2015 年 2 月定例会 委員長報告に対する討論
2015-03-06 この記事を印刷
日本共産党の萬代弘美です。
日本共産党県議団を代表して、予算案3件、条例案5件、一般事件案1件、請願13件について委員長報告に反対する討論を行います。
第3号議案「平成27年度島根県一般会計予算」
まず、第3号議案「平成27年度島根県一般会計予算」についてです。
いま地方は、住民のくらしの困難、福祉・医療の危機、地域経済の衰退など深刻な問題に直面しています。
昨年4月の消費税8%増税と円安誘導による物価高が、くらしと地域経済を直撃し、社会保障への国庫負担の削減は医療崩壊、介護難民を深刻化させ、重い社会保険料の負担に県民は悲鳴を上げています。
輸入自由化政策が地方の基幹産業である農林水産業や地元産業に打撃を与え、地域経済が壊されてきました。
安倍政権は、これら失政への反省もなく、地方創生やアベノミクスの地方への波及を声高に叫びますが、しかし、その中身は、消費税の再増税、社会保障切り捨て、雇用破壊、TPP推進であり、この道は地方の衰退をさらに加速させるものにほかなりません。
国の政治がひどい時だけに、県政が県民のくらしと福祉を守る防波堤の役割を果たさなければなりません。
予算は政治の顔、政治の鏡と言われています。県民の苦しみを解決し、くらし応援の予算こそ待たれています。
知事は、来年度予算の編成にあたって、一つに、医療・福祉・教育など、安定した生活を支える公共サービスを充実する、二つに、地方創生・人口減少対策に注力する、三つに、防災対策や原子力安全対策を促進し、安全・安心な県土づくりを推進する、とした三つの柱を重点に据えたと言います。
しかし、医療・福祉・教育の面でどうでしょう。
高い国民健康保険料が払えず、介護保険サービスを抑制している県民の苦しみを解決する予算措置がはかられていないではありませんか。
高い国保料を引き下げるために、県独自の財政支援を強め、介護保険の負担軽減措置を講じるなど、民生費拡充をはかるべきです。
教育では、子どもを苦しめ、学校現場を競争主義に駆り立てる学力テストは中止するべきです。子どもたちが安心して学べるための条件整備をすすめ、多忙を極める教職員の勤務環境改善、経済的困難を抱え、子育てに不安を持つ保護者への抜本的支援の拡充が求められています。
地方創生・人口減少対策では、いかがでしょうか。
島根再生の確かな道は、基幹産業である農林水産業と地元商工業者への支援を拡充することです。
米価の大暴落によって、農家の生産意欲が失われています。そして、TPPへの参加が強行されれば、農林水産業をはじめ、地域経済が致命的な打撃を受けることは必至です。
山形県では、農家の生産意欲を向上させるため、主食用米の種もみ助成事業を予算に盛り込みました。
持続可能な島根農業の実現、耕作放棄地解消に向けて、価格保障と生産コストをカバーする施策こそ農家の願いではありませんか。
県として、TPP交渉参加撤退の意思を表明し、農家を守る県のメッセージの発信こそ最大の農業支援と考えます。
産業・雇用対策では、外からの呼び込み方式型の企業誘致による地域振興策の破綻は明瞭です。
わが党は、県が誘致企業に対し、5年間で80億円を超す補助金・助成金を支出しながらも、常用従業員数が5年間でたった24人しか増えていないことを指摘しました。
企業誘致のための補助金の大盤振る舞いによって、地域にある中小企業や産業施策が犠牲にされています。
地域に根を張って頑張る中小企業、産業を応援してこそ若者をはじめとした定住、雇用の拡大、地域経済の持続可能な成長に道をひらくことができるのではないでしょうか。
安全・安心な県土づくりでは、県民合意のない松江北道路建設など、新規の大型建設事業の中止、見直しをはかり、防災・老朽化に備えた維持・更新にこそ力を入れるべきです。
安全な島根をつくる確かな保障は、県として原発ゼロを決断することです。島根原発の再稼働に反対し、省エネ・節電の徹底、再生可能エネルギー普及の抜本的・積極的な推進計画を立て、実行するべきです。
以上の立場から、予算案には反対です。
第16号議案「平成27年度島根県病院事業会計予算」
次に、第16号議案「平成27年度島根県病院事業会計予算」についてです。
貧困と格差が広がる中で、県民誰もが安心して県立中央病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の負担など保険外併用療養費の廃止を検討し、保険証1枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきです。
