2018 年 2 月定例会 知事提出議案に対する討論
2018-03-15 この記事を印刷
日本共産党の大国陽介です。
日本共産党県議団を代表して、予算案4件、条例案13件について委員長報告に反対する討論を行います。
【第2号議案「平成30年度島根県一般会計予算」】
はじめに、第2号議案「平成30年度島根県一般会計予算」についてであります。
今、国政が揺れています。森友学園への国有地の取り引きをめぐって、財務省の公文書の改ざんが明らかになりました。国民の怒りは頂点に達しています。公文書の改ざんは、行政への信頼を失墜させ、民主主義の土台を根底から崩す由々しき事態であります。
財務省は消費税増税や地方財政の縮小をねらっています。国民の信頼あってこその政治・行政であります。県としても真相解明へ政府が責任を果たすよう強く要求することを求めます。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が始まって5年が経ちました。大企業や富裕層優先で、国民に冷たい本質が浮き彫りとなり、さらに、社会保障の自然増削減や大企業への減税などによって、「格差と貧困」がいっそう拡大しています。
この下で、地方自治法で規定されている「住民福祉の増進」を目的とした自治体本来の役割が大きく問われています。今、高すぎる税や国民健康保険や介護の保険料、水道など公共料金の負担、市町村によっては滞納者に対して厳しい徴収が行われるなど、制裁措置に県民が苦しめられています。
県政に求められているのは、くらしを守るための施策を抜本的に充実させること、国に対して県民の立場で発言し、行動することであります。国言いなりの県政から脱却し、住民の福祉を増進する自治体本来の役割を果たすことを強く求めるものであります。
この立場から、県民のくらしの実態に照らして本予算をみたとき、県民生活を守るための予算が、あまりにも不十分であります。
よって、本予算案には賛成できません。
各論的に10点申し上げます。
第1に、職員定数削減など、総人件費の抑制によって、職員の士気や組織の活力が低下しています。そのことは、県民サービスの低下につながります。これ以上の職員削減は中止し、正規職員をはじめ臨時職員、嘱託職員の労働条件を改善させることを強く求めるものであります。
また、この4月から、労働契約法の改定による「無期転換ルール」が開始されます。県内の一部事業所で、法の趣旨を逸脱する脱法行為が見受けられます。県の仕事を担う外郭団体においても労働者の権利を守る立場での対応を切に求めるものです。
第2に、事務事業の見直し等による一般施策費の削減・抑制によって、市町村へ負担が転嫁されています。地域の公共交通をはじめ、住民に身近なサービスを提供する市町村への支援策と予算を充実するべきであります。
第3に、県税や社会保険料を滞納した低所得者に対する無慈悲な取り立てと差し押さえが横行しています。「納税の猶予」など納税緩和制度を周知徹底するとともに、住民からの生活相談に丁寧に応じる体制を整えるなど、生活に困窮する県民の生活再建にこそ、力を注ぐべきであります。
第4に、所得が減少し、生存権が脅かされるもとで、民生費、衛生費などの社会保障予算があまりにも貧弱であります。
例えば介護保険では、今でも保険料滞納者に対する給付の制限が行われ、低所得者、生活困窮者が施策から排除される大変な事態が生じています。この下で、4月から多くの地域で保険料が値上げされ、制度開始当初と比較して実に2倍以上の水準となり、必要な介護サービスが受けられなくなるなど、制度からの排除がいっそう拡大することが懸念されます。
社会保障の住民負担を軽減し、制度を充実させるなど、人としての尊厳を守る社会保障を抜本的に強化することを求めます。
第5に、松江北道路の建設など、県民の理解と合意なき事業は中止すべきであります。また、県が行う建設事業に対して、市町村へ過大な負担を求めるべきではありません。
第6に、農業においては、持続可能な農業経営の実現、島根農業の再生に向け、価格保障と生産コストをカバーする支援策を講じるべきです。TPPなど輸入自由化路線にきっぱり反対し、ノーの声をあげ、農家へのエールを送るべきです。
第7に、誘致企業頼み、大企業呼び込み型の産業振興策から脱却し、地域に根を張って頑張る中小企業、地場産業育成に、商工予算の軸足をシフトすべきです。地域に根ざした中小企業を支援してこそ、安定した雇用と仕事をおこすことができます。内発型、循環型の地域経済をめざした地域振興策を推進すべきであります。
第8に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては同和教育をすべての教育の基底に据え、同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。民間の同和団体への突出した補助金支出が、逆に不公正を生み出しています。同和教育は終結し、運動団体への補助金は他の補助金との公平性を図るべきであります。
第9に、子どもを苦しめ、学校を序列化し、教育現場を競争に駆り立てる学力テストの中止を求めます。ましてや学校別結果の公表など論外であります。真の学力向上の道は、少人数学級の推進や就学援助制度の拡充などによる教育の負担軽減など、子どもたちが安心して学べるよう、教育環境を整備すること。そして、多忙をきわめる教職員の勤務環境を改善し、経済的困難を抱え、子育てに不安を持つ保護者を支援することであります。
最後に、県民の命と健康、安全を守ることこそ、県政の最大の使命であります。
東日本大震災と福島原発の事故の発生から7年が経ちました。現地では復興・復旧にむけた懸命の努力が重ねられていますが、未だに多くの被災者が避難を余儀なくされています。
最大の教訓とすべきは、安全な原発などあり得ないということです。県として、技術的に未完成の原発から撤退することを決断し、自然エネルギーの普及と促進に向け、更なる知恵と力を注ぐべきであります。島根原発2号機の再稼働ならびにプルサーマル運転、ましてや3号機の新規稼働など、到底許されないことを強調するものです。
