2019 年 11 月定例会 平成 30 年度決算認定に対する討論
2019-12-17 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
日本共産党県議団を代表して、一般会計及び特別会計、病院事業会計、水道事業会計の3件の決算認定について、認定とした委員長報告に反対の討論を行います。
予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡と言われています。議会における決算認定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度以降の予算編成に資するため、広範な角度から住民の立場で行政を評価・検証するものであります。
日本共産党県議団は、県政の評価基準として2つの物差しを置くものであります。一つに、県政が、憲法が定める生存権や財産権、幸福追求権など基本的人権を保障しているのか、二つに、県政が、地方自治法が規定する住民の福祉の増進という自治体本来の役割を発揮しているのか、ここに立脚するものであります。
【認定第4号議案「平成30年度一般会計及び特別会計の決算認定について」】
まず、認定第4号議案「平成30年度一般会計及び特別会計の決算認定について」であります。
今、地方は、住民の暮らしの困難、福祉、医療、農林水産業の危機、地域経済の衰退など、深刻な課題に直面しています。
国がすすめる消費税増税、社会保障切り捨て、大企業だけが潤うアベノミクス、地域産業の打撃となるTPP、FTA推進は、地方創生、島根創生に逆行するものであります。この道は、島根をさらなる衰退へ追い込み、貧困と格差を拡大し、県民生活を苦しめるものにほかなりません。
今日、地方自治体には2つの潮流が生まれています。一つは、国の地方いじめの政治に立ち向かう流れ、もう一つは、国の政策に唯々諾々と従う流れであります。
沖縄県では、国が辺野古の新基地建設反対の圧倒的民意を無視し、違法・無法な工事を強行し続けています。これに対し、沖縄県民は、知事を先頭にオール沖縄で反対運動を展開し、基地のない平和で豊かな沖縄をつくろうとしています。
福島県では、原発にしがみつく国のエネルギー政策に対峙して、福島県と県内59市町村のすべてが県内すべての原発廃炉を求め続け、ついに「原発ゼロの福島」の道を歩み始めることとなりました。福島第一、第二原発に10基存在した原発は、すべて廃止決定となったのであります。
島根県政はどちらの道を歩むべきでしょうか。暮らしが大変になっているときだからこそ、国の暮らし圧迫の間違った政治を県政に持ち込むのか、それとも、それに立ちはだかって島根県政が県民の暮らしと命を守る防波堤の役割を果たすのか。このことが鋭く問われています。
島根県政は、国言いなり政治から脱却し、住民の福祉を増進するという、自治体本来の仕事に全力を尽くすべきであります。
以下、県政上の課題及び県政のあるべき方向を11点申し上げます。
【各 論】
第1に、総人件費抑制策や事務事業の見直し・縮小によって、職員の士気や組織の活力が低下するとともに、市町村へ負担が転嫁され、県民サービスが縮小しています。正規職員はもちろんのこと、非正規で働く職員や公の施設で働く労働者の賃金が引き上げられるよう、県としての積極的な対応を求めるものであります。また、住民に身近なサービスを提供する市町村と固くスクラムを組み、市町村のニーズに沿った支援策を充実すべきであります。
第2に、県税や社会保険料を滞納した低所得者に対する無慈悲な差し押さえが実行されています。平成30年度の個人住民税の差し押さえ件数は1487件、国民健康保険料(税)の差し押さえは807件に及んでいます。生活に困窮した県民への生活再建支援策にこそ力を注ぐべきであります。
第3に、実質所得や年金が減少し生存権が脅かされているもと、民生費、衛生費などの社会保障予算が貧弱であります。
平成30年度、75歳以上が加入する後期高齢者医療保険制度において、保険料未納による制裁措置として255件もの短期保険証が発行されています。
国民健康保険では、本年10月時点で加入世帯の1割に当たる8633世帯が保険料、税を滞納しています。そして、その制裁の措置として、命綱である保険証の取り上げが422世帯にも達しています。
介護保険では、本年6月の保険料未納者は3526人にも上ります。未納による制裁措置として平成30年度において105人が給付額減額措置となり、3割の利用料負担を課されました。貧困と格差が拡大し、低所得者や生活困窮者が社会保障制度から排除される深刻なる重大事態が起きているではありませんか。県政は、この実態、県民の苦悩を直視すべきであります。
高すぎる国民健康保険料を引き下げるため、「均等割」「平等割」などの応益割を廃止するとともに、県による独自財源投入を決断すべきであります。また、介護保険の負担軽減策を講じるなど、人間としての尊厳を守る社会保障を抜本的に充実することを求めます。また、保育士、介護福祉士など福祉労働者の処遇を改善すべきであります。
第4に、宍道断層近傍に建設予定の松江北道路事業は、県民の理解と合意が得られておらず、中止すべきであります。土砂災害要対策箇所の整備率は18.8%、落石等通行危険箇所の整備率は38.3%、県管理河川の整備率は31.9%でしかありません。災害に強い県土とは言えません。防災・減災型公共事業こそ最優先すべきであります。また、県が行う建設事業に対して、市町村へ過大な負担を求めるべきではありません。
第5に、農業においては、TPP11、日欧EPA、日米FTAなど農産物の際限ない輸入自由化路線の中止を国に強く求めるべきであります。持続可能な農業経営の実現、島根農業の再生に向け、価格保障と生産コストをカバーする支援策を講じるべきであります。
第6に、企業誘致頼みから脱却し、地域に根を張って頑張る中小企業、地場産業育成にこそ商工予算の柱をシフトすべきであります。内発型、循環型の地域振興策の推進を求めるものであります。
20歳代男性において、正規雇用の結婚率は約25%です。しかし、非正規は約4%であり、正規と非正規で6倍もの開きがあります。最低賃金を引き上げ、安定した雇用をつくることこそ、根本的な人口減少対策、結婚対策であることを強調するものであります。
