2007 年 2 月定例会 知事提出議案、請願に対する反対討論
2007-03-02 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
予算案6件、条例案8件、一般事件案3件、請願31件について委員長報告に反対する討論を行います。
以下、その主な理由を申し述べます。
第1号議案「平成19年度島根県一般会計予算
まず、第1号議案「平成19年度島根県一般会計予算」についてであります。
国政では、大企業や大資産家には減税の大盤振る舞いをしながら、国民には負担増や福祉の切り捨てなど、際限ない痛みを押し付けています。こんな時こそ、地方自治法に定められている「住民の福祉の増進を図る」という地方自治体の役割が求められています。
しかるに、島根県政は総務省が示した「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」に基づいて2009年度までの集中改革プランをつくって実施に踏み出しています。
そのプランの中身としては、地方行革の名のもとに住民サービスの切り下げや住民負担増、職員削減、民間委託等の推進、事務事業の縮小など県民にさらなる痛みを押し付けるものであります。
今、貧困と格差が大きく広がる中で、県民は政治に対してくらしと福祉の充実を切に願っています。この間、わが党が実施した県政アンケートによれば、県政に求める県民の願いとして、第1位に「医療、介護、税などの負担軽減」、第2位に「高齢者などへの福祉の充実」、第3位に「子育て支援と教育の充実」、第4位に「安定的な雇用と仕事の確保」でありました。
県民が県政に求めていることは、県民合意のない不要不急の大型公共事業の見直し、県民合意がなく過大な需要予測に基づく事業の総点検など無駄な歳出の抑制であり、くらし、福祉、教育施策を充実しながら財政再建を果たすことであります。
この県民の願いと新年度予算を鑑みた時、この県民の願いに逆らい、この願いと乖離した来年度予算には反対であります。
第12号議案「平成19年度島根県病院事業会計予算」
第13号議案「平成19年度島根県電気事業会計予算」
第14号議案「平成19年度島根県工業用水道事業会計予算」
第15号議案「平成19年度島根県水道事業会計予算」
第16号議案「平成19年度島根県宅地造成事業会計予算」
次に第12号議案「平成19年度島根県病院事業会計予算」、第13号議案「平成19年度島根県電気事業会計予算」、第14号議案「平成19年度島根県工業用水道事業会計予算」、第15号議案「平成19年度島根県水道事業会計予算」、第16号議案「平成19年度島根県宅地造成事業会計予算」についてであります。
病院事業におけるPFI事業は、県民サービスの後退が危惧されます。
また、地方公営企業法の全部適用によって、看護師などの労働強化、過重労働による医療ミスやサービス低下などが心配され、病院経営の採算性のみが強調されます。そして、一般会計からの繰入金が削減されることで、公共性の高い高度・専門・特殊医療の提供など不採算部門を担っている公的病院の役割が低下することも危惧されます。
地方公営企業会計予算については、供給見込みのたたない八戸川工業用水道事業、神戸川工業用水道事業、使わない水まで住民負担になっている江の川水道事業、水需要予測の見直しが求められる斐伊川水道建設事業など住民負担軽減や事業の見直しによる適正化が措置されていない予算には賛同できません。
第29号議案「職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例」
第30号議案「島根県職員定数条例の一部を改正する条例」
第31号議案「島根県企業局職員定数条例」
第32号議案「島根県病院局職員定数条例」
第33号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」
次に、第29号議案「職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例」、第30号議案「島根県職員定数条例の一部を改正する条例」、第31号議案「島根県企業局職員定数条例」、第32号議案「島根県病院局職員定数条例」、第33号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてであります。
