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2005 年 2 月定例会 一般質問 (知事の政治姿勢、福祉医療費助成事業、城山北公園線拡幅事業、中海干拓堤防開削、馬潟工業団地ダイオキシン対策)

2005-03-03 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

1.知事の政治姿勢について

 質問の第一は、知事の政治姿勢についてであります。

 予算は、政治の顔、政治の鏡であると言われています。予算は、県民の置かれている生活実態と苦しみを直視し、地方自治法に規定されている「住民の暮らしと福祉を守る」という立場で編成されるべきであります。

 事実、県政世論調査でも明確なように、県政の主人公である県民は県政に対し、十数年連続「高齢者福祉や障害者福祉の充実」を第一番に求めており、その施策充実は最優先すべきであります。

 然るに来年度予算案は、中期財政改革基本方針や県総合計画をもとに「歳出全般にわたる聖域なき見直しや施策の選択と集中を徹底する」という方針で、県民合意のない無駄遣いは強行しながらくらしや福祉予算を圧縮し、県民には痛みを押し付けようとしているではありませんか。

 不要不急の県民合意のない芸文センターには十一億円、古代出雲歴史博物館には五十九億円を計上、またほぼジェット機就航の見込みがない隠岐空港整備事業には四十八億円を計上する一方、県民の命綱である福祉医療費助成事業は、原則一割負担として二億円の減額、住民の身近な路線バス運行を支援する生活バス路線確保対策交付金は一億円の減額、私立学校振興費等補助金や民間社会福祉施設整備資金元利補給金などの見直し、縮減など県民のくらしや命に直結する一億、二億の助成金は、県民の反対を押しきってまで削るなど、到底容認できるものではありません。

 予算案は、大型事業による財政破綻のツケを県民に転嫁して乗りきろうとしており「県財政を破綻させた知事が、今度は県民のくらしと命を破壊しようとする」予算であると指摘せざるを得ません。

 県財政再建のあるべき道は、県民合意のない不要不急の大型公共事業を見直し、過大な需要予測に基づく事業を再検証すべきであることを求めるものであります。

 知事、あなたは施政方針で県政運営にあたり「県民の声に耳を傾け、県民の目線で考える」と強調されました。それならば、圧倒的多数の県民が反対している福祉医療費助成事業についての負担増の強行などの県民生活に直結する予算の削減は、施政方針に真っ向から反するのではないですか。所見を伺います。

 この福祉医療費助成事業の見直しは、中期財政改革基本方針に盛り込まれていました。この基本方針に掲げた以上、いくら県民が反対しても断行するのですか。県民との協働を基本方針に県政をすすめるというのならば、県政運営について、広く県民から意見を聞く機会を設け、真摯に県民の声を政策決定に生かすべきであると考えますが、いかがですか。所見を伺います。

 次に、竹島の領土権の確立について伺います。

 竹島は、一九〇五年の領有手続き以前にも日本の文献等に、日本の実効支配を示すものがあり、歴史的にも、わが国に竹島の領有権があるという主張には根拠があります。そして、国際的にも日本領として扱われているものであります。

 一方、韓国は国際法上の一九〇五年の日本の領有手続きそのものは、朝鮮の植民地化をすすめる過程で行われたものであることなどから無効と主張していますが、この主張に検討すべき問題もあります。

 しかしながら、韓国による武装占拠や郵便番号の付与、郵便ポストの設置、竹島切手の発行など実効支配の既成事実化には道理はありません。

 竹島問題には、一九〇五年問題など複雑な経過と背景があり、その正しい解決のためには、何よりも相互の主権を尊重し、平和友好の精神と原則を貫きながら粘り強く交渉し解決するべきであります。そのためにも、韓国は竹島の一方的占拠を中止するべきであります。

 私は、日本として竹島の領土権を堂々と主張していくべきと考えます。しかしながら、「竹島の日条例案」が議員提案されて以降、本県と姉妹提携する韓国・慶尚北道から交流中断をつきつけられ、韓国政府が猛反発する事態となっています。このような中、竹島の日条例の制定を強行することが本県をはじめ日韓友好関係において非友好的な対応となることとなり、話し合いによる竹島問題の解決を遠ざけてしまうことを危惧するものであります。

 そこで、慶尚北道との関係修復のための県としての取り組み方針について知事の所見を伺います。


2.福祉医療費助成事業について

 質問の第二は、福祉医療費助成事業の見直しについてです。

 私は、来年度予算案に、福祉医療費助成事業について、原則一割負担導入が盛り込まれたことに対し、強い怒りを表明するとともに、その撤回を強く求めるものであります。

 政治には、人の命、七十五万県民の命がかかっています。今回の負担増に憤り、温かい県政を切望している障害者や母子家庭など対象者の思いを代弁し、以下質問いたします。

 福祉医療は、重度障害者や母子家庭、寝たきりの高齢者など県内で二万六千人を対象とした医療費助成制度です。一割負担となれば、一万一千人の高齢者は対象から外されてしまい、現在一ヵ月五百円の負担が、最大で外来一万二千円、入院四万二百円へと引き上げになります。

