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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2009 年 11 月定例会 平成 20 年度決算認定に対する討論

2009-12-15 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。
 
 認定第1号議案「平成20年度島根県病院事業会計決算の認定について」、認定第2号議案から第5号議案までの電気事業、工業用水道事業、水道事業、宅地造成事業の島根県公営企業会計決算の認定、認定第6号議案「平成20年度決算の一般会計及び特別会計の決算認定」の6件について、認定とした委員長報告に対し、反対の討論を行います。

 予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡であると言われています。

 議会における決算確定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度の予算編成に資するため広範な角度から住民の立場で行政評価を検証するものであると理解いたしております。

 この立場から、以下、討論を致します。

 平成20年度一般会計及び特別会計の認定について

 まず、認定第6号議案「平成20年度決算の一般会計及び特別会計の決算認定について」であります。

 平成20年度予算は、財政健全化基本方針に基づき、行政の効率化・スリム化、事務事業の徹底した見直しを実施し、平成23年度までの4年間を集中改革期間とした初年度でありました。

 人件費については、給与の特例減額の継続や、職員定員の削減、内部管理経費の縮減が図られ、一般施策経費については、マイナス15%のシーリングが設定されるなど、徹底した歳出削減が図られ、県民や職員に痛みが押し付けられました。

 例えば、私立学校経営健全性確保事業、生活バス路線確保対策交付金、地域リハビリテーション支援事業、しまね子育て総合支援事業などの事務事業や交付金の削減であります。

 財政分析指標を見ると、財政力指数は、全国47番目の最下位であり、公債費負担比率は31.1%で、前年度に比べ0.5ポイント悪化しています。

 起債制限比率は16.6%で、前年度に比べ0.3ポイント悪化し、警戒ラインとされる15%を超えた状況が続いています。

 地方債現在高は1兆35億5,000万円余で、歳出決算額の約2倍となっており、県民一人当たりで試算すると、135万円余となり、全国一高い状況であります。

 これら財政悪化の原因は、この間の身の丈を超えた公共投資にあったことは明白であり、財政再建に当たって、まずすべきことは、不要不急の事業、県民合意のない事業、需要予測を見誤った事業について、県民目線でメスを入れ、徹底した総点検を行うことではありませんか。

 例えて言えば、県民合意のない大手前通り拡幅事業、不要不急の大規模農地開発、積算根拠を誤った斐伊川水道建設事業などの見直し、精査であります。

 県民の県政への願いは、医療、福祉、教育の充実であります。この県民の願いと平成20年度決算を鑑みれば、この県民の願いと乖離した平成20年度決算は不認定とせざるを得えないのであります。

 各論

 各論的に9点申し上げます。

 第1に、財政健全化基本方針に基づき、さらなる総人件費抑制策が進められました。許せないこととして、ただでさえ低い県の臨時職員、非常勤嘱託員の賃金を平成20年度から4%程度減額したことであります。臨時職員等の賃金減額は、最賃や民間賃金の引き下げを誘発し、県がワーキングプアを作り出していると非難されても仕方ないではありませんか。賃金カットの撤回を求めるものであります。

 第2に、歳出の効率化と質的改善の名のもとに、事務事業や補助金を削減し、県民サービスを大きく低下させ、市町村に負担を転嫁したことです。

 第3に、県内で国民健康保険滞納世帯が1万1千世帯を超え、その制裁措置として命綱である保険証取り上げ世帯は、約1,100世帯に及んでいます。後期高齢者医療制度では、本年9月時点での保険料滞納者数は7,800人を超え、滞納率は6.6%という状況であり、高齢者に耐えがたい負担を押し付けていることは、明白であります。

 介護保険料の未納者数は4,700人を超え、特別養護老人ホームの入所待機者数は、本年1月時点では5,800人を超えています。医療や介護サービスから排除される人が増えているのに、その解決のための予算措置が不十分であります。全国一の高齢者県としての社会福祉、社会保障予算があまりにも貧困であります。

 第4に、城山北公園線拡幅事業のように、そこに住む関係住民が反対し、国際文化観光都市である松江の城下町を壊し、交通渋滞解消との事業目的は完全に破綻しているにもかかわらず、一度決めた事業は何が何でも推進する行政姿勢です。

