日本共産党の尾村利成でございます。
予算案6件、条例案5件、請願27件について委員長報告に反対する討論を行います。
第3号議案「平成23年度島根県一般会計予算」
まず、第3号議案「平成23年度島根県一般会計予算」についてであります。
平成23年度予算案は、総額5,322億円余、対前年度比0.6%減であります。
国政において民主党政権は、後期高齢者医療制度廃止などの公約を投げ捨て、医療、介護、年金など社会保障を切り捨て、負担増を押し付ける計画を次々に打ち出しています。
財政難といいながら、財界いいなりに法人税を減税し、証券優遇税制を延長するなど大企業・大金持ち優遇の不公正税制を温存し、拡大しようとしています。また、消費税増税に「政治生命をかける」と宣言し、食と農業、地域経済、国土と環境を壊すTPPへの参加に突っ走ろうとしています。
国の政治がひどい時だけに、今こそ住民の暮らしと福祉を守る防波堤の役割を果たす自治体、島根県政の真価が問われています。
この立場から県の予算を見た時、暮らしと地方自治、地方経済を立て直すものになっているとは言えません。県内に、どんなに暮らしや医療、福祉、農業、雇用などで深刻な実態があり、どんなに県民の願いが切実であっても、国の制度以上のことはやろうとせず、国が制度を改悪すれば一緒になって県民に痛みを押し付けているではありませんか。
農業において、国は、TPP参加を視野に入れた予算を編成しました。
県内の農業就業者の平均年齢は70歳を超え、就業人口は毎年2,500人ずつ減少し続けています。米価下落に農家から悲鳴があがり、耕作放棄地も拡大の一途です。
持続可能な島根農業を実現するためには、農産物の価格保障を中心に所得補償を組み合わせ、再生産を保障する施策を農業政策の柱に据えるべきであります。
産業・雇用対策では、新産業創出、企業誘致頼みとなっております。企業誘致のために、ばく大な税金を投入してきましたが、誘致企業はこの間、新規採用求人数の削減を続けています。
地域経済を良くするためには「誘致企業、大企業さえ呼び込めば、そのおこぼれで地域が栄える」という破たんした古いやり方と決別し、島根県内に現にある力を育て、伸ばし、それによって雇用と消費を増やす内発型・循環型の地域振興策に転換すべきであります。地域に根ざした中小企業、地場産業、農林水産業を総合的に支援してこそ、安定した雇用と仕事をつくり、地域経済に活力を与えるものと考えるものであります。
医療、福祉では、高すぎる国保料・税を引き下げるため、県としての法定外独自支出金の実施を決断すべきであります。全国一障がい者に冷たい島根の汚名を返上し、障がい者の命と健康を守るためにも、福祉医療の1割負担は撤回すべきであります。また、6,000人にも上る特養ホームの待機者を解消するとともに、介護保険料、利用料の軽減策を実現し、安心して利用できる介護制度をめざすべきであります。
予算は政治の顔、政治の鏡と言われています。県民の願いは、医療、福祉、教育の充実であり、県内中小企業への支援を強化し、安定した雇用をつくり、農林水産業を再生することにあります。
以上の立場から、県民の願いと平成23年度予算案を鑑みた時、予算案に対し、反対するものであります。
第16号議案「平成23年度島根県病院事業会計予算」
第17号議案「平成23年度島根県電気事業会計予算」
第18号議案「平成23年度島根県工業用水道事業会計予算」
第19号議案「平成23年度島根県水道事業会計予算」
第20号議案「平成23年度島根県宅地造成事業会計予算」
次に、第16号議案「平成23年度島根県病院事業会計予算」、第17号議案から第20号議案までの電気、工業用水道、水道、宅地造成事業の公営企業会計予算についてであります。
まず、病院事業会計予算についてです。
経営効率化による民間委託推進は、医療機関の医療に対する責任が曖昧にされる恐れがあり、病院が自らやるべき業務や安全、衛生等についてチェックができず、県民サービスの低下が懸念されます。
県立中央病院では、希望者に対して看護師2交代勤務が行われておりますが、2交代勤務は看護師の健康の悪化、ひいては離職につながりかねません。また、患者にとっては、安全・安心な看護の提供の面から有害であることを指摘するものであります。
次に、企業局会計についてであります。
企業局会計については、供給見込みの立たない神戸川工業用水道事業、使わない水まで住民負担になっている江の川水道事業、そして積算根拠・需要予測を誤った斐伊川水道事業など、住民負担軽減や事業の見直しによる適正化が措置されておりません。
以上の立場から、賛同できません。
第25号議案「県立学校の教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例」第26号議案「市町村立学校の教職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例」
第36号議案「県立高等学校等の教育職員の休日及び休暇に関する条例及び県立学校の教育職員及び市町村立学校の教職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例」
次に、第25号議案「県立学校の教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例」、第26号議案「市町村立学校の教職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例」、第36号議案「県立高等学校等の教育職員の休日及び休暇に関する条例及び県立学校の教育職員及び市町村立学校の教職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。
これらの議案は、県立学校に主幹教諭を配置するため、所要の改正を行い、また、義務教育等教員特別手当を引き下げるものであります。
主幹教諭の配置は、教員の専門職性を弱め、教職員の階層化をすすめ、上意下達の体制をつくることとなり、子どもたちの教育にあたる教員を十分保障しないばかりか、かえって教育に困難を持ち込むものであります。
