られていないのであります。

今、問われているのは社会資本整備の中身であります。今日の県財政危機のもと、従来の産業基盤型事業の継続ではなく、公共住宅の供給、下水道・合併浄化槽、生活道路などの生活関連施設、特養ホームや保育所など福祉関連施設の新増設、学校などの耐震化、災害に強いまちづくり、バリアフリー化、自然エネルギーの開発、緑のダムである森林保全など、「生活、福祉、防災、環境」型事業へ転換して中小業者の仕事を確保し、地域経済への波及効果をもたらすべきであります。以上の理由から、本意見書には賛成できません。

以上で私の討論を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画