2017 年 11 月定例会 平成 28 年度決算認定に対する討論
2017-12-15 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
日本共産党県議団を代表して、一般会計及び特別会計、病院事業会計、水道事業会計の3件の決算認定について、「認定」とした委員長報告に対し、反対の討論を行います。
予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡であると言われています。議会における決算認定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度以降の予算編成に資するため、広範な角度から住民の立場で行政評価・検証するものであります。
その評価の基準は、第一に、憲法が定める生存権や財産権、幸福追求権など基本的人権を県政が保障しているのか、第二に、地方自治法が規定する「住民の福祉の増進」という自治体の役割を県政が発揮しているのか、ここに立脚し、モノサシを置くべきであります。この立場から討論を行います。
【認定第5号議案「平成28年度一般会計及び特別会計の決算認定について」】
まず、認定第5号議案「平成28年度一般会計及び特別会計の決算認定について」です。
今、地方は、住民のくらしの困難、福祉・医療、農林水産業の危機、地域経済の衰退など、深刻な課題に直面しています。
県民のくらしの現状はどうでしょうか。県内において、非正規労働者は増え続け、経済的自立が困難と言われる年収200万円未満で働く労働者は、実に4割にのぼっています。
安倍内閣がすすめる大企業だけが潤うアベノミクス、地域産業の打撃となるTPP推進、社会保障切り捨てと消費税増税は、地方創生に逆行するものです。この道は地方を更なる衰退へ追い込み、貧困と格差を拡大し、県民生活を苦しめるものに他なりません。
くらしが大変になっている時だからこそ、国の暮らし圧迫の間違った政治を県政に持ち込むのか、それとも、それに立ちはだかって、島根県政が県民のくらしと福祉を守る防波堤の役割を果たすのかが、鋭く問われています。
今日、国保や介護など社会保険料未納者が社会保障制度から排除され、県民の命が脅かされています。この由々しき事態を解決し、生存権を保障することこそ、県政の喫緊の課題であり、県政の使命であるはずです。
国言いなりの政治から脱却し、住民の福祉を増進する自治体本来の仕事に全力を尽くすときです。
以下、県政上の課題、問題点を各論的に10点申し上げます。
【各論】
第1に、職員定数削減など、総人件費抑制策によって、職員の士気や組織の活力が低下しています。そのことは、県民サービスの低下につながります。職員定員削減は中止し、正規職員をはじめ臨時職員、嘱託職員の労働条件改善を強く求めます。
第2に、事務事業の見直しによる一般施策費削減によって、市町村へ負担が転嫁されています。例えば、住民の足を守る「生活交通確保対策交付金」の拡充など、住民に身近なサービスを提供する市町村への支援策を充実するべきであります。
第3に、県税や社会保険料を滞納した低所得者に対する無慈悲な差し押さえが実行されています。平成28年度の個人住民税の差し押さえ件数は1,452件、国民健康保険料・税の差し押さえは709件に及んでいます。生活に困窮した県民への生活再建支援に力を注ぐべきです。
第4に、所得が減少し、生存権が脅かされるもと、民生費、衛生費などの社会保障予算が貧弱であります。
平成28年度、75歳以上が加入する後期高齢者医療保険制度において、保険料未納による制裁措置として、261件もの短期保険証が発行されています。
国民健康保険では、加入世帯の約8%にあたる6,975世帯が保険料・税を滞納している状況です。そして、その制裁措置として、命綱である保険証の取り上げが513世帯にも達しています。
介護保険では、平成28年度末の保険料未納者は4,145人にものぼり、制裁措置として87人が給付額減額措置となり、3割の利用料負担を課されています。
貧困と格差が拡大し、低所得者や生活困窮者が社会保障制度から排除される深刻なる重大事態が起きているではありませんか。県政はこの実態、県民の苦悩を直視すべきであります。
来年度からスタートする国民健康保険の都道府県化によって、保険料のさらなる値上げ、徴収強化が懸念されています。高い国保料・税を引き下げるために、県による独自財源を投入すべきであります。また、介護保険の負担軽減策を講じるなど、人間としての尊厳を守る社会保障を抜本的に充実することを求めます。
第5に、松江北道路建設など、県民の理解と合意なき事業は中止すべきであります。土砂災害要対策箇所の整備率は18.5%、落石等通行危険箇所の整備率は37%でしかなく、災害に強い県土とは言えません。防災・減災型公共事業こそ、最優先すべきであります。また、県が行う建設事業に対して、市町村へ過大な負担を求めるべきではありません。
第6に、農業においては、持続可能な農業経営の実現、島根農業の再生に向け、価格保障と生産コストをカバーする支援策を講じるべきです。また、県として、国に対し、TPP11、日欧EPA、日米FTAなど農産物の際限ない輸入自由化路線を中止し、コメの需給や流通に責任を持つよう求めるべきであります。