また、給与カットが行われている中でのさらなる手当の削減は、教職員の勤労意欲・士気の低下につながるものであります。
よって、これら条例案には、反対であります。
第34号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」
次に、第34号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてであります。
ゆきとどいた教育、ゆとりある学校実現のために、教員定数の削減は認められません。学校現場において、教員は超多忙の状態にあり、教職員の増員こそ実施すべきであります。
よって、本条例には反対であります。
第35号議案「島根県企業局職員定数条例の一部を改正する条例」
次に、第35号議案「島根県企業局職員定数条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、企業局において業務の効率化が図られ、斐伊川水道建設事業等の完了に伴い、職員定数を削減するものであります。
企業局職員の業務は多岐にわたっており、業務量は増大しています。職員の健康管理や住民サービスを向上する点からも定数削減は容認できません。
請願審査結果について
次に請願についてであります。
請願とは、憲法第16条に規定された国民の権利として、県民の声を県政に反映させるための大切な制度であります。
本議会は、任期中最後の議会です。徹底した審査を行った上で、審査結果の結論を出すことは、議会としての責務であると考えるものです。
この立場に立って、以下、討論いたします。
まず、請願第5号、第14号、第31号、第34号、第43号、第46号、第60号、第64号の8件についてであります。
これらの請願は、ゆきとどいた教育をすすめることを求めたもの、私学助成制度の堅持と私学助成費の増額を求めた請願であります。
貧困と格差の拡大が島根県でも子どもたちと教育に深刻な影を落としています。公立高校の授業料無償化が始まったとは言え、高校の教育費は大きな負担となっています。
私立学校に措置されている修学支援金や私学助成の改善・拡充も緊急かつ切実な課題です。公私を問わず、高校無償は国際人権規約で定められている世界のルールであります。
よって、教育予算、私学助成予算の増額を求め、子どもたちの成長と発達を保障する教育の条件整備を求めたこれら請願の採択を主張するものであります。
次に、請願第8号、第13号、第15号、第18号、第26号、第27号、第39号、第44号、第47号、第54号、第61号の11件についてであります。
これらの請願は、障害者自立支援法の応益負担撤回、後期高齢者医療制度の廃止、健康保険でよい歯科医療の実現、最低保障年金制度の早期実施、細菌性髄膜炎ワクチンの公費による定期接種化、子宮頸がん予防に向けたウイルス検査と細胞診への公費助成の実施、医療費の窓口負担軽減など、医療・介護・年金・福祉制度の充実を求め、社会保障予算の拡充を求めるものであります。
民主党の菅政権は「強い社会保障」にすると言いますが、それならば自公政権の社会保障費削減路線が残した傷跡を治し、改悪された医療・年金・介護・福祉制度を立て直すことが第一の課題となるはずです。
しかしながら、菅政権は、後期高齢者医療制度の廃止を先送りし、年金・医療制度の立て直しに背を向けています。
すべての国民に生存権を保障し、社会保障の増進を国の責務とした憲法25条の立場から、社会保障の各分野で負担軽減と不安の解消をすすめるべきであります。
この立場からこれら請願の採択を求めるものであります。
次に、請願第20号、第21号、第29号の3件についてであります。
これらの請願は、大田圏域の救急医療体制の安定的確保を求めるもの、離島・中山間地域の医療提供体制の充実を求めるもの、周産期医療の充実を求めるものであります。
医師不足で、病院や診療科の閉鎖が大きな社会問題となっています。安全・安心の地域医療の実現は、県民みんなの願いです。
先進国で最低レベルの医師数を計画的に増員し、OECD加盟国の平均並みの医師数にするために医学部定員を1.5倍化し、国の責任で教育・研修・養成体制を整備し、医師を計画的に増員すべきであります。
よって、地域の救急体制の整備・拡充を求め、地域で安心して子どもを産み、育てられる体制を求めるこれら請願は、採択すべきであります。
次に、請願第33号「協同労働の協同組合法(仮称)の速やかな制定を求める意見書」を政府等に提出することを求める件についてであります。
現在、各地でNPO法などを活用した仕事おこしが取り組まれており、労働者性が担保され、協同組合が正しく機能するための法整備が求められています。働く場を自分たちで作ろうとしている人たちを守る法律が必要であり、本請願の採択を主張いたします。
次に、請願第25号、第51号、第63号の3件についてであります。
これらの請願は、生活困窮者に対する補助金制度の創設を求めるもの、また最低賃金法の抜本改正と労働者の安定雇用の創出を求めるとともに、中小企業支援策の拡充を求めるもの、また公契約基本法の制定を求めるものであります。
貧困と不況から決別するには、賃金の底上げ政策が不可欠です。地域から景気回復を進めるには、最低賃金アップなどの労働政策に加え、中小企業への緊急支援や中小企業いじめ防止の法整備が必要であり、労働者の雇用維持と安定雇用の創出が求められております。
また、公契約のもとで働く人の雇用の質の向上と適正な分配を保障する公契約法の制定は、消費を拡大し、経済成長につながるものであります。
よって、これら請願の採択を主張します。
最後に、県西部におけるバス路線確保に関する国・県による支援を求める意見書提出についての請願であります。
過疎・高齢化が進む中で、移動手段を持たない交通弱者対策は、当然であります。過疎化を抑え、地域コミュニティを守り、住民の交通権、移動権を保障するために、地方バス路線維持対策の法整備等を求める本請願の採択を主張いたします。
以上で、討論を終ります。