前に戻る

議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2018 年 6 月定例会一般質問 (福島原発事故の教訓と憲法を生かす県政について、国のエネルギー基本計画の問題点と島根 3 号機の危険性について、原発稼働条件は「ゼロ」であることについて、原発稼働の同意権・不同意権を保障する立法措置と安全協定について、原発ゼロの安全・安心の島根づくりについて)

2018-06-20 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。
 4月9日に発生した島根県西部地震、6月18日の大阪府北部地震で被災されたみなさまに心からのお見舞いを申し上げます。わが党は、復興と生活再建に向けて力を尽くすものであります。

【1.福島原発事故の教訓と憲法を生かす県政について】
 まず、福島原発事故の教訓と憲法を生かす県政について伺います。
 今、島根は大きな岐路に立っています。国内最大級の原発である島根原発3号機の新規稼働によって、今後100年近くも原発の危険を抱え、原発依存の島根を続けるのか、それとも、危険な原発と決別して安全・安心の島根の道を進むのか、大きな分かれ道にあります。
 中国電力は5月22日、島根県に対し、「島根原発3号機における新規制基準への適合性確認審査に係る事前了解願い」を申し入れました。今議会の最大の焦点は、この事前了解を了承するのか否かにあります。まさに、島根の未来がかかった歴史的な議会であります。
 原発稼働を狙う原発推進勢力は、「適合性確認審査申請と原発稼働とは別である」という詭弁を弄しています。しかし、これは現実を見ない空論にほかなりません。なぜなら、中国電力の社長は「抜本的な経営基盤の回復、経営の安定化には原発の稼働が不可欠である」と強調し、早期の2号機再稼働、3号機の新規稼働に対して、並々ならぬ決意を表明しているではありませんか。
 この度の事前了解願いは、明らかに3号機の新規稼働が目的であります。「適合性確認審査申請は原発稼働への第一歩」であり、原発稼働のプロセスであることは明白であります。
 私は、県民の命と安全を守ることに責任を持つ県議会議員として、危険な原発稼働に突き進むあらゆる動き、いかなる策動も断じて容認することはできません。
 知事に伺います。
 私は、原発を含め、島根県政の政策決定の根本に、日本国憲法と地方自治法を据えるべきことを強く求めます。
 それは、県政の政策、県政が進むべき施策が基本的人権を保障した憲法に合致しているのか、そして、住民の命と安全を守ることこそ自治体の使命であると規定した地方自治法の理念に合致しているのか、このことを判断基準にすべきであります。所見を伺います。
 原発問題を考えるときに絶対に忘れてはならないのは、2011年3月11日に発生した福島第1原発事故の悲劇であります。
 福島原発事故から7年が経過しました。しかし、福島では、今もなお5万人を超す人々が避難生活を余儀なくされ、事故原因も未だ未解明です。溶け落ちた核燃料の位置や状態も未だ把握できず、破壊された原子炉建屋への地下水流入により核燃料から溶け出した汚染水が増え続けています。事故収束には程遠く、事故被害は深刻化しているではありませんか。
 私は、福島事故発生以降、三度にわたって被災地を訪ねました。仮設住宅に避難をしている自治会長さんの「原発事故が人々の幸せを奪った。誰もが将来に不安を持っています。こんな危険なものが存在してはいけない」という声、90代のおばあちゃんが語った「原発事故によって、一人暮らしになりました。家族と離れ離れになって本当につらいです」との声が忘れられません。
 あの原発事故は30キロ圏外にも被害を及ぼしました。原発には、他の事故には見られない「異質の危険」があります。ひとたび、重大事故が発生し、放射性物質が外部に放出されると、もはやそれを抑える手段は存在しません。被害は、空間的にどこまでも広がり、時間的にも、将来にわたっても危害を及ぼし、地域社会の存続さえ危うくすることを福島は実証したではありませんか。
 福島事故の教訓は「安全な原発などあり得ない」ということであります。
 知事に伺います。
 原発事故は、ふるさとを壊し、家族をバラバラにし、人々の生活と生業、幸せを奪い去りました。県として福島の現状をどう認識し、把握していますか。また、あの事故から県として何を学び、何を教訓としているのですか。
 福島事故は、憲法が保障する生存権、幸福追求権、財産権、居住権など憲法が保障する基本的人権を奪い去ったことは明白ではありませんか。原発の存在は、憲法に反するではありませんか。所見を伺います。

