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2009 年 9 月定例会 一般質問 (知事の政治姿勢について、障害者施策について、福祉医療費助成制度について、教育問題について)

2009-09-18 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。


 1.知事の政治姿勢について

【尾村利成】
 質問の第一は、知事の政治姿勢についてであります。

 先の総選挙で、国民のくらしや平和を壊してきた自民・公明政権が国民の厳しい審判を受け、歴史的大敗を喫し、自公政権は退場することとなりました。

 今回の選挙結果は、財界中心、日米軍事同盟中心という政治のゆがみに国民はノーの審判を下したのであります。

 「大企業が栄えれば国が栄える」という財界中心の政治がもたらしたものは何だったでしょうか。

 首都のど真ん中に派遣村ができ、働く人の3人に1人が派遣・パートという不安定雇用となりました。使い捨て労働が広がり、一生懸命に働いても貧困から抜け出せない、働く貧困層が1,000万人を超えました。

 社会保障予算を連続的に削減し、制度改悪の繰り返しによって、医療、年金、介護、障害者福祉などあらゆる分野で社会保障が危機に瀕し、大量の医療難民、介護難民が生まれました。国民健康保険料が支払えない人には制裁措置を課し、全国では34万世帯、島根県内では1,600世帯から命綱である保険証を取り上げました。何ら責任のない子どもからも保険証を取り上げるという、子どもの無保険問題も起きるなど、国民の生存権を脅かす政治でありました。

 あの戦禍をくぐり抜け、日本社会の恩人ともいえる75歳以上の高齢者に対し、無理やり保険料を取り、差別医療を押し付ける世界に例のない恥ずかしい後期高齢者医療制度まで持ち込みました。

 農林水産業と中小零細企業が衰退に追い込まれ、地域経済と地域社会が疲弊し、島根県の人口は減り続け、地域の活力が奪われ、過疎がいっそう進行したではありませんか。

 弱肉強食の構造改革路線の自民党政治によって、ごく一握りの大企業は巨額の利潤を上げたものの、国民のくらしから安心と希望が奪われ、貧困と格差が社会を覆い尽くしたのであります。

 このような悪政への怒りが自公政治終焉という民意、国民の怒りの一票であったことは間違いありません。

 外交においては、日米軍事同盟を絶対化し、軍事偏重を続けるやり方は、もはや通用しないことがはっきりしました。

 自民党政治は、国際貢献と言えば、自衛隊を海外に派兵することでした。しかし、アメリカでは、イラク戦争反対を掲げたオバマ大統領が誕生し、核兵器のない世界を米国の国家目標にすると宣言しました。そして、米国は広島、長崎への核兵器使用が人類的道義に関わる問題であったことを表明し、核兵器廃絶に向けた諸国民の協力を呼びかけました。

 核兵器廃絶は、本来なら唯一の被爆国である日本こそイニシアティブを発揮すべきであったはずです。

 国民は、今度の総選挙において、憲法9条を守り、生かす自主、自立の外交、核兵器のない非核の日本実現を希求したのであります。

 さて、一昨日、民主党中心の政権が誕生しました。

 国政において、政権が交代した時、今後、島根県政がどのように変化していくのか、県民は注目しています。県政が過去の政治を総括、検証し、今後いかなるスタンスで県行政を推進していくのか、問われているのであります。

 私はその際、憲法と自治体の本来の仕事は、住民のくらしと福祉、健康や安全を守ることと規定する地方自治法の精神にしっかり立つことを求めるものです。

 それでは、民主党中心の政権にあたっての日本共産党としての立場、県議としての私の立場を申し述べます。

 私ども日本共産党は、国政における民主党中心の政権のもとで、積極的に政策提言を行い、国民の利益にとって、「良いことには協力する、悪いことには反対する、問題点はただす」という建設的野党の立場を貫くものであります。

 私は、総選挙後、たくさんの県民の方からお話を伺ってきました。障害者施設、介護施設、病院、学校関係者、保育園、派遣労働者、農家、中小業者など、各界から生の声を聞いてきました。そこで出された要望、意見も紹介しながら、知事に四点伺います。

