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2013 年 9 月定例会 一般質問 (豪雨災害について、消費税増税について、社会保障制度改革プログラム法案について、原発の新規制基準について)

2013-09-25 この記事を印刷

日本共産党の尾村利成でございます。

1. 豪雨災害について

 質問の第一は、豪雨災害についてです。

 7月、8月と県西部を中心にした豪雨災害が発生しました。被災されたみなさまに心からのお見舞いを申し上げます。

 これら豪雨災害にあたり、県は、迅速なる初動体制を構築しました。被災自治体と力を合わせ、早期復旧・復興にご尽力されていることに対し、敬意を表するものであります。

 わが党も、一日も早い被災者の生活再建が果たされるよう救援・ボランティア活動に取り組んできました。私も、被災した津和野町や江津市などの現地調査に入り、被災者をはじめ、自治体関係者から様々なご意見を伺ってきました。被災者の切実な要望をもとに、以下、質問いたします。

 まず、災害時の自治体の役割についてです。

 今回の豪雨災害は、命を守る地方自治体と自治体労働者の役割を問い直しました。

 被災自治体からは、被災者救援や避難所の設置、農地や農業施設、公共土木施設などの被害調査にあたって職員の手が足りず、県の素早い対応に感謝しています、との声が寄せられました。

 県内の市町村では、平成の大合併や自治体職員の大幅削減などの自治体リストラによって、公的な力が弱まり、住民生活を守る自治体の機能が低下しています。

 事実、邑南町や江津市、浜田市などにおいて、この5年間だけでも50人から80人もの職員が減っています。今回の災害を受けて、自治体の首長からは「今後、農業や土木などで専門職を採用したい」との声も出されています。

 政府も、民営化と職員削減を進めた集中改革プランによって、自治体の住民サービスが後退し、命を守る大事な役割を果たせなくなっていることを認めています。

 県においては、この10年間で、約1,000人もの定員削減が行われましたが、この度の災害時、どれだけ県の職員や自治体職員の力が頼りにされ、被災者を励ましたでしょうか。防災を支えるのは「人の力」であり、「マンパワー」です。
 
 今回の豪雨災害を踏まえ、県としてさらなる職員削減路線は改めるべきです。県民の命と安全を守る立場で、職員定数のあり方を見直し、検証すべきであります。知事の所見を伺います。

 次に、消防力と防災力の強化についてです。

 国の地方交付税の削減と総定員削減政策により、自治体の消防力が低下しています。消防職員は、国の消防力整備指針を満たしていない現状です。過疎・高齢化社会が進む中、救急・消防体制は住民に最も身近なところで充実させることが大切です。

 災害発生時、災害対応の中心的役割を担う消防防災の体制において、職員の不足が常態化しており、体制の強化が求められています。市町村の現状と県の認識を伺います。

 また、防災力を高めるために、市町村と連携し、ハザードマップ、避難勧告の発令基準、要援護者避難支援計画など災害対策を見直し、強化すべきです。また、福祉避難所の指定を急ぐべきであります。所見を伺います。

 次に、住家の被害認定について伺います。

 被災者生活再建支援法では、住宅が全壊した世帯に対しては、最大で300万円の支援金が支給されます。また、半壊、解体など被害程度や再建方法に応じて支援金が支給となります。

 被災者からは「住めない・暮らせない・住み続けられない被災者すべてを救済する制度にしてほしい」との要望が出されています。国は、支援対象や支給額の拡充を図るべきであり、県においては、床上・床下浸水への支援金制度を創設するなど支援策拡充を検討すべきであります。

 私は、住家の被害認定にあたって、平成18年(2006年)7月に出雲を襲った豪雨災害での痛苦な教訓を忘れることができません。この問題は、平成18年(2006年)9月議会でも取り上げました。

 この水害は、出雲で135棟の床上浸水の被害を出しました。中には、家の中に濁流が押し寄せ、畳や床、水まわり、壁など家全体が甚大なる被害を受け、改修に1,000万円を超す出費が必要となる人もあったほど、ひどいものでした。

 住家の被害認定にあたって、床上浸水の場合は、外観目視による一次調査のみならず、内部への立ち入り調査を実施し、住家全体の損害割合を求める二次調査を行うべきであります。しかし、当時、出雲市は135棟の床上浸水があったにもかかわらず、たった2棟しか二次調査を実施しませんでした。

