2006 年 6 月定例会 知事提出議案、請願、プルサーマル計画の事前了解願いを基本的に了解するとした総務委員長報告に対する討論
2006-07-04 この記事を印刷
第1号議案「平成18年度島根県一般会計予算」
日本共産党の尾村利成でございます。
条例案2件、請願1件、プルサーマル計画の事前了解願いを基本的に了解するとした委員長報告について、反対する討論を行います。
第80号議案「島根県立農業大学校条例の一部を改正する条例」
第82号議案「島根県立高等技術校条例の一部を改正する条例」
まず、第80号議案「島根県立農業大学校条例の一部を改正する条例」ならびに第82号議案「島根県立高等技術校条例の一部を改正する条例」についてであります。この2つの条例案は、行政サービスを受けることに対する受益者負担の適正化を図るとし、入学検定料、入学料、入校検定料を新たに徴収するものであります。
小泉構造改革のもとで、子供たちを取り巻く社会、生活環境が悪化しています。例えば、就学援助を受けている児童数は、2000年には3855人であったものが、2004年には5494人へと膨らんで、4年間で1.4倍の増加になっています。県立高校授業料の滞納者数は、この4年間で2.5倍へと激増しているように、今日の社会的格差、経済格差の広がりが教育を受ける権利、学習環境に悪影響を与えています。
このような中にあって、新たな負担徴収はすべきではありません。
よってこれら条例案には反対します。
請願第74号「出雲市平田地域で計画されている風力発電所事業の早期着工に向けた支援の請願」
次に請願第74号「出雲市平田地域で計画されている風力発電所事業の早期着工に向けた支援の請願」についてであります。
この事業は、総事業費160億円で北山山系の一帯に26基の風力発電機を建設するもので、全国最大規模の計画であります。
開発面積は33haにも及び、総延長15キロの建設作業道、総延長38キロの送電線の地中埋設工事が行われる巨大開発事業です。
地球温暖化対策として風力発電など自然エネルギーの開発は必要なことですが、今回の風力発電計画は、立地場所が山中での大規模開発であり、宍道湖の夕日や出雲風土記の景観が損なわれるのでは、との懸念が、地元をはじめ全国の島根の歴史、景観を愛し、賛美、賞賛する人々から寄せられています。また、北山山系の鳥類などの生物、生態系、植物や自然環境の破壊が心配されています。
松江市からは「現計画での建設は、市の景観、観光行政から乖離する」とし、風力発電の位置、高さ等の変更を求める意見書が出されています。
斐川町からは「県において関係各種団体との合意形成に努めて欲しい」との意見書が提出されています。
事業者の社長は「風力発電から観光など新しいビジネスが生まれる」と強調しますが、地域振興などの経済性の追及により歴史的景観や自然環境が失われるのであれば、結果的には観光面からも大損失につながりかねません。また、自然エネルギーを開発しながら、その一方で自然や自然環境を破壊するのでは本末転倒と言わざるを得ません。
今、大切なことは生物環境や景観を損なう大規模計画は見直しをし、関係各種団体との合意形成に努めることです。
よって早期の事業推進を求めた本請願は、採択ではなく不採択を主張します。
「プルサーマル事前了解願いを基本的に了解とした知事判断について、この知事判断は適切、妥当なものであるとした委員長報告について」
最後に、「プルサーマル事前了解願いを基本的に了解とした知事判断について、この知事判断は適切、妥当なものであるとした委員長報告について」 です。
島根原発2号機でのプルサーマル実施について、県民の理解と合意はありません。プルサーマル導入は、県民の命と安全を脅かすものであり、断じて認めることはできません。以下、その主な理由を4点申し上げます。
第1に、県民の不安は解消されておらず、県の説明責任は不十分であり県民の理解と合意は得られていないことです。
県は、プルトニウム懇談会や安対協顧問の意見を聞き了解の判断に至ったとし、この判断で県民の理解が頂けるものと強弁します。そして、この間、プル懇の議論をホームページに公開したり、新聞広報を行ったから県民への説明責任は果たしていると言いますが、果たしてそうでしょうか。
現在、松江市では住民説明会を開催中であり、8月には公開討論会を計画しています。そして、これらの中から出された地元の意見や質問を集約し、国に対して質問をし、またその回答を市民に返し、市民合意を計るとしています。
一方、県は住民説明会の開催やシンポ、公開討論会の開催など、一切実施せず県民の意見を掌握する努力を怠った上で拙速に了解の結論を出しました。
経済産業省でさえプルサーマル導入は住民合意が前提であるといっています。県民の理解と合意を得ず県民を置き去りにした上でのプルサーマル容認は許せません。
第2は、プルサーマル計画自体が、原発の現状の危険をいっそう増大させる「百害あって一利なし」の計画であるということです。
プルサーマル計画には、①アクチニド(ダーティプルトニウム)の量が増えて、原発で働く人々への危険を増大させる ②大事故(過酷事故)が発生すれば、被害をいっそう増大させる ③外国の事例をはるかに越える大規模なもので、いきなり営業炉に導入することは周辺住民をモルモット代わりにした危険な実験にまきこむ ④モックス燃料が使用済みになれば、ウラン燃料の使用済みより厄介になる ⑤核燃料サイクル政策は経済性もなく、国民負担を増大させる ⑥プルトニウム循環に固執してきた国の原子力政策が破綻し、国民に「百害」を押しつけるものである―など多くの重大な問題があります。
第3には、今年の5月6月と相次いで、広島工業大学の中田高教授によって、新たな活断層が発見され、島根原発の耐震安全性が根底からくつがえっていることです。
中田教授は、千数百年前に活動した全域18キロの活断層で、M7クラスの地震を起こす可能性があると強調し、1、2号機はもとより、3号機も含め、国の設置許可審査が誤りであったことを指摘しています。
第4には、金沢地裁の志賀原発「運転差し止め判決」で、島根原発も含め既存原発の国の耐震設計審査指針に科学的妥当性がないことが指摘されたことです。
島根原発の耐震設計に用いられている基準地震動(S2)は、M6・5の直下型地震を想定して、1号機=300ガル、2号機=398ガル、3号機=456ガルとなっています。ところが、2000年10月に起きた鳥取県西部地震は、活断層がないとされた地域にもかかわらずM7・3の地震が発生。しかも、震央から約8キロ離れた場所で、地下百㍍の岩盤に設置された地震計で最大574ガルを記録しました。
島根原発近くに巨大地震を引き起こす活断層があり、島根原発の耐震設計が、そうした地震に耐えうるものではないこと、さらにプルサーマルの場合は、現在の原発と比較にならない大被害を及ぼす危険性は明らかです。
知事は、プルサーマル実施は国による厳格な安全審査と中国電力における適正な運転が前提だといいます。金沢地裁判決や新たな活断層の発見は、この間の国と中電の安全審査が杜撰であり、国と中電の信頼性は崩壊しており、プルサーマル実施の前提が崩れ去っています。
以上の理由から、島根原発の耐震安全性の抜本的見直しをはかるとともに、プルサーマル計画への了解を撤回することを求めます。
よって、プルサーマル事前了解願いを基本的に了解とした知事判断について、この知事判断は適切、妥当なものであるとした委員長報告について反対いたします。