 まず、第一に、知事は総選挙で自公政権が大敗した原因はどこにあると考えているのですか。所見を伺います。国政に追随してきた県政として、この間の施策の総括、検証を行い、今後の県政運営にどう生かすのかが問われています。また、民主党中心の新しい政権をどう考え、何を期待されるのか伺います。

 第二に、民主党を中心とする連立政権の政策合意について伺います。政策合意では、後期高齢者医療制度は廃止、障害者自立支援法は廃止、労働者派遣法の抜本改正、高等教育の無償化、生活保護の母子加算復活などが掲げられています。私はこれらの政策実現を心から願うものです。これらの政策合意実現を国に求めるとともに、県としても雇用の安定、子育て、医療、介護、教育費の負担軽減と施策の充実をすすめるべきと考えますが、所見を伺います。

 各団体、県民との懇談の中でも「若者をモノ扱いにし、使い捨てする大企業は勝手すぎる。正社員が当たり前の社会を早くつくってほしい」、「命と健康に関わる医療に年齢での差別と高齢者への新たな負担を持ち込み、長年社会に貢献してきた高齢者に苦しみを強いる後期高齢者医療制度は本当に許せない。これほど人の道に反した政治はない。制度を撤廃させ、老人に温かい政治を実現してほしい」、「障害者がトイレに行く、食事をする、お風呂に入るという、生活するための最低限の支援をなぜ益というのか、希代の悪法は1日も早く廃止してほしい」という声が出されました。

 後期高齢者医療制度の状況について、県の方で調査して頂きました。その結果は驚くべきものであります。この後期高齢者医療制度は、昨年4月から始まりましたが、保険料を1年以上滞納した人に対して、保険証を取り上げることが法律上規定されています。昨年4月から今年の3月末までの平成20年度の状況を見ると、滞納者率は県内で0.5%となっています。

 この後期高齢者医療制度の県内の被保険者数は、11万9,000人余りです。その0.5%といえば、約600人となります。この法律に従えば、600人もの高齢者が命綱である保険証を取り上げられる危険な状況に陥っているのであります。また、本年9月1日時点での保険料の滞納者数は、なんと7,871人にも上っており、滞納率は6.6%という状況です。この医療制度が高齢者に耐え難い負担を押し付けていることは明白であり、高齢者の命を守るためにも、一日も早い制度の廃止は当然であり、急務であることを強調するものであります。

 第三に、島根の基幹産業である農業問題です。民主党のマニフェストには、日本の農業とコメに壊滅的打撃を加える日米FTA・自由貿易協定の交渉促進とあります。

 日米同盟に関する報告書では、「コメを含めて農業はアメリカと日本のFTAの中心になるべきである」と、アメリカはFTAのねらいがコメ自由化にあると明言しています。

 農業団体も大規模農家も農業生産法人も異口同音に「FTA締結には絶対反対」と口をそろえています。FTA締結により、コメの生産量が82%減少し、わずか12%となってしまいます。島根の基幹産業である農業を壊滅させる日米FTA交渉には入らないよう、県として国に強く求めるべきと考えますが、所見を伺います。

 第四に、高速道路の無料化と子ども手当についてです。高速道路の無料化は、税金の使い方の優先順位として適切であるのか、また、地球環境との関係で適切であるのかが問われます。国の制度として、お年寄りと子どもの医療費を無料化するには、高速道路無料化の予算と同じ1兆3,000億円で実現できます。高速道路無料化よりも福祉にこそ優先的にお金を使うべきと考えますが、所見を伺います。

 また、子ども手当については、扶養控除、配偶者控除の廃止という庶民増税と抱き合わせで提起されており、これら人的控除廃止は、生計費非課税という租税民主主義の原則に逆行するものであります。国民の一部を犠牲にして給付を拡大するやり方では、国民の理解が得られないと考えますが、所見を伺います。

