2020 年 2 月定例会一般質問 (知事の政治姿勢について、少人数学級編制について、放課後児童クラブについて、県財政悪化の原因と財政健全化への道について、松江北道路建設について、島根原発について)
2020-02-27 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
【1.知事の政治姿勢について】
知事の政治姿勢について伺います。
丸山知事が誕生して10か月が経ちました。知事は、昨年春の選挙戦において「知事と語る車座トーク」の開催や「女性活躍100人会議」の設置を公約に掲げられました。その公約をもとに、車座トークでは、「隠岐の日」や「石見の日」を設定し、「100人会議」では様々な分野の女性の意見に耳を傾けてこられました。
また、原発立地県の知事として、福島原発を視察すべきと質した私の質問を受け、昨年8月、福島第一原発敷地内を調査し、各地の被災地を視察されました。そして、情報提供のあり方や避難対策などについて福島県知事とも意見交換を行われたところです。私は、現場主義に徹し、住民の声を聴取する、この姿勢については評価するものであります。
しかし、今回の少人数学級編制の見直しは、教育現場の声を聞くことなく、一方的に縮小案が示されました。このやり方に対し、県政への不信と反発が広がるのは当然であります。県政の主人公は県民です。政策決定にあたっては、重要なプロセスがあるはずです。それは、上からの押し付けではなく、市町村や現場の声を聞き、現場の実態を調査し、双方向、循環型で政策を固めるべきであります。
この度の「子育て支援と教育をパッケージ」とし、子育て支援拡充の財源確保のため、少人数学級編制を縮小する案は、あまりにも乱暴であります。二つの問題を指摘します。
一つに、教育や保育現場、保護者の意見を十分に聞くことなく、市町村との協議も不十分なまま施策方向を示したことです。拙速なる施策提起は、教育現場や子育て関係者のニーズとマッチするどころか、乖離しているのではないでしょうか。
もう一つは、県民の中に「対立と分断」を持ち込んだことです。オール島根で「笑顔で幸せな島根」をつくろうという県民の思いを知事自らが壊そうとしているのであります。
知事に四点伺います。
第一に、子ども・子育て支援施策のパッケージ論とは、出生率を向上させるという人口減少対策のために、放課後児童クラブと医療費助成を拡充し、その一方で、教育予算を削減するものです。
放課後児童クラブと子どもの医療費助成という「福祉」と少人数学級という「教育」を一つのパッケージとし、「福祉を充実するから教育の削減を認めよ」という二者択一を迫る手法が「対立と分断」を持ち込んでいるのであります。
島根創生成功のカギは、市町村をはじめ、各団体、県民と力を合わせ、「全世代が活躍できる島根」「色々な立場の人が輝き、夢と希望を持てる島根」をつくることにあり、今回のパッケージ論のような「対立と分断」を持ち込む手法はとるべきではありません。
第二に、少人数学級編制見直しについて、市町村から「市町村に関わる県の重要施策の変更等については、事前に市町村との協議のうえ行うよう努めるべき」との声が出されました。事前協議を求める市町村の声をどう受け止めていますか。見直し案提示にあたって、市町村や教育現場、保護者との協議は不十分ではありませんか。
第三に、放課後児童クラブの実施主体は市町村です。児童クラブの運営形態は様々であり、各クラブの置かれた実態、要望は一律ではありません。児童クラブの支援員は、慢性的な人手不足で、変則的な労働時間、低賃金など厳しい労働条件に置かれています。
しかし、こうした実態に目を向けず、実施主体である市町村のニーズを十分に掌握せず、ただ単に利用時間延長というニーズを捉えた上での支援拡充では、現場や保護者に多大なる不信感が広がるのは当然であります。
利用時間を延長するといっても、支援員が足りません。よって、不足する支援員を人材派遣会社で賄おうとの県の発想は、あまりにも安易であります。人さえ配置すればいいというものではありません。このことは、県が現場の実情を把握していないことの表れであります。施策を後付けしたと言われても仕方ないではありませんか。知事の考えを伺います。
派遣という考えは、子どもの成長を心から願う支援員をモノ扱いするものであります。児童クラブの質の低下が懸念されます。さらに、クラブに通う子どもへの愛情などなく、健やかな成長を願うものではありません。本気の子育て支援とは言えないではありませんか。所見を伺います。
出生率向上のため、単にクラブの定員や利用時間が増えさえすればいいという安易な発想があるから、人材派遣会社を使って支援員を確保するなど現場ニーズと乖離するのではありませんか。所見を伺います。
第四に、子ども医療費助成のそもそもの目的は「子どもの疾病の早期発見、早期治療を促進し、保護者の経済的負担軽減をはかり、子どもの健全な育成」にあります。放課後児童クラブのそもそもの事業目的は「子どもの健やかな成長と安心な居場所をつくること」にあります。これら事業によって出生率が向上するということは、あくまで副次的な効果によるものでしかありません。