県立中央病院では、希望者に対して看護師2交代勤務が行われています。2交代勤務は看護師の健康悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては、安全・安心の看護提供を受ける面から有害です。
また、県立中央病院の3交代勤務における看護師の夜勤回数の平均は、月8.9回となっており、「夜勤は月8日以内」とした看護師確保法の基本指針が遵守されていません。現在、勤務環境改善に向けた取り組みがすすめられていることは評価しますが、県の基幹病院として、県内病院をリードする立場で実効ある積極的な改善策を求めます。
第19号議案「平成27年度島根県水道事業会計予算」
次に、第19号議案「平成27年度島根県水道事業会計予算」についてです。
江の川水道事業や斐伊川水道事業は、積算根拠・需要予測を誤ったため、使わない水まで住民負担となっており、市民に高い水道料金が押し付けられています。
松江市においては、平成25年度の給水停止実施件数が906件にものぼっています。高い水道料金を引き下げるためにも、県として、受水団体の資本費負担軽減を図るなど、財政措置を講じるべきです。
よって、水道事業会計予算には反対です。
第25号議案「一般職の任期付職員の採用等に関する条例等の一部を改正する条例」
次に、第25号議案「一般職の任期付職員の採用等に関する条例等の一部を改正する条例」についてです。
本条例は、一般職の任期について3年以内の有期雇用を認めるなど任期付採用の拡大をすすめるものです。
任期付採用拡大は、不安定雇用を増やすものであり、有期雇用拡大は、採用する側の論理にほかなりません。
また、任期付採用拡大は、公務労働において、地方自治法や地方公務員法が要請する業務の継続性・安定性・専門性に反するものであり、住民サービスの低下が危惧されます。
よって、本議案には反対です。
【・第35号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」】
【・第36号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例附則第2条第2号及び第4条第2号の規定によりなおその効力を有するものとされた島根県指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例」】
次に、第35号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」ならびに、第36号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例附則第2条第2号及び第4条第2号の規定によりなおその効力を有するものとされた島根県指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例」についてです。
これら条例案は、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」の施行に伴い、一定の要件を満たした指定訪問介護事業所や指定介護予防訪問介護事業所に置くべきサービス提供責任者の配置基準を緩和するものです。
介護現場では、国が定めた人員配置基準が低いため過酷な労働となっています。今、必要なことは、利用者の重度化が進んでいるもとで、配置基準を介護現場の実態にあわせ、引き上げることです。
よって、これら議案には賛成できません。
第43号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」
次に、第43号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてです。
本条例は、児童数及び生徒数の変動等に伴い、職員定数を改正するものです。
平成26年度の本県の小学校の講師比率は、5.2%、中学校の講師比率は、7.4%の状況です。そして、県立高校の講師比率は、11.5%であり、特別支援学校の講師比率は14.6%にも及んでいます。
本県教育が臨時的任用教職員によって支えられている現状を是正するためにも、正規教職員の採用を増やすべきです。
教員の多忙化解消、ゆきとどいた教育実現、教職員が「いじめ」に向き合う条件整備を強化するためにも、教員定数削減には反対です。
第54号議案「県の行う建設事業に対する市町村の負担について」
次に、第54号議案「県の行う建設事業に対する市町村の負担について」です。
本議案は、地方財政法の規定に基づき、県が行うふるさと農道整備事業について、市町村負担率を定めるものです。
農道の機能保全や保全対策など災害対策や広域的な役割を果たす事業は、本来、県の責任と負担で行うべきであり、市町村に負担を求めるべきではありません。