 民主党政権の問題点として、官僚支配の打破とは言うものの、財界支配の打破、財界・大企業中心の政治のゆがみを正す立場がありません。それは、財源論にも現れています。民主党は、「無駄づかい」をなくすと言いながら、軍事費を削減することや大企業、大資産家への行き過ぎた減税をやめ、応分の負担を求めることが言えないという弱点があります。

 この点で、財界・大企業からの献金はもらわないという確固たる立場に立ってこそ、国民のくらしが第一の政治が実現できるということを強調するものであります。

 民主県民クラブの皆さんに呼びかけます。島根の県民を守るという立場で、国において、日米FTA締結や消費税増税など間違った動きが出たとき、是非とも防波堤となって、中央の民主党政権にモノを言って頂きたいのであります。ともに県民の幸せを実現するという一点で力を合わせようではありませんか。


【溝口善兵衛知事】
 最初に、今般の政権交代についての要因をどう見ているのかという御質問がございました。

 この問題、この質問につきましては、昨日の福田議員、石橋議員の質問にもお答え申し上げておりますが、繰り返しになりますが、改めて御質問にお答え申し上げます。

 今回の政権交代は、さきの政権与党がここ数年、あるいはさかのぼればバブル崩壊以降、日本経済の停滞が起こっており、それによります雇用の悪化でありますとか、あるいは生活の厳しさでありますとか、あるいは年金問題も起こりまして、将来に対する国民の方々の不満が、不安が増嵩し、そうした中で国民の方々も閉塞感を感じておられる、そういう状況に対して政権与党が十分対応できなかった、できないと評価されたということが大きな要因ではないかと見ておるわけでございます。

 また、これに加えまして、いわゆるねじれ国会のもとではありますが、総理が3年間に1年ごとに交代するといったようなことが起こっておりますし、その間、中央省庁におきまして相次ぐ不祥事もございましたし、あるいは閣僚等による不適切な言動もあったわけでございます。そういうことも大きく影響したんではないかと見ているとこでございます。

 今般の連立政権スタートに当たって、新政権にどういう期待をしておるかということでございます。

 私は、いろんな問題ありますけども、その根源にはやはり日本経済が停滞を余儀なくされていると、あるいは停滞をしてると、それはやはり世界全体が大きな変化にさらされておって、それに日本が十分やっぱり対応できてないということが一つに大きな要因としてあると思います。中国等新興国が追い上げてまいります。それに対して、企業もいろんな対応をしなければなりません。すぐにはなかなか対応できないわけでございます。

 あるいは、世界経済が大きくなる、新興国が石油をどんどん消費するようになる、エネルギー価格が高騰するわけでございます。それが日本にも、資源のない日本には大きな負担になるといったこともございます。さらに、ごく最近では、昨年末以来、金融危機によりまして、世界の大きな景気後退が起こっております。それにより、生産が3割、4割、5割落ちるといったようなことも起こっておるわけでございます。

 そういう問題、日本を取り巻く環境がそういうことでございます。政権が変わりましても、この環境は変わるわけではないわけでございます。そういう環境にしっかり対応した施策を、有効な施策を新政権が打ち立てるということを期待するものでございます。

 しかし、そういうものに対応するためには、国民全体の理解が必要なわけでございます。今大きな問題になっていますのは、いろんな新しい施策を実現しようとする場合に、やはりどっかに使っている資源をどちらかに振り向けないと、新しい財源は出てこないわけでございます。そうしますと、そういう利害調整をしなければならないわけでございます。国民、各界の御意見をよくお聞きし、国民に支持される有効な施策を各分野においてとることが求められているし、期待をしておるということでございます。

 特に地方から見ますと、大都市と地方の格差というのは、そうした大きな世界あるいは日本の変化の中で解消しないわけでございます。むしろ悪化をしている面もあるわけでございます。先ほど質疑がございましたが、医療といった問題に典型的にあらわれておるわけでございます。そういう意味におきまして、地方の声をよく新政権がお聞きをいただき、地方に対して温かい配慮のある施策をぜひとっていただきたいと、これが私どもの期待でございます。

 それから、連立政権の政策合意として、雇用の安定とか子育て、医療、介護、教育等々の施策の充実が盛り込まれておりますが、それに対してどういうふうに県は対応するのかということでございます。