第7に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては同和教育を全ての教育の基底に据え、同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。民間の同和団体への突出した補助金支出が、逆に不公正を生み出しています。同和教育は終結し、運動団体への補助金は他の補助金との公平性を図るべきであります。
第8に、子どもを苦しめ、学校間の序列化を生み、教育現場を競争に駆り立てる、全数調査による学力テストの中止を求めます。ましてや、学校別結果の公表など論外であります。
教育行政に求められていることは、さらなる少人数学級の実現、就学援助制度の拡充、教育費無償化、すべての教室・体育館へのエアコン設置など、子どもたちが安心して学べるための教育環境整備を改善することです。
そして、多忙をきわめる教職員の勤務環境を改善し、経済的困難を抱え子育てに不安を持つ保護者を支援することであります。本県教育が臨時的任用教職員によって支えられている現状を是正するために、正規教職員の大幅増員、臨時教職員の待遇改善を求めるものであります。
第9に、島根の空の安全を守るためにも、米軍機の無法な低空飛行訓練、美保基地の軍事基地機能強化の中止を求めるべきであります。米兵が「手放し操縦」「飛行中の読書」「スマホの自撮り」「薬物乱用やアルコールの過剰摂取」など常軌を逸した飛行訓練を実施していた実態が判明しました。国に、米軍に治外法権的な特権を与えている日米地位協定の抜本的な見直しを強く要求するべきであります。
第10に、県民の命と安全を守ることこそ県政の最大の使命であります。安全な原発などあり得ません。実効ある避難計画は未策定であります。使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物の処理方法は未確立であり、核燃料サイクルは既に破綻しています。
県民の笑顔と幸せを奪い去るのが原発事故であります。そして、原発がある限り、毎年、原子力防災訓練を続けなければならず、膨大なる準備時間と予算、要員や物資を投入しなければなりません。しかし、「原発ゼロ」を決断し、使用済み核燃料の処理が終われば、その数十年後から原子力防災訓練をする必要はなくなります。そればかりか、原発事故に備えた避難計画の策定も不必要になります。地震、豪雨など大規模災害も頻発しており、島根原発廃止を決断すべきであります。
最後に、島根県政のあるべき方向についてです。
県財政を健全化するために、県民合意のない大型建設事業を中止し、原発稼働に向けたあらゆる動きを中止するべきであります。この両立こそ財政を健全化し、県民の命を守る保障であり、島根創生の大道であります。松江北道路建設計画はキッパリ中止し、原発ゼロの島根をつくる、そして、安全・安心の再生可能エネルギー推進を強力にすすめ、新たな雇用と産業を創出すべきです。この針路こそ、中山間地域をはじめ、県内各地を活性化させ、島根創生成功の確かなる道であることを強調するものであります。
【認定第1号議案「平成30年度島根県病院事業会計決算の認定について」】
次に、認定第1号議案「平成30年度島根県病院事業会計決算の認定について」です。
県立中央病院では、希望者に対して2交代勤務が行われています。2交代勤務は、看護師の健康悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては安心・安全な看護の提供の面から有害であります。
県民誰もがひとしく安心して県立病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の徴収など保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証1枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきであります。
県立中央病院は、救急医療、地域医療、災害医療、周産期医療など、県医療計画に基づく政策的医療を推進し、県民にとってかけがえのない命綱の病院、宝の病院であります。引き続き、県民の命と健康を守り、地域の健全な発展、医療水準の向上に努められることを心から期待するものであります。
なお、今期の中央病院の純損失は約9億8000万円にのぼりました。今期の中央病院の控除対象外消費税、いわゆる損税は約6億円にも及んでおり、消費税が病院経営を圧迫しています。健全な病院経営の観点からも診療報酬のゼロ税率適用ならびに消費税減税が求められていることを強調するものです。
【認定第3号議案「平成30年度島根県水道事業会計決算の認定について」】
最後に、認定第3号議案「平成30年度島根県水道事業会計決算の認定について」です。
大田市、江津市に送水する江の川水道事業の施設利用率は、わずか42.2%です。その結果、大田市や江津市は県下トップクラスの高い水道料金となっています。島根県水道用水供給事業において、飯梨川水道事業の施設利用率は58.4%、同様に斐伊川水道事業は69.1%と低利用率であります。これら県営水道事業は、積算根拠、需要予測を見誤ったため、使わない水まで住民負担となっており、高い水道料金に市民から悲鳴が上がっています。事実、平成30年度、松江市において料金未納による給水停止実施回数は、885回にものぼっています。
地方公営企業法第3条の経営の基本原則には、「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない」と規定されています。
水道事業の本来の目的は、公共の福祉の増進にあります。それはすなわち、水道料金の値上げをどう抑えるかにあります。
県として、高い水道料金を引き下げるため、受水団体への資本費負担軽減を図るなど、料金軽減策を講じるべきであります。
日本共産党県議団は、今回の決算審査にあたって、全体会、分科会において130項目を超す資料の提供を求め、質疑を行いました。審査過程において、全ての執行部の皆さんから誠意ある御回答並びに資料の御提供をいただきました。心からの感謝を申し上げ、討論を終わります。