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2011 年 6 月定例会 一般質問 (知事の政治姿勢について、島根原発について、プルサーマルについて、地域防災計画の見直しについて)

2011-06-22 この記事を印刷
○尾村利成議員 日本共産党の尾村利成でございます。
 質問の第1は、知事の政治姿勢についてであります。
 東日本大震災の発生から3カ月が経過いたしました。巨大地震と津波による甚大な被害の上に福島原発事故の被害が加わり、その被害は戦後未曾有の規模に達しております。
 犠牲になられた多くの方々への深い哀悼とともに、すべての被災者の方々に対し心からのお見舞いを申し上げるものです。
 福島原発では、地震の大きな揺れで運転中の原子炉は緊急停止しました。しかし、地震で送電鉄塔が倒壊したため、外部電源が使えなくなった上、非常用ディーゼル発電機も津波で水没し、すべての電源が失われ冷却不能の事態となりました。そのため、核燃料棒の温度が急上昇し、冷却水が蒸発して燃料棒が露出し、炉心溶融に至りました。核燃料被覆管と水蒸気が反応して水素が発生し、水素爆発を起こし、原発建屋や原子炉格納容器の損傷を招き、放射性物質が大量に放出される事態となりました。原発事故の3大原則と言われる、とめる、冷やす、閉じ込めるという多重防護が崩れ去ったのであります。
 福島原発の事故は想定外の事故ではありません。日本共産党や市民団体は、福島原発はチリ級津波が発生した際は、機器冷却海水の取水ができず、冷却材喪失による過酷事故に至る危険があると繰り返し指摘し、改善を求めてきたにもかかわらず、東京電力はこれを拒否してきました。
 また、政府は、日本では原発の重大事故は起きないという安全神話にしがみつき、安全対策をなおざりにして、原発をやみくもに推進してきました。政府と電力業界は、スリーマイル島原発事故やチェルノブイリ事故の教訓を学ぶことなく、国際原子力機関が勧告した過酷事故を想定した対策はつくらず、日本では過酷事故は起こり得ないと強調し、原発の新増設を推進してきたのであります。
 そこで、知事に伺います。
 私は、今回の事故は想定外の事故ではなく、人災であると考えます。安全神話への固執が事故を招き、事故後の適切な対応がとれない原因であると考えます。県政のトップとして、原発安全神話から決別する決意をまず伺います。
 原子炉は莫大な量の放射性物質-死の灰を内部に抱えております。今回の事故を通じ、どんな事態が起こっても、それを内部に閉じ込めておく完全な技術は存在しないということが明らかとなりました。冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となることや、一たび大量の放射性物質が外部に放出されれば、それを抑える手段が存在せず、被害は深刻かつ広範囲にわたり、社会全体の存続そのものを危うくする危険性が浮き彫りとなりました。
 知事に伺います。
 現在の原発技術は本質的に未完成であり、極めて危険なものと考えますが、所見を伺います。
 また、重大事故が起きれば、取り返しのつかない事態を引き起こす原発とは共存できず、社会的に許容できないと考えますが、所見を伺います。
 私はこの間、幾度となく本会議一般質問において、島根原発の安全対策や危険なプルサーマル、活断層調査などを取り上げてまいりました。私が強調したのは、島根県として主体的に安全対策に取り組むこと、国や中国電力に対して、県民の命と安全を守る立場できっぱりと物を言うことでありました。
 しかし、知事は、何か問題があれば国、中国電力に適切な対応を求めていくとか、まず第1に責任官庁である国が中国電力を監視、監督すべき、こういう答弁に終始し、原発の安全対策は国任せ、中国電力任せの姿勢であったではありませんか。
 私が本当に残念だと思ったのは、昨年、中国電力が511カ所もの点検漏れを公表した際の島根県の対応であります。中電は公表までの1年間、県民に情報を一切公開せず、点検漏れのまま運転を続けるなど極めて悪質でありました。だれが見ても構造的な隠ぺい体質で、不適切な運転であることは明白なのに、島根県は決して中国電力は不適切であるとは言いませんでした。こういう島根県の中電に対する弱腰姿勢に、県民からは失望と不信が広がりました。
 このたびの福島事故の最大の教訓として、島根県が検証すべきこと、総括すべきことがございます。それは、これまで国の原発、プルサーマル推進に無批判、迎合であり、国任せ、中電任せであった県の安全対策の姿勢を反省することであります。県として自主的、主体的に原発の安全対策に万全を期すべきであります。知事の所見を伺ってみたいと思います。
 今、県民から原発に対する不安が渦巻いております。「原発から県庁やオフサイトセンターまで9キロメートルしかありません。事故が起こったとき行政は機能するのですか。」、「保安院は原発の5段階評価で、島根原発を全国で唯一最低評価の1と断じました。島根は最も危ない原発ではありませんか。」、また「私たち高齢者は車もなく、事故が起こっても避難できません。危険な島根原発に避難してほしいです。」、こういう心配の声が多数出されております。
 技術的に未完成な原発は、一たび事故を起こせば被害は深刻かつ広範囲に及び、将来にわたって影響を及ぼします。そうした原発を世界有数の地震、津波国である日本に建設することは、まさしく極めて危険であります。とりわけ、島根原発は全国で唯一県庁所在地に立地し、半径10キロ圏内には県庁、市役所、病院などの都市機能が集中しております。原発から半径10キロ圏内には8万人、20キロ圏内には20万人、30キロ圏内には約40万人が暮らす人口密集地であります。そして、原発直近には宍道断層などの活断層が走り、考慮すべき海底活断層も集中しており、いつ大地震に見舞われるかわかりません。
 日本共産党は、島根県民の命と、そして島根県民の安全を守るためにも、島根県が原発からの撤退を決断すべきことを強く求めるものであります。知事の所見を伺います。