【第8号議案「平成30年度国民健康保険特別会計予算」】
【第35号議案「島根県国民健康保険財政安定化基金条例の一部を改正する条例」】
次に、第8号議案「平成30年度国民健康保険特別会計予算」についてです。
来年度から国民健康保険の都道府県化がスタートします。都道府県化によって、県が各市町村に納付金を割り当て、市町村は住民から保険料を集め、県に納付する形で国保財政が運営されることになります。
県は、市町村ごとに医療給付費の水準や標準保険料率、標準的な収納率などの指標を提示しました。都道府県化によって、医療給付費水準の高い自治体や収納率が低い自治体が「見える化」され、市町村に給付の抑制や収納率向上などの圧力が加えられることとなります。
都道府県化のねらいは、医療費の削減です。今日の国保の危機を招いた元凶は、国庫負担金の削減にあります。
高い国保料を引き下げる道は、国庫負担金を増額し、市町村による一般会計繰り入れを増やすことです。そして、県が保険者となる以上、県の独自財源を投入すべきであります。
よって、国保特別会計予算には、反対であります。
あわせて、一般財源からの財政補てん等を行う必要がないよう、県に財政安定化基金を設置する、第35号議案「島根県国民健康保険財政安定化基金条例の一部を改正する条例」についても、反対であります。
【第17号議案「平成30年度島根県病院事業会計予算」】
次に、第17号議案「平成30年度島根県病院事業会計予算」についてです。
県立中央病院では、希望者に対して看護師の2交代勤務が行われています。
夜間・長時間労働の2交代勤務には、2つのリスクがあると言われています。一つは、心身に大きな負担がかかることで、注意力が低下し、事故発生率が高まるという「安全リスク」。もう一つは、睡眠障害、循環器系障害の他、人工照明を浴びることで乳がん、前立腺がんの発生率が高くなるという「健康リスク」です。
2交代勤務は、看護師にとっては、健康の悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては、安全・安心な看護の提供の面から有害であります。
また、県民誰もが等しく、安心して県立中央病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料徴収など、保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証1枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきです。
この立場から、病院事業会計予算には賛成できません。
【第20号議案「平成30年度島根県水道事業会計予算」】
次に、第20号議案「平成30年度島根県水道事業会計予算」についてです。
江の川水道事業や斐伊川水道事業は、積算根拠、需要予測を誤ったため、使わない水まで住民負担となっており、市民に高い水道料金が押し付けられています。さらに、各地で簡易水道の統合に伴う料金値上げも、実施または、実施予定となっています。県として、受水団体の資本費負担軽減を図るなど、財政措置を講じるべきです。
よって、水道事業会計予算には反対です。
【第24号議案「職員の退職手当に関する条例等の一部を改正する条例」】
次に、第24号議案「職員の退職手当に関する条例等の一部を改正する条例」についてであります。
本条例改定により、職員の退職手当が引き下げとなります。公務員給与の引き下げは、公務労働者の生活のみならず民間企業の給与に波及し、地域経済にマイナスの影響を及ぼしかねません。
よって、本条例に賛成できません。
【第28号議案「島根県手数料条例の一部を改正する条例」】
【第33号議案「警察に関する手数料条例等の一部を改正する条例」】
次に、第28号議案「島根県手数料条例の一部を改正する条例」及び、第33号議案「警察に関する手数料条例等の一部を改正する条例」についてであります。
本条例改定によって、手数料が引き下げとなるものもありますが、運転免許試験、危険物取扱者試験にかかる手数料などが引き上げとなります。経費の増加等が理由に挙げられていますが、安易な負担増は行うべきではありません。
よって、本条例に反対であります。
【第30号議案「島根県核燃料税条例の一部を改正する条例」】
次に、第30号議案「島根県核燃料税条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例改定は、原子炉等規制法が改定されたことに伴うものであります。法の改定により、これまで国と事業者とがそれぞれ行っていた原発の検査を、電力会社が検査した上で国が事後評価する方式へ転換するものであります。原発の検査に対する国の責任を放棄し、事故・トラブルの隠ぺい、データ改ざんを繰り返してきた電力会社任せにするものです。条例改定は、この法改定を追認するものであり、認められません。
よって、本条例には反対であります。
【第34号議案「島根県後期高齢者医療財政安定化基金条例の一部を改正する条例」】
次に、第34号議案「島根県後期高齢者医療財政安定化基金条例の一部を改正する条例」についてであります。
後期高齢者医療の財政安定化基金への拠出割合は、広域連合が3分の1、国と県が同額の3分の1ずつを拠出することとなっています。本条例は、その拠出率をゼロとするものであります。
2018年4月から75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度の6回目の保険料率の改定が行われます。島根県の広域連合では、剰余金等を活用しての引き下げが予定されています。
保険料の引き下げは評価しますが、現在、島根県には約21億円もの財政安定化基金があります。今、やるべきことは、高い保険料を引き下げるために、さらにこの基金を取り崩すことです。
