日本共産党の尾村利成でございます。
日本共産党県議団を代表して、議員提出議案2件、請願1件、「島根原子力発電所2号機における新規制基準への適合性確認審査に係る事前了解願に関する調査結果」について、委員長報告に反対する討論を行います。
議員提出第14号議案「地方税財源の格差是正と充実を求める意見書」
まず、議員提出第14号議案「地方税財源の格差是正と充実を求める意見書」についてであります。
私は、地方税財源の充実にあたっては、地方財政の重要な柱である地方交付税の復元・増額をはかり、地方交付税本来の財源保障と財政調整の両機能を回復・強化することが大切であると考えます。
安倍政権は、来年4月からの消費税増税を強行しようとしています。政府は、消費税増税で深刻な景気悪化が起きることを認め、復興特別法人税を1年前倒しで廃止し、大企業優遇策を盛り込んだ総額5兆5千億円の経済対策を決定しました。
所得が大きく減少している国民に総額で8兆円にのぼる巨額の負担を押し付ける大増税は、暮らしと経済に壊滅的な打撃を与えます。消費税増税との一体改革と称した医療、介護、年金など社会保障の切り捨ては許せません。
消費税増税は、さらなる景気悪化をもたらし、税収を減らすものです。そして、景気対策の名のもとでの大企業へのバラマキ経済対策は、財政をますます悪化させる道にほかなりません。消費税増税は、社会保障充実のためでも、財政再建のためでもありません。最大の景気対策、地方税財源の充実の道は、消費税増税の中止です。
よって、消費税増税を容認、前提とし、地方消費税の充実を求める本意見書には、賛同できません。
議員提出第15号議案「条件不利地域の農業施策の充実を求める意見書」
次に、議員提出第15号議案「条件不利地域の農業施策の充実を求める意見書」についてです。
政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」は11月26日、5年後を目途にコメの生産調整を廃止する方向などを打ち出した「農業基本政策の抜本改革について」を決定しました。
政府は、次期通常国会に生産調整廃止・減反政策見直しの関連法案を提出する予定です。
政府がコメの生産調整を5年後に全廃する方針を決めたことは、国民の主食であるコメの需給や価格安定に対する国の責任を将来的に全面放棄することを表明したことにほかなりません。
この方針は、生産現場の声ではなく、政府の産業競争力会議などを通じた財界の意向に沿ったものであり、TPPへの参加による関税撤廃、コメをはじめ農産物輸入の一層の増大・自由化を見越したものであります。
コメの生産調整廃止や直接支払い交付金、米価暴落時の米価変動交付金などの廃止は、中山間地域や条件不利地域の維持、安定的な営農、農地の保全に逆行するものであり、コメの需給変動を全面的に市場任せにする方針は撤回すべきです。
以上の立場から、本意見書には賛同できません。
請願第29号「『高校無償化』への所得制限導入に反対し、『教育費無償化』の前進を求める請願」
次に、請願第29号「『高校無償化』への所得制限導入に反対し、『教育費無償化』の前進を求める請願」についてです。
11月27日、自民、公明、維新、みんなの各党は、参院本会議で、高校授業料の無償制をやめ、2014年度から所得制限を設ける「高校無償化廃止法」を賛成多数で成立させました。
OECD(経済協力開発機構)34カ国で公立高校授業料を徴収しているのは3カ国だけであり、教育費無償化は世界の流れです。
日本は4年前に無償制を導入し、世界の仲間入りを果たしました。そして、昨年には、国際人権規約「中等・高等教育の無償教育の漸進的導入」条項を承認したばかりであり、国際的な批判も免れません。
所得制限導入により、2割程度の生徒が無償から外される見込みです。所得制限により、授業料が無償の生徒と有償の生徒が同じ教室で学ぶ状況がつくり出されることに対し、現場からは、困惑と悲痛な声が出されています。
以上の立場から、「高校無償化」への所得制限導入に反対し、教育費無償化の前進を求める本請願の採択を主張します。
「島根原子力発電所2号機における新規制基準への適合性確認審査に係る事前了解願に関する調査結果」
最後に、「島根原子力発電所2号機における新規制基準への適合性確認審査に係る事前了解願に関する調査結果」についてです。
福島第1原発では、放射能で汚染された地下水が海に流出し、タンクから高濃度汚染水が漏れ出す事態が相次ぎ、放射能汚染の拡大をコントロールできない非常事態に陥っています。