 その結果、被害認定は「全壊ゼロ」という実態とは全く異なるもので、被災者に対する何の補償もありませんでした。

 当時の質問で、私が強調したのは、平成16年(2004年)10月28日に内閣府から発出された通知についてでありました。通知では、次のように言っていたわけです。

 「浸水により畳が浸水し、壁の全面が膨張しており、さらに浴槽などの水まわりの衛生設備等についても機能を損失している場合等には、一般的に大規模半壊または全壊に該当することになるものと考えられる」―このように通知しているのであります。

 そこで、伺います。

 出雲での被害認定の教訓に学んだ上で、今般の豪雨災害による住家の被害認定の認定状況はどうなっていますか。また、浸水被害において、内閣府の被害認定基準の運用指針や平成16年10月発出の「浸水等による住宅被害の認定について」の通知に基づいた認定となっていますか。県として被災者救済の視点に立った弾力的な認定を行うよう、市町村に対する支援を行うべきです。今後の対応を伺います。

 次に、農業支援についてです。

 米価の低迷やTPP推進により、農家の生産意欲が低下している中での災害は、離農に拍車をかける恐れがあります。農家からは「稲刈り目前の被災でショックが大きい」「農機具も水に浸かってしまった。これを機会に農業をやめようと思っている」など悲痛な声が出されています。

 農家に対して、農業再建に向けての希望ある施策が必要であります。農地復旧などに伴う被災農家の負担を大幅に軽減するとともに、水稲、農作物の被災等、農家への支援策を強化すべきと考えます。所見を伺います。

 次に、公共土木施設の復旧についてです。

 長年、その地域に住み続けている住民こそ、危険箇所を熟知しています。道路、橋梁、河川などの復旧事業にあたっては、原形復旧にとどめず、再度災害防止の観点に立ち、地域住民の意見を反映させた改良復旧とすべきであります。所見を伺います。

 被災者は、多大な損害を受け、生活再建に向けての不安と経済的困難を抱えています。被災者支援制度には、県税や国保料(税)、介護保険料など社会保険料の徴収猶予・減免の制度があります。その申請状況と実績はどうなっていますか。また、支援制度をすべての被災者に周知・徹底することが必要です。具体的対応方針を伺います。

2. 消費税増税と社会保障制度改革プログラム法案ついて

 次に、消費税増税と社会保障制度改革プログラム法案についてです。

 労働者の賃金は、1997年をピークに70万円も減少しています。パートや派遣など非正規雇用が同時進行して増え、年収200万円以下の労働者が1,000万人を超えています。島根県内においても、非正規労働者は増え続け、雇用者に占める非正規割合は35%を超えてしまいました。

 賃下げと雇用の不安定化による暮らし破壊が日本経済をデフレ不況にしてしまった最大の原因です。

 2012年実施の総務省・就業構造基本調査では、世帯所得が100万円未満の世帯は1割を超し、世帯所得300万円未満の世帯は約4割となり、世帯所得400万円未満の世帯が5割を超えました。長引く不況のもとで、貧困と格差が広がり、県民の苦悩が広がっています。

 このような中、消費税の増税で負担増を強いられた上に、生活を支える安全網である社会保障まで壊されては、たまったものではありません。

 政府も「消費税率の引き上げに伴う低所得者対策を実施する」と言及せざるを得ないように、消費税は、所得の低い人には負担が重く、所得の多い人には負担が軽いという不公平な税金で、憲法の応能負担原則に反するものです。「社会保障のため」と言いますが、立場の弱い人に、これ以上の負担を押しつける消費税増税は、社会保障財源として最もふさわしくありません。

 また、滞納額が最大の税金が消費税です。2012年度の租税新規発生滞納額は5,935億円で、そのうち消費税は3,180億円にのぼり、税額で全税目の54%にも及んでいます。

 多くの滞納者が生まれる税金は、まともな税金とは言えません。滞納する中小業者に対し、納税を強制すれば、滞納がなくなるどころか、倒産や廃業が増えるだけです。消費税は、膨大な滞納を招き、中小業者の営業と生活を壊す欠陥税制と言わねばなりません。

 また、消費税は、雇用を脅かすリストラ促進税制です。消費税は、売上分から仕入・経費分を差し引いて納税額を算出しますが、正規雇用の賃金・給与は非課税のため差し引けません。しかし、正規雇用を派遣労働や請負会社に置き換え、外注化すれば差し引きが可能となります。

