2016 年 5 月定例会 委員長報告に対する討論
2016-06-17 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成です。日本共産党県議団を代表して、条例案1件、一般事件案2件、「原子力規制委員会に対して、島根原子力発電所1号機廃止措置計画に係る認可申請の事前了解を了とした」委員長報告に反対する討論を行います。
【第88号議案「知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例の一部を改正する条例」】
はじめに、第88号議案「知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、4ヘクタール以下の農地転用許可の事務を市へ移譲するものであります。
食糧生産の基盤である農地は、生物多様性や多面的機能の観点からも重要であり、転用は極めて慎重に行わなければなりません。これまでは、農地転用規制の実効性を確保する観点から、許可権限が地元の利害関係者から切り離されることによって、その客観性が担保されてきました。
しかし、県から市への権限委譲によって、許可権者と利害関係者の距離が近くなることで、地元の地権者や進出企業の意向に引きずられ、農地の改廃がいっそう進むことが危惧されます。すなわち、規制の実効性が弱まることが懸念されるのであります。
よって、本条例には反対であります。
【承認第4号議案 専決処分「島根県認定こども園の認定要件に関する条例の一部を改正する条例」】
【承認第5号議案 専決処分「島根県幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」】
次に、承認第4号議案「島根県認定こども園の認定要件に関する条例の一部を改正する条例」、ならびに、承認第5号議案「島根県幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」の2件の専決処分の承認についてです。
これらの議案は、保育士不足に対処する施策として、第1に、朝夕の保育士配置基準は、2人から1人にすること、第2に、幼稚園・小学校の免許があれば、保育士として働けること、第3に、研修などの代替え要員は、保育士でなくてもよいものとするなど、保育士配置の最低基準を緩和するものであります。
保育所の朝夕は、登園やお迎えの時間帯で、保護者と保育士が子どもの健康状態をはじめ、家庭や保育所での子どもの様子を伝え合い、意思疎通を図る大切な時間であります。保育士2人を下回らない最低基準は、子どもの発達保障にとって最低限のものであります。
人員確保の基準緩和や資格要件の緩和は、間違いなく保育の質の低下につながります。そして、保育の専門家としての保育士の誇りを傷つけ、モチベーションの低下をもたらすものです。
全国では、約80万人の潜在保育士が存在しています。保育士不足への対応として、今すべきことは、規制緩和や基準緩和ではありません。保育士の処遇改善と勤務環境改善に政治がしっかり責任を果たすことこそ保育士確保の確かな道ではないでしょうか。
以上の立場から、これら議案には反対であります。
【「原子力規制委員会に対して、島根原子力発電所1号機廃止措置計画に係る認可申請の事前了解を了とした」委員長報告について】
最後に、「原子力規制委員会に対して、島根原子力発電所1号機廃止措置計画に係る認可申請の事前了解を了とした」委員長報告についてであります。
原子力発電所の廃止措置とは、運転を終了した原子力発電所の原子炉より使用済み燃料をすべて取り出した後から、すべての施設を解体撤去するまでの過程をいいます。
島根1号機の廃止措置行程は、4段階に区分され、約30年かけて実施する計画となっています。
計画では、2018年度に青森県六ケ所村の再処理工場が運転を開始することを前提に、2029年度までに1号機の使用済み燃料を搬出するとしています。
六ヶ所村再処理工場では、使用済み燃料を再処理し、プルトニウムが回収されます。そして、そのプルトニウムは、プルサーマル発電で再利用する計画であります。
わが党は、原発の廃炉は、大賛成であります。
しかし、中国電力の廃止措置計画は、原発の廃炉、解体計画と同時に、使用済み燃料を再処理し、危険なプルトニウムを燃やすプルサーマル運転がセットとなっています。すなわち、原発再稼働を前提に、破たんした核燃料サイクル政策、プルトニウム循環方式にしがみついています。ここに、本計画の最大の問題があることを指摘するものであります。
以下、問題点を三点指摘します。
第一に、計画では、2018年度に再処理工場が稼働するとしていますが、使用済み燃料を安全に処理する技術は未確立です。
六ヶ所再処理工場は、事故が相次ぎ、竣工時期は、23回も延期されました。
再処理は、使用済み燃料を剪断・溶解させて、プルトニウムとウラン、高レベル放射性廃棄物に分離させるもので、この処理そのものが極めて危険なものであります。世界各地の再処理工場では、爆発 事故などが相次ぎ、工程自体、確立されていません。この事実を冷厳に見つめるべきであります。
第二に、仮に再処理工場が稼働したとしても、回収されたプルトニウムの使い道は、全くありません。高レベル放射性廃棄物の処分方法も全く見通しが立っていないではありませんか。
再処理工場では、年間約8トンのプルトニウムが回収される予定です。電気事業連合会は、2015年度までに16基から18基でプルサーマルを導入し、約6トン程度のプルトニウムを再利用する計画でありましたが、今、どうなっているでしょうか。プルサーマル運転の実績はゼロではありませんか。そして、プルトニウム利用計画の策定、公表もできない現状ではありませんか。
プルトニウムの累増を招く核燃料サイクルに対し、アメリカからも懸念の声が出ています。使う当てもないプルトニウムのため込みは、核不拡散条約に抵触し、国際的な信用を失う極めて深刻な問題であります。
また、高レベル放射性廃棄物にいたっては、ガラス固化し、地中に埋めて保管するとしていますが、埋める場所も処分方法も全くないことを直視すべきであります。
第三に、中国電力の安全確保対策・保守管理の杜撰さに対し、県民の不安が高まっていることです。
中国電力は、2010年に511カ所もの点検漏れを起こしました。そして、昨年、低レベル放射性廃棄物を処理する機器の検査報告書の偽造が発覚しました。
たび重なる不正を続ける中国電力への信頼は失墜しています。県民からは「廃炉は歓迎します。しかし、30年にもわたる危険な廃炉作業は原子炉解体や大量の放射性廃棄物の処理など、未知なる対応が待ち構えており、不正を繰り返す中国電力に安全な作業を実施する能力があるのか」との懸念の声が出されています。
国も、電力会社も、原発安全神話から決別すべきです。「原発は危険で技術的に未完成である」ことを肝に銘じるべきことを指摘するものであります。
最後に、わが党の原発問題、廃炉問題の考えを申し述べます。
第一に、使用済み燃料の処分の手段・方法については、専門家の英知を結集して、研究・開発をすすめることが重要であります。
第二に、使用済み燃料の処分方法の結論が出るまでは、政府の責任で厳重なる管理を行うべきであります。
第三に、原子力に関する基礎研究と廃炉事業の仕事を担う専門家の確保・育成を強力にすすめるべきであります。
第四に、原発の廃炉にいたるプロセスの管理、使用済み燃料の管理などを目的とし、従来の原発推進勢力から独立し、強力な権限を持った規制機関を新たに確立するべきであります。
原発を再稼働すれば、使用済み燃料の貯蔵プールは溢れ出してしまいます。再処理すれば、使う当てのないプルトニウムが溜り続け、処理方法のない高レベル放射性廃棄物が増え続けてしまいます。原発推進路線はあらゆる面で行き詰り、八方ふさがりの状況ではありませんか。
これらの問題を根本から解決する道は、プルトニウムを燃料とするプルサーマルを中止し、核燃料サイクルからただちに撤退すること。そして、原発ゼロを政治的に決断する以外にないことを強調するものであります。
以上の立場から、「原子力規制委員会に対して、島根原子力発電所1号機廃止措置計画に係る認可申請の事前了解を了とした」委員長報告には反対であります。
以上で討論を終わります。