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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2009 年 9 月定例会 知事提出議案、請願、議員提出議案に対する討論

2009-10-08 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

 一般事件案2件、請願2件、議員提出議案1件について委員長報告に反対する討論を行います。


 第141号議案「県の行う建設事業に対する市町村の負担について」

 まず、第141号議案「県の行う建設事業に対する市町村の負担について」であります。

 砂防事業の急傾斜地崩壊対策事業や都市計画事業の街路事業1種並びに農業農村整備事業の広域農道整備交付金事業など、山地や農地の保全、災害や広域的な役割を果たす事業は、本来県が行うべきものであり、市町村に過大な負担を求めることには反対であります。

 国の直轄事業負担金ならびに県の市町村負担金について、あるべき方向を申し述べさせて頂きます。

 国の直轄事業負担金は、「必要な事業は、国の責任と負担で行う」という方向で抜本的に見直すべきです。国直轄事業に多く含まれている高速道路、港湾、ダムなど不要不急の大型公共事業は削減・中止すべきであり、国が維持管理費や国の職員手当てなどの負担を地方に押し付けることは、直ちにやめるべきであります。

 また、地方においては、県が実施する公共事業の市町村負担金についても、情報開示や市町村への説明責任を果たすべきであり、市町村負担のあり方を抜本的に見直すとともに、廃止を検討すべきであります。今日時点の他県の状況として、来年度から新潟県、和歌山県は基本的に市町村負担金の廃止を検討しています。また、熊本県においては、維持管理費負担金を廃止する方向で検討していることを付言するものです。


 第143号議案「契約の締結について」

 次に、第143号議案「国道485号(松江第五大橋道路)改築(改良)工事 東津田工区東津田第8高架橋上部工」の契約の締結についてです。

 国道485号松江第五大橋道路は、総事業費343億円の巨大プロジェクトであります。その整備目的は、地域高規格道路境港出雲道路の1区間として、宍道湖、中海都市圏の形成を図ること、松江市街の外環状道路を形成すること、ソフトビジネスパークなどの工業、商業拠点を結ぶこととされております。

 私は、渋滞緩和や移動時間の短縮を否定するものではありませんが、今日の厳しい財政状況、今後の人口動態、環境問題、関係権利者の同意状況、外環状道路形成や工業、商業拠点を結ぶ必要性や実効性の有無など総合的に勘案した際、その事業実施に当たって疑義が残ります。

 よって、本契約締結には反対であります。


 請願第38号「気候保護法制定についての国への意見書採択を求める請願」

 次に、請願第38号「気候保護法制定についての国への意見書採択を求める請願」についてであります。

 本請願は、地球温暖化を食い止めるために、第一に、中長期にわたって温室効果ガスを大幅に削減する目標として、2020年には1990年比30%、2050年には80%の削減を求め、第二に、二酸化炭素を減らした人や企業が報われる制度を創設すること、第三に、再生可能エネルギーを大幅に増やす仕組みづくりを求めるものであります。

 そのために、国の将来にかかわる総合的な戦略・政策の中に地球温暖化対策を位置付け、政府の取り組みを義務付ける法律として、気候保護法の制定を求めるものであります。

 9月22日、鳩山首相はニューヨークの国連本部で開かれた気候変動首脳会合の開会総会で、日本が温室効果ガス排出量を「2020年までに1990年比で25%削減する」と演説し、世界各国から称賛の拍手を浴び、歓迎されました。この鳩山演説による中期目標は、麻生前首相が6月に表明した「90年比8%削減」から3倍に引き上げられるものであります。

 鳩山首相の「25%削減」表明に対し、「家計負担が36万円増える」などと産業界からブレーキをかける声が上がっています。しかし、この家計負担の根拠は、前自公政権の試算であります。その試算は、首相の諮問機関「地球温暖化問題に関する懇談会」の中期目標検討委員会が実施したものでありましたが、その委員会メンバーから試算の前提が間違っているとの証言が出されています。

 それは、試算に当たって、政府側から、一つに鉄の生産量は今より増える、二つに原子力発電所を9基新設する、三つに自動車などの輸送量は減らず、貨物はむしろ増えるという前提が付けられてのものでありました。

 すなわち、この試算は、大量に二酸化炭素を排出している産業部門の削減を見込まないものであり、家庭部門などで大幅削減するというものであるため、家計負担が増えるのは当然であります。

 EU諸国では、国が産業界と公的協定を結んで実績を上げています。日本としても、政府と産業界の間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務付ける必要があります。