結局、人口減少対策としての子ども・子育て支援施策パッケージは、放課後児童クラブ、子ども医療費助成事業の本来の事業目的を失わせ、事業にゆがみと矛盾を生じさせ、さらに少人数学級縮小で教育の後退を招くものにほかなりません。所見を伺います。
【2.少人数学級編制について】
次に、少人数学級編制について伺います。
現場の教員からは「子どもは宝。宝を育てる予算を減らすとは愚の骨頂。教育予算をスクラップするなど許されない」との怒りの声が寄せられています。
子どもからは「今でも先生は忙しそうです。クラスの人数が増えると、先生とお話ができる時間がもっと短くなります。いっぱい先生と話をしたい」との声です。
少人数学級編制は、一人ひとりの子どもにきめ細やかな指導ができ、いじめや不登校の防止にもつながってきました。少人数学級編制は、学校現場や保護者、県、県議会が将来を担う人づくりこそ島根の未来をつくる確かな道につながるものと決断し、2017年に完全実施された事業です。
教育現場からの評価も高く、島根の宝の事業であります。この宝を守りたいからこそ、県PTA連合会から県に「少人数学級制度の現状維持を求める署名」が約4万5000筆提出されました。ゆきとどいた教育をすすめる会からは、1万2000筆もの署名が提出されたのであります。県政は、この願意を厳粛に受け止めるべきであります。また、松江市、出雲市、雲南市の各議会からは、「現行制度堅持を求める意見書」が提出されました。この議会の意思を重く受け止めるべきであります。知事ならびに教育長の所見を伺います。
今回の少人数学級制度の縮小は、どれだけ教職員や県教育委員会の教職員のモチベーションを低下させ、誇りや希望を傷つけるものであったでしょうか。
「対立と分断」は、県民だけではなく、県庁の職員や県内の教育委員会の中にも生まれました。特に、少人数学級編制の必要性を理解している県教育委員会の中に、不安と動揺が大きく広がったと聞いています。
知事部局から少人数学級縮小で教育予算を3億円削減せよとの指示が出され、県教委がその見直し案をつくらされたわけです。どんなに悲しく、情けない思いで見直し作業をされたことでしょう。
教職員は、子どもの幸せを願い、学校業務に精励しています。島根県の少人数学級制度を心から喜び、歓迎しています。しかるに、今回の見直しは、①関係者の意見を聞かず、②事業の必要性や成果などの事業評価をすることなく、財政的観点のみから提案されました。十分な事業評価なしのスクラップ提案は許されません。県民が喜び歓迎する現行の少人数学級編制の堅持を強く求めます。知事の所見を伺います。
【3.放課後児童クラブについて】
次に、放課後児童クラブについてです。
クラブの支援員からの声をご紹介します。
「放課後児童クラブは、学校と緊密な連携をもち、子どもたちを育てています。先生は、気にかかる子どものことを日々連絡してくれます。直接、クラブに来て様子を見たり、子どもの状況を話してくださる先生もいます。しかし、先生のゆとりがなくなれば、きめ細やかな連携や連絡も難しくなるでしょう。少人数学級制度を後退させるなど、とんでもありません」
「クラスの人数が増え、忙しい先生を見て、子どもたちが言いたいことを我慢したりすれば、児童クラブの支援員に吐き出すしかありません。少人数学級が縮小されれば、きっと、そういう子が増えるでしょう。子どもたち同士がギスギスして荒れてしまわないか心配です」
「学校には何らかの困難を抱え、支援が必要な子どもがいます。当然、児童クラブにも支援の必要な子どもがいます。しかし、現在、児童クラブでは、一人ひとりの困難に向き合ってあげられるだけの人員の余裕がないのです」などの声であります。
県政は、この現場の声に真摯に耳を傾けるべきです。
少人数学級編制継続による一人ひとりの子どもへのきめ細やかなサポートに加えて、クラブの十分な人員配置、ゆとりある生活スペース確保などの支援が重要です。福祉と教育の一体の支援でこそ、子どもの健全な成長につながるのではありませんか。所見を伺います。
【4.県財政悪化の原因と財政健全化への道について】
次に、県財政悪化の原因と財政健全化への道についてです。
県の財政が厳しくなったのは、なぜでしょうか。くらしや福祉、教育にお金をつぎ込みすぎたからではありません。県財政悪化の責任は、県民にも、もちろん、子どもたちにもありません。
今、県政と県議会に求められているのは、県財政悪化の原因はどこにあったのか、どうすれば県財政を健全化し、希望ある島根をつくることができるのかを県民に明示することであります。
私は、県財政悪化の原因は、1990年代に政府が地方自治体に押し付けた大型公共事業最優先の施策にあると考えます。有利な起債などといって国の誘導策にのり、借金で大規模プロジェクトに多額の血税を投入してきました。身の丈を越えた公共投資を続けてきたのであります。
