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議会の取り組み

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2010 年 6 月定例会 知事提出議案に対する討論

2010-06-22 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

 予算案1件について、委員長報告に反対する討論を行います。


 第69号議案「平成22年度島根県一般会計補正予算」

 本補正予算は、県内航空路線緊急利用促進事業として、県内空港の利用促進対策と観光振興対策に2億円余の予算を措置するものであります。

 中でも、全日空が来年1月4日までとの期限を切って、萩・石見空港大阪線の運航中止を表明したことに伴い、萩・石見空港には、個人利用者への運賃助成を含む利用促進対策費が8千万円、また、観光振興として観光連盟への助成費が3千2百万円盛り込まれ、合計で1億1千2百万円が予算計上されております。

 私は、萩・石見空港、隠岐空港、出雲空港の県内航空路線の路線維持・存続を強く願うものでありますが、県民の貴重な税金を投入するにあたって、本補正には疑義があるものでございます。

 以下、四点その理由を申し述べます。

 第一点は、そもそも論であります。萩・石見空港の飛行場設置許可申請書は、今から23年前の昭和62年(1987年)7月17日に当時の運輸大臣であった橋本龍太郎氏に提出されました。

 この申請書では、昭和57年度(1982年)の潜在航空需要の算定として、石見・大阪路線は10万1千人と算定していました。

 また、石見・大阪路線の航空需要予測値として1990年(平成2年)には14万6千人、1995年(平成7年)には18万人、2000年(平成12年)には21万5千人、そして2005年(平成17年)には25万7千人と予測していました。

 しかし、実績では、2005年(平成17年)では2万5千人余であり、直近の2009年(平成21年)では2万1千人余であります。すなわち、需要予測に対する利用実績は、1割にも満たない状況であります。当時の需要予測が過大であったことは、明白であります。

 私は、利用促進にあたり、県費を投入するのであれば、この需要予測と現在の利用実績の乖離について、真剣な総括と検証をすべきであると考えます。このことなしに、緊急対策といって、税金を投入しても真の解決策とはならないことを強調するものであります。

 第二点は、企業誘致の問題であります。知事は、航空路線整備は産業や地域の発展、企業誘致に不可欠であると主張されます。しかし、県が多額の借金をして造成した石見臨空ファクトリーパークの現状はどうでしょうか。

 この間、分譲促進のため、県や地元の益田市が企業誘致に努力をしたものの、現時点での分譲率は、わずか29.6%にとどまり、約30ヘクタールもの分譲残地がある状況ではありませんか。

 結局、この石見臨空ファクトリーパーク開発に失敗し、今もなお多額の県費を投入し続けているではありませんか。この呼び込み方式型の企業誘致がすすまないことも萩・石見空港の搭乗者が増えないことと無関係ではありません。この面での総括も必要であることを強調するものであります。

 第三点は、税金の使い方の問題です。

 何が何でも航空路線を維持するために、運賃を助成するという税金投入方式は、一時しのぎに過ぎないものであり、税金使途の公平性を欠くものであります。

 今日、離島・中山間地域では、次から次へと公共交通機関が縮小・廃止され、高齢者の足が奪われております。買い物や病院に行くことさえ困難であるといった悲痛な声も出されています。住民の暮らしと安全を守る自治体の責任として、住民の生活の足を守ることにこそ、最大限の施策展開を計るべきであります。

 ここで命にかかわる事例を申し上げます。

 透析患者でつくる腎友会のアンケートであります。透析患者は、週に3回から4回、病院に通わなければなりません。この通院による自己負担額を見てみると、透析患者のうち、通院自己負担額が1ヶ月5千円を超す患者さんは、実に3割を超えております。中には、10万円を超す人もあります。

 県内において、医師不足がすすみ、中山間地域の患者さんの中には、長時間かけて透析に通わなければならない人も出てきました。

 このように、病気で苦しんだ上に、多額な通院の自己負担に苦しんでいる患者さんもあります。県民の健康を守るべき行政として、県民の命を守ることにこそ支援を強化すべきであることを主張するものであります。

 第四点は、全国の空港との果てしない税金投入競争になりかねないという問題であります。

 現在、全国に地方空港は98空港あります。神戸空港や静岡空港などは、過大な需要予測が外れ、採算が取れず、赤字経営を続けています。

 今日、北海道をはじめ24県において空港利用促進団体がつくられております。そして、98空港のうち30を超す空港に利用促進団体がつくられ、その事業として、利用促進キャンペーンや運賃助成の実施、着陸料の減免など公費を使っての利用促進・路線維持の取り組みが行われている状況です。

 ANAやJALなどの航空会社も赤字路線について、次々と撤退表明をしています。そのため、各県や地元自治体が路線維持に躍起となり、公費を投入しているのであります。

 しかし、いくら公費投入を続けても需要が伸びない限り、飛行機は飛びません。結局は、飛行機を飛ばすための税金投入となり、税金投入競争となるではありませんか。

 離島航空路など、住民の空の足を確保する公共交通として、存続させる必要のある空港は、もちろんあります。こうした地方空港について、国と県の責任においてその存廃を含めた見直しが必要であることを主張するものであります。

 また、この点で地元住民に徹底した正確な情報を提供した上で、住民の意見を真摯に聴取すべきことを求めるものであります。

 以上の立場から、本補正予算案には反対であります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画