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議会の取り組み

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2020 年 9 月定例会一般質問 (江の川治水事業について、松江北道路建設について、核燃料サイクルと島根原発について、新型コロナウイルス感染症から県民のくらしを守る対策について)

2020-09-11 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。

【1.江の川治水事業について】
 まず、江の川治水事業について伺います。
 7月13日から14日の豪雨により、またもや江の川が氾濫し、甚大なる被害が発生しました。江津市、川本町、美郷町においては、2年前の西日本豪雨被害からようやく復旧した矢先の被災となり、被災者の経済的、精神的負担は計り知れません。コロナ禍での被災であり、従来の枠を超えた特別の支援が求められています。
わが党は、災害発生時から現地に入り、様々なご意見を伺ってきました。お寄せ頂いた声の一部をご紹介します。
●桜江町田津地区の80代男性からは、「この地で暮らし、これまで8回も水に浸かった。同居する息子と引っ越しの話も出ているが、田畑もあり、遠くには行けません」
●桜江町大貫地区の40代のご夫婦からは、「3年前、東京からUターンしました。2年前の豪雨で自宅が全壊し、そして、今年は床上浸水の被害となりました。早く堤防整備を進めて欲しい」
●川本町で家具製造業を営む40代女性からは、「2年前にも浸水し、2年前に修理した機械が今回また浸かりました。2度目の修理は難しく、更新には約7千万円が必要です。従業員、応援してくださるお客さんのために、何とか頑張りたい」
●美郷町港地区の自治会長からは、「氾濫時は、県道が浸かり、集落は孤立します。そのため、災害救助用ボートを常備しています。今回もボートで救助を行いました。住民の不安は高まっており、自治会として集団移転を考えています」
 などのご意見、ご要望をお聞きしました。
 そこで、被災者に寄り添う支援策ならびに、治水対策について伺います。
 まず、江の川下流域の治水事業予算の推移を伺います。
 江の川の堤防整備率は、上流部の広島県の69%に対し、下流部の島根県は15%にとどまり、無堤防地区や堤防未完成地区が依然として多く取り残されています。堤防整備や水防災事業の大幅な予算増額、事業のさらなる推進を国に強く求めるべきです。知事の決意を伺います。
 被災住民からは、江の川支流の堤防整備及びバックウォーター対策を早急にすすめ、内水排除のためのポンプ常設化の要望が出されています。住民の安全・安心のためにも、積極的な対応が必要と考えます。所見を伺います。
 堤防整備が遅々と進まず、幾度となく、浸水被害に遭った被災者や地域からは、泣く泣く移転を決断せざるを得ないとの声も出ています。
 住居の集団的移転を促進する国の事業として「防災集団移転促進事業」があります。移転する住民には、何ら責任はありません。移転にあたっての要件緩和とともに、移転者負担の軽減が必要ではありませんか。国に強く求めるべきであります。所見を伺います。
 斐伊川・神戸川治水対策では、県庁内に斐伊川・神戸川対策課が設置されました。大橋川改修では、国、県、松江市が共同して「大橋川コミュニティーセンター」を管理・運営しています。センターでは、情報誌・大橋川通信を定期的に発行し、住民に大橋川改修やまちづくりの情報を提供し、住民との意見交換の場ともなっています。
 一方、江の川では、これまで、行政と沿川の住民とのコミュニケーションが十分に図られてきたとは言えません。
 知事に伺います。今後、江の川の治水対策を流域治水の方向で強力に推進するために、行政からの情報発信や住民の意見を聞く場を設け、流域住民と協働して計画づくりや事業を推進する必要があると考えます。所見を伺います。
 私は、あらゆる関係者が協働し、治水対策をすすめる拠点として、仮称「江の川流域治水センター」を創設すること、県としても、江の川治水を強力に推進する組織の立ち上げが必要と考えるものであります。

