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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2005 年 11 月定例会 平成 16 年度決算認定に対する討論

2005-12-16 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

 知事提出認定第1号議案から第5号議案までの「平成十六年度島根県公営企業決算」の認定ならびに知事提出認定第6号議案「平成十六年度決算の認定について」の委員長報告に反対する討論を行います。

 予算ならびに決算は政治の顔、政治の鏡であると言われます。議会における決算の認定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけでなく、次年度の予算編成に資するために、広範な角度から住民の立場で行政評価を検証するものであると理解いたしております。
 
 この立場から以下、討論を行います。

公営企業会計決算認定について
病院事業会計について

 まず、認定第1号議案から第5号議案までの公営企業会計決算、病院事業会計決算についてであります。

 島根県公営企業会計には、一つの大きな特徴があります。それは、県内河川に多目的ダムを建設し、水力発電を開発し、上水道、工業用水道事業を行い、その工業用水により工業団地を造成する。そして、これらすべての事業を島根県公営企業として行うことを基本とする点であります。そのため、県民の立場からの弊害が生まれています。
 
 それは、第一に、公共投資と河川総合開発が、大企業や誘致企業の電気・工業用水確保を主軸とした事業となり、上水道・農業用水利などの民生が後景に追いやられていることです。

 第二に、過大な需要予測のため、多額な投資に見合う需要が期待できず、結局、損失負担が県民に転嫁されていることであります。

 二、三例をあげます。

 その一つは、工業用水道事業における建設仮勘定計上であります。工業用水道事業においては、八戸川工業用水道事業に18億3千万円余り、神戸川工業用水道事業に50億5千万円余り、これら二つの事業において約69億円もの建設仮勘定の計上です。工業用水道事業における有形固定資産総額は140億5千万円余り、そのうち建設仮勘定は約69億円であり、約50%を占めます。即ち、工業用水道事業においては5割の資産稼動でしかありません。

 その二つは、宅地造成事業において、平成16年度、分譲実績ゼロという冷厳な事実です。

 その三つに、今後矛盾と課題が一層表面化する水道事業における、斐伊川水道建設事業であります。

 斐伊川水道建設事業においては、この間、私が何度も指摘してきたように、水需要予測、参画市町村と県の協議不足について、包括外部監査人からも、島根県監査委員からも、厳しく問題視されています。

 本事業の需要予測は、人口の増加予測と1人当たりの最大給水量の増加予測に基づき算定されています。企業局は、20年間で4%の人口増加を予測し、1人当たり最大給水量は、16.6%増加するとし、実態とは、全く乖離した予測数値に固執してきました。

 水需要予測においては、需要予測を誤り、高い水道料を押しつけている江の川水道事業の二の舞にならないことこそ、県政の教訓であったはずです。

 この点から、本事業の抜本的見直しと事業検証を強く求めるものであります。

 次に、病院事業であります。県立中央病院における高額療養費受領委任払い率の適用については、一定の改善がみられますが、まだまだ不十分であります。

 本年の決算特別委員会全体会でも指摘しましたが、保険証を忘れた人に対して、窓口負担は、全額負担で1点15円計算し、その上、精算期間を1カ月しか認めない実態は、余りにもひどすぎます。

 取れ取れ主義の経営効率化最優先の対応であり、およそ県立中央病院としての対応としては、お粗末であります。診療報酬請求の時効は2年であり、もし1ヶ月という精算期間にしがみつき精算を拒否した際、この問題で訴訟提起された際の病院敗訴は、明らかであります。

 抜本的対応改善を強く求めます。
 
 病院経営において、県民に対する公正な医療サービスの提供ならびに患者さん中心の医療サービスの提供との病院憲章に基づく医療提供を求めます。

平成16年度一般会計決算の認定について

 次に、認定第6号議案「平成16年度決算」についてであります。

 本県財政は、県税収入の減少、地方交付税の大幅削減、1兆円を超す県債発行残高の償還に係る公債費が、1千億円を超え危機的状況であります。

 経常収支比率は、危険ラインとされる90%を超え91%、起債制限比率は、警戒ラインとされる15%を上回る17.1%に達するなど、硬直化した極めて厳しい財政状態であります。