 私は、議員御指摘のように、個別の政策が具体的にどのような内容でどのような財源手当てにより実施されるかということがまだ明らかになってないわけでございます。こういう問題は、これから順次、新政権内で検討され、具体案が出てきてくるものと思いますが、そういう過程で、県民にとって何が必要かという観点に立ちまして、私どもはそういう具体的な案をよくチェック、評価をし、全国知事会などとも連携しながら、地方の立場あるいは島根県の立場、島根県民の立場を国に対して伝えていきたいというふうに思っているところでございます。

 また、今、新政権が政策合意に盛り込んでおります雇用でありますとか子育て、医療、福祉、教育等、いずれも県にとっての重要課題であり、これまでも力を得てきておるところでございますが、引き続き国の政策の動向をよく注視し、そうした分野の施策についても対策を打ってまいりたいと考えているところであります。

 第3の質問として、日米FTA交渉について質問がございました。

 御指摘のように、民主党のマニフェストによりますと、米国とのFTA交渉を促進するとされておりますが、しかし米国とのFTA交渉におきましてはいろんな問題も議論されるわけでしょうが、農林水産物の関税率の削減などが農林水産業分野においては中心となる可能性が非常に高いわけでございます。そうしますと、実際に関税などが引き下げられるということになりますと、島根の農林水産業にも影響が甚大でございます。そういう意味で、慎重な対応が必要だと考えております。

 いずれにしましても、今後の動向を注視し、島根県の農林水産業にとって不利にならないよう、状況をよく注視しながら、国に対しても働きかけ、要望をしてまいりたいと考えているとこであります。

 次に、高速道路の料金無料化に関連し、そうした無料化よりも福祉を優先すべきではないか、それについてどう考えるかという御質問でございます。

 高速道路の無料化は、人口が集積した大都市部から遠い島根、そのために輸送コストがかかる島根県にとりましては、産業や観光の振興にとってプラスの効果はあると思います。しかし、島根の高速道路の整備はまだまだ遅れております。不十分であります。そのためには、高速道路建設のための財源が必要でございます。高速道路等は大体基幹道路でございますから、国によって整備をされるわけでございます。その財源の一部に高速道路の料金も充てられるわけでございます。実質的にでございますが、充てられるわけでございまして、無料化というのは高速道路整備にも大きな影響を与えるおそれがあると思います。

 したがいまして、こうした点を、プラス、マイナス、両方可能性があるわけでございますけども、それを十分踏まえて検討する必要があるというふうに思います。いずれにしましても、今後、政府が高速道路料金の無料化以外にも、福祉、教育、産業等、多岐の分野でいろんな施策を講ずるわけでございますが、財源は限られておるわけでございますから、優先順位をどうつけるかに当たりましては、国民各界各層の意見をよく聞き、地方の声もよく耳を傾けて、有効な効果的な対策を打っていただきたいというのが私どもの願いであり、そういう点について、県として意見を言うべき点が出てまいりますと、強く求めてまいりたいと、言ってまいりたいと考えているとこであります。

 それから、子ども手当について御質問がございました。

 県も、子育てというのは少子高齢化の進む県にとりまして大変大事な課題でありますから、国に対しましても重点要望を行ってきておるわけでございます。民主党のマニフェストによりますと、子育てを社会全体で応援するといったことから、所得税の扶養控除や配偶者控除を見直し、子ども手当を創設するというふうになっておるわけでございます。民主党の新政策全般について、どういう財源手当てをするかということについては、まだこれからの議論でございます。

 あるいは、子ども手当につきましては、こういう具体的な案も出ておるわけでございますけども、これからさらに検討がされ、具体案が出てくると思います。国民の理解が得られるよう、しっかりとした議論が国政の場で行われる必要がありますし、私どもも必要な意見は申し述べていきたいと考えております。


 2.障害者施策について

【尾村利成】
 次に、障害者施策についてです。

 障害者自立支援法は、2006(平成18)年4月に施行されて3年6ヶ月が経過しました。障害者自立支援法は、構造改革路線に基づき、社会保障費削減を最大のねらいとしてつくられたものです。