これらの諸議案は、集中改革プランに基づいて、総人件費の抑制のために職員給与のカット延長や職員定員の削減を計るものであります。
職員給与カット延長の上に職員定員削減計画という総人件費抑制路線の強化は、職員の士気の低下や組織の活性化、行政能力の低下につながりかねず、引いては県民サービスの低下が危惧されます。
よって、これら条例案には反対であります。
第36号議案「使用料及び手数料の額の改定等に関する条例」
次に、第36号議案「使用料及び手数料の額の改定等に関する条例」についてであります。
県立中央病院において保険証未持参者に対して、1点15.75円の診療報酬点数を1点10円に是正することは、当然のことであり、賛成であります。
しかし、産業技術センター手数料や自動車運転免許手数料の引き上げ、島根県立農業大学校や高等技術校の授業料の値上げなどは、さらなる県民への痛みを拡大することとなります。
よって本条例案には反対であります。
第51号議案「島根県立高等学校等条例の一部を改正する条例」
請願第89号「県立高等学校の授業料値上げの中止を求める請願」
次に、第51号議案「島根県立高等学校等条例の一部を改正する条例」、並びに請願第89号「県立高等学校の授業料値上げの中止を求める請願」についてであります。
県立学校の授業料滞納者数は、平成15年度5月末時点で141人、平成16年度5月末時点で153人、平成17年度5月末時点で179人と年々増加傾向にあります。県立学校の授業料は、私立学校の授業料に連動し、教育の機会均等、今日の不況下のもと値上げすべきではありません。
あわせて、授業料値上げの中止を求めた請願第89号は、不採択ではなく採択すべきことを主張いたします。
第53号議案「島根県営住宅条例の一部を改正する条例」
次に、第53号議案「島根県営住宅条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、県営住宅入居者が入居者駐車場の使用料を3ヶ月以上滞納した時、入居者駐車場の使用許可を取り消すものであります。
今日の格差と貧困の増大という社会状況の中で使用許可における公平性確保の名のもとに、期限を切って機械的に使用許可を取り消すという措置は容認できません。
第54号議案「公立大学法人島根県立大学中期目標について」
次に、第54号議案「公立大学法人島根県立大学中期目標について」であります。本議案は県知事が6年間において達成すべき業務運営に関する目標を定め、公立大学法人島根大学に指示するものであります。
公立大学は、住民の教育要求にこたえ、地域に貢献するために、地方自治体が設置し、経費を負担しています。しかし、法人化により経費負担は法人の責任となり様々な問題点が指摘されます。
県知事が大学の目標を定め、その達成実績を行政機関におく法人評価委員会が評価するなど、教育研究が首長の意向に左右されるようになり、大学の自主性が損なわれます。
よって本議案には反対であります。
第58号議案、第59号議案「公の施設の指定管理者の指定について」
次に、第58号議案、ならびに第59号議案「公の施設の指定管理者の指定について」であります。
これらの議案は、島根県立青少年の家、島根県立古墳の丘古曽志公園の管理方法として指定管理者を指定するものであります。
公の施設を公共性を持たず、営利を目的とする民間企業に代行させて、果たして自治体の責任が果たせるのか、また、公共性の担保、住民サービスが維持できるのかなどの危惧がございます。
よってこれら議案には反対であります。
請願審査結果について
次に請願についてであります。
請願とは、憲法第16条に規定された国民の権利として、県民の声を県政に反映させるための大切な制度です。
本議会は、任期中最後の議会であり、徹底した審査を行った上で、審査結果の結論を出すことは、議会としての責務であります。
この立場から討論いたします。
まず、請願第9号は福祉医療費助成制度の拡大を求めるものです。全国の多くの県において、福祉医療対象者は障害等級3級以上となっています。現在本県の対象は2級までであります。障害等級の拡大を求めた本請願は、審査未了ではなく、採択を求めます。
次に、請願第13号はALS患者の施設の看護師補充の請願、請願第75号は、医師・看護師等の増員を求めた請願です。県内の療護施設において24時間対応の看護師配置が充足されている施設はありません。看護師補充による闘病支援こそALS患者さんの切なる願いです。また、医療事故をなくし安全、安心でゆきとどいた医療、看護を実現するために医師・看護師の増員は県民の願いです。よって、これら請願は審査未了ではなく、採択すべきです。