【2.国のエネルギー基本計画の問題点と島根3号機の危険性について】
 次に、国のエネルギー基本計画の問題点と島根3号機の危険性についてです。
 なぜ、中国電力をはじめ、電力会社は原発ノーの世論に逆らって、原発を稼働しようとするのでしょうか。それは、利潤追求とともに、国のエネルギー基本計画が背景にあります。
 政府は、原発事故に無反省のまま原発を重要な「ベースロード電源」と位置付けた第5次エネルギー基本計画案をまとめました。
 計画案では、2030年度の電源構成の目標を原子力20~22%、石炭26%、再生可能エネルギー22~24%としています。
 原子力発電割合を20~22%とする目標は、現在約2%である原発割合を10倍以上にすることであり、原発約30基分の稼働をめざすことであります。それは、運転開始から40年未満の原発をすべて再稼働させることに加え、40年を超す老朽原発も動かすということであります。当然、その中に島根原発2号機、3号機の稼働も含まれているのであります。
 島根で起こっている現局面は、中国電力がこのエネルギー計画案に沿って、2号機の再稼働と3号機の新規稼働に突き進んでいるのであります。
 国の計画案を容認することは、2号機、3号機稼働を認めることになります。原発推進の計画案撤回を国に求めるべきであります。所見を伺います。
 国や中電は、島根3号機をはじめ、原発の必要性として、「経済性」「安定供給」「地球温暖化対策」などを理由に掲げます。しかし、廃炉、賠償、除染費用など福島原発事故の処理費用は現時点でさえ21兆円を超え、最大で70兆円を超すとの試算もあります。事故処理費用は国家予算規模となり、東京電力の過去の発電による売り上げを上回るとも指摘されています。
 これらすべての費用が税金と電気料金に上乗せされ、国民にツケが回されようとしています。原発ほど国民に巨大な経済負担を、累積的に、かつ半永久的に強要するものなどないではありませんか。
 安定供給と言いながら、事故や不祥事など電力供給が最も不安定で、不確実なものが原発ではありませんか。環境面においても、事故が起これば、広範囲で長期間の放射能汚染をもたらし、取り返しのつかない事態を引き起こすではありませんか。
 経済、環境を口実にした原発必要論など成り立ちません。原発こそ、究極のハイコスト・ハイリスクであります。所見を伺います。
 次に、島根3号機の危険性についてです。
 3号機の出力は、137万3千キロワットで国内最大級です。中国電力は「従来に比べ、信頼性、安全性がより向上した」と強弁しますが、果たして本当にそうでしょうか。
 3号機は巨大なリスクを抱えています。なぜなら、3号機は、今から13年前の2005年に着工されました。福島事故前の着工であり、原子炉本体に何一つ福島事故の教訓が反映されていないではありませんか。
 専門家や技術者も「3号機は福島事故以前の原子炉で、経済性を重視した構造となっている」「本質的な設備の中心部分の改善が行われていない」と警告しています。
 改良型沸騰水型軽水炉の3号機は、コスト優先で、原子炉建屋と格納容器を一体化し、十分なる安全性の検証などありません。内蔵型再循環ポンプの採用と緊急炉心冷却装置の簡素化による冷却機能不全の恐れ、実績の乏しい新型の電気駆動式制御棒駆動装置の危険性なども指摘されています。
 何より危険なのは、3号機など日本の原発は、国際水準と比較した場合、溶融した炉心を受け止めるコアキャッチャーや航空機の直撃に耐えられる原子炉格納容器の二重防護壁も設置されておらず、安全性で大きく見劣りしています。「世界で最も厳しい安全基準」との政府の説明はまったく事実に反するものであります。
 原発は、莫大な放射性物質(死の灰)を抱えています。しかしながら、それをどんな事態が起きても閉じ込めておく完全な技術は存在しないではありませんか。原発の技術は本質的に未完成で極めて危険なものであります。所見を伺います。
 また、中電は、電力供給の大部分を火力に依存し、その火力が高経年化しており、その対応として、3号機の新規稼働が必要と主張しています。
 しかし、中電は浜田市に三隅火力2号機を建設中ではありませんか。今後10年間の管内の電力需給見通しでは、電力の供給余力を示す供給予備率は、原発稼働を想定しなくても、安定供給の8%を大きく上回る10.5~22.5%で推移する見通しではありませんか。電力は足りています。3号機稼働の必要性などまったくないことを強調するものであります。所見を伺います。
 私は、暮らしにかけがえのない電力を供給してくださる中電の職員、関係者のみなさんに心からの敬意を表し、本議場からエールを送るものであります。
 中電関係者のみなさんが誇りを持って業務に従事される上でも、国民の願いに反する原発推進事業から国と中電が勇断を持って撤退されることを強く訴えて、次の質問に移ります。