 そのため、大企業は、消費税負担額を減らすため、正規雇用を減らし、派遣・請負に置き換え、部門を丸ごと外注化・子会社化しています。消費税は、まさしく、非正規労働者を増やす労働者いじめの税金であります。

 そこで、伺います。

 消費税の税率引き上げは、さらなる滞納者を生み、中小企業の倒産や廃業の増加につながることとなるではありませんか。また、価格に上乗せできない中小業者は、身銭を切って払わなければならず、雇用においては、リストラを促進し、不安定雇用を拡大させるではありませんか。所見を伺います。

 安倍首相は、消費税増税に伴い、景気の腰折れ回避として、3%の増税分のうち2%分に相当する約5兆円規模の経済対策を実施するとしています。このことは、消費税増税が経済悪化に直結することを首相自身が認めたことにほかなりません。

 経済対策の中身は、復興特別法人税の前倒し廃止や法人実効税率の引き下げなど、大企業優遇策のオンパレードです。弱者から取ったお金を強者へ還流するなど、弱肉強食そのものではありませんか。

 そもそも、消費税増税は「財政再建」と「社会保障の拡充」が口実でした。消費税収を景気対策に使うというのであれば、増税の口実はもはや成り立ちません。国民に重税を課しながら、その一方で大企業には減税するなど、今回の増税に道理がないことがはっきりしてきました。

 消費税増税中止こそ、最大の景気対策です。国に対し、増税中止を強く求めるべきであります。所見を伺います。

 次に、医療機関の損税についてです。

 医療機関は、仕入れに際して、保険診療に必要な医薬品・医療機器等に係る消費税を支払っています。医療は命と健康に直接かかわるため、保険診療は「非課税」とされ、医療機関は、患者から消費税を受け取ることができません。その結果、医療機関は仕入部分の消費税を負担することとなり、控除対象外消費税・損税が発生します。

 損税は、人件費・設備などの費用圧縮を招き、医療の質の維持・向上に影響を及ぼし、医療機関の経営を大きく圧迫しています。

 そこで、病院局長に伺います。

 平成24年度・2012年度の県立病院の損税額、ならびに増税に伴う損税の推計負担額を伺います。

 また、損税解消に向け、保険診療にゼロ税率適用を強く求めるべきであります。損税解消に向けての県立病院の取り組みをお聞かせ下さい。

 次に、社会保障制度改革プログラム法案についてです。

 社会保障制度改革国民会議の最終報告書を受け、8月21日、安倍内閣は、公的介護・医療・年金・保育の諸制度を改革していく手順を定めたプログラム法案の骨子を閣議決定しました。

 法案骨子は、介護では、要支援者を保険給付の対象から外し、特別養護老人ホーム入居を要介護度3以上に限り、施設の居住費・食費を軽減する補足給付を縮小する方向を列挙しました。

 医療では、70歳から74歳の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げ、国保料の引き上げを招く国保の運営主体の都道府県への移行、医療費削減のための病床抑制システムの導入などが盛り込まれています。

 また、年金では、支給額の削減や公的年金等控除の縮小による課税強化、保育では、公的責任を投げ捨て株式会社の参入を促進するシステム実施など、社会保障の負担増と給付削減が目白押しです。

 深刻なのは、安倍政権の社会保障切り捨てによって、すでに国民の暮らしの基盤が取り崩されていることです。今年8月から生活保護費削減がはじまり、生活保護受給世帯からは「猛暑なのに扇風機やエアコンを我慢して具合が悪くなった」などの健康被害が報告されています。

 10月からは、高齢者と障がい者の年金額を段階的に2.5%切り下げる減額が開始されます。連動して、ひとり親家庭を対象に支給される児童扶養手当、障がいのある子どもへの手当、被爆者の9割が受給している健康管理手当の削減も一斉に実行されることとなります。

 この間、何度も指摘してきましたが、国保や介護など社会保険料未納者など低所得者が社会保障制度から排除されています。国保料未納者は、命綱の保険証が取り上げられ、介護保険料未納者の中には、給付制限を受けている高齢者も生まれています。