 原発からの撤退と同時並行で、自然エネルギーの本格的導入と、低エネルギー社会に向けた取り組みが必要であります。
 イタリアは原発からの撤退を国民投票で決めました。ドイツは2022年までに原発から全面撤退することを決定し、発電量の40%を原発に依存しているスイスも撤退を決めました。世界は、大事故を起こした当事国である日本の動きを注視しています。しかし、民主党政権は、最高水準の原子力安全を目指して取り組むというだけであって、原発からの撤退も縮小する方向も打ち出してはおりません。
 日本の自然エネルギーポテンシャルは、太陽光、中小水力、地熱、風力だけでも日本にある発電設備の電力供給能力の約10倍、原発54基の発電能力の約40倍であります。自然エネルギーの本格的導入は、エネルギー自給率を高め、新たな仕事と雇用を創出し、地域経済の振興と内需主導の大きな力になるものであります。島根県として自然エネルギーの普及と促進、低エネルギー社会への移行に向けて知恵と力を注ぐべきと考えますが、所見を伺います。
 原発からの撤退を求める国民の願いに立ちはだかるのが、原発利益共同体と政財官の癒着勢力であります。原発1基つくる建設費は、3,000億円から5,000億円かかります。原発本体は、原発メーカーである東芝、日立、三菱重工が建設し、土木建設は鹿島、清水、大林などのゼネコンが請け負っております。これに新日鐵を始めとする素材メーカーがセメントを供給し、資金手当ては大銀行が行い、それぞれが莫大な利益を手にする仕組みができ上がっております。この財界の中枢をなす大企業から自民党などへ企業献金が行われ、原発が推進されてきました。民主党は、電力総連などの労働組合から献金を受けてきました。そして、高級官僚は、電力会社や関連団体に天下るという政財官の癒着構造がつくられ、原発推進というエネルギー政策が進められてきたのであります。
 私は、政財官の癒着にメスを入れなければ、原発政策の転換はできないと考えるものです。島根県政において、原発の利益集団との癒着は許されません。県職員の再就職先、天下り先を電力会社やその関連企業に求めるべきではないと思います。知事の所見を伺います。
 最後に、中電の不透明な寄附についてです。
 電気料金は、適正原価に適正報酬を加えて算出され、多額な寄附行為は事業者による説明責任が不可欠であります。中電の匿名寄附など不透明な寄附は、原子力安全行政をゆがめるものと考えます。知事の所見を伺います。
 質問の第2は、島根原発についてであります。
 まず、津波対策についてです。
 保安院は5月18日、県と松江市に対し、島根原発の緊急津波対策は適切に実施され、安全性が確保されており、運転継続や再開に支障はないと説明いたしました。
 しかし、島根原発の津波対策は不十分であります。それは、島根原発の津波による引き波想定は、標準海水面からマイナス5.7メートルであります。しかし、海水引き込み口の水位が1号機ではマイナス2.4メートル、2号機ではマイナス3.5メートルであり、想定される引き波水位より取水口が上にある状態であります。すなわち、津波による引き波で海水取水が不能となり、冷却機能が失われるではありませんか。所見を伺います。
 この問題は、我が党の吉井英勝衆議院議員が5年前から指摘している問題であります。しかしながら、今に至っても改善が図られていません。国と中国電力の安全軽視の姿勢を厳しく批判するものであります。
 次に、島根原発1号機と2号機についてであります。
 1号機は1974年、昭和49年の営業運転開始で、設計寿命の30年をはるかに超え、運転歴37年の老朽原発であります。原発の長期運転は、配管や機器の劣化による応力腐食割れが問題となります。1号機は、福島第一原発の1から5号機と同型のマークI型原子炉です。格納容器の構造が古いマークI型は、経済性重視のため圧力容器からの放射性物質の放出を抑える格納容器が小さくて、地震に弱いと指摘されてきました。その上、マークIの安全確認の試験を行ったのは今から50年前であり、そもそもの設計思想が古く、設計時の地震対策が不十分であります。事実、マークIの設計者自身が、冷却機能喪失時の極めて急速なエネルギー放出によって強力な負荷がかかり、炉に亀裂が入り、放出を制御できなくなるとの危険性を指摘し、運転停止を要求するほどでありました。
 今回の福島事故は、この古いマークI型の構造的欠陥が現実に証明されるものとなりました。長期連続運転や高経年化対策など老朽原発酷使は中止すべきであります。島根原発1号機の廃炉、そして永久停止を検討すべきだと考えます。知事の所見を伺います。
 また、2号機においては運転を停止すべきであります。2号機は、炉心シュラウドひび割れ、原子炉再循環系配管のひび割れ、冷却水漏れ、火災発生などトラブルが続いております。原発事故の危険を最小限のものとするため、徹底した安全総点検を実施するなど、可能な限りのあらゆる措置を講じることを求めますが、所見を伺います。
 次に、3号機についてであります。
 我が党は、島根原発3号機を始め、全国の原発の新増設計画の中止を求めるものであります。改良沸騰水型原発である3号機は、コストダウンを目指して開発されたものです。原子炉格納容器は、鋼鉄製のものから未経験の鉄筋コンクリート製のものに変え、原子炉建屋と格納容器が一体構造となっており、安全性の検証もされていません。研究者からは、原子炉建屋の破壊が格納容器の破壊に連動する危険性が高いとの指摘もなされております。3号機の建設、運転の中止を求めます。知事の所見を伺います。
 次に、活断層調査についてであります。
 世界の原発建設地を見ると、世界一の原発大国アメリカは、地震地帯に原発をほとんど置いていません。フランス、ドイツ、イギリスも地盤が安定し、地震はほとんどありません。世界有数の地震と津波の多発国である日本に54基もの原発があるのは、極めて異常な状態であります。科学者は、日本列島が地震の活動期に入ったと警告しており、徹底した活断層調査を実施すべきであります。