第7に、企業誘致頼みから脱却し、地域に根を張って頑張る中小企業、地場産業育成に商工予算の柱をシフトすべきです。地域に根ざした中小企業を支援してこそ、安定した雇用と仕事をおこすことができます。内発型・循環型の地域振興策の推進を求めます。
第8に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては同和教育をすべての教育の基底に据え、同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。民間の同和団体への突出した補助金支出が、逆に不公正を生み出しています。同和教育は終結し、運動団体への補助金は他の補助金との公平性を図るべきであります。
第9に、子どもを苦しめ、学校間の序列化を生み、教育現場を競争に駆り立てる学力テストの中止を求めます。学校別結果の公表など論外であります。
真の学力向上の道は、少人数学級の推進や就学援助制度の拡充、教育費の無償化など、子どもたちが安心して学べるための教育環境整備をすすめることです。そして、多忙を極める教職員の勤務環境を改善し、経済的困難を抱え、子育てに不安を持つ保護者を支援することであります。
本県教育が、臨時適任用教職員によって支えられている現状を是正するために、正規教職員の採用を増やし、臨時教職員の待遇改善を求めます。
最後に、県民の命と安全を守ることこそ、県政の最大の使命であります。安全な原発などあり得ません。実効ある避難計画は未策定であります。使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物の処理方法は未確立であり、核燃料サイクル政策は破たんしています。県として、技術的に未完成な原発からの撤退を決断し、自然エネルギーの普及と促進に向け、更なる知恵と力を注ぐべきです。
【認定第1号議案「平成28年度島根県病院事業会計決算の認定について」】
次に、認定第1号議案「平成28年度島根県病院事業会計決算の認定について」です。
県立中央病院では、希望者に対して2交代勤務が行われています。2交代勤務は、看護師の健康悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては、安心・安全な看護の提供の面から有害であります。
県民誰もが等しく安心して県立病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の徴収など、保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証一枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきであります。
県立中央病院は、救急医療、地域医療、災害医療、周産期医療など県医療計画に基づく政策的医療を推進し、県民にとってかけがえのない命綱の病院です。
平成28年度、救急医療では、ドクターヘリの基地病院として615件ものヘリ運行実績があり、県民の命を守りました。災害医療では熊本地震発生時、医師や看護師など延べ99人がDMAT・災害派遣医療チームを組み、熊本への救援・救命措置に貢献しました。
引き続き、県民の命と健康を守り、地域の健全な発展、医療水準の向上に努められることを期待するものです。
【認定第3号議案「平成28年度島根県水道事業会計決算の認定について」】
最後に、認定第3号議案「平成28年度島根県水道事業会計決算の認定について」であります。
江の川水道事業は大田市、江津市に送水していますが、その施設利用率はわずか42.7%です。その結果、大田市や江津市は県下トップクラスの水道料金となっています。
島根県水道用水供給事業において、飯梨川水道事業の施設利用率は57.8%、斐伊川水道事業の施設利用率は67.8%の低利用率であります。
江の川水道事業や斐伊川水道事業は、積算根拠、需要予測を見誤ったため、使わない水まで住民負担となっており、高い水道料金に市民からの悲鳴が上がっています。
平成28年度の松江市の給水停止実施件数は1,189件にものぼりました。前年度から199件も給水停止件数が増加したのであります。
地方公営企業法第3条の経営の基本原則には、「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない」と規定されています。
水道事業の本来の目的は、公共の福祉の増進にあります。それは、すなわち、水道料金の値上げをどう抑えるかにあります。
県として高い水道料金を引き下げるため、受水団体への資本費負担軽減を図るなど、料金軽減策を講じるべきであります。
日本共産党県議団は、今回の決算審査にあたって、全体会、分科会におきまして、120項目を超える質疑、資料の提供を求めました。
決算審査の過程において、すべての執行部のみなさんから誠意あるご回答並びに資料のご提供を頂きました。
心からの感謝とお礼を申し上げ、討論を終わります。