 県財政危機と言いながら、県民の理解と納得が得られず、県民に説明のつかない道理なき事業の強行は、県政への失望を広げるだけであります。

 第5に、農業においては、平成20年度の農林水産業費は378億円余でありますが、そのうち県単独事業の農産物価格補償は、野菜価格安定対策事業しかなく、その決算額は1,435万円余であり、予算に占める価格補償額は0.038%しかありません。

 島根農業の再生、持続可能な農業経営の実現、耕作放棄地の解消に向け、価格補償の充実こそ農林水産業費の主役にすべきであります。

 第6に、島根県の制度融資において、融資の申し込み先は、商工会議所、商工会に限定されております。商工会議所と商工会の会員組織率は51.7%であり、商工業者の半数しか組織されておりません。多くの商工業者からは、申し込み窓口を市町村や県などに拡大してほしいとの要望が出されています。融資を利用する主人公である商工業者が利用しやすい制度へと改善を図るべきであります。

 第7に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては、同和教育をすべての教育の基底に据えるというように同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。また、民間の同和団体に対する突出した補助金の支出が逆に不公正を生み出しております。

 第8に、教育においては、子供たちを競争に追いたて、ふるいわけする学力テストは中止すべきであります。貧困と格差から子供と教育を守り、少人数学級の実現ですべての子供がわかるまで丁寧に教えられる教育環境をめざすべきであります。

 第9に、原発の安全性に対する県民の不安が高まっているのに、その対処方法は、国任せ、事業者である中国電力任せであるなど、原子力発電・プルサーマル推進に無批判、迎合であります。日本列島が地震の活動期に入った今こそ、県としても活断層調査を実施するなど、安心安全の島根づくりに万全を期すべきであります。

 平成20年度島根県病院事業会計決算の認定について

 次に、認定第1号議案「平成20年度島根県病院事業会計決算の認定について」であります。

 県立中央病院では、差額ベッド代を徴収してはならないとする厚生労働省通知に反する事例が再三にわたって発生しました。これらの不手際は、経営効率化最優先により、患者中心の医療実践、患者主人公の病院運営の精神が希薄となっている表れであります。

 差額ベッド徴収において、院内運用マニュアル作成と院内研修を徹底するとのことですが、その確実なる実行を求めるものです。

 経営健全化の大前提は、患者である一人ひとりの県民を大切にし、県民の信頼を築くことにあります。

 病院経営において、県民に対する公正な医療サービスの提供と患者さん中心の医療サービスを提供すると宣言した県立中央病院憲章に基づく医療サービス提供を強く求めるものであります。

 平成20年度島根県公営企業会計決算について

 最後に、認定第2号議案から第5号議案までの公営企業会計決算についてであります。

 島根県公営企業会計は、一つの大きな特徴がございます。それは、県内河川に多目的ダムを建設し、水力発電を開発し、上水道、工業用水道事業を行い、その工業用水によって工業団地を造成する、そして、これらすべての事業を島根県公営企業として行うこと基本としていることであります。

 この事業形態は、県民の立場からの弊害が生まれています。

 それは、第1に、公共投資と河川総合開発が大企業や誘致企業の電気、工業用水確保を主軸とした事業となっており、上水道、農業用水利などの民生が後景に追いやられていることであります。

 第2に、過大な需要予測のため多額な投資に見合う需要が期待できず、結局、損失負担が県民に転嫁されていることであります。

 供給見込みの立たない八戸川工業用水道事業、神戸川工業用水道事業、使わない水まで住民負担になっている江の川水道事業、水需要予測の見直しが求められる斐伊川水道建設事業など、住民負担軽減や事業の見直しによる適正化を強く求めるものであります。

 斐伊川水道建設事業においては、需要予測を誤り、高い水道料を住民に押し付けている江の川水道事業の二の舞にならないことこそ教訓であったはずです。

 しかし、斐伊川水道建設事業で積算根拠と需要予測を誤ったことは誰の目にも明らかです。平成20年度において、松江市で水道料金滞納による給水停止実施件数は、1,361件でありました。事業主体である県としての責任を果たすため、受水費負担の軽減を強く求めるものであります。

 最後に、今回の決算審査に当たり、全体会そして分科会におきまして、その過程で80項目程度の質疑そして資料提供を求めました。

 これらの点ですべての執行部の皆さんから誠意あるご回答と資料の提供を頂きましたことに対して、心からの感謝を申し上げるものであります。

 以上で決算認定についての討論を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画