 今日、受診抑制や介護の利用抑制によって、県民の命と健康が脅かされている現状を、県として、どのように認識し、対応しているのですか、伺います。

 医療・介護・保育などの社会サービスは、人間的生存に必要不可欠なものを満たすものでなければなりません。

 しかし、社会保障制度改革国民会議の報告書は、「自助」を社会保障の基本にする「自己負担」原則を打ち出しました。すなわち、社会保障に対する国の責任を放棄し、国と地方の社会保障費の大幅削減をねらっているのであります。

 社会保障は、憲法に基づき、「給付は必要に応じ、負担は支払能力に応じて」保障されなければなりません。国民会議の報告書は、「必要充足・応能負担原則」に反するものであります。

 これ以上の国民負担の大幅な増加と給付削減を中止するよう国に強く求めるべきであります。所見を伺います。

3.原発の新規制基準について

 次に、原発の新規制基準についてです。

 福島第1原発では、放射能で汚染された地下水が海に流出し、タンクから高濃度汚染水が漏れ出す事態が相次ぎ、放射能汚染の拡大をコントロールできない非常事態に陥っています。

 安倍政権は、「原発再稼働ありき」の立場に立ち、放射能汚染拡大という危機に直面しているのに「世界一安全な原発技術を提供できる」と言って、原発輸出推進の無責任な態度を取り続けています。

 7月に新規制基準が施行されて以降、電力4社は、6原発12基の再稼働に向けた規制基準適合性に係る審査・安全審査を原子力規制委員会に申請しました。

 現在、安全審査は、3つの審査チームの80人体制で、週3回のペースで進められています。原子力規制委員会は、危機的事態が続く福島第1原発には、たった10名程度の職員しか常駐させていません。しかし、再稼働に向けた安全審査の人員は、さらに増員しようとしています。規制委員会のあり方が逆立ちしているではありませんか。

 今、やるべきことは、汚染水問題解決に向けて、専門家や技術者の知恵と力を総結集することです。原発再稼働に奔走する電力会社や規制委員会の姿勢は、非常識で、営利優先と言わなければなりません。

 そこで、知事に伺います。

 原子力規制委員会は、再稼働審査優先の姿勢を改め、福島事故の収束にこそ人的・物的資源を集中させ、総力を挙げるべきです。所見を伺います。

 中国電力は6月14日、島根原発2号機の再稼働、3号機の新規稼働に向けて、規制委員会に安全審査を申請する考えを示しました。

 私は、この稼働方針に対し、6月20日には、中国電力島根支社に、9月6日には、中国電力本社に抗議の申し入れを行いました。中国電力は「原発は100%安全ではない」と認めながらも、「安全対策が完了し、地元の理解が得られれば、安全審査を申請したい」との原発推進の考えを表明しました。

 私は、この中電の発言に対し、「原発稼働の地元合意は全くないもとで、稼働に向けた安全審査申請など論外である」と強く主張しました。

 知事に伺います。

 県は、安全審査申請の条件として、安全協定第6条に基づく、県と松江市の事前了解を求めていますが、これは、当然のことです。中電が言う地元の理解とは、県や松江市はもちろんのこと、原発から30キロ圏内の出雲市、雲南市、安来市の周辺3自治体の理解も当然、必要と考えますが、県の考えはどうですか。

 福島原発において、原子炉の状態は全くわかっていません。事故原因は未解明であり、安全な基準など作れるわけがないではありませんか。新しい規制基準と言いますが、福島事故の原因究明、教訓が反映されていないわけですから、事故前の基準にとどまった古い基準でしかありません。新規制基準は、再発防止基準とはなり得ません。知事の考えを伺います。

 原発問題の最後は、複合災害についてです。

 7月、8月の豪雨災害を目の当たりにして、強く感じたことがあります。今般の大雨災害によって、たくさんの道路が冠水し、寸断される被害が発生しました。

 原子力災害に備えた広域避難計画が策定されましたが、原発事故の発生と大水害や大地震が重なった時、果たして、計画通りの避難が可能でしょうか。本当に県民の命と安全を守ることができるのでしょうか。

 今般の豪雨災害を教訓に、豪雨災害や地震災害と原発災害が重なる複合災害を想定した実効ある地域防災計画・避難計画の策定が求められています。知事の所見を伺います。

 災害対策の基本は、被害の発生を未然に防ぐことにあります。その点では、技術的に未完成で危険な原発からの撤退こそ、減災の考え方に合致し、県民の命を守る確かな保障であることを強調し質問を終わります。

議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画