 この財政悪化要因として、県当局自身も「国の経済対策に協力し、投資的経費を本県の財政力からすれば高い水準で維持してきたことによる」と、中期財政改革基本方針の中で結んでいます。

 平成16年度からスタートした中期財政改革基本方針は、県民合意のない大型プロジェクトや公共投資にメスを入れることなく、もっぱら職員給与カットなどの行政の効率化、事務事業の大幅削減など、何ら責任のない県民への予算を削減して財政危機を乗り切ろうとするものです。

 県政に対し、県民が求めていたことは、県民合意のない不要不急の大型公共事業を見直しし、無駄な歳出を総点検すること、そして、くらしや福祉、教育施策を充実しながら財政再建を果たすことでありました。

 しかるに、平成16年度、合併誘導のための合併市町村支援交付金や県民合意のない芸文センター・歴博整備事業にそれぞれ100億円を超す巨費を投じました。
その一方、わずか年間予算300万円の生活保護世帯に対する見舞品事業、年間予算2000万円の母子家庭世帯の入学・就学支度金事業を廃止し、私立学校補助金を削減するなど、およそ県民の理解と納得が得られるものではありません。

 県政世論調査によれば、県民が県政に望んでいる施策の第一位は、高齢者福祉、障害者福祉などの社会福祉の充実であります。

 この県民の願いと今の県政を鑑みた時、県民の願いに逆らい、その願いと乖離した財政運営であった平成16年度決算は不認定とせざるを得ません。

 各論

 各論的に8点申し上げます。

 第一に、中期財政改革基本方針に基づき、行政の効率化、スリム化と称し、給与カットや手当の見直し、職員定員削減、県立機関の統廃合など痛みを県職員や県民に押し付けていることです。

 第二に、歳出の効率化と質的改善の名のもとに、事務事業や補助金を削減し、県民サービスを大きく低下させ、市町村に負担を転嫁していることです。

 第三に、市町村合併は、自主的、主体的といいながら合併した市町村に対し、1自治体あたり2.5億円もの交付金を用意するなど、財政的合併誘導メニューで市町村合併を政策誘導したことです。

 第四に、県内で国民健康保険証が取り上げられ、資格証明書発行世帯が1000世帯を超えており、また特養ホームに入所するために自宅で2500人を超える人が待機している状況でありながら、その解決策のための予算措置が講じられていません。

 全国一の高齢者県としての社会福祉、社会保障予算があまりにも貧困であります。

 第五に、城山北公園線拡幅事業のように、大多数の関係住民が反対している無駄な大型公共事業に対し、県民の声を真摯に聞こうとせず、一度決めた公共事業は、何が何でも推進し、財政危機といいながらも、莫大な県費を注ぎ込もうとしていることです。

 第六に、農業においては、国がすすめる大規模農家支援一辺倒の政策に追随し、農林水産業予算において、その約6割が、基盤整備などの公共事業に充てられており、中山間地域や生産農家が望んでいる農産物の価格補償予算が不十分であります。

 第七に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては、事業を継続し同和教育をすべての教育の基底に据えるというように、同和教育を特殊化・別格化する立場に立っています。また、民間の同和団体に対する突出した補助金支出など、不公正を生み出しています。

 第八に、相次ぐ島根原発のトラブル、事故が起こり、原発の安全性に対する県民の不安が高まっているのに、その対処方法は国任せ、事業者である中国電力任せであるなど、原子力発電推進に無批判、迎合であります。

 最後に、今回の審査に当たって、委員会、分科会審査の過程で60項目程度の質疑と資料を求めました。この点ですべての関係者からいずれも誠意ある回答、ならびに資料の提供を頂きましたことに対して、心から感謝を申し上げ、私の討論を終わります。

 以上でございます。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画