2019 年 6 月定例会一般質問 (知事の政治姿勢について、島根創生・人口減少対策について、平和問題について、国民健康保険について、農業問題について、島根原発について)
2019-06-14 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
【1.知事の政治姿勢について】
まず、知事の政治姿勢について伺います。
言うまでもなく、県政の役割は県民の命と安全、くらしを守ることにあります。
島根県政の重要課題の一つに、島根原発の問題があります。
福島の原発事故は人々の人生を狂わせました。原発事故は、ふるさとを壊し、家族をバラバラにし、人々の生活と生業(なりわい)、幸せを奪い去りました。
あの事故から8年が経過しましたが、未だに事故原因は究明されていません。事故は収束どころか、汚染水が太平洋に流出し、原子炉内の様子も把握できておらず、危機的状況が続いています。
それにも関わらず、政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原発の再稼働・新設、原発の輸出に躍起となっています。ひとたび、事故が起きれば、取り返しのつかない被害をもたらす原発は直ちに廃炉にすべきであります。
知事に伺います。
丸山知事は、福島事故をどう捉えていますか。知事は、施政方針で「現場主義に徹する」と強調されました。そうであるならば、原発立地県の知事として福島を視察し、その現実を直視し、県の政策判断に生かすべきであります。所見を伺います。
国政では、消費税10%増税、憲法9条改定の企てなど国民の願いに反する政治が続いています。2014年の消費税8%増税を契機に、家計消費は世帯当たり25万円も落ち込み、労働者の実質賃金は年10万円も低下してしまいました。今日、世界経済の減速も加わって、政府自身も景気悪化の可能性を認めざるを得なくなっています。
今、求められているのは、家計を応援し、格差と貧困をただし、明日への希望が持てる政治への転換であります。国民に5兆円もの大増税を押しつける10月からの10%増税は中止すべきであります。
安倍首相は、憲法9条に自衛隊を明記し、戦争の放棄や戦力の不保持、交戦権の否認を定めた9条1項、2項を「死文化」させ、海外での自衛隊の武力行使を無制限にしようとしています。
憲法の尊重擁護義務があり、憲法で縛られるべき首相が、自ら改憲の旗振りをすること自体、憲法違反であり、立憲主義の否定であることは明白であります。
今、求められるのは、世界に誇る9条を生かした平和外交によって、地域と世界の平和に貢献する日本をつくることではありませんか。
今日、地方自治体には2つの潮流があります。一つは、国の政策に唯々諾々と従う流れ、もう一つは、国の間違った政治に立ち向かう流れであります。
沖縄では、県知事選挙や国政選挙などあらゆる選挙において辺野古への新基地建設反対の審判が下されています。しかし、安倍政権は、新基地ノーの圧倒的な民意を一顧だにしていません。この異常な強権政治に対し、知事を先頭にオール沖縄で基地のない平和で豊かな沖縄をつくる県民のたたかいが巻き起こっています。
福島では、原発にしがみつく国のエネルギー政策に対峙して、福島県と県内59市町村のすべてが、県内すべての原発廃炉を求める意見書を上げています。福島では、自民党をはじめ、すべての政党が原発ゼロの福島を希求し、再生可能エネルギー先進県の福島をめざし、復興の道を歩んでいます。
さて、島根県政はどちらの道を歩むべきでしょうか。丸山県政が、国いいなりの県政となるのか、それとも、県民の命や安全、福祉を守り抜くために、県民の願いに反する国の政治に立ち向かうのか、このことを県民は注目しています。
県政のトップである知事が原発再稼働、消費税増税、憲法改悪など国の悪政の防波堤となり、県民のくらしと福祉を守るべきであります。知事の決意を伺います。
【2.島根創生・人口減少対策について】
次に、島根創生・人口減少対策について伺います。
知事は、施政方針で人口減少に歯止めをかけ、人口減少に打ち勝つ島根をつくる「島根創生」の実現に全力を尽くす決意を表明されました。
人口減少対策をすすめる上で、真っ先にすべきことは、なぜ島根の人口減少に歯止めがかからないのか、その根本的要因の究明であります。