安倍政権は、「原発再稼働ありき」の立場に立ち、放射能汚染拡大という危機に直面しているのに、「原子力規制委員会が基準に合うと判断した原発は再稼働させる」「世界一安全な原発技術を提供できる」と言って、原発再稼働・原発輸出推進の無責任な態度を取り続けています。
7月に新規制基準が施行されて以降、電力5社は、7原発14基の再稼働に向けた新規制基準適合性確認審査を原子力規制委員会に申請しました。
今やるべきことは、再稼働審査優先の姿勢を改め、汚染水問題解決に向けて、電力業界はもとより、産業界、科学者などが知恵と力を総結集し、人的・物的資源を集中することであります。
原発再稼働に奔走する電力会社や規制委員会の姿勢は、非常識で営利優先そのものと言わなければなりません。
中国電力も再稼働に向けた適合性確認審査申請に血眼になるのではなく、全社を挙げて福島事故の収束にこそ力を尽くすべきではありませんか。この立場こそ、中国電力が住民の信頼を回復し、中国電力の発展につながる道と考えるものであります。
私は、この度の適合性確認審査に係る事前了解について、次の4点の理由から、認めることができません。
第一に、審査の基準となる新規制基準が抜け穴だらけで杜撰なものであるからです。
福島原発の事故原因は未解明であり、新基準には、福島事故の教訓が反映されていません。事故原因、原子炉の状態もわからない段階で、安全な新しい基準など作れるわけがないではありませんか。
また、新基準は、過酷事故の発生や住民被ばくなど原発事故の発生を前提にしており、住民の避難計画は自治体任せという極めて杜撰なものであります。
第二に、中国電力の安全対策は、不十分で不備なものであります。
中国電力の安全対策では、過酷事故を想定しながらも、汚染される冷却水処理や地下水調査・地下水対策などの実効ある汚染水対策が何一つ措置されていません。
地下水調査では、その経路、流速、流量調査の実施は不可欠であります。
また、地震対策においては、宍道断層を最大地震動に想定し、海底活断層の連動性も考慮したというものの、これらの活断層調査、活断層の連動性調査が不十分であります。
何よりも新規制基準には、福島事故の契機となった東北地方太平洋沖地震の知見が何一つ反映されていません。基準地震動の精査、検証なき安全対策は、不十分・不備なものであります。
第三に、適合性確認審査申請に対する地元合意がないことであります。
UPZに入る出雲市、雲南市、安来市からは、中国電力の安全対策に対する住民説明会を開催すべきとの声が上がっています。また、3市は、松江市並みの安全協定締結を求めています。
これら3市の要望は、原発事故に対する不安の表れであり、説明責任が果たされていないことを意味するものです。審査申請への住民の理解と合意が得られていないことは明白であります。
中国電力は、安全対策の完了、そして、地元の合意が形成されるまで適合性確認審査申請は行わないと言明していたはずです。この約束を反故にしての申請は絶対に許されません。
第四に、適合性確認審査申請の事前了解は、原発再稼働の道にほかなりません。
原発推進勢力は、今回の審査申請の事前了解と再稼働は別であるとの詭弁を弄しています。これは、現実を直視しない空論であります。
なぜなら、中国電力はこの間、なぜ、1,000億円を超す安全対策を実施したのでしょうか。なぜ、原子力規制委員会への審査申請をこんなにまで急ぐのでしょうか。
この動きは、まぎれもなく中国電力自身が表明しているように、原発再稼働をめざしているからではありませんか。適合性確認審査申請は、原発再稼働への一歩、プロセスであることは明白です。
福島原発事故は、「安全な原発などあり得ない」「原発と人類は共存できない」ことを明らかにしました。
私は、県民の命と安全を守る責任を持つ県議として、原発再稼働に突き進むあらゆる動き、いかなる策動も断じて容認できません。
原発事故のリスクはあまりにも巨大です。島根原発でひとたび事故が起これば、放射能汚染は島根県内だけにとどまりません。多くの人々が被爆し、故郷を奪われ、避難生活を強いられます。
宍道湖は死の湖となり、全国に誇るヤマトシジミや白魚など漁業資源はもとより、観光資源も奪われ、産業と人々の暮らしに壊滅的な打撃を与え、「県都消失」という事態となります。
原発事故でひとたび放射性物質が大量に放出されると、人類はその被害を防止する手段を持っていません。また、使用済み核燃料を安全に処理する技術も未確立です。
技術的に未完成で危険な原発からの撤退こそ、国民の命と安全を守る確かな保障であります。
以上の立場から、中国電力が原子力規制委員会に対して、適合性確認申請をすることについて、県議会として了承を与えることには反対であります。
以上で討論を終わります。