2011 年 11 月定例会 平成 22 年度決算認定に対する討論
2011-12-16 この記事を印刷
日本共産党の萬代弘美です。
日本共産党県議団を代表して、認定第1号議案から6号議案までの6件の決算認定について、認定とした委員長報告に対し、反対の討論を行います。
予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡であると言われています。
議会における決算確定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度の予算編成に資するため、広範な角度から住民の立場で行政評価を検証するものであると理解しております。
この立場から、以下、討論を行います。
平成22年度一般会計及び特別会計の認定について
まず、認定第6号議案「平成22年度決算の一般会計及び特別会計の認定について」です。
財政分析指標を見ると、公債費負担比率は30.2%で、全国平均の約19%と比較して、高い水準にあります。また、実質公債費比率は17.0%で、前年度に比べて0.3ポイント改善し、地方債の発行にあたって、国の許可が必要となる18%を下回ったものの、依然として高い状況が続いています。
地方債現在高は1兆73億9,425万円余で、歳出決算額の約2倍となっており、県民一人当たりで試算すると、約140万円となり、全国一高い状況です。
これら財政悪化の原因は、この間の身の丈を超えた公共投資にあったことは明白です。財政再建にあたって、まずすべきことは、不要不急の事業、県民合意のない事業、需要予測を見誤った事業について県民目線でメスを入れ、徹底した総点検を行うことではありませんか。
例えて言えば、県民合意のない大手前通り拡幅事業、不要不急の大規模農地開発などの見直し、精査です。
県民の県政への願いは、医療、福祉、教育の充実です。この願いと平成22年度決算を鑑みれば、この県民の願いと乖離した平成22年度決算は不認定とせざるを得えません。
各論
各論的に10点申し上げます。
第1に、財政健全化基本方針に基づき、さらなる総人件費抑制策がすすめられました。職員給与引き下げ、定員削減により、人件費は対前年度比1.7%の減となりました。
相次ぐ給与の引き下げ、職員定員の削減は、職員の士気の低下や組織の活性化・行政能力の低下につながりかねません。給与カットを撤回し、職員の労働条件の改善を求めます。
第2に、歳出の効率化と質的改善の名のもとに、事務事業や補助金を削減し、県民サービスを低下させ、市町村に負担を転嫁しました。住民に身近なサービスを提供する市町村への支援施策を充実するべきです。
第3に、県税の滞納額の縮減と称し、個人住民税の差し押さえ件数は、1,896件に及びました。納税緩和措置を周知徹底するとともに、生活に困窮した県民への生活再建支援に力を注ぐべきです。
第4に、県内で国民健康保険滞納世帯が1万世帯を超え、その制裁措置として命綱である保険証を取り上げられた世帯は、約900世帯に達しています。
介護保険料の未納者数は本年4月時点で、3,400人を超え、特別養護老人ホームの入所待機者数は、本年7月時点では6,400人を超えています。
また、福祉医療費の1割負担は、障がい者など受給者に耐えがたい痛みを押し付けています。
県として、市町村の国保会計に法定外独自支出金を行い、介護保険の保険料・利用料の減免制度の創設、福祉医療の1割負担の撤回を決断すべきです。医療や介護サービスを充実させ、県民の福祉を増進するために、社会保障予算の拡充を求めます。
第5に、城山北公園線拡幅事業のように、そこに住む関係住民が反対し、松江の城下町を壊す事業は中止するべきです。交通渋滞解消との事業目的は完全に破綻しています。
県財政危機と言いながら、県民の理解と納得が得られない事業の強行は、県政への失望を広げるだけです。
第6に、農業についてです。平成22年度の農林水産業費は415億円余ですが、そのうち農産物価格補償支払い額は25億円余であり、そのうち県費対応額は615万円しかありません。
島根農業の再生、持続可能な農業経営の実現、耕作放棄地の解消に向け、価格補償の充実こそ農林水産業費の主役にすべきです。
また、島根県として、農林水産業を土台から破壊し、食の安全、医療、雇用などのルールを壊すTPP参加に断固反対の意思を表明するべきです。
