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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2006 年 11 月定例会 平成 17 年度決算認定に対する討論

2006-12-15 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

 認定第1号議案「平成17年度島根県病院事業会計決算の認定について」、認定第2号議案から認定第5号議案までの電気事業、工業用水道事業、水道事業、宅地造成事業の島根県公営企業会計決算の認定、認定第6号議案「平成17年度決算の認定について」の委員長報告に対して反対する討論を行います。

 予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡であると言われております。

議会における決算の認定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけでなく、次年度の予算編成に資するために、広範な角度から住民の立場で行政評価を検証するものであると理解いたしております。この立場から、以下討論を行います。


平成17年度島根県病院事業会計決算の認定について


 まず、認定第1号議案「平成17年度島根県病院事業会計決算の認定について」であります。
 県立中央病院における高額療養費受療委任払制度の適用については、この間一定の改善が見られますが、まだまだ不十分です。
また、本年の決算特別委員会でも11月定例会の一問一答質問でも指摘しましたけれども、保険証未持参の人に対して、窓口負担が全額自己負担となっており1点15.75円計算であります。そして、その医療費精算期間は、1ヶ月であったという実態は、あまりにも県民の立場からすればひどすぎます。診療報酬請求の時効は3年であります。

取れ取れ主義の経営効率化最優先の対応であり、およそ県立病院としてはお粗末です。1ヶ月しか精算期間を認めないという立場は、「必要な医療はすべて保険で行う」という公的医療保険の原則を崩すものであります。中四国の県立病院は、未持参の人への点数計算はすべて1点10円計算であり、精算期間は無期限であります。

 診療報酬点数の条例改正をはじめ、県民に対する公正な医療サービスの提供と心のふれ合いのある患者サイドの医療実践を強く求めるものです。島根県立中央病院が、現代の赤ひげ的病院として発展することを心から願うものであります。


平成17年度島根県公営企業会計決算について


 島根県公営企業会計には、一つの大きな特徴があります。それは、県内河川に多目的ダムを建設し、水力発電を開発し、上水道、工業用水道事業を行い、その工業用水により工業団地を造成する、そして、これらすべての事業を島根県公営企業として行うことを基本とする点であります。

そのため、県民の立場からの弊害が生まれています。

それは、第1に、公共投資と河川総合開発が大企業や誘致企業の電気・工業用水確保を主軸とした事業となっており、上水道・農業用水利などの民生が後景に追いやられていることであります。

第2に、過大な需要予測のため、多額な投資に見合う需要が期待できず、結局、損失負担が県民に転嫁されていることであります。

二、三例を申し上げます。

 その1つは、工業用水道事業における建設仮勘定計上であります。工業用水道事業においては、八戸川工業用水道事業に18億4千万円余りの建設仮勘定、神戸川工業用水道事業に51億2千万円余りの建設仮勘定、これら二つの事業において約70億円もの建設仮勘定の計上です。

工業用水道事業における固定資産総額は131億8千万円余り、そのうち建設仮勘定は約70億円の計上であり、固定資産に占める割合が約53%を占めます。即ち、工業用水道事業においては5割の資産稼動でしかないということであります。

 その2つは、江の川水道事業において過大な水需要予測で、使わない水まで住民負担になっており、総務省でさえ県営水道事業は黒字なのに地元市が赤字で苦しむとは矛盾していると指摘されています。

 その3つは、今後矛盾と課題が一層表面化する、斐伊川水道建設事業であります。

斐伊川水道建設事業の問題点は、過大な水需要予測と参画市町村と県の協議不足にあります。

本事業の需要予測は、人口の増加予測と1人当たりの最大給水量の増加予測に基づき算定されています。企業局は、20年間で4%の人口増加を予測し、1人当たり最大給水量は、16.6%増加するという、実態とは、全く乖離した予測数値に固執しています。

水需要予測においては、需要予測を誤り、高い水道料を住民に押しつけている江の川水道事業の二の舞にならないことこそ、県政の教訓です。この点で、水需要を決して誤ってはならないことを強く指摘します。