 6月7日、政府が国際原子力機関に提出した事故報告書でも、地震の想定は複数震源の連動を考慮する、こういう対策を講じるとしております。島根原発周辺は、宍道断層を始め海底活断層、陸域での活断層などが発見されており、地震の巣の状態と言えるほど危険性が高い地域であります。中電は、宍道断層の長さを22キロメートルと評価していますが、専門家からは、もっと延伸している可能性があり、調査手法においてはトレンチやピット調査の位置が不適切であるとの指摘もあります。
 徹底した活断層調査の実施は、県の責務であります。安全協定第12条の適切措置要求権を発動し、活断層の再調査、再評価を実施するよう中電に要求すべきであります。その際、調査場所、調査方法において専門家の意見や知見を取り入れるべきであります。所見を伺います。
 次に、原子力教育についてです。
 文部科学省と経済産業省は、小学生用に「わくわく原子力ランド」、中学生用に「チャレンジ!原子力ワールド」という副読本を発行しています。この副読本では、原子力は施設事故を防ぐ仕組みや、いざという場合にも周囲への影響を防ぐ仕組みで、安全が守られているとか、大きな地震や津波にも耐えられるよう設計されているというように、電力会社の広報かのような文章が並んでおります。このように、原発は絶対安全と教える教材は不適切なものであり、使用すべきではありません。この副教材の県内での活用状況を始め、本県における国の原子力教育支援事業の取り組み実態を教育長に伺います。
 原子力教育は、原発の安全神話の間違いや、多様な発電の仕組みとエネルギーの可能性、放射線の有害さなど、基本的、科学的な事実を提供すべきと考えますが、所見を伺います。
 質問の第3は、プルサーマルについてであります。
 福島第一原発3号機では、昨年9月からMOX燃料を燃やすプルサーマル運転が行われていました。MOX燃料は、毒性の強いプルトニウムを含むだけでなく、ウラン燃料に比べさまざまな危険性が指摘されています。今回の福島事故はプルサーマルが絡んで、より事態を深刻にしています。
 中国電力は3月28日に、2号機でのプルサーマル計画は予定どおり推進すると表明いたしました。この中国電力のプルサーマル推進表明に対して、県民からは中電は一体何を考えているのか、事態の深刻さを全く理解していないではないか、こういった怒りの声が巻き起こっております。
 島根県は、プルサーマル地元了解の判断として、事故時における周辺環境への影響はウラン燃料と同等であり、使用済みMOX燃料の取り扱いや発電所内での貯蔵は、安全に行えるとの判断をいたしましたが、今日時点においてもなおこの認識に立ち続けているのですか、知事にこれは伺います。
 福島原発事故では、使用済み核燃料貯蔵プールの水も蒸発して水素爆発を起こし、放射性物質が漏れ出すとともに、敷地内土壌からはプルトニウムが検出されたではありませんか。そして、使用済み燃料はもちろん、使用済みMOX燃料、そして再処理によってプルトニウムを取り出した後に残る、放射能ごみである高レベル放射性廃棄物を安全に処理、処分する見通しは全く立ってないではありませんか。核燃料サイクル政策の破綻は明瞭であります。島根県として、使用済みMOX燃料の取り扱いが安全に行えるとした判断は、即刻取り消すべきであります。
 また、県は国による厳格な安全審査と中国電力における適正な運転が、プルサーマルを容認する前提の条件としていました。しかしながら、今回の事故で国の安全審査の誤りと甘さがはっきりしたではありませんか。プルサーマル運転について、地元住民の合意は全くありません。県としてのプルサーマル地元了解は撤回すべきであります。溝口知事の決断を強く求めるものであります。
 最後に、地域防災計画について伺います。
 島根原発から半径10キロ圏内には、県庁、オフサイトセンター、市役所、病院等の都市機能が集中しています。防災計画の見直し、強化は、緊急の課題であります。
 現行の地域防災計画原子力災害編では、計画の前提として、原子力発電所は周辺環境の安全を確保するため、原子炉等規制法、電気事業法等の関係諸法令に基づき、設計、運転、保守等各方面にわたって安全上の種々の厳しい規制が行われ、万一事故が発生しても周辺の公衆に影響を及ぼすことがないよう措置されています、このように規定しているのであります。
 すなわち、計画そのものが、原発が事故を起こしても安全ですという安全神話にどっぷりとつかった計画となっているのであります。計画の前提は安全神話と決別し、原子力の危険性を直視し、原発技術は未完成で危険なものであるという立場へと転換すべきであります。所見を伺います。
 次に、地震被害想定についてであります。
 現在の島根県の防災計画震災編では、松江市南方の地震、大田市西南方の地震、浜田市沖合の地震、津和野町付近の地震の4つの大地震を想定した計画となっています。
 私はこの間、被害想定は最新の知見、科学的な知見に立つべきであるということを指摘してきました。島根県では、昨年度から今年度にかけて地震被害想定調査事業を実施していますが、想定地震の見直しは行われているのですか。この事業の概要と進捗状況並びに調査過程で明らかとなった課題点等を伺うものです。
 また、原発震災を考慮し、島根県東部の地震被害想定は、宍道断層、原発周辺の海底活断層、鳥取沖断層とすべきと私は考えますが、所見を伺います。
 最後に、複合災害と計画区域の拡大についてです。
 現行計画では、地震被害と原子力災害が別個に策定されています。現行計画は抜本的に見直し、地震・津波災害と原発災害が重なる複合災害発生を想定した計画を策定すべきであります。また、計画区域の範囲は、原発から少なくとも半径30キロ圏まで拡大すべきと考えますが、所見を伺います。
 以上、島根県が県民の命と安全を守ることを強く求め、質問を終わります。(拍手)

○知事(溝口善兵衛) 尾村議員の御質問にお答えを申し上げます。
 冒頭、幾つか基本的な考え方についての御質問がございました。