私は、人口減少など地域が疲弊している最大の原因に、これまでの政府が、多国籍大企業の利益増大を最優先にしたことにあると考えます。構造改革の名のもとに、地域の雇用や社会保障、地方自治の破壊がすすみました。市町村合併や公共施設の統廃合、そして、「三位一体改革」による地方財政削減、自治体職員の大幅な削減と非正規化、民間委託などの推進が地域間 格差を拡大させてきた原因ではないでしょうか。この間の政治の誤りに深くメスを入れなければ、島根創生、人口減少対策は成果をあげることはできません。
今、国がすすめている消費税増税、社会保障切り捨て、大企業だけが潤うアベノミクス、地域産業の打撃となるTPP、FTA推進は島根創生に逆行するではありませんか。この道は、さらなる衰退へ追い込み、貧困と格差を拡大し、県民生活を苦しめるものにほかなりません。
来年には、東京オリンピックが開催されます。私はオリンピック開催を否定するものではありません。しかしながら、今、東京ではオリンピックを口実に膨大なインフラ整備を進め、開発規制の緩和が行われています。
その一方、島根など地方では、保育所や小学校、病院の統廃合が進み、TPPなど輸入自由化路線の拡大によって、第一次産業の疲弊がさらにすすんでいます。これでは、地方はますます雇用が減り、賃金の高い東京に働く場を求めて若者が集中するのは当然の帰結ではありませんか。
地方を再生するには、東京に集中している投資を地方に回す必要があります。そして、島根など地方は、第一次産業、医療・福祉・教育、観光・再生可能エネルギーなど、地域の特性を生かした産業政策を強力に推進すべきです。何よりも賃金格差の是正が急務の課題であります。
最低賃金の最高は、東京の985円です。一方、最低は、鹿児島の761円です。最高の東京と最低の鹿児島で、時給では224円、年収においては45万円もの格差が生じています。
最低賃金の地域間格差が東京など大都市圏への人口集中を促す要因となっています。地方から若い働き手は賃金が高い首都圏へ流出しています。その一方で、地方はますます人口が減少し、過疎化、高齢化が加速して地域経済が冷え込む要因となっているのではないでしょうか。所見を伺います。
労働組合が実施した最低生計費調査結果では、一人の労働者が自立して人間らしく暮らすには、全国どこでも22万~25万円程度が必要です。時給で言えば、1500円の賃金が必要との計算になります。都市部と地方での生計費の差はほとんどありません。
生計費原則に基づく、8時間労働で生存権を保障できる最低賃金制度にすべきであり、最低賃金は少なくとも時給1000円以上に引き上げ、1500円をめざし、都道府県ごとの格差を是正する全国一律最低賃金制度の創設が必要であります。最低賃金の引き上げで恩恵が大きいのは、女性や若者が多く働く非正規雇用の労働者です。地方経済の活性化や労働者全体の賃上げに波及する効果があるのではないでしょうか。所見を伺います。
その際、重要なことは、不況に苦しむ中小業者への政策的支援制度をつくることであります。
具体的には、賃上げを実施した中小企業への支援策として、社会保険料の事業主負担分減免制度創設や最低賃金引き上げに対応する「業務改善助成金事業」の給付基準の拡充の実施、 そして、最賃引き上げによる賃金助成などの支援を行うことであります。所見を伺います。
【3.平和問題について】
次に、平和問題についてです。
県内でも米軍機による被害が深刻になっています。県西部を中心にした無法な米軍機の低空飛行訓練によって子どもたちは爆音に脅え、住民の安全が脅かされています。
欠陥機オスプレイもわがもの顔で飛行しています。5月15日午後7時頃、オスプレイ2機が邑南町上空を飛行したとの目撃情報が寄せられました。
県東部においては、美保基地において、オスプレイやF35ステルス戦闘機にも給油可能な空中給油機が3機から6機へと倍増されようとしています。
益田市に隣接する山口県萩市のむつみ演習場には、陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備が計画されています。地元では、電磁波の影響やテロ攻撃の標的となることへの不安とともに、「北朝鮮情勢が変わっているのに、なぜ必要か」との批判が噴出しています。これら一連の日米軍事一体化の強化は、島根の平和と安全を脅かすものにほかなりません。
