2008 年 6 月定例会 知事提出議案、議員提出議案、請願に対する討論
2008-07-15 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
条例案1件、一般事件案1件、議員提出議案1件、請願1件について委員長報告に反対する討論を行います。
第91号議案「島根県県税条例の一部を改正する条例」
まず、第91号議案「島根県県税条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例案は、税制の抜本的な改革において、偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の暫定措置として、「地方法人特別税等に関する暫定措置法」が制定され、法人事業税の税率が引き下げられたことにより、島根県県税条例の所要の改正を行うものであります。
これは、都道府県の基幹税である法人事業税の税率を引き下げ、その相当分を国税である地方法人特別税とし、その同額を地方法人特別譲与税として、人口と従業者を基準に再配分する仕組みを新たにつくったものであります。この措置は、都道府県の税収格差の是正が導入の目的ですが、地方税を国税に変えて再配分することは税源委譲の流れに逆行するものと言わざるをえません。
確かに、この措置により島根県は法人事業税の税率引き下げにより84億円の減収となり、一方、地方法人特別譲与税の創設により147億円の増収となり、差し引きでは63億円の増収となります。
しかし、法人事業税を地方法人特別税・地方法人特別譲与税にという暫定措置だけでは、地方全体の財源は増えません。
不交付団体の東京都と愛知県が税収減になる分だけ地方財源が減り、その分国は経費節減となります。この部分が地方再生対策費の財源とされています。。
即ち、東京都と愛知県では税収が減り、交付団体の税収が増えるので、財政指標としての財政力格差の縮小になります。しかしながら、地方全体で見たとき、税収増になる道府県も、交付税の減額を伴うため、財政力指標や自主財源比率は改善されるとしても、一般財源の総額は基本的に増えません。
ここで看過できない問題は、この改正が消費税増税への橋渡しだということであります。
地方財政計画の説明では、「税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の暫定措置」と位置づけられていることであります。今回の暫定措置の2兆6千億円は、消費税1%に相当するものであり、将来の消費税率引き上げにむけた橋渡しとなる危険性があります。
以上の立場から、本条例案には反対であります。
第98号議案「契約の締結について」
次に、第98号議案の契約の締結についてです。この契約は、松江第5大橋道路関連事業の契約の締結であります。一般国道485号松江第五大橋道路は、総事業費343億円の巨大プロジェクトであります。
その整備目的は、地域高規格道路境港出雲道路の1区間として、宍道湖、中海都市圏の形成を図ること、松江市街地の外環状道路を形成すること、ソフトビジネスパークなどの工業、商業拠点を結ぶこととされております。私は渋滞の緩和や移動時間の短縮を否定するものではありませんが、今日の厳しい財政状況、今後の人口動態、環境問題、関係権利者の同意状況、外環状道路形成や工業、商業拠点を結ぶ必要性や実効性の有無など総合的に勘案した際、その事業実施に当たって疑義が残ります。
よって、本契約締結には反対であります。
議員提出議案第4号「2016年オリンピック競技大会並びにパラリンピック競技大会の東京招致に関する決議」
次に、議員提出議案第4号「2016年オリンピック競技大会並びにパラリンピック競技大会の東京招致に関する決議についてであります。
私は、世界の人々がスポーツを通じて交流する平和の祭典としてのオリンピックそのものに反対するものではありません。
しかし、オリンピック開催が開催地の住民に支持されず、また、巨大開発の口実とされたり、環境破壊につながる計画となるのであれば招致に賛成できないのであります。
反対理由の第1は、東京都民が招致活動の推進に合意していません。東京都民を対象にした世論調査では招致計画の中止、再検討を求める意見が6割を超えています。
第2に、都議会では5つの会派が招致決議に反対しています。そういうもとで、他の議会が、招致決議をあげることは不適切ではありませんか。
第3に、オリンピック招致経費は、当初予算の3倍にあたる150億円に膨れ上がり、オリンピック招致をテコにした大型幹線道路や大型箱物などの投資は、9兆円規模にのぼるということであります。都民からは、今すべきことはオリンピックへの莫大な投資ではなく、物価高騰から都民の生活を守り、高齢者や子育て世代、中小企業への支援こそ都政が力を入れるべきとの声が噴出しています。
第4に、オリンピックのメディアセンターをつくるために、築地市場を土壌汚染が重大問題となっている東京ガス工場跡地の江東区豊洲に無理やり移転させようとしていることは許されません。
移転予定地の土壌からは、発がん性物質のベンゼンが環境基準の4万3千倍、猛毒のシアン化合物が860倍、地下水から1万倍のベンゼンが検出されるなど高濃度の有害物質が検出されています。7月12日には、水産仲卸業者らが2000人参加で移転反対の集会とデモを行いました。
以上の理由から、このように様々な問題がある招致について、他の議会が全面的に支援、協力するという無責任な決議はできないと考えます。
まずすべきことは、都議会で徹底した民主的な議論をつくし、住民と東京都民の合意形成をすることであります。
よって、本決議案には賛成できません。
請願第23号「最低賃金法改正を踏まえた時間給1,000円以上の実現と、全国一最律低賃金制の確立を求める請願」
最後に、請願第23号「最低賃金法改正を踏まえた時間給1,000円以上の実現と、全国一律再低賃金制の確立を求める請願」についてであります。
貧困と格差の拡大が日本社会を覆う深刻な問題になっています。先の国会で、「最低賃金法の一部を改正する法律」が成立し、最低賃金は「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮」して決定することになりました。今日、連合、全労連などのすべての労働団体と野党は、「時給1,000円」で一致しています。
今の最低賃金額では年間2千時間働いたとしても、税込み120万円から140万円にしかならず、生活保護を下回ってしまいます。改正法を踏まえれば、最低でも年収200万円水準にあたる時給1,000円が必要であります。
最低賃金は、労働者とその家族が健康で文化的な最低限度の生活を営むための必要な生計費を満たすものでなければなりません。
また、中小企業における最低賃金制の円滑な実施のために、大企業による下請単価の買い叩きを規制するとともに、最低賃金を保障できる下請単価を実現すべきであります。そして、規制緩和政策の見直しを行い、中小企業への優遇税制や特別融資、賃金助成などの助成策を抜本的に強化すべきです。さらに、国や自治体が発注する事業について、それを請け負う企業が労働条件を確保することを義務づける公契約法・条例を制定すべきであります。
以上の立場から本請願は不採択ではなく、採択を求めます。
以上で討論を終わります。