 最初は、福島原発の事故は想定外の事故ではなくて人災だと、これについての所感はどうかと。それから、安全神話から決別すべきではないかという質問、それから大事故が起きれば取り返しのつかない事態が生ずるんであって、社会的に許容できない、原発がですね、そういう御質問がございました。関連をしますので、あわせてお答えを申し上げます。
 まず、原子力発電が日本でなぜ行われているのかと、行われてない国もあるわけでありますが、これはやはり国全体としての経済生活、あるいは国民の生活のために必要なエネルギーをどう確保していくかという国全体としてのエネルギー政策があって、そのエネルギー政策は、その国におけるエネルギーの供給手段あるいは国際的なエネルギーの獲得の可能性等々、もちろんそれから原発の安全性なども勘案しながら、これはやはり国が国策として決めておるわけであります。それに基づいて原発が設置をされ、設置をする際にはきちっと安全確保ができるんだという説明を国がされ、その基準をつくって原発をつくると。その過程で住民の方々に御理解をいただきながら進める。それに対して地元からはそういう原発の安全性等について国に内容をただす、そういうプロセスを通じてきておるわけであります。
 歴史を振り返りますと、いろんな事故が現実には起こってきまして、その都度安全基準を変えたり、あるいは原子炉の機能の見直しを行う、安全性を強化することを行う、そういうプロセスがずうっと続いてきておるわけであります。原子力といったようなものが危険であるのは、これは間違いないわけです。事故が起こるとあのようなことが起こるわけでありますから、しかしエネルギーを確保するという観点から、ある意味で必要に迫られて進んできてると、そういう長い経過があるわけであります。
 それから、そういう意味では、ほかのエネルギーと比べれば新しいものであるには間違いないわけであります。その都度技術の進歩も図られておるわけであります。現実はそういうことだろうというふうに感ずるわけであります。現実にこういう事故が起こるわけでありますから、全く安全ということはあり得ないわけでありますが、あらゆることを想定をして対策を打って、安全に行われるようにしなければならないということであります。
 そういう意味で、そういうプロセスを人災という言葉で表現することもそれは可能だろうと思うんです。プロセスがあるけども、事故が現実には起こるという形容することも可能でしょうが、そういうことの背後には、今申し上げたような国全体としてエネルギーをどう確保するか、そういうようなことがあるわけでありまして、そういう観点からも考えていかなければならない。しかし、我々が一番大事と考えますのは-国はそういう立場ですが-地元のほうは安全を確保するということが立場です。もちろん国も安全について責任を持つわけでありますが、そういう意味で国、事業会社、それと地元がいろいろやりとりをする、議論をする、そういう中で現実に進んできていると思いますし、そういうプロセスを今回も丁寧に慎重にやらなければならないというのが私の考えであります。
 そういう意味で、何が必要かということはこれまでも繰り返し申し上げておりますが、やはりあの福島原発で何が一体起こったのか、どういう原因でそういうものが起こったのか、そしてそういうものが起きないようにするためには、一体何をしなければならないのか、そのためには安全基準をきちっと直し、それに対応した対策を国が電力会社にきちっととらせるようにしなければならない、とらせてさらにそれをチェックをする、監督をする、さらに私どもが申し上げているのは、そういう国の対応について、IAEAなど国際機関あるいは専門家の方々からもちゃんと意見をもらうと、そういうプロセスを丁寧にやってもらいたいということを言っているわけです。
 そして、国のほうは、そうはいってもいろんな対策をとらなきゃいけませんから、まず3月30日には、津波の影響が非常に大きかったので、津波対策を指示をして、5月6日にはそういう指示に基づく電力会社の対応をチェックして、国としては津波対策の当座の対応は打ったと。さらに中長期的にやらなきゃいかん工事などもあると、そういう整理をした。我々はそれに対して地震の影響もあるではないかということはずっと言ってきておるわけであります。しかし、IAEAに出した報告書の中でも、津波の影響が大きいということを強調しながらも、地震の影響についてはまだ詳細はこれからというような記述もたしかありました。
 さらに、6月7日に発表されたIAEAに対する報告の中では、シビアアクシデントが起こった場合にどうするのかという対応も今度新たに出したわけです。津波の対策を3月30日に出して、5月6日にそういうことで差し支えないんだと国は言ったわけですけども、我々がそれじゃあ十分でないということをずっと言い続けて、今度はさらにシビアアクシデントが起こった場合にどうするのか、あるいは起きないようにどうするのかという対応も新たに示されたわけです。それらにつきましてもまだ十分ではないというふうに私どもは国に対して言っておるわけであります。シビアアクシデントが起きないようにするためにはどういう想定をして、どういう対応をしなきゃいかんというところについて、まだ十分我々も説明を受けてないわけであります。
 そういう意味で、国には今申し上げたようなことをきちっとやり、関係自治体に説明することはもちろんでありますけども、住民の方あるいは議会あるいは専門家にもいろいろ意見を聞いて、丁寧にそのプロセスをやってもらいたいということを言っているわけであります。そういうことが今の3つの問題に対する私どもの対応といえば対応でありまして、また何かありましたらお答え申し上げます。
 そういう中で、その次の質問として、議員は安全対策を国任せ、中電任せではなく、県として自主的、主体的に行うべきではないかと。国はやはりエネルギー政策をどうするかという観点からいっておりますから、我々のほうは、そちらは国がちゃんとやらなきゃいかんと。我々は安全対策の観点から、国の対応では足らない部分をやっぱり言っていくということが一番大事なわけですね。しかし、我々だけではそういうことはよくわからないことがありますから、県の原子力安全顧問を始めとして、そういう方々からも意見をよく聞くということを言っておるわけであります。