 昨年十一月、改正原案が発表されて以降、この負担増に対して、撤回を求める声が県下各地で燎原の火の如く大きく広がっています。

 県は対象者や県民の猛烈な反対と抗議に押され、若年障害者と低所得者に対する一定の配慮をしたと言いますが、その非道ともいえる大改悪の本質はいささかも変わっていません。

 平成十六年の福祉医療費の予算は、十一億二千万円でした。これが来年度の予算では九億千万円、二億円の減額です。今回の改正が十月実施予定ですから、年間四億円の減額です。一年間で考えれば十一億だった予算が、七億の予算になるわけです。福祉医療の予算は何と四割以上の削減ではありませんか。これが知事のいう施策の選択と集中ですか。

 この事業は市町村との共同事業ですから、四億の倍額の八億円が福祉医療対象者の負担となってかぶさってくるではありませんか。また、低所得者に配慮といわれますが、税制改正による公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止などの住民税非課税措置の廃止は住民税非課税世帯が限りなく減少します。課税世帯になることによって、国保料や介護保険料が連動して値上げされ、福祉医療費助成においても大幅負担となるではありませんか。

 知事、今回の一割負担導入によって島根県は、全国一、障害者に冷たい県政になるのです。単純に他の都道府県との比較はできないと言われますが、そんなことはありません。島根県の福祉医療費助成事業は、日本一、ひどい状況になることは明白であります。

 この福祉医療費助成事業は、全国四七都道府県で県単独事業として実施されています。全国四七都道府県のうち三三県では自己負担がゼロです。

 今日時点で、近畿、中国、四国の府県の中において、自己負担金を徴収しているのは島根県だけです。負担があるところも、ほとんどが五百円程度の負担であります。島根は、対象者が身障者手帳2級までしかなく、所得制限があり、入院時の給食費には助成をしない、そしてその上、一割の負担を課すわけですから、これほど障害者に冷たい県政は日本全国どこにもないのであります。

 今回の負担増が許されないのは、対象者の命にかかわるからであります。重度障害者や寝たきり高齢者は、その障害ゆえに身体的機能が低下し、日常的疾患や感染症にかかりやすく、その医療費が家計の多大な負担になります。

 心臓病の子供を持つ母親は、「県内で手術できる病院がなく東京や岡山の病院に通い、経済的負担はすでに限界です」と訴えておられます。

 人工透析を受けておられる患者さんたちは「山間地からの通院では、交通費だけでも月に通万円かかる。お金がないからといって透析治療をやめるわけにはいかない。やめれば死につながるから」と切実な思いを語り、見直し案の撤回を強く訴えておられます。知事あなたには、この患者、障害者の皆さんの悲痛な叫びが、なぜ届かないのですか。県の財政が厳しいといっても、やってもいいことと悪いことがあるのではありませんか。

 昨年十二月県議会の私の一問一答質問において、健康福祉部長は「市町村や当事者団体の方々の意見は、福祉医療費助成事業の見直し案を概ね理解するというのが多数だった」と答弁されました。しかし、当事者団体の関係者からは「何も聞いていない」「晴天のへきれきだ」と反発の声が上がり、事実と反するものではあったではありませんか。十二月十三日に、県庁六階で関係者への説明会が開催され、百人を超える参加者があり、発言者全員がこの負担増に反対したではありませんか。一人でも県の改正案に賛成した人がありましたか。また、関係者の情報公開請求によれば、市町村からの意見聴取は、わずか十五自治体でしかなされていないではありませんか。これで市町村の意見として「概ね理解」というのはひどすぎるではありませんか。虚偽答弁であったと断ぜざるを得ません。

 この間、二百人をこす開業医が、見直し案反対を表明し、障害者団体も次々と県に対して反対陳情を出しています。県内の二十をこえる市町村議会も、制度の継続を求める決議を採択しています。今回の福祉医療改正撤回を求める声は、天の声、地の声であり、県民大多数の声です。

 知事は、私の質問に対し「関係者の声を十分に聞いて最終的に自分が判断する」と答弁されました。その声が十分に伝わっているのなら、負担増は撤回する以外なかったはずであります。

 そこで伺います。第一に、今回の見直し案発表後、県民からどのくらいの意見が寄せられましたか。また、その寄せられた意見の特徴はいかなるものですか。また、その中で反対、賛成の意見の比率はどうなっていますか。伺います。