 そして、企業の目標達成のための補助的手段としての「国内排出量取引制度」や二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入し、削減を加速すべきです。

 また、エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換することも必要であります。

 以上の立場から、本請願は不採択ではなく、採択を主張します。


 請願第44号「『中小企業の危機打開・雇用の回復を求め』政府に対する意見書採択を求める請願書」

 次に、請願第44号「『中小企業の危機打開・雇用の回復を求め』政府に対する意見書採択を求める請願書」についてであります。

 本請願は、第一に、中小企業担当大臣を置き、中小企業庁の体制強化をはかり、中小企業憲章や、納税者権利憲章の制定に向け、中小企業の意見を聞くテーブル設置を求めるものです。そして、第二に、中小企業の倒産防止に向け、緊急休業補償などの直接支援策の拡充、既存借り入れの条件変更や金利の軽減、納税猶予の拡充などの支援策の強化を求め、第三に、農家への戸別所得補償の実施を求めるものであります。

 この間の外需優先、内需切り捨ての構造改革路線によって、中小企業と地域経済は痛めつけられてきました。その上、昨年秋からの経済危機のもとで、原油・原材料高騰、大企業による違法な下請け切り、銀行による理不尽な貸し渋り・貸しはがしで突然の経営難に追い込まれるなど、中小業者は二重、三重に苦しめられています。

 EUでは、2000年に欧州小企業憲章を制定しました。この中では、小企業は、ヨーロッパ経済の背骨であり、雇用の主要な源泉・ビジネスアイデアを生み育てる大地であるとその存在の重要性をうたい、小企業を政策課題の最優先にするとの方向性を示しています。

 わが国では、今年度の中小企業予算は1,890億円で、一企業当たり年4万5千円であります。他方、米軍への思いやり予算は2,879億円で、米兵一人当たり年811万円であり、中小企業の180倍という状況で雲泥の差です。

 地域経済と雇用を支える中小企業の振興なくして、わが国経済全体の発展はあり得ません。中小企業への支援策と予算額を日本経済の主役にふさわしい規模にまで抜本的に引き上げることが強く求められています。

 また、わが国農業の再生にとって、今最も必要なことは、農業経営を安定して持続できる条件を保障するための制度を整備・充実することであります。

 農産物輸出国であるEUやアメリカでも実施されているように、価格保証・所得補償の拡充を農政の基本として日本でも実施し、生産・経営コストをカバーできる条件を早急に確立すべきであります。

 以上の立場から、本請願は不採択ではなく、採択すべきであります。


 議員提出第8号議案「地方の道路整備促進を求める意見書」

 最後に、議員提出第8号議案「地方の道路整備促進を求める意見書」についてであります。

 私は、山陰道の一刻も早い全線開通を願うものであります。そして、真に必要な地方の道路は、国の責任で優先的に整備、建設すべきことを求めるものであります。

 この間の道路整備は、財界が強く望む大都市間をつなぐ幹線高速道や三ルートも同時建設したため、大幅な採算割れとなった本州四国連絡橋、そして当初の想定交通量を大幅に下回る大赤字路線となっている東京湾横断道路アクアラインなどの大規模プロジェクト事業が優先されてきました。

 そのため、採算性の低い地方の山陰道などは、主要高速道として後回しにされてまいりました。さらに、国道や県道の整備も後回しとされてきて、島根県の県道改良率は、大きく立ち遅れております。

 今必要なことは、バブル期につくった1万4千キロメートルの高規格幹線道路網、90年代に630兆円の公共投資基本計画を背景に計画された約7千キロメートルもの地域高規格道路、さらには、東京湾口道路、伊勢湾口道路など六つの海峡横断道路計画など、2万キロを超え、際限なく高速道路はつくり続けるという計画を見直すことであります。

 前原国土交通相は、9月29日の記者会見で、高速道路建設にお墨付きを与える役割を果たしてきた国土開発幹線自動車道建設会議・国幹会議の廃止を明言しました。

 国幹会議では、道路建設による交通渋滞の解消や走行時間の短縮、二酸化炭素排出量の削減といった効果は最大限に宣伝する一方、建設に異議を唱える住民の意見は報告すらしておらず、国交省が策定した建設計画に正当性を与えるだけの機関に形骸化していました。この国幹会議廃止は当然であり、今後、高速道路など大型公共事業については、案件ごとに国会で承認を受けるなど仕組みを抜本的に改革すべきであります。

 以上の立場から、高速道路ネットワークの全線整備実行を求める本意見書には、賛同できません。

 以上で、討論を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画