 今そういうプロセスも進めつつありますが、国の分析ですね、福島原発で起こったことに対する説明、データ、材料がまだ不十分ですから、そこら辺の議論は専門家の間でもなかなか進んでないわけです。専門家でも何が起こったのか、いろんな意見が違うわけです。あるいは原子力の安全委員長でも水素爆発が起こる可能性を予期しなかったと、こういうようなことであります。ここはやはりちゃんと腰を据えて原因の分析、対応をちゃんとやらなきゃいかんというのが県の立場でありまして、それが私どもの主体的な立場であります。
 それから、次の問題は、県が原発から撤退を決断すべきではないかということですが、それも今お答えを申し上げたようなことでありまして、やはりエネルギー政策、安全対策、そして地元の意見、そういうものに対してやはり国がきちっと耳を傾けて、そういうものにきちっと対応しない限り、この問題は前進はしていかない、していけないというふうに私は考えておるところであります。
 それから、自然エネルギーの問題につきましても、これは2つの側面があると思います。エネルギー全体の中で自然エネルギーをどう確保していくか、これは巨大な課題です。大きな資源も要するわけであります。それは国として中長期的にやっていかなきゃいかん課題であります。我々自治体のレベルあるいは住民のレベル、国民のレベルでは、そういう大きな問題はあるけれども、エネルギーを節約するとか、あるいは自然エネルギーを使うとか、あるいはそのための啓発活動をするとか、それは我々がよくやっていかなければならないだろうというふうに思いまして、自然エネルギーを使うやり方、あるいはエネルギーを節約するいろんな行動、そういうことはどんどんやっていかなければならないというふうに考えておるところであります。
 それから、中国電力等への職員の再就職と中国電力の寄附について御質問がありました。
 県の行政職で管理職の立場にあった者の再就職につきましては、届け出を義務づけておりまして、これまで中国電力及びグループ企業への再就職の実績はありません。
 それから、寄附の問題でありますが、匿名で行う場合も寄附者によってはあるわけでありますが、しかし電力会社は国の規制、監督を受け、国のエネルギー政策をある意味で地域的に請け負っておる企業であります。そして、その提供するサービスは地域一帯に及びますし、それから寄附などもコストに関連するわけでありますから、電力会社のような会社が寄附をする場合には、より透明性を通常の企業より求められるのは当然だというふうに思います。
 それから、島根原発の問題で、引き波、津波が引いていく場合の問題について御質問がありました。
 1号機、2号機とも冷却系の海水ポンプの取水可能水位の低下が、津波の引き波が起こるときには起こるというのが議員の説明でありますが、私どももそういう可能性があるというのは承知しておりますし、中国電力からも説明を受けておりますが、そのような場合には対策ができておるということであります。水位が一定程度下がった場合に、原子炉を停止させます。そして、海水ポンプも引き波によって故障する可能性がありますから、冷却用の海水ポンプも停止をすると。しかし、引き波が終わり、津波がおさまってまいりますと通常の状態に戻りますから、水位がそれによって回復すれば、今停止したものを再起動するということになります。そして、海水ポンプが停止している間は、原子炉建物と同じ15メートルの地盤に-純水というのがあるわけでありますけれども-純水を貯蔵しているタンクがありまして、そのタンクに大量の水がこういうときのためを含めまして貯蔵されておって、その水を活用して原子炉を冷却するシステムが起動するというふうになっているということであります。
 したがいまして、そういう説明を中国電力から受けておるわけでございますが、専門的なことでありますので、今後さらによく私どものほうもチェックをしていきたいというふうに思います。
 それから、島根原発1号機でありますが、これは御指摘のように非常に早い時期につくられた原発であります。私どもも国に対しましては、福島第一原発の1号機と島根原発の1号機はほぼ同型で、若干島根のほうが遅いんですけども、同型であるので、今回の福島における事故に際して、地震そのものの影響とか、あるいは高経年化に伴う影響が一体どうであったのか、よく説明をしてもらいたいということを国には申し入れております。まだ詳しい説明を受けておりませんので、現在でその取り扱いを判断できる状況ではありませんが、国だけではなくて私どもの原子力安全顧問に対しましても、こういう問題について照会をしておるところであります。
 それから、島根原発2号機の問題でありますが、議員御指摘のように2号機につきましてはトラブルがあったわけであります。これは大変遺憾なことだと私どもも思っております。その都度原因の究明と再発防止対策が実施をされ、国が指示をし中国電力が対応するということでありますし、我々もその対応をさらに再チェックをするというプロセスをとってきておるわけであります。
 それで、この2号機のように運転中の原発も停止をすべきだという意見があることは承知をしております。これにつきましては、我々原発立地道県が13ありますけども、そういう中でいろいろ議論をしたことがあります。そういうものを立地県としてまとめまして、国に申し入れをしておるわけでありますが、その中には現在稼働中のものを停止するというところまでには至っていないんです。これは議論の際に、5月7日に菅総理が浜岡はいろんな事情から停止を要請をするということがありましたが、ほかについては言及をされなかったということが1つあるわけです。そのことにつきましては、13の立地県、原発の立地する道県では、なぜそこがそういう取り扱いが違うのか、国にきちっと説明を求めようということは言っておるわけでございます。そういう意味で、2号機の問題ももちろん引き続きよく監視をしていかなければならないと思いますけども、現状ではそういう取り扱いになっておるということでありますので、御理解をお願い申し上げたいと思います。
