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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2007 年 11 月定例会 平成 18 年度決算認定に対する討論

2007-12-14 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

 認定第1号議案「平成18年度島根県病院事業会計決算の認定について」、認定第2号議案から第5号議案までの電気事業、工業用水道事業、水道事業、宅地造成事業の島根県公営企業会計決算の認定、認定第6号議案「平成18年度決算の一般会計及び特別会計の決算認定」の6件について、認定とした委員長報告に対し、反対の討論を行います。

 予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡であると言われています。
議会における決算確定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度の予算編成に資するため広範な角度から住民の立場で行政評価を検証するものであると理解いたしております。

 この立場から、以下、討論を致します。

平成18年度島根県病院事業会計決算の認定について

 まず、認定第1号議案「平成18年度島根県病院事業会計決算の認定について」であります。

 この間、本会議で何度も指摘しましたように県立中央病院には、2つの異常がありました。
1つは、保険証未持参者に対して、通常の1.5倍の医療費を請求していたこと。2つは、未持参者は、1ヶ月以内に医療費を精算しなければ、その後の精算に応じないというものでした。これらの異常は、診療報酬点数条例を改正するとともに、精算期間を診療報酬時効期間の3年へと延長するなどの遡及適用手続きによって正されてきましたが、未だ未精算者が残されています。
また差額ベッドを撤収してはならないとする厚生労働省通知に反する事例もございました。

 また本年7月には、養育医療の対象になる患者に対して、その医療費助成制度の内容を説明せず160万円を請求し、支払い誓約書まで書かせるという酷く冷たい事例も発覚致しました。

 これら一連の不手際は、経営効率化最優先により、患者中心の医療実践、患者主人公の病院運営の精神が希薄となっている表れであります。

 経営健全化の大前提は、患者である一人一人の県民を大切にし、県民の信頼を築くことにあります。

 病院経営において、県民に対する公正な医療サービスの提供と患者さん中心の医療サービスを提供すると宣言した県立中央病院憲章に基づく医療サービス提供を強く求めるものであります。

平成18年度島根県公営企業会計決算について

 次に、認定第2号議案から第5号議案までの公営企業会計決算についてであります。

 島根県公営企業会計は、一つの大きな特徴がございます。それは、県内河川に多目的ダムを建設し、水力発電を開発し、上水道、工業用水道事業を行い、その工業用水によって工業団地を造成する、そして、これらすべての事業を島根県公営企業として行うこと基本としていることであります。

 この事業形態は、県民の立場からの弊害が生まれています。

 それは、第一に、公共投資と河川総合開発が大企業や誘致企業の電気、工業用水確保を主軸とした事業となっており、上水道、農業用水利などの民生が後景に追いやられていることであります。

 第二に、過大な需要予測のため多額な投資に見合う需要が期待できず、結局、損失負担が県民に転嫁されていることであります。
 二、三の例を申し上げます。

 その一つは、宅地造成事業会計です。旭拠点工業団地は、企業誘致を目的として造成されました。しかし、企業進出はほとんどなく、矯正施設として法務省に売却するという結末になりました。即ち、企業誘致という当初の事業目的は達成できなかったのであります。財政的には、工業団地造成事業費と国への売却収入の差益損は、16億円にも達し、そのお金は、一般会計からの拠出で処理されたのであります。

 その二つは、水道事業会計です。江の川水道事業において、過大なる水需要予測で、使わない水まで江津市民の負担となっています。江津市の水道料金は10#13221;あたり1ヶ月2,473円もの高料金であります。島根県内の10#13221;あたり平均金額は、1ヶ月1,571円であり、出雲市の10#13221;あたり1,222円と比較すると2倍強の料金となっています。
 
 総務省は、島根県の県営水道事業が黒字でありながら江津市が赤字で苦しむのは矛盾していると指摘しています。この点からも企業局として、江の川水道の料金引き下げに向けた軽減措置を緊急に論ずるべきではありませんか。

 また、現在継続事業中の斐伊川水道事業は、江の川水道事業の二の舞になる恐れがあります。企業局は、未だに今後20年間で人口が4%増加し、一人あたりの最大給水量が16.6%増加するとの需要予測に固執し、県民の失笑を買っています。

 事業推進の是非は別としても、人口予測、需要予測数値の誤りを認め、真摯に見直す立場に立つべきことを厳しく指摘しておきます。

 その三つは、工業用水道事業です。八戸川工業用水道事業には18億5,000万円余りの建設仮勘定が計上、神戸川工業用水道事業には51億8,000万円余りの建設仮勘定の計上であります。即ち、これら2つの事業において、70億円もの建設仮勘定が計上されています。工業用水道事業における固定資産総額は、約132億円であり、その資産総額の50%強が建設仮勘定であり、長きにわたって未完成工事状況、資産未稼働状況は、あまりにも異常であります。この点での早急なる改善策立案は急務であることを強調するものであります。

