2016 年 2 月定例会 一般質問 (貧困と格差、中小企業振興・雇用問題、農業・ TPP 、介護保険、病児保育、原発・活断層)
2016-02-29 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
質問の第一は、貧困と格差をただす政治の責任についてです。
【1.貧困と格差をただす政治の責任について】
今、県民のくらしは、どうなっているでしょうか。
若者も、高齢者も、農家も、中小業者も明日のくらしに不安を抱えながら懸命に生きています。政治が真剣に考えなければならないことは、一人一人の暮らしと福祉を守ることです。
安倍首相は、自らの経済政策を「アベノミクス」と称し、「大企業が潤えば、やがてその恩恵が家計にも回る」と喧伝してきました。しかし、大企業は、史上最高の利益を上げ、一握りの富裕層は、株高で資産を増やしましたが、大多数の国民には「アベノミクス」の恩恵は回っていません。国民生活基礎調査では「生活が苦しい」と答えた人は、62%にものぼり、年々増加しています。
今、全国各地で「子ども食堂」が生まれています。「十分な食事がとれない」「毎日、一人で晩ご飯を食べている」といった子どもたちを支える営みです。
最新の政府統計では、6人に1人が貧困ライン以下で、子どもの貧困率は、16%を超えています。母子家庭など、一人親世帯の貧困率は、55%と突出しており、経済協力開発機構加盟34カ国で最悪となっています。
日本は、世界有数の貧困大国であることは動かせぬ事実となっており、貧困大国からの脱却を政策目標に据えることが極めて重要であります。
自治体の仕事は、地方自治法に規定する通り、「住民の健康と福祉を増進し、住民の安全を守る」ことにあります。
暮らしが困難になっている時だからこそ、消費税増税、社会保障削減、雇用破壊、TPP推進の「アベノミクス」を県政に持ち込むのか、それとも、その間違った経済政策に立ちはだかって県政が県民のくらしと福祉を守る防波堤としての役割を果たすのかが、鋭く問われています。
県民の厳しいくらしの実態を直視し、県民の福祉と健康を守る仕事を最優先することこそ、県政の使命です。
県内において、国民健康保険加入世帯の1割にあたる9,000世帯が、保険料を滞納し、その制裁措置として、命綱である保険証取り上げが行われています。介護保険料未納者数は、4,000人に達し、必要なサービスを受けることができない高齢者も生まれています。
今日、国保や介護など、社会保険料未納者が社会保障制度から排除され、命が脅かされている由々しき実態があります。知事は、県民のくらしの困難をどのように認識していますか。
一人一人の生存権を保障するために、社会保障予算を大幅に拡充すべきではありませんか。所見を伺います。
所得の低い人に、より重い負担となる消費税は、税率を上げれば上げるほど貧困と格差が拡大します。10%増税で、一世帯あたり6万2,000円もの大増税となることが明らかになりました。消費税増税は、キッパリ中止し、「アベノミクス」で大儲けした大企業と富裕層にこそ、応分の負担を求めるべきではありませんか。
消費税の10%増税は、景気悪化にさらなる拍車をかけ、貧困と格差拡大に追い打ちをかけることになります。国に対し、消費税増税中止、社会保障削減路線から充実路線へと転換するよう強く求めるべきであります。知事の所見を伺います。
【2.中小企業振興・雇用問題について】
次に中小企業振興・雇用問題についてです。
島根県の企業の99.9%は、中小企業・小規模企業です。昨年、島根県中小企業・小規模企業振興条例が全会一致で可決され、中小企業から期待の声が寄せられています。
私は、企業誘致頼みの産業政策から脱却し、地域に根を張って頑張る中小企業や地場産業にこそ、商工予算の柱をシフトすべきと考えます。地元業者を支援してこそ、安定した雇用と仕事が生まれるのではないでしょうか。
来年度予算には、誘致企業を支援する企業立地促進助成金が24億円余り計上されています。これだけ多額な税金を投入するなら、当然、その助成を受けた企業には社会的責任が発生します。
知事は、企業誘致によって、雇用の場が拡大されると言われますが、実際、どうなっているでしょうか。