 障害が重い人ほど負担が重くなる応益負担制度は、根本が間違っています。障害者が生きていくために必要な最低限の支援に対して、利用料を課すということは、障害を自己責任とみなすものです。憲法25条の生存権理念に照らせば、本来、障害者に負担を求めるべきではありません。

 この点で、新しい連立政権が応益負担を廃止するということは、当然のことであり、障害者団体からも歓迎されております。

 私はこの間、障害者施設を訪問し、様々な声、要望をお聞きしてきました。その中で出された切実な声を紹介しながら、二点伺います。

 まず、第一に、障害者ホームヘルプ事業において、近年、自閉症や発達障害、学習障害をもった障害者のサービス利用のニーズが増えてきています。しかし、事業所の従事者からは、現在、県が実施している自閉症、発達障害等の障害者に対する研修内容は不十分であり、実際の業務において、自閉症や発達障害をもった障害者のケアには対応できないため、他県の研修に参加しているとの声がありました。すなわち、事業所の望む研修方法と、県が行なう研修の間にミスマッチが生まれているのであります。

 県として、関係者の意見や要望を正確に把握し、研修体制を改善、充実すべきと考えますが、所見を伺います。

 第二に、現在、県が事業所に対して調査を行うのは、3年に1回の実地指導の時が中心となっています。事業所からは、もっと現場の声を聞くとともに、障害者の生活実態や要望を把握するようにしてほしいとの声が出されました。

 国政では、応益負担を撤廃する動きであり、今後の新しい障害者施策を進める上でも、県として実態調査を行い、障害者ニーズの把握に努め、今後の施策展開に反映させるべきと考えますが、所見を伺います。


【錦織厚雄健康福祉部長】
 私からは、障害者施策と福祉医療費助成についてお答えをいたします。

 まず、発達障害者などの研修体制についてであります。

 県におきましては、発達障害にかかわる支援機関等への研修といたしまして、県東部と西部の発達障害者支援センターにおきまして、基本的な知識を取得する基礎研修や専門ノウハウを学ぶ専門研修、その他特定テーマによる研修等を行うとともに、事業所や学校等に対して現場アドバイス等も行ってきております。

 また、障害者ホームヘルパー研修におきまして、昨年度から新たに重症心身障害児研修を実施するなど、見直しを行ってきております。新しく始まった取り組みに対しまして、課題があることも承知しております。今後もさまざまな機会を通じまして、関係者の御意見や要望を伺いながら、研修体制の改善、充実に努めてまいります。

 次に、障害者の生活実態や要望の把握についてであります。

 県におきましては、実地指導といたしまして、通所系サービス事業者などには3年に1回、それから入所施設には2年に1回調査を行っております。そのほかにも毎年、県内7圏域別に実施しております圏域別の地域講習会でありますとか、障害者団体の皆さんとの意見交換会等を行っております。

 また、私や担当職員が事業者へ視察を行ってもおります。これらを通じまして、多くの意見や要望を伺っております。今後とも障害者の皆さんや支援に当たっている方々の意見をできる限りお聞きをいたしまして、県の障害者施策に反映をさせてまいります。
 

 3.福祉医療費助成制度について

【尾村利成】
 次に、福祉医療費助成制度について伺います。
 応益負担を課す障害者自立支援法は、廃止の方向です。すなわち、国は応益負担という考え方が間違っていたと判断しているのであります。

 この応益負担という考え方は、島根県が国より先輩です。県は、障害者の強い反対を押し切って、自立支援法が施行された半年前の平成17年10月から障害者医療に応益負担を持ち込みました。福祉医療において、定額制から1割という定率負担へ切り替え、応益負担を導入したのであります。

 1ヶ月500円であった医療費を最大で40,200円という80倍もの負担増を障害者に課したのであります。1割負担に対し、障害者団体の理解がないのに理解があると言い、受給者は1割の負担が可能であると強弁してきたのであります。