【3.原発稼働条件は「ゼロ」であることついて】
 次に、原発稼働条件は「ゼロ」であることについてです。
 まず、地震についてです。
 政府の地震調査研究推進本部は、島根県東部地域において「マグニチュード6.8以上の地震が今後30年以内に発生する確率は40%」とする衝撃的な長期評価を公表しました。
 専門家は、4月9日に大田市など県西部を襲った大地震は、「『ひずみ集中帯』といわれる山陰特有の地下構造に起因する」と指摘し、「ひずみ集中帯」は、鳥取県から島根県にかけての地下にもあり、大地震を引き起こす未知の活断層の存在を警告しています。いつどこで大地震が発生するのかわかりません。
 宍道断層の評価は、昨年7月28日に従来の25キロから1.5倍となる39キロへと、5回目の見直しがなされました。宍道断層が東に14キロ延長し、鳥取沖西部断層との離隔距離はわずか5キロになり、連動すれば140キロを超す断層となります。
 科学者は「熊本地震など西日本で地震が多発しているのは、南海トラフ巨大地震の前兆現象」と警告しています。あらゆる科学者・専門家の知見や警告を真剣に受け止めるべきではありませんか。所見を伺います。
 次に、避難計画の問題です。
 原発から30キロ圏内には、47万人が生活しています。そのうち、県内の入院患者は約6千人、社会福祉施設の入所者は9千人、在宅の要支援者は3万1千人を超えています。災害弱者の割合は1割を超す4万6千人に及んでいます。
 医療関係者からは「重病患者が本当に安全に避難できるのでしょうか。避難する過程で病状が悪化し、命の危機につながる恐れがあります」との声や、保育関係者からは「保育士1人に対し、園児6人という1、2歳児の配置基準のもとで、子どもの安全が守れるのか不安です」との不安の声も寄せられています。
 県として原発事故時や避難時において、保育、介護、医療関係者から如何なる声を聞いているのですか。また、如何なる課題があると認識していますか。伺います。
 中には、例え事故が発生しても避難せず、自宅に留まると表明している人も多数あります。老老介護や高齢者世帯の方は、福島事故の被災者の惨状を目の当たりにして、初めから避難しないと決めている人も少なくありません。この住民の声・思いをどう認識し、どう対応するのですか。所見を伺います。
 次に、県土の防災・災害対策が貧弱な問題についてです。
 松江市など原発から30キロ圏内の自治体で、緊急輸送道路上に耐震対策が必要な橋梁は71橋梁あります。しかしながら、耐震対策実施済み橋梁はわずか38橋梁にしかすぎません。
 落石等通行危険箇所は537箇所ありますが、対策済みはわずか191箇所であり、整備率は35%です。また、土砂災害の要対策箇所は2,173箇所あり、そのうち整備済みは389箇所、整備率18%にとどまっています。この状況では、事故時の安全なる避難などできないではありませんか。
 30キロ圏内の緊急輸送道路上にある耐震対策必要橋梁の耐震実施は何年後に完了しますか。また、落石等通行危険箇所ならびに土砂災害要対策箇所の整備は何年後に完了予定なのですか。
 次に、核燃料サイクルが破綻していることについてです。
 高速増殖炉「もんじゅ」は事故・不祥事続きで廃炉に追い込まれました。高速実証炉は、世界でも成功した例がなく、実用化の目途はまったく立っていません。使用済み核燃料や核のゴミの処理方法も未確立です。自分が生み出す核廃棄物の後始末ができない原発は完成した技術とは言えません。新たに核のゴミを生成する原発稼働は無責任極まりないものです。県として、核燃料サイクルからの撤退を国に求めるべきであります。所見を伺います。
 多くの県民は原発稼働など望んでいません。大地震の予測や備えもできず、実効ある避難計画も策定されておらず、災害・防災対策が完了していないなど、原発稼働の条件は皆無です。このような中、県として原発稼働を決定し、原発稼働による災害が発生すれば、その災害は県が引き起こした「人災」になるではありませんか。県として「即時原発ゼロ」の決断を行うべきです。所見を伺います。

