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2014 年 6 月定例会 一般質問 (原発問題について、島根原発周辺の活断層調査について、消費税増税について、商工業振興・雇用について、看護師の勤務環境改善について)

2014-06-19 この記事を印刷

 日本共産党の尾村利成でございます。

 質問の第一は、原発問題についてです。

【1.原発問題について】
 4月11日、安倍政権は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、将来にわたって維持・推進し、「再稼働を進める」とした「エネルギー基本計画」を閣議決定しました。

 「基本計画」では、原発を安価で安定的な「ベースロード電源」としています。しかし、原発の事故処理費用や廃炉費用を含めれば、原発こそ「究極の高コスト」電源であります。そして、ひとたび事故を起こせば、一気に大電力がなくなる「最悪の不安定」電源ではありませんか。

 「基本計画」は、今なお、原発被害に苦しむ福島の人々への重大なる背信であり、「原発ゼロの日本」を願う国民多数の民意への挑戦に他なりません。

 わが党は、原発推進路線の撤回を求め、原発ゼロ、再生可能エネルギーへの抜本的転換を強く求めるものであります。

 安倍政権が、原発再稼働の道を突き進む中、5月21日、福井地裁は、大飯原発3、4号機の再稼働差し止めを命じる画期的判決を下しました。

 判決は、「ひとたび深刻な事故が起きれば、多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす」とし、「人格権が人命を基礎とし、日本の法制上で最優先されている」と述べています。

 そして、「大きな自然災害や戦争以外で、憲法の人格権が極めて広範に奪われるという事態を招く可能性があるのは、原子力発電所の事故の他は想定しがたい。かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差し止めが認められるのは当然である」と原発の本質的危険性を鋭く指摘しました。

 また、原発稼働が「電力供給の安定性」「コストの低減」につながるという主張に対しては、「原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失である」と述べ、国民の安全よりもコストを優先する考え方をきっぱり退けました。

 安倍政権は、今回の判決を真摯に受け止め、大飯原発はもとより、全国の原発の再稼働を即刻、断念すべきであります。

 そして、全国でただ一つ、県庁所在地に原発が立地する島根県は、本判決の主旨を尊重し、「原発ゼロの島根」を決断すべきであります。

 知事に伺います。まず、知事の人格権を尊重する決意をお聞かせください。判決を踏まえ、「異質」の危険を持つ原発への認識を伺います。

 次に、新規制基準についてです。

 安倍首相は、原子力規制委員会の新規制基準を「世界で最も厳しい水準」と言い「基準に合格した原発は再稼働する」と明言しています。

 福島原発事故は未だ収束せず、炉心の溶融がどのように起こったか十分解明されていないのに、「基準」が「世界一厳しい」とか、「基準を満たしたから安全」などと言うのは、無責任極まり ないものであります。

 何より問題なのは「新規制基準」には、事故が起きた場合の避難計画が自治体任せとなっていることであります。

 アメリカ原子力規制委員会の規制基準には、避難計画が盛り込まれています。しかし、日本では盛り込まれていません。これで、どうして「世界で最も厳しい基準」と言えるのでしょうか。 
 
 また、新規制基準には、地下水対策も盛り込まれていません。福島では、今もって放射能汚染水の海洋への流出をコントロールできず、非常事態に陥っています。このような状況であるのに、島根原発では、原発に流れ込む地下水量が全く把握されていません。

 新規制基準は、過酷事故を想定しながら、汚染水処理や地下水調査・対策を盛り込んでいないことは大問題であります。

 新規制基準に、避難計画と地下水対策を盛り込むべきであります。このことを国に強く要求すべきではありませんか。知事の所見を伺います。
   
 次に、「島根原子力発電所の安全対策等に関する意見交換会」についてです。

 意見交換会は、島根原子力発電所の安全管理の状況等について、定期的に中国電力と国から説明を受け、県、市、住民と意見交換を行うことで、島根原子力発電所における安全管理の確認と透明性の推進を図ることを目的に2010年(平成22年)11月に設置されました。

 開催要項では、意見交換会は「年に3回から4回程度開催する」と規定しています。しかし、意見交換会設置以降、今日まで3年半の間、会議が開催されたのは2010年の12月と2011年の3月のわずか2回しかありません。意見交換会は、開店休業状態であります。県として、県民の意見を聞く姿勢が不十分でありませんか。