 病気に苦しみ、病気と闘っている障害をもつ人たちにお金の心配をさせ、つらく苦しい思いをさせておきながら、果たして快適で住んで良かった島根と言えるのでしょうか。

 障害者団体や病院から実情をお聞きする中で、障害者をはじめ、ひとり親家庭、低所得者が医療を受ける権利から排除されつつある実態が改めてよく分かりました。実情を何点かお示しします。

 医療療養病床では、住民税課税世帯の1ヶ月あたりの入院費用は、医療費、食費、居住費、入院雑費などで、約12万6,000円にも上っています。入院費が心配で、患者の家族から入院時に「1ヶ月どのくらい費用がかかりますか」と聞かれることが多いということです。

 また、患者の家族から「食事を1日1食にしてもらえないか」という相談も寄せられるとのことです。未集金も増加し、医療費の分割払いのケースも増えてきているということであります。払いたくても払えないということであります。それだけ負担増が県民を苦しめているのであります。

 障害者施設では、病院に行くのを我慢している人も多数生まれているという悲しい声もお聞きしたところです。

 私は、国が前向きに変化しようとしている時、県が遅れをとってはならないと思います。自立支援法の応益負担の廃止と合わせ、県の福祉医療1割負担撤回で、障害者に対して希望と安心の政治を実現する時ではないでしょうか。

 この立場から、伺います。

 第一に、この間、県には福祉医療制度に対してどのような声が寄せられていますか。また、県として1割負担によってどのような影響が出ていると掌握していますか。伺います。詳細なる実態調査を行うことを求めますが、所見を伺います。

 第二に、県は福祉医療1割負担導入時に「課題が生じたり、状況に変化が見られる時は、原因を十分検証し、改善策が必要かどうか適切に判断する」と議会で答弁されています。今紹介した通り、受診抑制をはじめ、命にかかわる重大なる事態が起こっています。1割負担の見直しを検討すべきであります。知事の所見を伺います。


【溝口善兵衛知事】
 福祉医療1割負担の導入時に、本議会におきましても種々議論があり、附帯決議もあったわけでございます。私もそういう点を勉強してきておりますけども、御指摘のように国においては後期高齢者医療制度の廃止でありますとか、あるいは障害者自立支援法の廃止による障害者福祉制度の抜本的な見直しがうたわれておるわけでございまして、御指摘のような福祉医療費助成制度の見直しにつきましては、こうした国の医療福祉制度の見直しの動向を見きわめながら適切に判断をしていきたいと、もちろん議会の皆様と御相談しながら考えていきたいというふうに思っているところでございます。

【錦織厚雄健康福祉部長】
 福祉医療費助成制度の見直しから3年目を迎えるに当たりまして、昨年度、県内の10病院と11市町を訪問の上、聞き取りを行うとともに、市町村担当者会議の場を利用いたしまして、利用者からの苦情、相談の状況について聴取をいたしました。

 聞き取りの結果では、制度見直しに対する利用者からの直接の苦情や相談等はほとんど今は聞かれなくなったけれども、一般区分と低所得区分との自己負担額の格差が大きいことでありますとか、それから低所得者へのさらなる配慮が必要ではないかといった意見がありました。

 また、先ほど申し上げましたが、障害者団体の皆さんとも意見交換会をやっておりまして、その中でもいろんな不安等もお聞きをしております。今後とも関係する医療制度などの改正等の状況を見ながら、障害者団体の皆さんの声をお聞きするとともに、関係機関への調査も適宜行ってまいります。


 4.教育問題について

【尾村利成】
 最後に、教育問題について伺います。

 小泉構造改革路線以降広がった貧困と格差は、子どもたちの中にも大きな影を落としました。

 NHKで「貧しくて学べない」「病院に行けない子どもたち」などの特集番組も放映されました。「子どもの貧困」問題は、社会問題となっており、もはや放置できません。

 この度の総選挙においても、政策内容や財源の是非は別にして、各政党が「幼児教育の無償化」「高校教育無償化」「子どもの医療費無料化」などを打ち出しました。

 島根県において、今議会の補正予算において「高校生に対する奨学金拡充等」の事業が提案されていることは、評価するものであります。

 「お金の心配なく学校で学びたい」「どんな障害をもって生まれても、ゆきとどいた教育を受けたい」という子どもたちや保護者の願いに応えるのは、県行政の重要な責任と考えます。