【4.原発稼働の同意権・不同意権を保障する立法措置と安全協定について】
 次に、原発稼働の同意権・不同意権を保障する立法措置と安全協定についてです。
 原発立地自治体及び原発周辺30キロ圏内の自治体には、法律で避難計画の策定が義務付けられています。その一方で、立地自治体以外の自治体には、原発の再稼働に対して同意・不同意する権限が付与されていません。福島事故をみれば、原発から半径30キロ圏外の地域も決して安全とは言えず、あまりにも不条理ではありませんか。
 国に対し、原発事故の被害が想定されるすべての自治体に、原発稼働の同意権・不同意権を保障する立法措置を講じることを求めるべきであります。所見を伺います。
 また、周辺自治体が繰り返し求めている立ち入り調査権や原子炉停止要求権などを保障する原発立地自治体並みの安全協定の締結に向けて、安全協定第12条の「適切措置要求権」を発動すべきであります。県として積極的なイニシアチブ発揮を求めるものであります。
 安全協定第12条は、次の通り規定しています。「島根県及び松江市は、周辺住民の安全確保のため、特別な措置を講ずる必要があると認める場合は、中国電力に対して原子炉の停止を含め、適切な措置を講ずることを求める」との規定であります。
 この間の中電の不正・不祥事は際立っています。最近でも、2010年には511カ所もの点検漏れがあり、2015年には低レベル放射性廃棄物処理に係る機器の検査記録の偽造もありました。一昨年には、1、2号機の中央制御室空調換気系ダクトに100カ所を超す腐食孔が確認されるなど杜撰な保守管理に対して、県民の厳しい批判の声があがっているではありませんか。周辺住民の安全確保のため中電に対する監視・チェック体制を強化すべきであります。原子炉停止権も認めるべきであります。
 周辺自治体の願いを実現するためにも、県が第12条を発動するときです。県として第12条を発動し、中電が松江市並みの安全協定を出雲市や安来市、雲南市と締結するよう積極的に動くべきであります。
 少なくとも、県が国と協議・調整を行い、中国電力と周辺自治体との協議の場を設定すべきであります。所見を伺います。

【5.原発ゼロの安全・安心の島根づくりについて】
 最後に、原発ゼロの安全・安心の島根づくりについてです。
 国政では、3月9日に立憲民主党、社民党、自由党、日本共産党の4野党が共同提出した「原発ゼロ基本法案」が6月8日に衆議院経済産業委員会に付託されました。法案は、政治の意思として原発ゼロの決断を求めるものです。わが党は、原発稼働に反対する多くの国民と力を合わせて法案の可決に全力を尽くすものであります。
 福島では、県内すべての市町村議会で「原発廃炉を求める国への意見書」を決議しました。福島県議会も、全会一致で「福島第2原発廃炉を求める意見書」を四度も決議したのであります。これら福島県民の願いに押されて、東京電力は6月14日、ついに福島第2原発の全4基の廃炉を表明しました。
 今こそ、島根県政は福島と固く連帯し、原発ゼロを決断し、島根から安全・安心のエネルギーを発信すべきです。再生エネルギーの活用を地元の中小企業の仕事や雇用に結び付くよう追求し、再生可能エネルギー推進県をめざすべきであります。所見を伺います。
 国政では、自衛隊の日報隠ぺい、森友・加計疑惑にみられる公文書改ざん、文書の廃棄、虚偽答弁など、ゴマカシの政治が横行しています。
 原発問題でも、ゴマカシが明らかになりました。それは、5月9日、東京電力刑事裁判に出廷した元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏の証言です。島崎氏は「最大15.7メートルと想定した津波の根拠となった国の地震予測長期評価を踏まえた対策をしていれば、かなりの命が救われただけでなく、福島事故は起きなかった」との衝撃的な発言を行ったのです。
 最後に、知事に伺います。
 地方自治体は、国の下請け機関ではありません。国政が県民の命と安全を脅かすとき、間違った国の政治に立ち向かうことこそ自治体の使命・魂ではありませんか。県民の命を守るためには、原発に固執する国の原子力政策に無批判であり、迎合してはなりません。
 県政が県民の願いに反する原発推進施策を取れば、県民の県政への信頼は失墜するではありませんか。「原発ゼロ」こそ、県政が進むべき道であることを強調して、質問を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画