1990年度、県債の発行残高は約3000億円でした。これが10年後の2001年度には、9000億円へと激増しました。10年で県債残高が3倍に膨らみました。すなわち、不要不急の事業、県民合意のない事業、需要予測を誤った大型事業の積み重ねであります。
また、歳入面では、2004年度の三位一体改革の名のもと、地財ショックともいえる地方交付税の大幅な削減が行われました。地方交付税の大幅な減少と公債費の増大が県財政を悪化させたことは、明白であります。
私が忘れられないのは、財政健全化の名のもとに、市町村や障がい者・医療団体の理解と合意がないのに、2005年に実施した福祉医療の1割負担導入であります。
障がい者や母子家庭に対し、1か月入院も通院も500円の負担であった医療費を、最大で入院時4万200円へと負担を増やしました。80倍の医療費の負担をかぶせたのであります。
今回は、財源不足のしわ寄せを少人数学級縮小で子どもたちに押し付けようとしているではありませんか。
福祉医療の1割負担は、関係団体の理解なきまま強行されました。今回の少人数学級編制縮小も教育現場の理解なきまま強行しようとしています。福祉医療見直しと今回の少人数学級縮小の手法において、同じ過ちを繰り返しているのではありませんか。県民の願いに反する施策は、県政への失望と落胆を広げているのではありませんか。所見を伺います。
見直し、中止すべきは、子どもを苦しめ、学校間の序列化を生む学力テスト、総事業費250億円の県民合意のない松江北道路建設、原発稼働に向けたあらゆる動きであります。
このことなしに、少人数学級縮小など許されません。県民合意のない事業、不要不急の事業、現場や県民が疑義を唱えている事業について、徹底した精査、見直しを行うべきであります。知事の所見を伺います。
【5.松江北道路建設について】
次に、松江北道路建設について伺います。
関係住民からは「わずか10分間の時間短縮のために道路が必要でしょうか」「道路完成は15年か20年後であり、今後、人口減少が進むのに、本当に必要な道路なのでしょうか」「250億円を超す莫大な税金投入は無駄づかいです。土砂災害対策や河川改修にこそ力を入れるべき」「優良農地をつぶさないでほしい」など事業を憂い、疑問視する意見が多数出されています。
県は事業化後、10年程度で道路が完成すると言いますが、地権者や関係権利者の合意なしには決して事業は進みません。
松江北道路建設において、現時点の事業進捗状況、課題、今後の事業の進め方についてお示しください。関係住民から本事業に対し、いかなる懸念の声が出されていますか。伺います。
松江北道路ルート近傍には、宍道断層が走っており、防災上の観点からも道路建設地としては不適格であります。地元住民の「理解と合意」なき事業は強行すべきではなく、防災・減災事業こそ最優先に取り組むべきであります。所見を伺います。
【6.島根原発について】
最後に、島根原発について伺います。
またもや中国電力の法令違反が明らかになりました。2月19日、中電は島根原発の放射性固体廃棄物を一時的に保管する「サイトバンカ建物」の放射線管理区域内における巡視業務に関して、巡視業務を行っていないのに巡視を行ったとする虚偽の事実を公表しました。
2010年には511カ所もの点検漏れを起こし、2015年には低レベル放射性廃棄物処理の検査報告書を偽造し、2019年には放射線量等の計測記録保管に関わる法令違反を起こしていました。何度も不正、不祥事を続ける中電には原発を動かす資格はありません。所見を伺います。
次に、原子力防災訓練、避難計画についてです。
昨年11月に原子力防災訓練が実施されました。この訓練にかかる準備期間と予算額、ならびに訓練で明らかになった課題や教訓をどのように総括し、今後の訓練にどう活かしていくのかお示しください。
昨年11月議会で、県は、今後の原子力安全顧問会議の運営にあたって、自然災害対策、原子炉の安全対策、避難対策についてテーマごとの会議を開催することを表明しました。今後の開催計画、運営概要を伺います。
避難計画の実効性を高めるためには、避難先自治体や病院、社会福祉施設、学校、保育所、バス事業者など避難に関係する方々を集めて現場の声を聞き、計画に反映させることが必要と考えます。如何ですか。
1月17日、広島高裁は、四国電力伊方原発3号機について「運転差し止め」の司法判断を下しました。決定は、四国電力の原発近くの活断層調査が不十分であること、火山噴火の影響も過小に見積もっていることを認定したのであります。これは、安全性に問題がないとした原子力規制員会の判断は不合理だと断じた司法からの厳しい警告であります。
福島原発事故から間もなく9年を迎えます。原発事故はふるさとを壊し、人々の幸せを奪い去りました。
島根県内でも、「原発がある限り、安心して子どもを産むことができない」との声が多数あります。知事は、この声をどう受け止めていますか。最も人口を減少させる要因は、原発推進による原発事故への根強い不安感ではありませんか。出生率向上、人口増加をめざすなら「原発ゼロの島根」こそ、島根県政が決断すべきであります。知事の所見を伺って質問を終わります。