2008 年 11 月定例会 平成 19 年度決算認定に対する討論
2008-12-16 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
認定第1号議案「平成19年度島根県病院事業会計決算の認定について」、認定第2号議案から第5号議案までの電気事業、工業用水道事業、水道事業、宅地造成事業の島根県公営企業会計決算の認定、認定第6号議案「平成19年度決算の一般会計及び特別会計の決算認定」の6件について、認定とした委員長報告に対し、反対の討論を行います。
予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡であると言われています。
議会における決算確定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度の予算編成に資するため広範な角度から住民の立場で行政評価を検証するものであると理解いたしております。
この立場から、以下、討論を致します。
平成19年度一般会計及び特別会計の認定について
まず、認定第6号議案「平成19年度決算の一般会計及び特別会計の決算認定について」であります。
平成19年度予算は、総務省が示した「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」に基づいて2009年度までの集中改革プランを作り、実施に踏み出したものであります。
そのプランの中身は、地方行革の名のもとに住民サービスの切り下げや住民負担増、職員削減、民間委託等の推進、事務事業の縮小など、県民にさらなる痛みを押し付けるものでありました。
財政分析指標を見ると、財政力指数は、全国47番目の最下位であり、経常収支比率は94.9%で、前年比0.8ポンイント上昇し、財政構造の硬直化がすすんでいます。
起債制限比率は16.3%で、前年度比0.2ポイント改善しましたが、警戒ラインとされる15%を超えた状況が続いています。
実質公債費比率は17.8%で、地方債の発行に当たって、国の許可が必要となる18%を下回ったものの、全国で45番目と依然として高い状況が続いています。
地方債現在高は約1兆230億円で、前年度に比べ142億5000万円余の減となったものの、県民一人当たりで試算すると、137万円余となり、全国一高い状況であります。
これら財政悪化の原因は、この間の身の丈を超えた公共投資にあったことは明白であり、財政再建に当たって、まずすべきことは、不要不急の事業、県民合意のない事業、需要予測を見誤った事業について、県民の目線でメスを入れ、徹底した総点検を行うことではありませんか。
例えて言えば、緑資源機構が行う特定中山間保全整備事業や大手前通り拡幅事業、斐伊川水道建設事業などの見直し、精査であります。
県民の県政への願いは、医療、福祉、教育の充実であります。この県民の願いと平成19年度決算を鑑みれば、この県民の願いと乖離した平成19年度決算は不認定とせざるを得えないのであります。
各論
各論的に9点申し上げます。
第1に、集中改革プラン、財政改革方針に基づき、行政の効率化、スリム化と称し、人件費については、平成18年度までとしていた職員の給与カットの継続、職員定員の削減などの抑制策を図りました。また、県立機関の統廃合などで県職員や県民に痛みを押しつけたことです。
第2に、歳出の効率化と質的改善の名のもとに、事務事業や補助金を削減し、県民サービスを大きく低下させ、市町村に負担を転嫁したことです。
第3に、産業技術センター手数料や自動車運転免許手数料の引き上げ、県立高等学校の授業料をはじめ、県立農業大学校や高等技術校の授業料の値上げなど、各種使用料・手数料の値上げで県民に痛みがかぶせられました。
第4に、県内で国民健康保険滞納世帯が1万1千世帯を超え、その制裁措置として命綱である保険証取り上げ世帯は、約1,600世帯に及んでいます。
介護保険料の未納者数は本年4月時点で4,700人を超え、特別養護老人ホームの入所待機者数が本年7月時点では5,700人を越えるなど、医療や介護サービスから排除される人が増えているのに、その解決のための予算措置が不十分であります。全国一の高齢者県としての社会福祉、社会保障予算があまりにも貧困であります。
第5に、城山北公園線拡幅事業のように、そこに住む関係住民が反対し、国際文化観光都市である松江の城下町を壊し、交通渋滞解消との事業目的は完全に破綻しているにもかかわらず、一度決めた事業は何が何でも推進する行政姿勢です。
県財政危機と言いながら、県民の理解と納得が得られず、県民に説明のつかない道理なき事業の強行は、県政への失望を広げるだけであります。
第6に、農業においては、平成19年度農林水産業費は410億円余でありますが、そのうち県単独事業の農産物価格補償は、野菜価格安定対策事業しかなく、その決算額は1600万円余であり、予算に占める価格補償額は0.04%しかありません。
島根農業の再生、持続可能な農業経営の実現、耕作放棄地の解消に向け、価格補償の充実こそ農林水産業費の主役にすべきであります。
第7に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては、同和教育をすべての教育の基底に据えるというように同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。また民間の同和団体に対する突出した補助金の支出が、逆に不公正を生み出しております。
第8に、教育においては、子供たちを競争に追いたて、ふるいわけする学力テストは中止すべきであります。貧困と格差から子供と教育を守り、少人数学級の実現ですべての子供がわかるまで丁寧に教えられる教育環境をめざすべきであります。
第9に、原発の安全性に対する県民の不安が高まっているのに、その対処方法は、国任せ、事業者である中国電力任せであるなど、原子力発電・プルサーマル推進に無批判、迎合であります。日本列島が地震の活動期に入った今こそ、県としても活断層調査を実施するなど、安心安全の島根づくりに万全を期すべきであります。
平成19年度島根県病院事業会計決算の認定について
次に、認定第1号議案「平成19年度島根県病院事業会計決算の認定について」であります。
県立中央病院では、平成19年7月に養育医療の対象になる患者に対して、その医療費助成制度の内容を説明せず、160万円余りを請求し、退院時に支払い誓約書まで書かせるという事例が発生しました。また、差額ベッドを徴収してはならないとする厚生労働省通知に反する事例もございました。
これら一連の不手際は、経営効率化最優先により、患者中心の医療実践、患者主人公の病院運営の精神が希薄となっている表れであります。
経営健全化の大前提は、患者である一人一人の県民を大切にし、県民の信頼を築くことにあります。
病院経営において、県民に対する公正な医療サービスの提供と患者さん中心の医療サービスを提供すると宣言した県立中央病院憲章に基づく医療サービス提供を強く求めるものであります。
平成19年度島根県公営企業会計決算について
最後に、認定第2号議案から第5号議案までの公営企業会計決算についてであります。
島根県公営企業会計は、一つの大きな特徴がございます。それは、県内河川に多目的ダムを建設し、水力発電を開発し、上水道、工業用水道事業を行い、その工業用水によって工業団地を造成する、そして、これらすべての事業を島根県公営企業として行うこと基本としていることであります。
この事業形態は、県民の立場からの弊害が生まれています。
それは、第1に、公共投資と河川総合開発が大企業や誘致企業の電気、工業用水確保を主軸とした事業となっており、上水道、農業用水利などの民生が後景に追いやられていることであります。
第2に、過大な需要予測のため多額な投資に見合う需要が期待できず、結局、損失負担が県民に転嫁されていることであります。
供給見込みの立たない八戸川工業用水道事業、神戸川工業用水道事業、使わない水まで住民負担になっている江の川水道事業、水需要予測の見直しが求められる斐伊川水道建設事業など、住民負担軽減や事業の見直しによる適正化を強く求めるものであります。
最後に、今回の決算審査に当たり、全体会におきましても分科会におきましても、その過程で50項目程度の質疑そして資料提供を求めました。
これらの点ですべての執行部の皆さんから誠意あるご回答と資料の提供を頂きましたことに対して、心からの感謝を申し上げるものであります。
以上で決算認定についての討論を終わります。