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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2009 年 6 月定例会 知事提出議案、請願に対する討論

2009-07-09 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

 予算案1件、条例案4件、一般事件案1件、請願2件について委員長報告に反対する討論を行います。

 第87号議案「平成21年度島根県一般会計補正予算」

 まず、第87号議案「平成21年度島根県一般会計補正予算」についてであります。

 国の補正予算は、総額約14兆円にのぼる巨額の税金を投じながら、大企業には不要不急の公共事業など大磐振る舞いの一方、国民には一時的・限定的な生活対策に過ぎないものであり、それら借金のつけは、将来的には消費税の増税で国民に押し付けるものとなっています。

 エコカー助成や家電のエコポントを目玉にしていますが、家計の可処分所得が安心して増える見通しが立たない時に、一時的な助成で高額商品が売れたとしても、需要の先食いにしかなりません。

 エコ、エコと環境対策を強調していますが、十分使える自動車や家電製品の買い替えを奨励することが果たして本当にエコなのかとの批判も高まっています。

 今、必要な景気対策は、消費税の食料品を非課税にするなどの庶民減税をはじめ、社会保障の拡充や中小企業や農林水産業への支援、労働者派遣法の改正で雇用の安定を図るなど国民の生活基盤そのものを安定させることであります。

 国の補正予算を受けた今回の県の補正予算は、いかに今日の深刻な県民の暮らしと経済を守り、立て直すのかが問われたものでした。

 補正予算において、住宅をバリアフリー化するためのリフォーム助成を行う「しまね長寿の住まいリフォーム助成事業」の新設や「県産材利活用助成事業」、「石州瓦市場創出支援事業」を拡充する措置が盛り込まれています。また、農業関連では、「肉用子牛価格安定緊急対策事業」の拡充などの農家に対する価格保障制度の追加措置は評価するものであります。

 しかしながら、454億円余りの補正予算総額の半分に当たる224億円が個別事業ごとの目的基金に積み立てられ、そのうち、43億円余りの基金取り崩しを加えても、本年度執行分は229億円余りであり、単年度で見ると過去最大とはとても言い難いものです。

 しかも、本年度執行分の6割近い129億円は、社会基盤・生活基盤整備として公共事業に当てられています。その中でも、9割以上の118億円が道路、河川、港湾整備などに投入されており、身近で生活に密着し、地元業者への経済波及効果が大きい学校や福祉施設の改修や利用環境などの整備は、わずか11億円程度しか措置されておりません。

 また、県民生活に直結する「医療・福祉の充実」については、総額164億円計上しながらも、その半分以上は先送りされ、本年度分は75億円しか措置されておりません。「介護職員処遇改善事業」や「介護拠点等の緊急整備事業」、「安心子ども基金事業」など十分な予算措置とは言えない状況です。

 以上の立場から、補正予算案には賛同できません。


 第92号議案「島根県立高度情報化センター条例を廃止する条例」
 第94号議案「島根県立総合福祉センター条例の一部を改正する条例」
 第106号議案「島根県立産業高度化支援センター条例の一部を改正する条例」
 第107号議案「島根県立男女共同参画センター条例の一部を改正する条例」

 次に、第92号議案「島根県立高度情報化センター条例を廃止する条例」、第94号議案「島根県立総合福祉センター条例の一部を改正する条例」、第106号議案「島根県立産業高度化支援センター条例の一部を改正する条例」、第107号議案「島根県立男女共同参画センター条例の一部を改正する条例」についてであります。

 これらの条例案は、県立高度情報化センターを廃止し、また廃止に伴い、施設及び設備を他の施設に移管するものであります。

 県立高度情報化センターの廃止は、財政健全化方針に基づいた行政の効率化・スリム化による内部管理経費の縮減が目的であります。利用者や関係者からは、拙速な廃止はすべきでないとの声が出されており、センター利用者への周知、合意は不十分であります。