【2.松江北道路建設について】
 次に、松江北道路建設について伺います。
 豪雨、台風、地震、津波など、大規模な災害が相次いでいます。
 今日、公共事業を、大型開発・新規事業優先で進めていていいのかが問われています。安全・安心の防災・減災対策こそ、公共事業の柱に据えるべきではないでしょうか。
県は、8月から松江北道路建設についての個別説明会、市民説明会を開催しました。そして、この秋には、北道路の都市計画決定手続きに着手するとしています。
 住民からは「大地震や豪雨が相次ぐ中、250億円を超す大型道路より防災・減災事業こそ進めてほしい」との声が寄せられています。
ルート近傍には、宍道断層が走っています。北道路は、防災上の観点からも道路建設地としては不適格です。防災を無視した乱開発はやめ、災害危険箇所の整備こそ最優先とすべきであります。
 5点伺います。
 第一に、松江北道路建設のルート案に影響する土地ならび建物所有者数を伺います。
 第二に、住民合意が不十分なまま事業を強行したため、完成まで15年を要した城山北公園線の教訓に学ぶべきであります。関係住民及び市民全体の理解と納得は得られていると判断しているのですか。
 第三に、ルート案には所有者の特定が困難な土地もあり、さらに建設計画に疑義を持つ関係権利者もあります。用地買収は困難を極めると考えますが、如何ですか。概ね10年程度で事業が完成できると判断される根拠はどこにあるのですか。伺います。
 第四に、大規模災害が相次ぐ中、水田をつぶし、山を削る無秩序な乱開発は、災害への対応力を弱体化させ、被害を広げる要因になると考えますが、如何ですか。経済効率優先の大型開発は見直し、住民の命と安全を守る防災・減災型事業こそ推進すべきと考えます。所見を伺います。
 第五に、北道路は、20年以上前の平成10年に計画路線となった境港出雲道路の一部として、平成24年から具体的検討が始まったものであります。今日のコロナ禍のもと、また、今後新たなる未知なる感染症発生が懸念される中、ゴリ押しすべきではありません。
 道路の建設目的は、物流の効率化、交通渋滞緩和等とされました。しかし、コロナ禍のもとでテレワークが進み、自粛が要請され、経済活動が縮小するなど社会情勢が激変しました。災害多発という状況も見据え、今日時点で改めて建設の是非を全市民的に議論すべきではないでしょうか。知事の所見を伺います。

【3.核燃料サイクルと島根原発について】
 次に、核燃料サイクルと島根原発について伺います。
 原子力規制委員会は7月29日、青森県の日本原燃・六ヶ所再処理工場を新規制基準に適合したと認める審査書を決定しました。六ヶ所再処理工場は、全国の原発で発生した使用済み燃料を集め、燃え残りのウランとプルトニウムを取り出し、高レベル放射性廃棄物も同時に取り出す放射能化学工場であります。
 しかし、日本原燃は、2021年度上期としていた竣工時期を1年延期すると表明しました。25回目の竣工時期の延長であります。
 仮に、再処理工場が稼働したとしても、回収されたプルトニウムの利用計画は全く見通しが立っていません。
 使う当てのないプルトニウムのため込みは、核不拡散条約に抵触し、国際的な信用を失う極めて深刻な問題であります。
 原発を再稼働すれば、使用済み燃料のプールはあふれ出し、再処理をすれば、使う当てのないプルトニウムがたまり続け、処理方法のない高レベル放射性廃棄物が増え続けてしまいます。核燃料サイクルは夢のサイクルではなく、負のスパイラルであり、これらの問題を解決する道は、原発からの撤退の政治的決断を行う以外にないと考えますが、所見を伺います。
 中国電力は、サイトバンカ建物の巡視業務を実施していないにも関わらず、実施したとの虚偽報告を行っていました。この問題の原因分析と再発防止策を取りまとめた報告書が8月31日に公表されました。
 報告書で示された再発防止策は、現場写真を巡視記録に添付するよう求める小手先、形式的なものに過ぎず、根本対策がなされていません。
 私は、中電が不正・不祥事を繰り返さないための根本的対策は、一つに、中電が原発は事故を起こさないという安全神話から決別すること、二つに、安全より利潤を追求し、原発稼働最優先の経営方針を改めることが必要と考えます。
 根本的な再発防止対策として、中電ならびに協力会社の職員が、福島原発事故の教訓、原発事故が国民の生存権、幸福追求権、財産権、居住権など基本的人権を奪い去った事実を深く学び、認識すべきと考えます。所見を伺います。