 それから、3号機について御質問がございました。
 3号機は建設が終わり、装置の搬入等の段階にあるわけですけども、制御棒の駆動装置の問題が生じて、その後中国電力におきましてはまだ対応に時間がかかるということで、試運転でございますか、それについては延期をすると、いつまでかということはその段階ではまだ決めていないと、こういうことでございます。
 いずれにしましても、3号機の問題は今後の話でございますけども、いろんな問題、この型につきましては議員から御指摘のような問題も指摘をされていますから、我々も専門家の意見を聞き、中電からも聞き、国からも聞き、あるいはほかの柏崎とか同じ型のものがありますから、そういうものもよく聞いたりしまして対応を考えたいと、考える必要があるというふうに思います。
 それから、活断層の問題について御質問がありました。
 福島原発の事故に関連しまして、原子力安全・保安院は、従来耐震設計上考慮していない断層の活動性についての検討を行うように指示を電力会社にしておるわけでありますけども、これがどういうふうに進むのかまだよくわかっておりません。我々としては地殻変動や地震の影響について新たな知見が得られれば、それに基づいて検討が必要だと考えておりまして、その際には専門家や研究者の方々の意見、知見も当然取り入れて考えていきたいというふうに思うところであります。
 それから、プルサーマルについての御質問がありました。
 島根原発の2号機につきまして、プルサーマルによる発電の準備を行う、それに対して平成21年3月に事前同意をしたわけでありますが、その同意に当たりましては、プルサーマルにつきましてもいろんな新たな知見が今後出てくるわけでありまして、それから各界でいろんな問題点も指摘をされておるわけでありますから、私どもとしてはその同意の文書の中に、今後耐震安全性に関して新たな知見が出てくれば、その知見を反映させて安全確保を適切に対応するようにしてもらいたいということを、国にも中電にも申し入れておるところでございます。
 そういう観点から、福島原発の第3号機がプルサーマル発電をしておるわけですが、報道等ではその部分は熱量が大きいので、冷却について問題があるかのような報道もありましたので、そこら辺はわかりませんので、私どもは国に対しまして、一体そこはどうなっているのかということをきちっと調査をし、説明をしてもらいたいということを国に問いかけております。しかし、この点につきましてもまだそうした実態の調査が終わっておりませんから、回答を得てないわけでありますけども、政府の説明が出てまいりましたら、我々のほうも専門家にお聞きをするとかいろんなことをして、必要な対応をしていきたいというふうに考えておるところであります。
 以上、若干長く申し上げましたが、難しい問題でございますので時間がかかったわけでありますが、よろしくお願いいたします。

○総務部長(赤松俊彦) まず、地域防災計画原子力災害編の前提に関する問題についてお答えを申し上げます。
 御指摘のように、現在の地域防災計画原子力災害編の前提でございますが、法令の規制などによりまして、万一事故が発生しても周辺の公衆に影響を及ぼすことがないよう措置されているが、防災上の見地から、いかなる場合にも対処できるよう計画を策定するというふうになっておるわけでございます。
 今回の事故を踏まえまして、国の防災指針の見直しを当然要請しておるわけでありますし、県の地域防災計画の原子力災害編につきましても、抜本的な見直しが必要であるというふうに考えておるわけでございます。このような中で、この前提につきましても見直しをしていきたいというふうに考えておるところでございます。
 続きまして、地震の被害想定調査についてでございますが、地震の被害想定調査は、地震被害軽減の目標を策定をいたしますための基礎資料とする、あるいは県や市町村の地域防災計画に反映をさせるために調査を行うものでございまして、現在平成22年度、23年度の2カ年で新たに調査を行っておるところでございます。調査結果でございますが、来年の3月にまとめる予定としてございまして、学識経験者を委員といたします検討委員会を設けまして、現在検討を行っておるというふうな状況にございます。
 まず、調査におきまして想定をする地震でございますが、今回は5カ所というふうにしてございます。御指摘をいただきました宍道断層というのを始めまして宍道湖南方、大田市西南方、浜田市沿岸、弥栄断層帯の島根県に影響の大きいと考えられる地震を想定し検討をすることといたしてございます。
 また、津波発生を想定する地震でございますが、原発周辺の海底活断層も考慮いたしました出雲市沖合及び浜田市沖合というふうな2地点とともに、今回の大震災を踏まえまして佐渡島の北方沖、いわゆる日本海東縁部の地震についても追加をいたしまして、計3カ所で地震が発生した場合の津波を検討をするということにしておるところでございます。
 次に、複合災害を想定した地域防災計画の策定についてでございますが、現在の県の地域防災計画におきましては、原子力災害と他の自然災害の複合災害というようなものについては、基本的には想定をいたしておりません。今回の原発事故を踏まえまして、6月に実施いたしました国の重点要望におきましては、原子力防災対策について、複合災害を想定した原子力防災指針の見直しというようなものを要望をいたしたところでございます。こうしたことから、地震、津波と原子力の複合災害の対応につきましても、国の見直し状況を見ながら検討をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