2009年度(平成21年度)から2014年度(平成26年度)の5年間において、県がフォローアップ調査した誘致企業の全従業員数は、3,216人増加しました。しかし、そのうち、正規雇用者数の増加は、わずか、745人でしかありません。
また、誘致企業の8割が製造業ですが、そのうち、県内企業と取引を行っている企業は、50%にも満たない現状です。
莫大な補助金を受け取っている誘致企業に対して、積極的に正規雇用を拡大すること、ならびに、県内企業との取引を強化することを強く要請すべきではありませんか。県として、実効ある対策を強化すべきではありませんか。所見を伺います。
県内において、非正規労働者は増え続け、雇用者に占める非正規割合は35%を超えました。そして、経済的自立が難しいと言われる年収200万円未満で働く労働者は、約4割にものぼっています。
とりわけ、働く若い世代に広がる貧困の解決も切実です。若者の2人に1人が非正規雇用におかれ、低賃金で不安定な生活を余儀なくされています。この改善なしに、未婚・晩婚化問題や少子化克服などあり得ないことを政治は直視しなければなりません。
安定した雇用拡大にむけて、最低賃金の大幅引き上げ、非正規労働者の正社員化と均等待遇、サービス残業根絶、長時間・過密労働の是正、ブラック企業規制など、人間らしく働けるルールの確立と労働条件改善の施策を強化すべきです。所見を伺います。
【3.農業・TPPについて】
次に、農業・TPPについてです。
県内農業の深刻な課題は、農業労働力の減少と高齢化にあります。2015年の「農林業センサス」では、県内の農業就業人口は、2万4,841人で5年前の2010年の3万2,271人から7,430人の減少となっています。
1年間に約1,500人もの減少となっており、この状態が続けば、15年後には、島根農業が消滅しかねない危機的事態です。そして、就業者の平均年齢は、70歳を超え、高齢化が一段と進行しています。
この要因は、農産物輸入の拡大によって、米価をはじめ、多くの農産物価格が軒並み低下し、大多数の経営が成り立たないことにあります。そして、日本の食と農業、経済主権をアメリカに売り渡すTPP参加が農家の生産意欲をさらに奪っています。
安倍政権は、2月4日、国会での徹底した議論も国民への十分な情報公開もないまま、TPP協定に署名し、今国会での批准を強行しようとしています。
TPPが農業を壊し、国民生活を破壊することは明らかです。2013年の国会決議では米、麦、豚肉など、「農産物の重要5項目」を関税撤廃の例外とするよう決議しました。
しかし、TPP大筋合意では、重要5項目のうち、30%の品目で関税が撤廃され、米でも関税ゼロの特別輸入枠が押し付けられています。農林水産物全体では、8割を超す品目の関税が撤廃され、残りの品目もTPP発効から7年後にアメリカなどが要求すれば、関税撤廃の協議が義務付けられています。明白なる国会決議違反ではありませんか。
日本農業新聞の農協組合長へのアンケート調査では、JAしまねの組合長をはじめ、92%もの組合長が国会決議を「守ったと言えない」と答えたのは当然です。知事は、この組合長の声をどう受け止めていますか。また、生産現場のTPP参加に対する悲鳴と不安を如何に認識していますか、伺います。
島根農業を壊滅へと追い込むTPPから速やかに撤退し、批准を中止・阻止することこそ、JAや農家の願いであります。県として、TPP反対の明確なる行動を起こすべきではありませんか、所見を伺います。
島根県は、集落を単位とする集落営農組織の確立を積極的にすすめてきました。しかし、米価をはじめ、農産物価格の下落によって、集落営農を維持し、バトンを引き継ぐ次の代の後継者がいないなどの問題が危惧されています。
集落営農組織の持続的発展と後継者対策をすすめるカギは、農家の生産意欲を向上させる再生産可能な米・農産物価格の実現です。生産コストをつぐなう価格保障・所得補償を農業政策の柱に据えるべきと考えます。所見を伺います。
【4.介護保険について】
次に介護保険についてです。
安倍政権は「1億総活躍社会」と称する緊急対策の中で、「介護離職ゼロ」にむけ介護施設などを「50万人分」増やすとしています。