【4.新型コロナウイルス感染症から県民のくらしを守る対策について】
 次に、新型コロナウイルス感染症から県民のくらしを守る対策についてです。
 新型コロナ危機によって、世界でも日本でも、社会の脆弱さ、矛盾が明るみとなりました。コロナ危機は、日本の医療が抱える矛盾・問題点を浮き彫りにしています。
 政府は1980年代以降、医療費抑制政策をすすめてきました。医療費抑制のもと、医療現場は、ベッドを常に患者でいっぱいにしないと経営が成り立たない状況に置かれ、不採算になる感染症、産科・救急医療の縮小・廃止など地域医療の疲弊がすすんできました。

【(1)PCR検査と医療提供体制、県立中央病院について】
 1998年には、全国で9,134床あった感染症病床が、現在では1,884床しかありません。20年間で5分の1に激減したのであります。
 県内においては、感染症指定医療機関8病院に30床しか感染症病床がありません。
 新型コロナに限らず、今後も新たな感染症の発生が懸念される中、感染症対応の病床など高度急性期、急性期病床の拡充が重要と考えます。所見を伺います。
 次に、PCR検査についてです。
 感染拡大を抑止するためには、「検査によって感染拡大を抑え込む立場」が重要であり、PCR検査は診断目的から、防疫目的の観点で実施する時と考えます。
 医療機関、介護施設、福祉施設、保育園、学校など集団感染によるリスクが高い施設に勤務する職員、出入り業者への定期的なPCR等検査を行い、感染拡大を抑止し、安全・安心の社会基盤をつくるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、医療機関への経営支援についてです。
 日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体は、4月~6月期の経営状況調査で、コロナ患者を受け入れた病院などは6月も10%を超える大幅な赤字であり、患者を受け入れていない病院も対前年で経営状況が悪化し、4分の1を超える病院が夏のボーナスを減額支給したと報告しました。
 6月議会では、県立中央病院の3月~5月の医業収入は、対前年比で3億4千万円の減収との答弁がありましたが、6月~8月の患者数及び医業収入は、対前年同月比でどのようになっていますか。
 患者の命を守るために懸命の奮闘を続ける医療従事者の処遇や職場環境改善を積極的にすすめるべきと考えます。所見を伺います。
 コロナ感染症の影響による経営悪化は、医療機関の経営努力だけでは解決することは不可能です。新型コロナウイルス感染症に最前線で対応しながら、大幅な減収で経営危機に立たされている医療機関の実態を直視し、県立中央病院をはじめ、すべての医療機関、福祉サービスへの減収補填に踏み切るべきと考えます。所見を伺います。

【(2)コロナ禍での生活支援制度の周知・徹底について】
 次に、新型コロナの影響で収入が減少した方々に対する支援としての緊急小口資金、国民健康保険など社会保険料減免などの支援制度の周知について伺います。
 現在、支援制度の案内が十分に届いていません。
 例えば、新型コロナの影響により3割以上の収入減少がある方に対して、国民健康保険料を減免・免除する制度がありますが、この制度活用はごくわずかであります。
 7月末時点で、松江市の国保加入世帯は23,430世帯あります。しかし、国保料減免申請は、わずか200件程度で、申請率は、たったの0.85%しかありません。出雲市の申請数は50件程度しかなく、申請率は、0.23%の状況です。
 自粛要請によって、中小業者の売り上げは激減し、雇用情勢も悪化しているのに、余りにも低い申請状況です。減免申請は、市報への制度案内の掲載と、保険料決定通知書の封書の中に「減免申請書は、ホームページからダウンロードしてください」との案内だけでは、必要なる情報が住民に届くわけがありません。
 県民のくらしが痛んでいる時だけに、県と市町村が連携して「コロナ禍での生活支援制度の周知・徹底」に力を注ぐべきであります。
 国民健康保険、後期高齢者医療制度及び介護保険の保険料(税)などの減免実績、生活福祉資金の特例貸付、住居確保給付金の実績をお示しください。
 これら各種支援制度を市町村と連携して強力に周知・徹底すべきであります。そして、生活困窮者自立支援制度と国保制度、後期高齢者医療制度など関係部署との連携を強化するなど、生活困窮者に対する支援体制の強化を求めます。所見を伺います。