 そこで、子どもの学ぶ環境を充実し、豊かな成長を保障する立場で、二点伺います。

 第一に、生徒数が急増している特別支援学校についてです。

 養護学校では、子どもたちがすし詰め状態で授業を受けるなどの様々な教育上の問題が発生しています。出雲地区に一つしかない出雲養護学校では、「医療的ケアの必要な重度重複障害児から軽度の発達障害や学習障害のある生徒まで、子どもたちの実態は多岐にわたっております。そのため、現在の人員、施設設備では限界を感じる」という声が寄せられています。

 また、生徒の増加に伴い、教室数の不足がいよいよ深刻になっています。本来、重複用の教室もそれぞれ独立した教室としてフル稼働しています。作業室のほとんどは、特別教室や学習室、ランチルームなどと兼用になっています。利用の多い音楽室は2階にあり、学校で一番暑い部屋であるにもかかわらず、エレベーターもエアコンもない状況で、車椅子使用の生徒や体温調節が難しい生徒の利用が困難になっている状況です。

 この点で、県としてはどのような認識をもち、抜本的な改善についてどのように考えているのか、所見を伺います。

 第二に、養護学校では、多くの臨時講師が任用されています。定数内講師の比率が高い現場では、基本的には1年で任用が切れるため、年度替りの入れ替えが激しく、「継続した教育活動ができにくい」「正規採用に切り替え、長い目で子どもたちの発達を保障してほしい」との強い声が出されています。

 また、小中学校においても、特別支援学級の担任を多くの臨時講師が担っており、ここでも正規採用への切り替えを求める声が多数出されています。是非とも、この現場の声に応えるべきと考えますが、所見を伺います。また、県として教員の採用や配置の見通しについての所見を伺います。


【藤原義光教育長】
 特別支援教育についてお尋ねがございました。

 まず、養護学校の生徒の急増についてであります。

 近年、知的障害者を対象といたします特別支援学校の生徒が増加しております。特に高等部について顕著であります。このため、松江養護学校の高等部棟や出雲養護学校のリース校舎を整備するほか、本年4月には松江養護学校の分教室を安来高校に、出雲養護学校の分教室を邇摩高校にそれぞれ設置するなど、教室数の確保を図っているとこであります。また、両校では農業実習も始めております。

 今後10年程度の将来を見ますと、高等部の生徒数の増加がさらに見込まれます。それに対応するためには、各特別支援学校のあり方をどうしていくか、どういう方法が好ましいか、本年度から来年度において方向を出し、それに従って適切に対応してまいります。

 次に、教員の採用や配置の見直しについてであります。

 特別支援学校の教員定数については、標準法により、基本的には毎年度の学級数が算定の基礎となっております。この学級数のベースでありますが、通常、8人で1クラスの編制、重度の場合には3人で1クラスということになっておりまして、数名の生徒の増減によりまして、毎年度、この学級数が大きく変動する要素があります。今後の生徒数に伴います教員定数の増減については、そうしたことから不確定な状況にありますので、今後の見通しを含めますと、教員定数の増加分のすべてを正規の教諭で充足するということが定数管理上できません。

 また、今年度、小中学校の特別支援学級の担任の約2割強が臨時的任用の講師が担っておるのは先ほど御指摘のとおりであります。これは、児童生徒数の減少によりまして、今後、学級数や小中学校の統廃合計画によりまして、数百名に及びます大幅な教員の定数減が見込まれておりますので、やむなく講師の任用により対応しておるところでありまして、各学校でのそうした教員の配置上、結果的に特別支援学校のところに少し講師の、他のクラスと比較しますと講師の比率が高くなっているという状況にございます。