県として、米軍機の低空飛行訓練や美保基地の軍備機能強化の中止、ならびに、萩市へのイージス・アショア導入計画の撤回を国に強く求めるべきであります。所見を伺います。
少子高齢化や慢性的な人手不足、さらに、安保法制、戦争法に伴う任務の激化により、自衛官の募集・採用とも減少傾向が続いています。2012年度の自衛官候補生の応募数は3万4038人でしたが、2017年度には2万7510人と、約6000人も減少しています。
このような状況を受けて、全国各地で自衛官募集の動きが強まっており、防衛省は、隊員募集への自治体動員を強化し、適齢者名簿の提出を自治体に要請するなどしています。
本人同意なしに個人情報を提供することは、プライバシー権や個人情報保護に反し、生活の平穏に対する侵害になるのではありませんか。所見を伺います。あわせて、県内自治体での状況を伺います。
次に、松江地方合同庁舎内での勧誘問題です。
私のもとに、自衛隊勧誘での苦情が寄せられました。それは、松江地方合同庁舎内でのロビーにおいて、ハローワークへ求職に来た若者に自衛隊への入隊勧誘が執拗に行われている問題であります。職を探しに来た若者に庁舎内ロビーでの執拗なる勧誘行為は、不適切極まりないものです。改善を要求します。所見を伺います。
【4.国民健康保険について】
次に、国民健康保険についてです。
国保の都道府県化がスタートして2年目になりました。
県内においては、本年2月1日時点で、加入世帯の12.4%に当たる10714世帯が国保料・税を滞納しています。その制裁措置として、命綱である保険証の取り上げが462世帯にものぼっています。
松江市においては、約2割もの世帯が保険料滞納となっています。200世帯以上に保険証が交付されていません。保険証がなくて病院を受診できず、手遅れとなり、死亡する悲劇も生まれています。財産差し押さえなど過酷な取り立てにも滞納者は苦しめられています。
加入者の平均所得は、他の公的医療保険より低いのに、保険料は中小企業サラリーマンらが加入する「協会けんぽ」などと比べて異常に高い国民健康保険の構造問題打開が急務です。
国保において、払いたくても払えない滞納者が生まれるのは当然です。なぜなら、保険料は、必要な医療費を加入者に割り振る仕組みとなっているからであります。加入者の負担能力や生活実態を無視して算定されているのです。被保険者が保険料を支払えるかどうかの視点を保険者は持つべきではないでしょうか。所見を伺います。
松江市には、現在、国保会計に15億円もの基金が溜め込まれています。市民からは「なぜそんなに異常に基金を持つのか」「基金を取り崩して保険料を引き下げてほしい」「保険証を取り上げられた市民の苦しみを行政はわかっていないのでは」などの声が上がっています。
国保は公的医療保険であり、社会保障の一環であります。そうである以上、保険者は払える保険料とするために、あらゆる努力をすべきではないでしょうか。一般会計からの繰り入れ、基金の取り崩しを決断すべきです。保険証の取り上げや強権的な差し押さえなど制裁行政は絶対に許されません。保険証の取り上げである資格証明書交付をゼロにすることこそ、行政責任と考えます。所見を伺います。
払いたくても払えない人への支援策を講じるべきであります。
県内において、保険料の滞納世帯が1万世帯を超えています。しかし、平成29年度の一部負担金の減免実施は1自治体しか行われていません。しかも、その実施件数はわずか5件です。
また、徴収猶予の実施は3自治体しか行われておらず、実施世帯数はわずか21世帯という状況です。低所得者、生活困窮者への支援策がまったく機能していないではありませんか。
都道府県化によって県は保険者になりました。保険者である県がイニシアチブを発揮するときであります。2点伺います。
第一に、国保法第44条に定められた病院窓口での一部負担金減免や、国保法第77条に基づく保険料・税の減免制度や納税緩和制度など、生活困窮者がこれら制度を積極的に活用できる対策を講じるべきであります。所見を伺います。
第二に、一部負担金減免や納税緩和制度などの統一書式の整備や窓口での申請案内、広報などを徹底すべきであります。所見を伺います。