【(3)米価、農畜産物の価格下落対策について】
 次に、米価、農畜産物の価格下落対策についてです。
 新型コロナ感染拡大で食料の輸出制限に踏み切る国が相次ぐ中、日本の食料自給率が37%である現状の危うさが浮き彫りになっています。
 食料・農産物は、緊急時だからといって、すぐに増産するというわけにはいきません。平素から自給率を高める努力を国政の柱に据えるべきであります。
 新型コロナ感染症拡大の影響で、外食用需要が急減し、米の過剰在庫によって2020年度産米価が下落する傾向が広がっています。全国の米価動向に大きな影響を与える新潟県産の一般コシヒカリの概算金は60キロ14,000円で、昨年より900円引き下げられました。先般、JAしまねが20年産の米の買い取り価格を決め、コシヒカリは19年産より300円減の12,600円との発表がありました。
 国に対し、政府備蓄米の買い入れを大幅に増やし、米の非主食用米への転換には、主食用米に見合う転換加算を行うこと、需給安定への責任を果たすことなどを求めるべきであり、県としても、営農意欲をかりたてる積極的な支援策を講じるべきであります。所見を伺います。
 子牛価格や枝肉価格も対前年比で大幅に価格下落が続き、繁殖農家や肥育農家の不安が高まっています。
 農家からは「エサ代さえ出せない低価格です。1月に発効した日米FTAに加え、コロナで急激に値が下がりました」「価格下落の長期化が予想され、従来の枠組みにとらわれない抜本的な支援を講じてほしい」との声が広がっています。
 県内の小規模個人農家は、高齢化で急速に減少しています。小規模・家族経営の畜産農家に対する手厚く、抜本的な価格下落対策、経営継続支援策を求めます。所見を伺います。

【(4)ジェンダー平等社会の実現について】
 次に、ジェンダー平等社会の実現についてです。
 新型コロナウイルスの感染拡大がもたらしている日常生活の激変は、女性に、とりわけ深刻な影響を与えています。
 公益財団法人しまね女性センターは、本年5月~6月にかけて新型コロナウイルスの女性への影響に関するアンケート調査を実施しました。
 調査結果は、センタ-発行の啓発誌・しまねの女(ひと)と男(ひと)に紹介されています。
 アンケートには、コロナの影響で深刻な経済的困難や仕事に対する不安を訴える声が多数寄せられ、一人当たり一律10万円給付の特別定額給付金の受給権者が「世帯主」とされたことに対して、DV避難者の受給の困難さはもとより、ジェンダー平等の観点からの批判が寄せられています。
 私は、「給付金は世帯主ではなく、個人へ」との声を重く受け止め、受給権者は個人とすべきと考えます。そして、夫婦間に上下をつける「世帯主」規定の廃止を求めるものであります。
 また、コロナ対策、災害時の避難所運営など、あらゆる政策決定にあたって、ジェンダーの視点を取り入れるべきであります。ジェンダーの視点は女性のみならず、社会のすべての構成員に良い結果をもたらすものと考えます。所見を伺います。

【(5)少人数学級編制について】
 最後に、少人数学級編制について伺います。
 少人数学級をめぐり、7月には全国知事会・市長会・町村会の3会長が政府に少人数学級実施を要請しました。全国の小・中・高・特別支援の4つの校長会も少人数学級を文部科学大臣に要望しました。そして、8月25日、政府の教育再生実行会議が開催され、委員から「少人数学級をすすめ、30人未満の学級にしてほしい」との意見が出され、 文部科学大臣は「多くの人が方向性として共有できる課題。できることから速やかに行っていきたい」と述べ、必要な予算要求を行う考えを明確にしました。
 一方、本県では、本年2月議会で、教職員や保護者の反対を押し切って、来年度からの少人数学級編制の縮小が決まりました。全国の流れとは逆行するものであります。
 国の専門家会議は、新しい生活様式として、身体的距離の確保を呼びかけ、人との間隔はできるだけ2メートル、最低1メートル空けることを基本としています。
 少人数学級編制縮小は、密を高めることとなり、「身体的距離の確保」と大きく矛盾するのではないでしょうか。
 教育長に伺います。
 市町村教委や学校現場、保護者から新型コロナウイルス感染症対策をすすめる上で、来年度から実施予定の少人数学級縮小に対して、いかなる意見が寄せられていますか。現場や保護者の声を真摯に聞き、子どもの安全を保障するための最善の策を講じるべきではありませんか。
 知事に伺います。
 2月議会での縮小決定は、島根県において新型コロナウイルス感染症発生以前のものであります。
 感染症対策を徹底し、子どもたちの安全を保障するために、来年度からの少人数学級編制縮小はコロナが収束するまで凍結すべきであります。知事の英断を期待して、質問を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画