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2006 年 11 月定例会 条例案、請願に対する討論

2006-12-15 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

 条例案3件、請願1件について委員長報告に反対する討論を行います。以下、その主な理由を申し述べます。


第132号議案「島根県病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例」
 

 まず、第132号議案「島根県病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。
 本条例は、県立中央病院、湖陵病院の病院事業に財務規定等を除く地方公営企業法の規定を適用し、病院事業管理者を設置し、新たに病院局を置くものであります。改正の目的として、医療の質、患者サービスの確保・向上、自立的な経営の確立を目指すとしています。

 この間、国は医療費削減を優先させ、患者への負担増と診療報酬の引き下げを行ってきました。そして、さらに今年成立した医療制度改革法によって、国民に新たな負担増を押しつけ、保険証の使える医療を大幅に縮めるとともに、公的医療保険の役割に重大な変質をもたらそうとしています。

 今定例会の一問一答質問で指摘しましたように県立中央病院は、保険証未持参者に対する精算期間は1ヶ月としていたこと、未持参者に対する医療費は1.5倍の負担をさせるなど、中四国の県立病院の中で一番冷たい対応となっています。中央病院が掲げる患者さんサイド、県民サイドの医療の実践とはほど遠い状況となっています。

 今必要なことは、県民全体の保険・医療・福祉の向上をはかるという自治体病院の役割を担っていくことであります。

 公営企業法を全部適用にすれば、看護師などの労働強化、過重労働による医療ミスやサービス低下などが心配されます。

 また、病院経営の採算性のみが強調され、一般会計からの繰入金が削減されることで、公共性の高い高度・専門・特殊医療の提供など不採算部門を担っている公的病院の役割が低下することも危惧されます。

 病院事業中期計画案では、計画の重点項目として自立的な経営の確立が掲げられ、病院の運営体制では、民間委託の推進があげられています。民間委託では、医療機関の医療に対する責任があいまいにされる恐れもあり、病院が自らやるべき業務や安全・衛生等についてのチェックが出来ず、業者に責任を転嫁し、県民サービスの低下が危惧されます。営利を目的とした民間への業務委託と公的医療とは相容れないものであり、県民の命と健康を守るという公的病院の使命を放棄するものであります。

 結果的に患者・利用者に負担を転嫁し、医療従事者に犠牲を強いることになり、公的医療の後退につながっていくと考えます。
 よって本条例には反対であります。


第133号議案「島根県立高等学校等条例の一部を改正する条例」


 次に、第133号議案「島根県立高等学校等条例の一部を改正する条例」についてであります。
 本条例は、邑智地域における県立高等学校の規模の適正化を図り、魅力と活力のある充実した教育環境を整備するとし、川本高等学校および邑智高等学校を統合し、島根中央高等学校を設置するものであります。

 しかし、この統合には何点かの問題点があります。
 
 第一に、この統合は「入学定員の5分の3を2年連続下回れば、存続か統合かを検討するとした」県立学校再編成基本計画に反しています。

 第二に、1学年4学級から8学級が適正規模とする根拠が薄弱であります。

 第三に、この統合は、教育の機会均等に反するとともに、中山間地域の衰退に拍車をかけるものです。

 第四に、この統合は、住民説明のないまま、突然5月24日に統合方針が発表されるなど、統合先にありきで、関係者の合意なしの見切り発車であったことです。

 そして、関係者の理解と納得も未だ不十分であります。

 以上の点から、本条例には反対であります。


第134号議案「独立行政法人緑資源機構事業負担金等の徴収に関する条例」


 次に第134号議案「独立行政法人緑資源機構事業負担金等の徴収に関する条例」についであります。

 本条例は、独立行政法人緑資源機構が事業実施主体となり、江津市桜江町、邑南町、浜田市旭町の3自治体にまたがる中山間地域を一体的な事業区域に設定し、農用地整備、森林整備、土地改良施設整備を行うものです。そして、その事業費見込額は120億円という巨大プロジェクトであり、その事業に伴う、国・県・市町・受益者の負担割合を定めるものであります。
森林や農用地の保全、整備事業は当然のことです・しかし、今日の農業情勢や県、市町の厳しい自治体財政状況を鑑みた時、これだけの大型プロジェクトに対する、投資、経済効果があるのでしょうか。

また、受益者の立場からみた時、県内で、国営農地開発事業によって、横田地区、大邑地区、益田地区に大規模農地が造成されましたが、入植農家からは農産物価格の低迷で造成農地代がペイできないとの悲鳴もあがっている現状です。

 今、国は大規模農家中心の農業構造を作ろうとしています。しかし、多くの中山間地域をかかえる本県農業のあるべき姿は、専業であれ、兼業であれ、共同組織であれ、農業を続けたい人は、みな担い手と位置づけ、農業再生産ができる価格安定、向上施策こそ予算の柱にすべきであります。