 原発の安全対策に関する課題は、新規制基準の評価、避難計画、地震・津波対策、使用済み核燃料の管理体制など山積しています。

 知事に伺います。

 開催要項を遵守し、県民の意見を真摯に聞くべきであります。また、意見交換会の住民の公募対象を松江市在住以外の住民に広げるべきです。そして、公募数を抜本的に増やすべきであります。所見を伺います。

【2.島根原発周辺の活断層調査について】
 次に、島根原発周辺の活断層調査についてです。

 原発の耐震安全性にとって、最も重要なことは、基準地震動の設定であります。

 もともと、中国電力と国は、島根原発周辺には活断層がないと評価してきました。しかし、活断層の存在を警告する専門家の指摘により、1998年に8キロの宍道断層が確認され、2004年には10キロ、2008年には22キロと活断層の長さが訂正されてきました。

 この経過を見た時、中国電力の活断層調査が杜撰であったことは明白であります。そして、中国電力の調査結果を追認してきた国の「活断層見落とし責任」も決して免れません。

 島根原発2号機の適合性確認審査において、原子力規制委員会が中国電力に対し、活断層の追加調査を指示したことは当然です。

 規制委員会の指示のもと、中国電力は追加調査を始めましたが、徹底した活断層調査を求めるものであります。

 福井地裁判決は、「地震発生の仕組みの分析は、仮説や推測に依拠せざるを得ない」とし、「現に全国で4つの原発に5回にわたり、想定した地震動を超える地震が2005年以後、10年足らずの間に到来している事実を重視すべき」とし、「地震大国日本で、基準地震動を超える地震が到来しないというのは、根拠のない楽観的見通しに過ぎない」と指摘しました。

 科学者は「日本列島は地震の活動期に入った」と警告しています。基準地震動の設定にあたり、宍道断層の評価、宍道断層と他の活断層との連動性を徹底して精査しなければなりません。

 しかし、このたびの中国電力の活断層追加調査は、調査範囲が狭く、調査内容、ならびに調査箇所が不十分なものであります。

 専門家からは、美保湾や美保関町下宇部尾より東の境水道沿いの詳細なる調査の実施、宍道断層西端では、古浦湾から海底に活断層が連続している可能性、そして、活断層の可能性がある地点は、ボーリング調査で終わらせず、トレンチ調査を実施すべきであることなどの指摘があります。

 私は、6月3日、原子力規制委員会に対し、活断層の徹底調査を中国電力に命じるよう申し入れました。

 申し入れに対し、規制委員会は、「宍道断層、鳥取沖西部断層、鳥取沖東部断層の連動がどうであるのか、また、大田沖断層と宍道断層との連動の可能性など徹底した調査を中国電力に求めている」と回答し、「期待した調査にならない場合は、中国電力に再調査を指示する」と約束しました。

 以上の立場から、4点伺います。

 第一に、全国では、2005年以後、想定地震動を超える地震が5回到来しており、基準地震動が過小評価されてきたことに鑑み、島根原発における基準地震動の徹底した精査・検証が必要と考えますが、所見を伺います。

 第二に、宍道断層の東方の陸域と海域、宍道断層西端より西方領域、大田沖断層の東西方向領域を徹底して調査するよう、国と中国電力に求めるべきと考えますが、いかがですか。

 第三に、大田沖断層、鳥取沖西部・東部断層と宍道断層の連続性を徹底して調査するよう、国と中国電力に求めるべきであります。

 第四に、海底活断層の連動性を徹底して調査するよう、国と中国電力に求めるべきであります。知事の所見を伺います。

 
【3.消費税増税について】
 次に、消費税増税についてです。

 4月に消費税が8%に増税されて2か月余りが経ちました。
 
 増税に反対する国民の声を恐れて、増税推進勢力は「消費税増税による増収分はすべて社会保障のために使われます」などと宣伝していますが、政府でさえ、今年度予算で「社会保障の充実」にあてられるのは、消費税増税分の1割に過ぎないと認めています。

 増税は、国民に耐え難い苦しみを与えています。中小業者からは、「8%になって、めっきりお客さんが減りました。仕入れの値段が上がったのに、増税分を転嫁できず、身銭を切っています」「ガソリン代や材料費の高騰で経営がとても苦しい」との声が出されています。

