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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2007 年 6 月定例会 予算案、条例案、請願に対する討論

2007-07-03 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。
 予算案1件、条例案1件、請願3件について委員長報告に反対する討論を行います。
 以下、その主な理由を申し述べます。

 第84号議案「平成19年度島根県一般会計補正予算」

 まず、第84号議案「平成19年度島根県一般会計補正予算」についてであります。

 本補正には、松江第5大橋建設促進費として15億2千万円が計上されています。
 国道485号松江第5大橋道路は、総事業費343億円の巨大プロジェクトであります。その整備目的は、地域高規格道路「境港出雲道路」の一区間として、宍道湖・中海圏域の高規格な8の字ルートをつくり、宍道湖・中海都市圏の形成を図ること、松江市街地の外環状道路を形成すること、ソフトビジネスパークなどの工業・商業拠点を結ぶこととされています。

 私は、渋滞緩和や移動時間短縮を否定するものではありませんが、今日の厳しい財政状況、今後の人口動態、環境問題、関係権利者の同意状況、外環状道路形成や工業・商業拠点を結ぶ必要・実効性の有無など総合的に勘案した際、その事業実施にあたり疑義が残ります。

 よって、本補正には反対であります。
 
 次に、本補正予算について1点要望致します。

 それは新規事業の地域資源産業活性化基金事業です。
 この事業は、25億円の基金を県商工会連合会に造成し、その運用益を利用し、地域資源を活用したビジネスに取り組む中小企業等へ助成するものであります。

 県商工会連合会は、自主的財源による自主的運営で商工貯蓄共済事業を行っていますが、この間転換社債や抵当証券、投資信託などへの資金運用で多額な損失を計上した経緯がございます。

 本事業は、基金の運用益による事業であり、損失発生はありませんが、厳格なる基金運用と適正・公平なる助成対象の決定を強く求めるものです。


 第87号議案「職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例」

 次に、第87号議案「職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。
 本条例は、雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴い、雇用保険法の失業等給付に準じている失業者の退職手当について所要の改正を行うものです。改正内容としては、雇用保険法の基本手当に相当する失業者の退職手当の受給資格要件を、勤続期間6月以上から勤続期間12月以上に変更するものであります。

 厚生労働省は、自己都合離職者の受給資格の延長理由は、「安易な給付、循環的な給付の防止」にあると説明しました。審議の中で厚労省は、受給期間1年未満の自己都合離職者が2005年度、2万2千455人いると報告しました。しかしながら、そのうち「安易な受給者」の人数を調査しておらず、データも持っていないという無責任な姿勢が法案審議の中で判明しました。

 1年未満の自己都合の離職でも、やむを得ない理由で離職する場合も少なくありません。それを安易な離職とみなし、資格要件の差別化を加える法改正は、離職した人の生活を保障するという雇用保険法の原則に反するものでありませんか。

 よって、法改正に伴う本条例の改正には反対であります。


 請願第2号「福祉医療助成制度の1割負担撤回について」
 請願第4号「県単独福祉医療費助成事業を元に戻していただくことを求める請願」

 次に、請願第2号「福祉医療助成制度の1割負担撤回について」ならびに請願第4号「県単独福祉医療費助成事業を元に戻していただくことを求める請願」についてであります。

県は、福祉医療費1割負担実施にあたって、第一に市町村や関係団体の理解がある、第二に、受給者は1割の負担が可能であると強弁してきました。しかし、この2つの1割負担の実施理由は、完全に崩壊しています。

導入時、市町村の理解があるといいながらも実際に市町村の意見を聴取したのは、当時全自治体のわずか3割でしかありませんでした。障害者団体をはじめ関係団体の中で、1割負担に賛成した団体は、一つもなかったということは、明白な事実であります。

また、最大で月額500円の負担から40200円という80倍の負担となった1割負担実施後、あまりにもひどいということで、松江市、出雲市、大田市、江津市、浜田市、雲南市、東出雲町、斐川町、邑南町の9市町で独自の上乗せ助成が実施されているではありませんか。

この面からも、1割負担撤回は当然のことであります。

また、受給者が1割負担可能であるという主張は、受給者をはじめ、病院、障害者団体の声を全く聞いておらず、現場の悲惨な実態を把握していないものと指摘せざるを得ません。

一昨年の10月に1割負担が実施されて以降、この負担増に耐えられず、負担の少ない県へと移住する人も多数生まれています。今日時点、23県で一部自己負担金はゼロであります。
また、受診抑制が発生していることもはっきりいたしております。

ある病院のケースワーカーからは、月々の医療費請求額が増え、未集金が増大していると報告されており、受給者からは支払いが困難なため入院すらできないと、涙ながらの訴えも寄せられています。

県は、制度の持続的安定といいますが、障害者においては安定どころか命と生活が破壊されかねない非常事態となっています。関係者からは、受診動向においては、件数による把握ではなく、1つ1つの実情把握こそ行うべきとの訴えが出されています。

県政において、今もなお県民合意のない大型公共事業、需要予測を見誤った事業が多数継続されています。これらを見直しをして、障害者の命を守る予算をつくり出すべきであります。

請願者は、その請願趣旨において「人の痛みがわかる、人に優しい島根県であって欲しいと心から願っています」と、述べています。

この切実なる願意は、採択すべきであります。
よって、これら請願は不採択ではなく採択すべきことを主張します。


 請願第3号「最低賃金法の抜本改正と均等待遇の実現を求める請願」

 最後に、請願第3号「最低賃金法の抜本改正と均等待遇の実現を求める請願」についてであります。
 島根県の地域別最低賃金は時給614円にすぎず、フルタイムで働いても月収10万7千円程度で生活保護費にも届きません。

 とりわけ、今の20代から30代の青年層では、「暮らしていけない」「結婚することができない」「子どもを産み、育てることもできない」という声がたくさん出されています。

 働いても働いても貧困から抜け出せない現状を放置することは、消費の低迷や少子化の進行に直結し、地域経済の低迷や、企業の技術力の喪失、家庭の崩壊、社会保障の崩壊を招き、日本と島根の未来に暗い影を落とすことになります。

 日本の最低賃金は、労働者の平均的給与の32%と世界でも最低水準であります。EUでは、最低賃金を労働者の平均賃金の半分まで引き上げることを目標にしています。

 憲法第25条が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することは、国の責任であります。

 低額の最低賃金を抜本的に引き上げ、地域別の不合理な賃金格差を是正し、それをもって、中小企業の下請単価の底支えとし、地域経済の回復と持続的発展をはかることが重要であります。

 よって、本請願は、不採択ではなく採択すべきことを主張します。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画