 しかしながら、新規採用の教職員についてはできるだけ採ってまいりたいというふうに考えておりまして、昨年度は定年の退職を上回ります160人余を採用いたしました。この4月の採用でございます。来年度の採用につきましても、採用計画を前倒しいたしまして、募集人員を通常のカウントする方法よりは30名程度増員いたしまして、正規の採用の教職員の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。今後もできるだけそうしたことによりまして臨時講師を減らすようなことに努めてまいりたいというふうに考えております。


【尾村利成:再質問】
 2点ほど再質問させていただきたいと思います。

 まず1つは、具体論でいうと福祉医療の問題です。

 この福祉医療は、導入当時、制度の持続的な安定だということを言い、負担の公平ということが言われ、それから市町村の理解がある、障害者団体の理解があるということを県が言い、かつ受給者の1割負担は可能だと、こういうのが県の言い分でした。

 今、知事の答弁、それから健康福祉部長の御答弁聞いて、少し前向きなというか、喜ぶところもあったんですが、私はやっぱりこれはもう見直しを含む廃止というのが本当に今求められていると思うんです。制度の持続的安定というものの、現場の障害者のほうはもう命と健康が危機的な状況になっているわけで、制度の持続的な安定というのは県の財政状況から出た話でした。

 それから、負担の公平というのは、知事が国の自立支援法の動き、見直しの動きを見たいというふうに言われたけども、これも障害者に応益負担を課すというのは、これはおかしいじゃないかという、こういう話になっているわけです。

 健康福祉部長からは、病院に歩いた、そして関係団体の意見も聞いたという答弁があったんですけど、私も歩きましたけども、やはり現場では、これはもう何とかしてほしいというのが異口同音に出されてますし、負担は可能ではないということははっきりしていると思うわけですね。ですから、国の動向を見てというのは制度論の考え方でしょう。

 しかし、現場の実態を見て、もはやもう猶予できないところまで厳しい事態があるというところにももう少ししっかり目をやっていただいて、私はこれは大至急廃止を含む見直しを進めていただきたいということを改めてこの点指摘したいと思います。

 それから、昨日来、今度の選挙の政権交代の問題で、さまざま昨日も質問があって、知事答弁されました。私もあえてきょう尋ねました。私は、知事の御答弁では雇用の悪化とか医療不安、社会の不安等々に政権党が十分対応できなかったと、その他閣僚の不適切発言だとか総理の交代とかいろいろ言われたんですが、それは現象面ですね。私はやはり今回の政権交代をどう見るのかというのは、日本の政治の大もとが問われたと。

 すなわち憲法では国民が主権だというふうに規定されているんだけども、しかし実際のこの間の政治というのは、私は財界、大企業が主権持ってた言いなり政治じゃなかったかなと思います。

 それは具体的に言えば、労働者派遣法というのは、労働者は全然、自分たち派遣労働者になりたいなんか言っているわけじゃないんですね。労働者派遣法というのはだれの要望でできたかといったら、これは規制改革会議なんかで財界がその会議に出てきて、安上がりの労働力を確保したいということから派遣法をつくったわけですよね。

 後期高齢者医療制度というのも、75歳のお年寄りが、自分を国民健康保険から外してくださいとかって言ったわけじゃないんです。これも、社会保障を年2,200億円削減するという中で生まれてきたものです。

 農産物の輸入自由化も、農家の人が外国からどんどん米入れてくださいとかという話じゃないんですね。これも発信源というのは財界だったわけですよ。

 ですから、私は、財界が中心の政治というのがやっぱり国民から夢と希望を本当に失った、奪ってしまった、これが私は今回の選挙、政権交代の源になった、怒りの一票になったというふうに思うわけです。

 ですから、そういう財界中心の政治のゆがみが今まだある、残念ながら県政もそこのレールの中で来たわけです。だけど、今度は国民が本当に大切にされる社会、国民が中心の社会を今つくろうという、今方向になってきているわけで、私はこの点で、県政が本当に暮らしや福祉や教育最優先の県政つくるということが求められると思います。

 この点でも福祉医療の1割負担撤回というのを私は本当にやっていただきたいということを強く求めて、これは質問の答弁は結構でございますんで、再度の発言ということにしていただきたいと思います。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画