 また、地域に関する問題でございますが、県の地域防災計画におきます防災対策を重点的に充実すべき地域につきましては、国の防災指針におきますEPZを基準として考えておるところでございます。今回の事故を受けまして、当然EPZの範囲というのは見直していただかないといけないわけでございまして、現在その範囲の見直しを国に要請をいたしておるところでございます。このEPZの見直しを含みます国の防災指針の見直しに併せまして、県の防災対策の範囲につきましても見直しを検討していくというふうに考えておるところでございます。以上でございます。

○教育長(今井康雄) 原子力教育に関します御質問2点についてお答えをいたします。
 まず、国の原子力教育支援事業についてであります。
 御質問のございました国が作成いたしました冊子につきましては、平成21年度末に国のほうから全国の各小中学校へ直接1部ずつ配布をされたものであります。
 御質問のございました点につきまして、文部科学省に問い合わせをいたしましたところ、次のような回答を得ております。震災後の国会での質疑や記者会見において、大臣等から安全面の記述に見直すべきところがあるとの見解が示されており、現在検討中であるという回答でございます。
 それから、この冊子の県内の小中学校の授業での活用状況を改めて調べましたところ、昨年度小中学校で合わせまして14校で、教科書の補足資料としてその一部を使った授業が実施されたと報告を受けております。
 一方、国の原子力教育支援事業の一つでございます原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金、この事業につきましては、島根県では平成17年度から毎年度約1,000万円の交付を受けておりまして、主に理科の授業で使用する観察実験器具の整備のために活用いたしております。平成22年度は県立学校4校、小中学校46校で活用がされております。
 それから、2点目でございます。原子力教育についてでございます。
 原子力を含めたエネルギー資源につきましては、主に中学校で学習することとなっており、その目標は、エネルギー資源の特性や発電の仕組みと特徴の理解、あるいはエネルギーの有効利用に係る態度の育成などであります。学校での実際の指導に当たりましては、原子力などのエネルギー資源や発電の長所、短所をしっかりと教え、正しい理解を深めていく必要があると思っております。その上で、限られた資源の中で環境との調和を図りながら、持続可能な社会をつくっていこうとする意識を持った児童生徒、こういった児童生徒の育成に力を入れていきたいと思っております。以上でございます。

○尾村利成議員 私は知事に質問で、この福島原発の事故を人災と考えるかどうかと、それから安全神話は一掃しないといけないけどどうかということを尋ねました。それは、ここをどうとらえるかによって、ここをきちっと総括しませんと、今後の島根原発の安全対策をきっちり行うことはできないわけですね。私は福島原発の事故というのは、これは明らかに人災だと主張いたしました。私だけが主張しているんじゃないんです。政府もこれは想定外の事故ではなかったということを認めているんですね。政府だけではなくて東京電力もこれは想定外の事故ではなかったということを、これは認めたんです。
 だから、政府は国会において、この事故を想定外という言葉は使いませんということを言っているんですね。それは当たり前だと思うんです。それは我が党、日本共産党を始め市民団体が、地震と津波が起きて全電源が喪失をしたときに冷やすということができなくなる、こういう過酷事故が起きる可能性がありますよということを幾度となく追及または指摘をしてきたけども、全く対策をとらなかったんです。それはなぜかといったら、東京電力にも政府にも、原発は過酷事故を起こさないという安全神話があったからなんです。だから、海江田経産大臣も安全神話は失われたと、こういうことを国会でも答弁をしているわけです。
 だから、私は知事にきっぱりと先ほどの質問に対して、あの事故は人災であった、島根県としては原発は事故を起こさないという安全神話とは決別するんだと、そういう知事の答弁を私はいただきたかったんですけども、知事としてもう一度そこの点を私は問いたいんです。お答えいただきたいということです。
 それで、国との関係なんですけど、知事は国の流れを御説明されました。すなわち3月30日、国は緊急津波対策を各事業者に指示をした。そして、5月6日、国は指示をして各事業者の緊急津波対策が適切に実施されているという、こういう旨の談話を公表したんです。保安院は5月18日に島根県に来て、知事に対して運転再開に支障はないという報告をした経緯があります。しかし、知事はその5月18日に、地震の問題も加味して考えないとだめですよという、こういう回答を保安院にされているんですね。保安院の動きを見ると、3月11日に事故が起きて、もう5月6日に全国の原発はもう安全ですよ、津波対策はできてますよということでゴーサインを出しているんですね。
 それだけじゃないんですよ。6月7日の日に政府がIAEAに報告書を出した。これは地震、それから津波の対策を強化しないといけない、こういう報告書を出した。それから電源の確保の課題もあるという、こういう問題も出した。過酷事故の対策もとらなければならないという報告書も出した。これが6月7日なんです。だけど、経済産業大臣である海江田大臣は、6月18日に安全確認ができたから全国の停止中の原発、どうか稼働してくださいということを言ってるわけですよ、国が。だから、今また国が同じ誤りを繰り返そうとしている。これはまた国が安全神話につかってるわけですよ。一度ならずとも、またもやつかってるわけですよ。安全神話から脱却してないんですよ、国自身が。それが今の国の状況なんですよ。だから、私は国に対して70万の県民の命を守るためにも、きっちり知事、物を言ってくださいと、問題があることは問題ですよと言ってほしいということを私は強く求めてるわけです。その点で知事の再度の御答弁をお願いしたいと思います。