 第二に、私は障害者団体など関係団体からの見直し案の意見集約は、全く不十分であり、到底、関係者、対象者の理解と納得はえられていないものと考えますが、県としてはどのように認識されていますか。伺います。

 第三に、知事は、昨年十二月県議会で「実施主体の市町村、当事者団体の方々のご意見を十分に聞いて最終的に判断する」と答弁されましたが、このわずか二ヵ月間において、意見集約は十分になされたと認識されていますか。また原則一割負担導入を決断された理由を伺います。いかがですか。

 第四に、関係団体・当事者団体は全県でいくつあり、その中でいくつの団体から意見集約されましたか。また、関係団体からの意見集約で、一割負担に理解を示す団体がありましたか。仮にあったとしたならば、それは関係団体の中で何割にあたりますか。お答え下さい。

 第五に、今回の見直し案は、対象者にとって負担可能な金額と認識されていますか。また、この負担増によって、私は医療の中断や受診抑制が起こると思いますが、どう認識されていますか。所見を伺います。

 第六に、見直し反対の圧倒的多数の県民や関係団体、市町村議会の意見に反して、一割負担を強行することは県政に対する不信を広げることになると考えますが、いかがですか。所見を伺います。

 第七に、今回の負担増の撤回を求めますが、いかがですか。また、今回の負担増の強行によって、島根県は全国一障害者に冷たい福祉医療費助成制度となります。対象者に対する知事のメッセージと思いを伺います。


3.城山北公園線拡幅事業について

 質問の第三は、城山北公園線拡幅事業についてであります。

 先の福祉医療費助成事業は、県民が「事業を継続してください」「拡充してください」とお願いしても、県財政が大変との理由でわずか数億円を縮小するものであり、一方、この城山北公園線拡幅事業は、沿線住民をはじめ多くの県民が「街こわしなのでやめてください」「税金の大無駄使いです」と言っても百四十億円もの莫大な税金を使い、強行しようとしているものです。ここに、今の島根県政における税金の使い方の誤りと逆立ちぶりがあることを、まずはじめに指摘するものであります。

 城山北公園線の拡幅理由の一つに、慢性的な渋滞の解消がいわれております。しかし、この間の私の議会質問に対する執行部答弁でも明らかなように、本路線にはまったく慢性的な渋滞はありません。

 本県人口は七十五万人を切り、将来の人口推計によっても本県人口は減少の一途をたどり、少子化、高齢化によって県内交通量をはじめ松江市内の交通量も大幅な減少が予想されます。付言すれば、皮肉なことに城山北公園線を利用している県庁職員も中期財政改革基本方針の実施に伴う職員定数削減によって、交通量減少へのいっそうの拍車をかけることになるでしょう。

 城山北公園線の整備が着手されたものの、沿線住民の理解が得られず強行したために、事業は遅々としてすすんでいません。

 今必要なことは、計画をゴリ押しする姿勢ではなく、一度立ち止まり、原点に立ち返って県民とともに考えることではないでしょうか。

 中海干拓事業は、その事業目的が失われ、圧倒的多数の県民の反対のもと、四十年余の歳月をかけながらも事業中止となりました。この巨大公共事業が中止となったのは、県民の理解と納得が得られないものであったからということを行政は肝に銘じ教訓とすべきです。地元の合意が得られない公共事業はできるはずがありません。今の状況は、拡幅賛成の人、また、反対の人にとっても、そして行政にとっても不幸です。

 私は、事業を計画した行政の側がそもそも論に立ち返り、住民と膝をつき合わせ、徹底した話し合いをすることを求めるものです。

 この立場から五点伺います。

 第一に、今日時点における事業の進捗状況と今後の事業のスケジュール、ならびに総事業費と国、県、市の事業負担額、負担割合を伺います。

 第二に、拡幅理由とされた慢性的な交通渋滞はありません。事業の必要性を再評価、検証する上でも、再度交通量調査をするべきだと考えますが、その用意はありますか。伺います。

 第三に、沿線住民の協力なしに本事業は実施不可能です。県として、事業に反対する住民との意見の対立を解決するために、この間いかなる努力と取り組みをされてきましたか。また今後は、具体的にどう取り組んでいく考えですか。伺います。

 第四に、住民は、城山北公園線と国道四百三十一号線との交差点のスミ切りを提案しています。この提案に対するシミュレーション、調査を求めますが、いかがですか。

 第五に、城下町の景観と風情を守り、地域を活性化するためにも、二十九m拡幅は中止すること。その上で歩道を整備し、段差の解消、電柱の地中埋設を求めますが、いかがですか。所見を伺います。