しかしながら、昨年4月、事業者に支払われる介護報酬が2.27%切り下げられました。この切り下げが介護現場をますます困難に陥れています。
事業者からは「介護報酬削減で大幅減収となり、事業所運営が困難です。職員を募集しても人が集まりません」との悲鳴があがっています。介護職員からは「人手不足で月17回もの夜勤をこなしました」「仕事にやりがいと誇りを持っています。しかし、仕事のわりに、賃金が低すぎます」との声が寄せられています。
介護報酬引き下げは、事業所経営に大打撃を与え、それが、賃金・労働条件の悪化につながり、そして、介護サービスの低下につながる「負の連鎖」となっています。
県は、介護報酬引き下げなどに伴い、事業者や介護職員、利用者の実情や影響などを掌握するため、「介護保険制度改正に係る影響等調査」を実施しました。私は、この取り組みを高く評価するものであります。
そこで、伺います。
県が実施した調査結果の概要はいかなるものですか。介護現場の悲痛な叫びに応え、介護保険を立て直すために、介護報酬の大幅引き上げ・緊急再改定と介護労働者の処遇改善を国に強く求めるべきではありませんか。所見を伺います。
2014年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」によって、「要支援1・2」の人の訪問・通所サービスは介護保険給付から外され、特別養護老人ホームの入所対象者は「介護度3」以上とするなどのサービス切り捨てが強行されました。
私は、この間、様々なご相談を受けてきました。その内容は、「現在、介護度3なのに特養入所を断られました」とか、「難病にかかり、歩行困難で介助なしでは生活できないのに、介護認定は『要支援』とされ納得できません」など深刻なものばかりです。介護保険は、要介護度によって、使えるサービスの種類や給付の上限が決められます。正確で実態に合った要介護認定こそ利用者と家族の願いであります。
松江市の介護認定審査会の状況を調べて驚きました。松江市では、1人あたりの認定にかかる審査時間をわずか「1.64分」しかとっていません。審査会委員は、事前に訪問調査結果や主治医の意見書などの認定資料を読み、チェックしているとはいえ、わずか2分弱で一人の介護認定が決定されているのです。利用者や家族からは「あまりにも乱暴で機械的な審査」との不満の声があがっています。
そこで伺います。
県内の認定審査状況はどうなっていますか。利用者と家族に丁寧に寄り添い、正確・実情にあった認定審査会の開催となるよう改善を求めるものです。所見を伺います。
【5.病児保育事業について】
次に病児保育事業についてです。
子育てサービス充実にむけて、来年度予算で第一子、第二子の保育料軽減措置が創設されたことに対し、歓迎の声があがっています。
さらに安心できる子育て環境づくりを推進するため、病児保育事業の拡充が期待されています。
現在、病児保育事業は、12市町29施設の総定員数99名で実施されています。子どもが体調を崩した時に、安心して預けることができる病児保育は、子育てと仕事を両立する保護者にとって「安心の砦」です。全市町村での開設と定員数拡大に向け、県としてのイニシアティブ発揮を求めるものです。所見を伺います。
県内公立病院で病児保育を実施しているのは、松江市立病院と公立邑智病院、隠岐道前病院の3つの病院です。
病児保育拡充にむけて、県内の公立病院が積極的な役割を果たすべきと考えます。このことは、看護師確保・定着にもつながると考えるものです。所見を伺います。
また、県立病院としても、病児保育事業の実施を検討すべきと考えますが、所見を伺います。
【6.原発・活断層問題について】
最後に、原発・活断層問題についてです。
中国電力は、1月28日、宍道断層の長さについて、西側に3キロ延長し、これまでの「22キロ」の評価から「25キロ」へ変更すると公表しました。原子力規制委員会は、1月29日の審査会合において、この評価を了承しました。
中国電力は、もともと原発周辺に「活断層はない」と強弁してきましたが、1998年に「8キロ」の宍道断層の存在を認め、2004年には「10キロ」へ、そして2008年には「22キロ」へと変更・訂正を繰り返してきました。