平成18年度一般会計及び特別会計の認定について

 次に、認定第6号議案「平成18年度決算の一般会計及び特別会計の決算認定について」であります。

 平成18年度予算は、職員給与削減や事務事業の見直し、市町村への県単補助金の見直し、重度心身障害者の医療費助成削減など福祉、教育の聖域としない歳出削減を揚げた中期財政改革基本方針の最終年度予算でありました。

 財政分析指標を見ると、財政力指数は、全国47番目の最下位であり、経常収支比率は94%を超え、財政構造の硬直化が一段とすすんでいます。公債費負担率は、31.4%であり、対前年度比0.4ポイントの悪化で全国47番目であり、財政硬直化の大きな原因となっています。起債制限比率は警戒ラインとされる15%を超える16.5%、実質公債費比率も前年度比0.2ポイント悪化の18.1%となり、地方債発行にあたって国の許可が必要となりました。

 これら財政悪化の原因は、この間の身の丈を超えた公共投資にあったことは明白であり、財政再建にあたって、まずすべきことは、無駄な事業、県民合意のない事業、需要予測を見誤った事業について県民の目線でメスを入れ、徹底した精査を行うことではありませんか。

 このことなしに、県民に痛みを押しつける県政運営では、県民の県政への信頼は絶対に生まれません。

 県民の県政への願いは、医療、福祉の充実であります。この願いを鑑みた時、この県民の願いに逆らい、この願いと乖離した財政運営であった平成18年度決算は不認定とせざるを得えないのであります。

各論

 各論的に8点申し上げます。
 
 第一に、中期財政改革基本方針に基づき、行政の効率化、スリム化と称し、県職員給与カットや手当の見直し、削減、職員定員削減、県立機関の統廃合など県職員や県民に痛みを押しつけたことです。

 第二に、歳出の効率化と質的改善の名のもとに、事務事業や補助金を削減し、県民サービスを大きく低下させ、市町村に負担を転嫁したことです。

 第三に、県内で国民健康保険滞納世帯が1万2千世帯を超え、その制裁措置として命綱である保険証取り上げ世帯は1,600世帯を超えています。介護保険料の未納者数は3,000人を超え、特別養護老人ホームの入所待機者数が5,500人を越えるなど医療や介護サービスから排除される人が増えているのに、その解決のための予算措置が不十分であります。全国一の高齢者県としての社会福祉、社会保障予算があまりにも貧困であります。

 第四に、大手前道路拡幅事業のように、そこに住む関係住民が反対し、国際文化観光都市である松江の城下町を壊し、交通渋滞解消との事業目的は完全に破綻しているにもかかわらず、一度決めた事業は何が何でも推進する行政姿勢です。県財政危機と言いながら、県民の理解と納得が得られず、県民に説明のつかない道理なき事業の強行は、県政への失望を広げるだけであります。

 第五に、農業においては、国が進める大規模農家支援一辺倒の政策、品目的横断対策では、農家の不安と苦悩は広がるばかりです。平成18年度の農林水産事業費は約461億円でありました。そのうち、県独自の農産物価格補償は、野菜価格安定事業しかなく、その価格補償額はたったの約2,058万円でしかありません。即ち、農林水産事業費に占める県独自の農産物価格補償費は、わずか0.04%しかないのであります。中山間地域や生産農家が望む価格保障予算こそ農業予算の柱とすべきであります。農家の経営を応援し、自給率向上と安全な食料が保障される島根農業こそ求められています。

 第六に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては事業を継続し、同和教育をすべての教育の基底に据えるというように同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。また民間の同和団体に対する突出した補助金の支出など、逆に不公正を生み出しています。

 第七に、教育においては、子供たちを競争に追いたて、ふるいわけする学力テストは中止すべきであります。貧困と格差から子供と教育を守り、少人数学級の実現ですべての子供がわかるまで丁寧に教えられる教育環境をめざすべきであります。

 第八に、相次ぐ島根原発のトラブル、中電のデータ改ざんが発生し、原発の安全性に対する県民の不安が高まっているのに、その対処方法は、国任せ、事業者である中国電力任せであるなど原子力発電・プルサーマル推進に無批判、迎合であります。日本列島が地震の活動期に入った今こそ、県として活断層調査を実施すべきであります。

 最後に、今回の審査にあたりまして、委員会におきましても、また、分科会の審査におきましても、その過程で50項目程度の質疑、そして資料提供を求めました。

 これらの点ですべての執行部の皆さんから誠意あるご回答、資料の提供を頂きましたことに対して心からの感謝を申し上げるものであります。
 
 以上で決算認定に対しましての討論を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画