第7に、企業誘致に偏重した商工行政の転換を求めます。この間、誘致企業は、莫大な企業立地促進助成金を受け取りながら、求人数を減らし続け、雇用においての社会的責任を果たしていません。商工労働予算の柱に地場産業・地元企業の育成を据えるべきです。
第8に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては、同和教育をすべての教育の基底に据え、同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。
また、民間の同和団体に対する突出した補助金の支出が逆に不公正を生み出しています。同和教育は終結し、同和団体への補助金は、他の補助金交付団体との公平性を図るべきです。
第9に、教育においては、子供たちを競争に追いたて、ふるいわけする学力テストは中止すべきです。貧困と格差から子供と教育を守り、少人数学級の実現ですべての子どもがわかるまで丁寧に教えられる教育環境をめざすべきです。
また、本県教育が臨時的任用教職員によって支えられている現状を是正するために、正規教職員の採用を増やし、臨時教職員の待遇改善を求めます。
最後に、東日本大震災に伴う福島原発事故により、原発の安全性に対する県民の不安が高まっています。日本で唯一、県庁所在地に原発が立地する島根こそ、原発からの撤退を決断し、自然エネルギーの普及と促進に向け、知恵と力を注ぐべきです。危険な老朽原発は廃炉、プルサーマル計画の撤回、3号機の建設・運転の中止を求めます。
また、日本列島が地震の活動期に入った今こそ、県として徹底した活断層調査を実施すべきです。
平成22年度島根県病院事業会計決算の認定について
次に、認定第1号議案「平成22年度島根県病院事業会計決算の認定について」です。
経営効率化による民間委託推進は、県民との間において弊害が生まれています。医療事務の民間委託においては、公費負担医療制度対象者に対する制度案内の不徹底や差額ベッド代を徴収してはならないとする厚生労働省通知に反する事例の発生などの不手際が生まれています。
また、県立中央病院では、希望者を対象に看護師2交代制が実施されていますが、2交代勤務は、看護師の健康の悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては、安全・安心な看護の提供の立場から有害であることを指摘します。
病院経営において、県民に対する公正な医療サービスの提供と患者さん中心の医療サービスを提供すると宣言した県立中央病院憲章に基づく医療サービス提供を強く求めるものです。
平成22年度島根県公営企業会計決算について
最後に、認定第2号議案から第5号議案までの公営企業会計決算についてです。
島根県公営企業は、県内河川に多目的ダムを建設し、水力発電を開発し、上水道、工業用水道事業を行い、その工業用水によって工業団地を造成しており、これらの事業の一連の実施を基本としています。
この事業形態は、県民の立場から弊害が生まれています。
それは、第1に、公共投資と河川総合開発が大企業や誘致企業の電気、工業用水確保を主軸とした事業となっており、上水道、農業用水利などの民生が後景に追いやられていることです。
第2に、需要予測が過大なため、多額投資に見合う需要が期待できず、損失負担が県民に転嫁されています。
供給見込みの立たない神戸川工業用水道事業、使わない水まで住民負担になっている江の川水道事業、水需要予測を誤った斐伊川水道建設事業など、住民負担軽減や事業の見直しによる適正化を強く求めます。
本年4月から始まった斐伊川水道建設事業の最大の問題点は、使わない水まで住民の負担となっていることです。尾原ダムの水の使用率は約6割しかなく、4割の水は使われていません。高い水道料に苦しみ、平成22年度において、松江市での給水停止実施件数は760件にものぼっています。
事業主体として、水需要予測・積算根拠を見誤った責任を認め、料金低減策を講じるべきです。
最後に、今回の決算審査にあたり、全体会、分科会におきまして、その過程で100項目を超す質疑、資料提供を求めました。
これらの点ですべての執行部の皆さんから誠意あるご回答と資料の提供を頂きましたことに対して、心からの感謝を申し上げます。
以上で討論を終わります。