 よって、これら条例案には反対であります。


 第112号議案「契約の締結について」

 次に、第112号議案「一般国道485号松江第五大橋道路建設に伴う一般国道9号松江道路との連結工事及び一般国道9号との接続工事」の契約の締結についてです。

 国道485号松江第五大橋道路は、総事業費343億円の巨大プロジェクトであります。その整備目的は、地域高規格道路境港出雲道路の1区間として、宍道湖、中海都市圏の形成を図ること、松江市街の外環状道路を形成すること、ソフトビジネスパークなどの工業、商業拠点を結ぶこととされております。

 私は、渋滞緩和や移動時間の短縮を否定するものではありませんが、今日の厳しい財政状況、今後の人口動態、環境問題、関係権利者の同意状況、外環状道路形成や工業、商業拠点を結ぶ必要性や実効性の有無など総合的に勘案した際、その事業実施に当たって疑義が残ります。

 よって、本契約締結には反対であります。


 請願第7号「WTO及び日豪EPA/FTA交渉について」

 次に、請願第7号「WTO及び日豪EPA/FTA交渉について」であります。

 本請願は、WTO・FTA・EPA交渉についての情報公開を徹底し、各国の農業者や消費者、市民の声を反映することを求めるものであります。

 WTO体制は、食料輸入国や途上国の農業に打撃を与え、世界の食料危機を激化させる重大な要因となってきました。自由貿易万能のルールに農業や食料をゆだねることは、わが国の食料自給率の向上にとっても、世界の食料問題の解決にとっても、もはや許されません。

 また、わが国が諸外国と結ぶFTA・EPAは、農業については双方の国の農業生産が互いに利益になるような内容がめざされるべきです。それぞれの協定ごとに情報公開を徹底し、農業者や市民の声を反映させるべきであります。

 世界では今、食料を市場任せにすることによる害悪が明らかになり、各国の食料主権を保障する貿易ルールの確立を求める流れが広がっています。

 食料主権とは、各国が、輸出のためでなく自国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利のことです。

 今こそ各国の食料主権を尊重する立場に立って、WTO農業協定は根本から見直すべきであります。

 よって、本請願は採択することを求めるものです。


 請願第41号「最低賃金の引き上げと中小企業への対策の拡充を求める請願」

 最後に、請願第41号「最低賃金の引き上げと中小企業への対策の拡充を求める請願」についてであります。

 本請願は、国に対して、最低賃金の引き上げと中小企業への対策の拡充を求める意見書提出を求めるものであります。

 意見書案では、第一に、下請け取引適正化の推進と最低賃金の底上げで公正取引がなされる経済環境を実現すること。第二に、最低賃金の改定に当たって、早急に時給1,000円以上が達成される道筋を検討するよう、中央最低賃金審議会に諮問すること。第三に、公正競争確立のため、全国一律最低賃金制の法制化を検討すること。第四に、政府が企業に対し、労働者の雇用維持と安定雇用の創出を求めることの四項目を求めております。

 厚生労働省は、6月30日、2009年版労働経済白書を公表しました。白書は、昨年秋からの景気後退が深刻化した理由について、外需主導の成長が所得向上につながらないままだったことに加え、アメリカの金融不安で大きな経済収縮が引き起こされたと指摘しています。そして、今後の展望として、経済収縮のもとでも雇用の安定を確保する長期雇用システムが基本であるとの認識を示し、国内需要を回復させるために、所得増加と格差縮小が必要であり、若年不安定就労者の正規雇用化が労働政策の主要課題だとしています。

 今の最低賃金額では、年間2,000時間働いたとしても、税込み120万円から140万円の年収にしかならず、生活保護を下回ってしまいます。最低賃金は、生活保護水準を下回ってはならないとする改正最低賃金法の趣旨を踏まえれば、最低でも年収200万円水準にあたる時間給1,000円が必要であります。

 最低賃金は、労働者とその家族が健康で文化的な最低限度の生活を営むための必要な生計費を満たすものでなければなりません。

 また、中小企業における最低賃金制の円滑な実施のために、大企業による下請け単価の買いたたきを規制するとともに、最低賃金を保証できる下請け単価を実現すべきであります。そして、規制緩和政策の見直しを行い、中小企業への優遇税制や特別融資、賃金助成策を抜本的に強化すべきであります。

 以上の立場から、本請願は不採択ではなく、採択することを求めるものであります。

 以上で、討論を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画