○知事(溝口善兵衛) 2つ御質問があったわけです。人災という言葉、そして安全神話という言葉であります。私はそういう今回のような事故があってはならないと、原発を行う以上ですね、ということを申し上げているわけでありまして、どういう言葉を使うかというのは、人によって人災もいろいろ定義が違いますから、例えば原発のあの福島の事故が起こって、いろんな対応が十分でなかったということで、人災というようなかなり狭い意味でお使いになる方もおられますし、尾村議員のように、自分たちは危ないと、こういう問題があるといろいろ言ってたと、そこを考慮しなかったから人災だという定義の仕方もありますし、それはそういうものを想定外にしてはいけないんだと、あらゆるものを想定の中に入れて安全対策をつくらなきゃいかんのだという議論もありますし、言ってることは同じなんです。こういう福島のような事故があってはならないわけであって、私が言ってますのは、今回の事態がなぜどのように起こったのか、それに対する分析をちゃんとして、それに対する対応をきちっとやってもらいたいと、そういう対応をいろんな人の意見も聞いたり、外部の人の意見も聞いたり、慎重に丁寧にやってもらいたいと、我々自身もやっていきますという言葉で申し上げているわけであります。考え方に違いは私はないと思います。言葉の表現の、形容の問題だろうと思います。
 それから、安全神話の問題も、ああいう事故が起こったということでは、それは安全神話のようなものはもともと何といいますか、そういうものを保障しているものでも何でもないわけでありまして、そういう意味で安全神話が壊れたといえば当然そういうことだと思います。
 それから、そういう意味では政府のほうもIAEAの報告の中で、シビアアクシデントというものが原因はどうあれ起こり得ると、それに対して必要な対策をとるようにとりあえず命じたわけです。私はそれに対して政府のほうに伝えておりますのは、あの中ですぐとらなきゃいかん対応と、少し時間のかかる対応とに分けてあるわけです。すぐとらなきゃいかん対応について政府はチェックをして、そこができたから再開をお願いしたいということで政府は言っておられるわけです。立地県は、ほかの県も同じですけども、政府はもともと福島で起こった事態に対しての評価、分析、それに対する安全基準の修正、変更、見直し、そういうところが十分できてないということをずっと政府に言ってるわけです。そこをきちっとしないと進みませんということがありますし、それからシビアアクシデントについては、どこまで当座やるのかという問題があるわけです。政府は、電力需給とか国のエネルギー政策全体を所掌しておりますから、そういう立場でいろいろおっしゃるけども、我々のほうは安全の立場から申し上げているということであります。
 だから、いい悪いということじゃなくて、そういう議論をやるほかないわけです。そういうものに対してどういうことが合理的であるか、あるいはどうなのかということをちゃんとそういうプロセスをやるほかないということを申し上げているわけです。そこは立地県の、少なくとも知事のほうでは変わりありません。それが直接のお答えになったかどうかはわかりませんが、尾村議員の2つの御質問に対するお答えであります。
 できるだけ私もそういう意味で、わかりやすく説明しなきゃいかんということは常に考えておりますが、ただいろんな言葉がいろんな意味で使われておりますから、そこは慎重にしなきゃいかんと思います。
 それから、政府と我々の関係は対等な関係なんですね。あちらが何か物を言ったら我々がやらなきゃいかんという立場にあるわけじゃないんです。我々は、それは政府の立場はそうかもしれないけども、我々はこういう立場で政府にさらにお願いをするということなんです。そういうやりとりが続いているということなんです。だから、政府が何かしたら、それでもう決まったというようなことじゃないわけであります。だから、そこを余り何といいますか、固定的にとらえる必要はないんで、そういうやりとりをちゃんとやっていかなきゃいかんというのが私の考えでありまして、そういうプロセスを私は慎重かつ丁寧に対応していく必要があるということを申し上げているわけです。
 したがって、議会でもお話し申し上げましたが、県の立場を決めるについても、まだまだ時間がかかるでしょうということを申し上げているわけです。以上であります。

○尾村利成議員 知事、言葉の解釈をやるつもりはありませんけど、私が人災と言ってるのは、これは今回の福島の事故は福島県民はもちろんのこと、国民には何ら責任がないんです。全くないんです。だれに責任があるのかということなんです。今回の事故の責任は、やはり国にあるんです。国が安全対策をしっかりとらなかったわけです。電力会社もとらなかったんです。ここに責任があるんです。ですから、こういう被害を与えた国と、そして電力会社というのは、被災者に対してきっちり補償しないといけない、そして全国民に対して二度とこういう事故が起こらないようにしなければならない、私はこういう点で島根原発を始め原発からの撤退を国、そして県も決断すべきだということを申し上げたわけであります。時間がなくなりましたので、以上で終わります。

○知事(溝口善兵衛) 尾村議員がおっしゃったことと同じなんですね。原発を進めるというのは、国策として行っているわけですから、そこから起こることについては国が当然責任を持つほかないわけです。それは当たり前のことなんです。そして、事故が起こったらそれを補償するというのも国がやるほかないわけです。国と申しますか、事業者を含めてでありますけども、それは当たり前のことなんです。そういうことを申し上げているわけです。だから、そこが人災かどうかというような言葉の問題は、いろんな意味に使われておりますから、そこは正確に申し上げたほうがいいということを申し上げ、それが私の考え方だと、こういうことであります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画