【5.農業問題について】
次に、農業問題についてです。
安倍政権の6年半でTPPや日欧EPAなどに突き進み、国内農政では家族農業切り捨て、農協つぶし、米の直接交付金の廃止、種子法の廃止など亡国農政が続いています。
知事は施政方針で「農業産出額の100億円増の目標達成をめざす」と述べました。しかし、TPP11や日欧EPAの発効で、オーストラリアやニュージーランド、欧州諸国からの牛・豚肉や乳製品などの輸入が急増しており、日本の農業や畜産業は重大な危機に直面しています。
この上、さらに日米貿易交渉で農産物輸入拡大やサービス市場開放が押し付けられるなら、日本の農畜産業は破綻してしまうではありませんか。
農業を守る道は、日米交渉をやめさせ、日本の経済主権・食料主権を守る公平・公正な貿易ルールづくりこそめざすべきであります。所見を伺います。
大規模化や効率化だけを追い求めてきた農政の見直しが必要です。島根の中山間地域を守る道は、多様な地産地消、農商工連携による地域循環型の取り組み、「半農半X」など農業の多業化、農業の複合化、地域産業の育成を精力的に推進することであります。そのためにも、各部局が一体的・横断的な対策を講じる体制・スキームを構築すべきと考えます。所見を伺います。
今年から国連総会決議に基づく「家族農業の10年」がスタートしました。さらに、国連総会は昨年12月、食料主権、種子の権利などを定めた「農民の権利宣言」を採択しました。これは、大規模化・効率化一辺倒の農政が世界で貧困や飢餓を拡大してきた反省から、農政の方向転換を訴えたものであります。
食料や環境、平和など人類社会の持続的な発展のためには、家族農業・小規模農業支援が大切とする考えは世界の流れです。この方向こそ、中山間地農業を発展させ、食料自給率向上の確かなる道ではないでしょうか。
そこで伺います。県として、国連「家族農業の10年」「農民の権利宣言」をいかに具体化・施策化していますか。県の食料自給率目標を定め、その達成に向けた推進ビジョンを明確にすべきであります。所見を伺います。
【6.島根原発について】
最後に、島根原発について伺います。
私は、島根原発稼働の条件は「ゼロ」であることを6つの角度から述べます。
一つに、どの世論調査でも、原発稼働反対は圧倒的多数の声です。
二つに、福島事故の事故原因は未だに未解明であり、新規制基準には、福島事故の教訓が反映されていません。安全な基準などつくれるわけがないではありませんか。
三つに、使用済み核燃料や核のゴミの処理方法は未確立です。核燃料サイクル・プルトニウム利用計画の破たんは明白であります。
四つに、原発こそ究極のハイコストです。今年3月、資源エネルギー庁は、太陽光・陸上風力発電とも1キロワット時当たり10円未満での事業実施が可能とし、原発はコスト高となっていることを認めました。原発安価論はもはや通用しません。
五つに、実効ある避難計画は未策定であります。県内の土砂災害要対策箇所の整備率は18.7%であり、災害に強い県土とは言えません。
六つに、科学者は「日本列島は地震の活動期に入った」と警告しています。島根原発直下には、39キロの宍道断層、98キロの鳥取沖断層が走っています。連続すれば、140キロもの活断層があるのです。また、山陰地方の地下には「ひずみ集中帯」が存在し、未知なる活断層の危険性も指摘されています。自然の脅威に対して謙虚であるべきであります。
県政は、国の原子力政策に無批判・迎合してはなりません。
知事に3点伺います。
第一に、県として、島根原発稼働の是非について、いかなるプロセスを通じて判断を下すのですか。
第二に、原発問題の判断基準に、基本的人権を保障した憲法と住民の安全を守ることこそ自治体の使命と規定する地方自治法をモノサシに据えるべきではありませんか。
第三に、県民の合意がなく、県民の命と安全を守ることができないのであれば、島根原発の稼働などあり得ないではありませんか。私は、圧倒的多数の県民の願いに反して、もし県が原発稼働の道を進めるならば、県民の県政への信頼は失墜すると考えるものであります。所見を伺います。
島根の進むべき道は、原発のない安全・安心の島根、そして、再生可能エネルギー先進県の島根づくりにあることを強調して、質問を終わります。