これら相次ぐ活断層延長に対して、ある週刊誌は、「島根原発の活断層は成長する。背が伸びる」と揶揄(やゆ)し、中国電力の不十分なる活断層調査を痛烈に批判しました。
そして、このたび4度目となる活断層延長です。調査すれば、調査するほど、活断層が延びるではありませんか。こんな原発は全国に例がありません。たび重なる活断層の過小評価、見落としは、調査そのものが杜撰であったことを証明したではありませんか。中国電力は活断層見落としを深く反省し、科学者の指摘を謙虚に受け止め、活断層の徹底調査を実施すべきであります。知事の所見を伺います。
今、最も懸念されることは、このたびの西側への3キロ延長をもって、宍道断層の長さ・評価が確定されかねないことです。
科学者からは、宍道断層の東端がもっと延伸している可能性があること、さらに、宍道断層と鳥取沖西部・東部断層は新第三紀の地層においては同一の連続した断層であり、これらの活断層の連続・連動性の徹底調査が必要であることが指摘されています。
わが党は、2月11日から12日の2日間にわたって、地質学が専門の立石雅昭・新潟大学名誉教授とともに、宍道断層西端付近の鹿島町・佐陀本郷や島根半島海岸線の地形など宍道断層の現地調査を実施しました。
以下、専門的になりますが、立石教授が現地を調査した上で指摘された知見を紹介します。
立石教授は、「大きな地震を引き起こす震源断層は、「地震発生層」と呼ばれる地下数キロメートルから20キロメートルの深さの岩盤中に存在する」と説明されました。
そして、「地震に伴って地表付近に表れた断層を「地震断層」と呼び、過去に生じた地表地震断層の痕跡が活断層として認識されている。しかし、活断層は、大地震を引き起こす震源断層の全体像を必ずしも正確に反映するものではなく、地震を起こしうる震源断層と活断層の関係については、未だ研究途上であり、現在の科学で信頼に足る地震規模の予測は困難である」と強調されました。
そして、島根原発敷地とその周辺では、地震が発生する深さの地下構造、特に地震を引き起こしうる断層の存在が一切明らかにされていないことを問題視されました。
島根半島の海岸線の岩石海岸には、離水・海食ベンチが連続的に認められます。離水・海食ベンチとは、波浪等で侵食の進んだ平坦面及び凹み(へこみ)が海面よりも高い位置に認められる地形のことを言うそうです。
立石教授は、「離水ベンチは、6000年前以降に発生した地震に伴って、隆起して形成され、離水ベンチの高度分布は、比較的最近の地震に伴う島根半島の隆起を示唆するものであり、原発を襲いうる地震の具体的な表れ」と警告されました。
そして、事業者である中国電力が離水ベンチ調査を全く行っていないことは、耐震安全性軽視の表れであり、速やかなる調査の必要性を強調されたところです。
そこで、伺います。
県として、中国電力に対し、離水ベンチと地震との関連性、ならびに離水ベンチの高度とその高度に至った要因と過程を調査するよう指示すべきであります。
次に、断層の連続・連動性についてです。
宍道断層は「25キロ」、その東側の同一線上に「98キロ」の鳥取沖西部・東部断層があります。宍道断層と鳥取沖西部断層の離隔区間は「19キロ」との評価ですが、もし、これらの活断層が連続していれば、「142キロ」の断層となるではありませんか。
立石教授は、敷地周辺の重力異常を指摘されました。立石教授は、「島根半島の高重力部は境水道を経て、美保湾に達しており、その南の低重力部との間に急激な変化が認められ、宍道断層がさらに東に延びる可能性が高い」と指摘されました。
この知見に基づき、境水道・美保湾エリアでの地下構造探査を実施すべきであります。そして、宍道断層と鳥取沖の断層の連続・連動調査を中国電力と原子力規制委員会に求めるべきであります。所見を伺います。
県民の命と安全を守るために、あらゆる専門家の科学的知見を総結集して、耐震安全性・基準地震動を評価すべきであります。的確なる基準地震動を評価するためにも、地震学、地質学、地形学などの専門家で構成する専門委員会(技術委員会)を設置すべきではありませんか。知事の英断を求め、質問を終わります。