よって、本議案には賛同できません。
第81号議案「島根県県税条例を改正する条例」
次に、第81号議案「島根県県税条例を改正する条例」についてです。
本条例は、平成27年度税制改正による地方税法等の改正に伴い、法人事業税の外形標準課税を拡大するものです。
外形標準課税は、賃金・利息・賃借料の支払いや資本金という「外形」があれば、負担能力がない赤字企業にも課税するものです。外形標準課税は、応能負担原則に反するものであり、大企業の法人税減税のための中小企業への課税強化は許せません。
よって、本議案には反対です。
請願について
次に、13件の請願についてです。
まず、請願第1号、第7号についてです。
これらの請願は、島根原発1号機と2号機の廃炉、3号機の新規稼働中止、徹底した活断層調査、実効ある防災・避難計画の策定、再生可能エネルギーの普及促進等を求めるものです。
福島原発事故から丸4年を迎えようとしています。福島事故の教訓は、「安全な原発などありえない」「人類は原発とは共存できない」ことを明らかにしたことです。
県民の8割が原発のない安全・安心の島根を求め、再生可能エネルギーの普及促進を切に願っています。
よって、これら請願は審査未了ではなく、採択を求めます。
次に、請願第4号、第5号、第13号、第17号、第28号、第30号、第34号、第35号、第41号の9件についてです。
これらの請願は、ゆきとどいた教育をすすめるための条件整備や私学助成政策の抜本的拡充を求めるものです。
請願事項として、私学助成や就学支援金の拡充、国による小・中学校、高校での30人学級実現、高校無償化の復活、特別支援教育の充実、高校の統廃合基準を見直し、地域の高校を残すことなどを求めています。
日本の教育予算の水準は、OECD34カ国で最下位です。この状態から脱し、子どもの教育を大切にする国づくりが求められています。
欧米では、1学級30人以下が当たり前となっています。また、OECD加盟国で高校授業料を徴収しているのは、日本など3カ国だけであり、教育費無償化は世界の流れです。
県内の私立高校は、県内の公教育の発展に重大な役割を果たしており、公私間格差を解消するためにも、私学助成政策の抜本的拡充をはかるべきです。
高校の統廃合基準を見直す上で、三つの観点が肝要と考えます。
一つに、住民の合意を大切にする観点です。
学校は地域での子育て、コミュニティー形成、地域の存続に深く関わっています。それだけに、統廃合は行政が一方的に進めてはならず、住民の合意が欠かせません。
二つは、教育にとってプラスかマイナスかということです。
統廃合を考える上で、学校の「適正規模」と言いますが、「適正規模」という判断を、教育にとってどうであるかとの判断ではなく、行政効率上の観点からの判断であってはなりません。「適正規模」以下で教育効果が薄くなることはなく、小規模校には、様々なメリットがあることを注視すべきです。
三つに、学校を「地域の核」としての役割からどう見るかという観点です。
学校は地域のコミュニティーを紡ぎだし、地域の文化の担い手です。また、学校における購買能力は、地域経済にとって貴重なものです。学校は何重にも「地域の核」というべき施設であり、それを失う損失は甚大なものがあります。
以上、多様なニーズを持つ分校や地域の高校の存在は大きなものがあり、地域の高校を残す最大限の努力を行うべきです。
よって、これら9件の請願の採択を求めます。
次に、請願第14号「米軍垂直離着陸機MV-22オスプレイ配備の中止を求める請願」についてです。
本請願は、オスプレイの沖縄配備の中止を求めるものです。
沖縄・辺野古への米軍新基地建設反対は「オール沖縄」の声です。沖縄県民は、基地のない平和な豊かな沖縄を希求しています。
オスプレイは、何度も墜落事故を繰り返し、欠陥機であることは明白です。
沖縄へのオスプレイ配備は撤回し、オスプレイの全国展開と無法な低空飛行訓練は中止するべきです。
よって、本請願の採択を求めます。
最後に、請願第20号「島根県立大学への管理栄養士及び栄養教諭1種養成課程新設に関する請願書」についてです。
本請願は、島根県立大学への管理栄養士及び栄養教諭1種養成課程新設を求めるものです。
生活習慣病の予防と治療、介護予防等、管理栄養士・栄養士に対する社会的ニーズは高まり、より高度な専門的知識と技術が求められています。多くの都道府県においては養成施設を有していますが、鳥取・島根両県には養成施設がありません。
県民の健康と福祉を増進する上でも、養成課程新設は急務の課題です。
よって、本請願の採択を求めます。
以上で討論を終わります。