平成17年度決算一般会計及び特別会計の認定について


 次に、認定第6号議案「平成17年度決算一般会計及び特別会計の認定について」であります。

 平成17年度は、中期財政改革基本方針や島根県総合計画をもとに歳出全般にわたる聖域なき見直しが強行されました。

その一方、県民合意のない芸文センター、古代出雲歴史博物館に総額70億円余り、乗客実績の3倍を越す過大な需要予測をたて、来年度以降ジェット機就航の見込みが厳しい隠岐空港整備事業には48億円を投入するなどの、大型公共事業は強行されました。

 民生分野では、障害者の命綱である福祉医療費助成事業は、圧倒的多数の県民の反対を押し切って1割負担が実施されました。生活バス路線確保対策資金は1億円を減額、私立学校補助金や社会福祉施設整備資金元利補助金の削減など、県民のくらしや命に直結する1億、2億のお金を削りました。

 福祉医療費助成事業の負担増は、障害者や母子家庭、圧倒的多数の県民に島根県政への不信と失望をさらに大きく広げることになりました。県民が求めているのは、くらし、福祉、教育を充実させ、県民の命を大切にした予算であります。

 この県民の願いと平成17年度決算を鑑みた時、この県民の願いに逆らい、この願いと乖離した財政運営であった平成17年度決算は、不認定とせざるを得ません。


各論


 各論的に8点申し上げます。

 第1に、中期財政改革基本方針に基づき、行政の効率化、スリム化と称し、給与カットや手当の見直し、職員定員削減、県立機関の統廃合など痛みを県職員や県民に押しつけていることです。

 第2に、歳出の効率化と質的改善の名のもとに、事務事業や補助金を削減し、県民サービスを大きく低下させ、市町村に負担を転嫁していることです。

 第3に、予算配分がいびつになっていることです。例えば、環境生活部の予算は、県全体の年間予算のたった1%でしかありません。しかし、その1%の予算のうち、その大半が芸文センターの整備事業費と維持管理費で消えました。社会資本整備というハコモノ建設は、必ず公債費負担と維持管理費が生じ、後年度負担がついてまわります。

今後とも芸文センターの多大な維持管理費がかかるため、NPO、男女共同参画、消費者行政、ラムサール条約締結に伴う事業、地球温暖化対策、廃棄物行政などの予算が圧迫され続けていくのであります。

 第4に、県内で、国民健康保険証が取り上げられ、資格証明書発行世帯が1500世帯を超えており、また、特別養護老人ホームの入所待機者数が6000人を超えながら、その解決策のための予算措置が講じられておりません。
全国一の高齢者県としての社会福祉、社会保障予算があまりにも貧困であります。

 第5に、城山北公園線拡幅事業のように、大多数の関係住民が反対している無駄な大型公共事業に対し、県民の声を真摯に聞こうとせず、一度決めた事業は、何が何でも推進し、財政危機といいながらも、今後も莫大な県費を注ぎ込もうとしていることです。

また、本県の建設投資比率が公共が約7割、民間が約3割という状況にある中で、公共投資を減らせば民間投資を増やす以外、建設業者の経営が守れないのに、その対策が不十分です。住宅リフォーム助成事業など民需刺激の施策をとるなどして地元建設業者の営業と生活を守る対策が急務であります。

 第6に、農業においては、国がすすめる大規模農家支援一辺倒の政策に追随し、農林水産業予算において、その約6割が、基盤整備などの公共事業に充てられており、中山間地域や生産農家が望んでいる農産物の価格補償予算が不十分であります。

第7に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては、事業を継続し、同和教育をすべての教育の基底に据えるというように、同和教育を特殊化・別格化する立場に立っています。 
             
また、民間の同和団体に対する突出した補助金支出など、不公正を生み出しています。

 第8に、相次ぐ島根原発のトラブル、事故が起こり、原発の安全性に対する県民の不安が高まっているのに、その対処方法は国任せ、事業者である中国電力任せであるなど、原子力発電推進に無批判、迎合であります。

 最後に、今回の審査に当たって、委員会、分科会審査の過程で50項目程度の質疑ならびに資料を求めました。この点ですべての関係者の皆さんからいずれも誠意ある回答、ならびに資料の提供を頂きましたことに対して、心から感謝を申し上げ、私の討論を終わります。

以上でございます。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画