 以上の理由から、本条例には反対であります。


請願第83号「子どもの権利条約」の趣旨に沿い、私学助成制度の堅持と私学助成費の増額などを求める請願


 次に、「子どもの権利条約」の趣旨に沿い、私学助成制度の堅持と私学助成費の増額などを求める請願についてです。
 委員長報告では、請願項目の私学助成予算の増額、授業料直接助成の新設、教育基本法を守る決議採択について不採択との報告でありました。

 今、県は財政改革の一環として、平成16年度より私立学校への県単独助成費を3年間で半減するとしています。平成17年度県内の私立高校の在籍者数は4206人であり、中途退学者は4.21%にものぼっています。そのうち、経済的理由や家庭の事情による退学者は12人もありました。

県立高校においても授業料の滞納者数は179人、授業料の減免を受けている生徒の減免率は8.5%にものぼっており、毎年増加している状況です。

 私立学校の学費は県立高校と比較しても2倍を超えており、1ヶ月あたり4万円を超えています。今こそ、高校教育の無償化をうたった子どもの権利条約に沿った施策が必要であります。

 よって、1193人の署名による願意を集め、私学助成予算の増額を求め、授業料直接助成の新設を求めた本請願は、採択すべきであります。

 次に教育基本法を守る決議についてです。
 教育基本法の改正をめぐって、国会は緊迫しています。

教育においては、いじめ問題や未履修問題が浮上し、教育と教育基本法に関わる深い論議が求められています。

さらに、タウンミーティングでのさくら、やらせ問題では政府、文部科学省の法案提出者としての資格が問われています。このような重大問題をなおざりにして採決を急ぐことは断じて許されません。

 日本弁護士連合会の会長が法案の強行成立に反対する声明を発表し、東京大学の基礎学力開発センターが全国の公立小中学校長に行ったアンケートで、66%が改正に反対と答えています。

 このように法律家や教育研究者がこぞって反対し、教育現場の責任者や国民の多数が疑問を持ち、成立を急ぐべきではないとする改正法案を数の力で押し切ることは教育の憲法に対して最もふさわしくないやり方です。

 改正案の重大な問題点は3つあります。

 第一は、そもそも今の教育基本法のどこが悪くて、なぜ変えなければならないのか、変えたら具体的に教育はどうなるのか明らかになっていません。

 第二は、愛国心など20項目もの徳目が法律で義務づけられ強制されます。人間の心、内心は法律でしばってはなりません。「なにをどのように愛するのかは」個人の精神のもっとも自由な領域にあるものであり、国家が決めることではありません。

 第三は、政府は来年度から全国一斉学力テストを実施し、その結果を公表するといいます。序列主義、競争主義を今以上にあおることによって、子供たちは一層心に傷を負い、教職員や父母のストレスは、いっそう強まり、いじめなどの諸問題は、より深刻化するおそれがあります。

 以上の理由から、教育基本法を守る決議を上げ、政府への要請を求めた本請願は採択すべきことを主張するものです。


 第129号議案「特別職の職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例」


 最後に、第129号議案「特別職の職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例」についてです。

 本条例は、特別職報酬等審議会の答申に基づき、知事などの特別職の職員の退職手当を引き下げるものです。
 審議会は、2005年度以降に特別職手当を見直しした、9府県の状況などや県財政の状況、知事の職責などを考慮した上で、引き下げ答申を行いました。私は、この答申に基づく改正条例案には賛成するものであります。

 本議会の11月定例会の初日の11月27日、知事は今期限りでの引退を表明されました。
5期20年間の県政のかじ取りでありました。知事は県財政は悪化したものの、社会資本整備は充実させた、今後は、この社会資本を活用した島根づくりをして欲しいと、県民にアピールされました。

しかし、この社会資本整備とは、国の景気対策に乗せられた不要不急であり、過大な需要予測に基づいた大規模プロジェクトが中心ではあったではありませんか。無駄の代名詞となった中海干拓淡水化事業、売れない工業団地造成、船がほとんど出入りしない港湾整備などの大型開発であります。

 知事は、県政の舞台から引退できても、県民はこの島根から引退することも去ることさえも出来ません。1兆円を越す、県民1人あたり全国一の莫大な借金を、今後ともずっと返済し続けなければならないではありませんか。

 私は、この点で県財政を破綻させた知事の責任は決して免れないことを指摘するものであります。

 県政の課題は、原発・プルサーマル問題、全国一の高齢者県として高齢者のくらしと福祉を守る問題など地方自治法に規定する県民の健康と安全を守る自治体としての使命など山積しています。財政再建において、そのツケと痛みを県民に押し続けるべきではありません。

今やるべきことは、例え継続中の事業であっても、過大な事業はないのか、無駄はないのかなど、県民の目線でチェック、再精査することです。そして、県民が望むくらし、福祉、教育最優先の県政へと転換すべきであることを改めて強調し、討論を終わります
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画