4.中海の堤防開削について

 次に中海の干拓堤防開削について伺います。

 昨年末、島根、鳥取県両知事が中海圏域の諸課題について密室で会談しました。

 この密室協議についてある新聞は「干拓堤防開削で島根側が譲歩する代わりに、大橋川改修と中浦水門撤去費用の地元負担割合では鳥取県が歩み寄るシナリオが描かれた」と報道しています。

 事実、島根県当局は、これまで農水省の水質シュミレーションにしがみつき、堤防を開削しても水質は改善しないとし「科学的根拠が見当たらない以上、対費用効果の面からも開削は必要ない」と強弁してきたではありませんか。

 大橋川改修で鳥取県側の同意を得るための条件として、森山堤防の小規模開削を受け入れるという姑息な政治手法では本当の自然環境回復にはつながりません。

 住民団体や漁業者が、中海の二つの堤防開削を要求しているのは、中海の潮流回復や生態系を含む自然環境を取り戻したいからであります。

 今、大切なことは、干拓堤防の建設によって、中海の潮流が変化し、水質悪化が進行したとの漁業関係者の指摘を真剣に受け止めることであります。

 干拓・淡水化事業が中止となった以上、県として事後処理の基軸にすべきことは、壊れた自然環境、生態系を取り戻し、豊かな漁業を取り戻すこと、そしていかに原状を回復するのかというスタンスをしっかり持つことであります。

 そこで伺います。

 第一に、森山提、大海崎提の開削による潮流変化によって、生態系がどのように変化し、影響を及ぼすかについての具体的解明を求めますが、いかがですか。所見を伺います。

 第二に、大海崎提開削により、本庄工区水域に貧酸素水域が広がると主張する科学的根拠をお示し下さい。また、この主張について第三者による科学的検証を求めますが、いかがですか。所見を伺います。

 第三に、今日時点で、漁業者をはじめ地元の専門家の意見を集約する場を設けることを求めます。また、両堤防の開削によって、原状回復を図るべきことを求めますが、いかがですか。所見を伺います。


5.馬潟工業団地ダイオキシン対策について

 質問の最後は、馬潟工業団地ダイオキシン対策についてであります。

 馬潟工業団地を流れる樋ノ口川の底泥から、全国最高値のダイオキシンが検出されて四年余りが経過しました。一刻も早いダイオキシン除去を求め続けた住民の願いがやっと実り、ダイオキシン除去対策が具体化しました。

 それは、排出者責任の原則に則し、公害防止事業費事業者負担法に基づき汚染原因者負担を求め、全国で初めて汚染企業に除去費用を負担させるものです。

 その対策はダイオキシン除去と樋ノ口川の河川改修計画をセットにして実施するもので、その工法はダイオキシン底泥を分解・無害化処理し、その底泥を埋め戻して処理するということ、また、樋ノ口川下流部分は二mの三面コンクリート水路で、大橋川へと排水するものであります。

 周辺住民からは「コンクリート水路では浄化作用がなく、有害物質などすべてを中海に垂れ流すことになる」「川底を砂などで埋め、化学物質を吸着するようにすべきだ」、また「ダイオキシンの無害化処理は、全国で初めてというが本当に大丈夫なのか」「自然や生物の生態系を考慮した工法とすべきだ。元のきれいな樋ノ口川にして欲しい」などの不安と対策工法の再検討を求める声が多数出されています。

 馬潟工業団地公害問題は、当初、住民が健康被害や環境汚染を訴えても、県は住民の意見を真摯に聞こうとせず「健康が心配ならば引っ越せばいい」とか「あなたもゴミを出すでしょ」などと言い、住民の思いや感情を逆なでする対応がありました。その県の冷たい対応に愕然とし、団地住民が四世帯もなくなく住みなれた馬潟地区を離れ、引越しを余儀なくされたという事実経過もあります。

 国際文化観光都市・東の玄関口である馬潟地区の自然環境をとり戻し、中海のラムサール条約指定にふさわしい地域とするためにも今後の行政の果たす役割は大変重要です。そしてそれは、その地に暮らす周辺住民との協力、協働なしにはあり得ないということを強調するものであります。

 そこで伺います。

 第一に、馬潟工業団地のダイオキシン公害を引き起こしたいったい原因はどこにあったと総括していますか。また、今後、環境汚染の再発を防止するための方策と決意を伺います。

 第二に、コンクリート水路とする河川改修方法については、住民や漁業者から環境・生態系破壊であるとの声が多数出されています。松江市と協議し、再検討することを求めますが、所見を伺います。

 第三に、この地域の自然環境を修復するためにも、県、市、事業者、住民、漁業者などで構成する馬潟工業団地環境改善委員会(仮称)を立ち上げることを提案して私の質問を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画