次に、請願第14号認可外保育所の支援についてです。認可外保育所は、多様な保育を実践するなど大きな役割を果たしており、県の支援が強く求められます。よって、本請願は審査未了ではなく、採択すべきです。
次に、請願第15号、第16号、第17号、第24号、第26号、第30号、第37号、第47号、第48号、第66号、第68号、第82号、第83号の13件の請願についてであります。
これらの請願は、ゆきとどいた教育をすすめることを求めたもの、私学助成政策の拡充を求めたもの、子育て支援策の充実を求めたものなど、教育の充実を求めた請願であり、その願意は当然であります。よって、これら請願は審査未了ではなく、採択すべきです。
また、請願第59号は、歴史公民教科書に対して、自国を愛する姿勢がもっとも表れている教科書の選定を求めるものです。政府も表明している侵略と植民地支配への反省に逆行する侵略戦争肯定の教育は、許されません。よって本請願は、不採択を主張します。
次に、請願第46号、第72号、第85号の3件の請願についてであります。
これらの請願は、介護保険制度の充実を求めるもの、最低保障年金制度の創設を要望するものであります。
介護保険料の未納者は、年々増加しています。また、年金保険料を払えない人も増え続けており、今日時点で全国では無年金者が60万人を超えています。このようなもと、介護保険料の引き下げと最低保障年金制度の創設を求めた請願は、審査未了とするのではなく採択すべきであります。
一方、請願第57号は、国民年金保険料の未納者に対し、督促強化を求めております。悪質滞納者への適正なる督促は当然ですが、払いたくても払えない人への徴収強化には問題があります。よって、本請願には、賛同できません。
次に、請願第50号についてです。本請願は、専門の知識を有する調理師を調理施設の現場に配置し、管理させることを求めた請願であり、採択すべきであります。
次に、請願第51号についてです。本請願は、松江市の大手前通りの保存を求めた請願です。大手前通りには、堀尾家の家紋が刻印された石組み、米子橋の遺構や裁判所前の側溝内に残る石積みの溝など貴重な遺跡が発見されました。国際文化観光都市である松江の街づくりは、貴重な文化遺産を生かすことであります。よって本請願は、審査未了ではなく採択すべきであります。
請願第55号は、パート労働者の権利拡充と差別待遇の廃止を求めたILOの第175号、第111号条約の批准を求めたものです。請願第61号は、シベリアに強制連行重労働に対する未払い賃金の支払いを求めたものです。請願第84号は、旅館・ホテルの経営改善に向けた助成策を求めたものであります。私は、これらの請願は採択すべきと考えます。
請願第58号は、人権侵害の救済に関する法律の早期制定を求める意見書の採択を求めたものです。人権侵害の調査や救済措置を目的とした人権擁護法案は、何度も廃案になっております。それは、法案が①人権委員会を法務省の外局として設置するとしたことが、公権力からの独立性の保障がないため国連をはじめ日弁連や法曹界からの強い批判を受けたこと、②公権力による人権侵害を除外しており、もっとも必要性の高い救済が出来ないと指摘された、からであります。人権擁護という美名のもと権力や大企業などによる、国民への人権侵害を救済せず、政府からの独立性もなく国連パリ原則に反した法案構造には、賛同できません。よって本請願は、不採択とすべきであります。
次に、請願第86号は、リハビリテーション医療の日数制限撤廃の意見書採択を求めたものです。リハビリ医療は身体機能を維持し、寝たきりを防止し、その結果として医療費節減にも役立っており、リハビリ医療の打ち切り策は、医療費抑制策にも逆行する策であるといえます。国民の生命と健康、患者さんの人間としての尊厳を守るためにも本請願は審査未了ではなく、採択すべきであります。
最後に、請願第88号は、安心・安全な公務・公共サービス拡充を求める請願であります。本請願は、医療、教育、福祉、雇用などの公務・公共サービスの充実、格差社会の是正を図るために社会保障制度の充実を求めたものであります。貧困と格差が増大している今日において、請願者の願意は、当然であります。よって、本請願の採択を求めます。
以上で、討論を終わります。