加えて、今回の拠出をしないという判断は、国や県の財政支援額の後退であり、本条例には反対であります。
後期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで負担増と差別医療を押し付ける悪法です。すみやかに制度を撤廃し、元の老人保健制度に戻すことを強く求めます。
【第36号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」】
【第40号議案「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」】
【第41号議案「島根県児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」】
次に、第36号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」ならびに、第40号議案「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」ならびに、第41号議案「島根県児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」についてであります。
これら条例案は、高齢者と障がい者が同一事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障がい福祉制度に新たに共生型サービスを位置付けるものであります。
厚労省は、共生型サービスは「サービスを効果的・効率的に提供するための生産性の向上」と言っています。すなわち、安上がりな人員体制で、複合的なニーズに対応するものであります。
共生型サービスは、効率化や福祉人材不足解決のために、相談支援窓口や施設、専門職員の供用、兼務をすすめるにすぎません。
本来、必要なことは、福祉労働者の処遇を抜本的に改善し、専門職をしっかり配置することです。
介護保険と障がい者福祉の統合をねらい、障がい者施策に保険原理を持ち込む共生型サービスは、障がい者の生存権、平等権、尊厳を保障する障がい者福祉制度に逆行するものです。
よって、これら条例には、反対であります。
【第38号議案「島根県介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準を定める条例」】
次に、第38号議案「島根県介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準を定める条例」についてであります。
本条例は、新たな介護保険施設として、介護医療院が創設されることに伴い、当該施設の基準を定めるものであります。
介護医療院は、慢性期病床である医療療養病床を一部削減し、介護療養病床を全廃するための受け皿・転換先と想定されています。
介護医療院は生活の場であり、看取り、ターミナルケアの場であるとされています。現在の医療水準は維持するとしながらも、老健施設相当となる施設では医師は100対1へと後退することとなります。
これによって、医療、介護の質の低下が懸念されます。また、介護療養病床を機械的に削減・廃止すれば、長期の療養が必要な医療を要する中度、重度の患者を難民化させることにつながるではありませんか。
今、必要なことは、患者の生活の質と尊厳が守られるよう医療・介護の人員配置、施設基準を抜本的に拡充すべきであります。
よって、本条例には反対であります。
【第42号議案「市町村立学校の教職員の給与等に関する条例等の一部を改正する条例」】
次に、第42号議案「市町村立学校の教職員の給与等に関する条例等の一部を改正する条例」についてです。
本条例は、県内に市町村立の小中一貫教育として、「義務教育学校」が設置されることに伴う関係条例の改定であります。
小中一貫校の実態について、国として調査したものがほとんどなく、教育的効果や問題点が検証されておりません。また、義務教育学校は、小学校段階から複数の教育課程が設けられ、教育の機会均等を崩す恐れがあります。そして、義務教育学校創設は、学校統廃合をさらに加速させる手段となりかねないものです。
よって、本条例には反対であります。
【第43号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」】
次に、第43号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてです。
本条例は、児童数及び生徒数の変動等に伴い、職員定数を改正するものであります。
本県単独の小・中学校の少人数学級編成や特別な支援を要する児童に対しての非常勤講師配置事業については、評価するものであります。
今の教職員定数は、教員が本来の仕事をする上で絶対的に不足しています。
教員の多忙化解消、ゆきとどいた教育の実現、教職員がいじめに向き合う条件を整備するために、職員定数の大幅な拡充が求められています。
よって、本条例には賛同できません。
【第45号議案「島根県立都市公園条例の一部を改正する条例」】
最後に、第45号議案「島根県立都市公園条例の一部を改正する条例」についてです。
本条例改定は、浜山公園など都市公園の運動施設率の上限を100分の50に定めるものであります。都市公園は都市における緑地の保全や緑化の促進、市民の憩いの場、災害時の避難場所や復旧・復興の拠点としての役割が期待されています。
県の都市公園の運動施設率の現状は、県立浜山公園の22.4%が最高となっていますが、今回の条例改定によって50%まで許容することになり、都市公園に期待される本来の役割が十分に果たせなくなることが懸念されます。参酌基準をそのまま当てはめるのではなく、県独自の判断として割合を引き下げるべきであります。
よって、本条例には賛成できません。
以上で討論を終わります。