 年金暮らしの高齢者からは、「一番安い物を買っています。レシートを見るとため息が出ます。消費税は絶対上げないで下さい」との悲痛な叫びをお聞きしました。

 労働者の年収は、1997年以来、平均で70万円も減少しています。厚生労働省の勤労統計調査では、25カ月連続で所定内賃金が前年同月水準以下となっています。

 年金は、昨年10月の1%引き下げに続き、今年4月から0.7%引き下げられました。医療費も介護保険料も後期高齢者医療保険料も軒並み値上げです。その上、物価の値上げと消費税増税で可処分所得が減少し、県民の生活苦が拡大しています。

 知事に伺います。増税に苦しむ県民の暮らしの現状をどう把握していますか。

 1989年の消費税導入以降の24年間の消費税収入は、約244兆円であります。この間、輸出大企業はゼロ税率適用で、47兆円もの消費税還付金を受け取っています。実に、消費税収全体の2割にあたる還付金であります。

 トヨタ自動車は、この5年間、法人税を1円も払っていないことが明らかとなりました。これは、海外子会社が外国に払った税金をトヨタ自身が払ったものとみなして、法人税額から差し引く「外国税額控除」や研究費の1割程度を法人税から差し引く「研究開発減税」、そして、海外の子会社から受けた配当について、税法上の益金に参入しない「外国子会社配当益金不参入制度」などの大企業優遇の政策減税、特例措置の恩恵を受けたからであります。

 その一方で、中小企業は、消費税を価格に十分転嫁できない上、赤字でも納税を強制されています。あまりにも不公平ではありませんか。

 知事、この不公平な税制の実態と中小業者の苦悩をいかに認識していますか。伺います。

 消費税は、雇用を脅かすリストラ促進税であり、非正規労働者を増加させる税金であります。

 消費税が5%に引き上げられた1997年度の県内の非正規労働者数は6万2000人でありました。それが2012年度には非正規労働者数は9万9100人となりました。非正規労働者は、1.6倍化したのであります。

 消費税は、「売り上げの消費税」から「仕入れ・経費等の消費税」を差し引いて、申告・納税します。正規雇用の賃金・給与は、非課税のため差し引けませんが、正規雇用を派遣労働や請負会社に置き換え、外注化すれば、「課税仕入れ」となり、差し引きが可能となり、消費税負担を減らすことができます。

 すなわち、消費税は、非正規雇用を増加させ、中小企業の営業を悪化させるものです。地域に根づく業者を廃業に追い込み、そして、雇用を奪い、地域を疲弊させるものではありませんか。知事の所見を伺います。

 消費税は、生活費に食い込む最悪の大衆課税であり、憲法が要請する「応能負担原則」に反する税制であります。来年10月からの10%への引き上げ中止を国に強く求めるべきであります。所見を伺います。

【4.商工業振興・雇用について】
 次に、商工業振興・雇用についてです。

 知事は、議会初日の提案理由説明で、県の人口減少を食い止めるために、県内で産業を振興し、雇用を創出することが重要であるとし、今後とも企業誘致をさらに推進していくと述べられました。

 私は、企業誘致をすべて否定するものではありませんが、これまでの企業誘致のために、巨額な税金を使ってきた産業政策の検証が必要と考えるものであります。

 企業誘致によって、正規雇用が増加したのか、県内企業に仕事が回ったのか、そして、地域が活性化したのか、など真剣に総括しなければなりません。

 県の資料によれば、県は誘致企業に対し、平成21年度から平成25年度までの5年間で、80億円を超す企業立地促進助成金などの補助金・助成金を支出しました。

 フォローアップした誘致企業の常用従業員数を見てみると、平成21年の常用従業員数は1万6033人でした。平成25年の常用従業員数は1万6057人であります。この5年間、誘致企業の常用従業員数は、ほとんど増えていないではありませんか。投資の割に、県内雇用の受け皿となっていないのであります。

 また、県の立地企業への聞き取り調査によれば、立地企業が県内企業と取引している割合は、わずか47%しかありません。あまりに少なすぎるではありませんか。

 県民の血税である助成金を受け取っている誘致企業には、社会的責任があるはずです。

 人口減少に歯止めをかけ、雇用をつくり、地元企業を育成するために、誘致企業に安定した雇用の確保、県内企業への仕事発注を求めるべきではありませんか。

 県として、誘致企業が地元企業と取引を行うスキーム・枠組みを構築する支援・コーディネイトを強力にすすめるべきであります。所見を伺います。

 私は、地域に根を張って頑張る中小企業、地場産業を育て、伸ばし、それによって雇用と消費を増やす内発型・循環型の地域振興策こそ産業振興の柱に据えるべきと考えるものであります。

 この間、県内下請け企業に営業の実情をお聞きしてきました。業者からは「生産拠点の海外移転で仕事が大幅に減った」「下請け代金が切り下げられた」との声が寄せられました。

 基盤技術の担い手である下請け企業への支援が必要であります。県内製造業者は、平成20年の1547事業所から平成24年には1317事業所へと、この5年間で230事業所も減少しています。

 仕事が減少し、単価が切り下げられている下請け企業への単価・工賃水準の調査を実施するべきであります。取引先の閉鎖・縮小などによって、売り上げ減少が見込まれる中小業者に対する新たな事業展開や新分野進出支援など仕事確保・顧客拡大への抜本的支援策を求めます。所見を伺います。


【5.看護師の勤務環境改善について】
 最後に、看護師の勤務環境改善についてです。

 この問題は、昨年11月議会、そして先の2月議会で取り上げてきました。昨年の11月議会では、看護師確保法に規定する「夜勤は月8日以内」との基本指針が守られていない実態を告発し、実態把握を強く求めました。

 この質問に対し、県は、現場の正確な実態掌握が必要であるとの認識を示し、夜勤や休職状況、時間外労働の実態を調査すると答弁されました。

 2月議会では、この実態調査の調査結果を質し、今後の看護師確保対策や勤務環境改善に生かすよう求めたところです。

 県からは、県内すべての病院から調査票を回収し、データの集計途中であること、そして、調査結果は、医療機関や看護協会など関係団体に周知し、医療機関の管理者との意見交換の場を設けたいとの答弁がありました。

 この県内病院を全対象にした夜勤実態調査は、全国初の調査であり、画期的なものであります。現場の実態を正確に掌握し、今後の看護師確保対策、勤務環境改善に向けて努力する県の姿勢を高く評価するとともに、心からの敬意を表するものであります。

 調査結果を資料請求させていただきました。結果から、県内病院の過酷で厳しい勤務の実態が浮き彫りとなりました。この調査結果をもとに、4点伺います。

 第一に、夜勤実態調査において、3交代勤務で月9日以上の夜勤を行っている看護師は約35%の状況であります。「夜勤は月8日以内」とする看護師確保法の基本指針が、遵守されていない実態が明確となりました。この異常なる過酷な勤務実態をいかに評価しているのですか、所見を伺います。

 看護師確保法、厚労省5局長通知、人事院夜勤判定、看護協会ガイドラインが要請している「夜勤は月8日以内」を遵守するための県としての今後の対応方針を伺います。

 第二に、勤務の交代の方向は、人間の生体リズムに逆行しない「日勤→準夜勤→深夜勤」へと勤務の開始時刻を遅くする「正循環」の勤務編成とすべきであります。しかし、3交代勤務を行っている県内の19の病院中、2つの病院しか「正循環」の勤務編成となっていない実態が判明しました。この現状、原因を調査・分析するとともに、「正循環」勤務へと改善すべきではありませんか、所見を伺います。

 第三に、労働時間管理においては「タイムカード等に基づき記録」している病院は、県内の53の病院中、18の病院しかなく、28の病院は「自己申告制」を採用しています。自己申告制の場合は、必要に応じて、実態調査を実施することとなっていますが、調査はなされているのですか、伺います。労働時間の適正な把握に向けて、県としての今後の取り組み方針を伺います。

 第四に、夜勤実態調査の結果を精査・検証し、勤務環境改善に向けて、国、県、市町村、病院開設者が一丸となった取り組みを強力に推進することが、求められていると考えます。今後の対応方針をお聞かせください。

 病院局長に伺います。

 県立中央病院の看護職員の夜勤回数の実態や、勤務間隔、交代の方向など勤務編成基準は、いかなる状況となっていますか。また、今後の勤務環境改善に向けた県立病院の取り組み方針を伺います。

 以上で、質問を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画