2020 年 11 月定例会 平成 31 年度決算認定に対する討論
2020-12-15 この記事を印刷
日本共産党の大国陽介です。日本共産党県議団を代表して、一般会計及び特別会計、病院事業会計、水道事業会計の3件の決算認定について、「認定」とした委員長報告に反対の討論を行います。
【はじめに】
予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡と言われています。議会における決算認定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度以降の予算編成に資するため、広範な角度から住民の立場で行政を評価・検証するものであります。
日本共産党県議団は、県政の評価基準として2つの物差しを置くものであります。一つに、県政が、憲法が定める生存権や財産権、幸福追求権など基本的人権を保障しているのか、二つに、県政が、地方自治法が規定する住民の福祉の増進という自治体本来の役割を発揮しているのか、ここに立脚するものであります。
【認定第6号議案「令和元年度一般会計及び特別会計の決算認定について」】
まず、認定第6号議案「令和元年度一般会計及び特別会計の決算認定について」であります。
今、地方は、住民の暮らしの困難、福祉、医療、農林水産業の危機、地域経済の衰退など、深刻な課題に直面し、さらに新型コロナウイルス感染症の拡大で、医療・福祉の現場、中小業者の経営をはじめ、広く県民生活が疲弊しています。
これまで、新自由主義的な政策のもと、安全・安心を脅かすような規制緩和と公共サービスや社会保障の弱体化が進められてきました。しかし、コロナ禍の下で、公衆衛生や医療・福祉をはじめとする「公共」の大切さ、役割が再認識されています。行き過ぎた行財政改革は根本的に見直し、公共サービスや医療・福祉・産業政策を「住民のくらしを支える」という視点から転換すべきであります。
今、県政に求められるのは、「基本的人権の保障」「住民福祉の増進」という自治体本来の役割を発揮し、何よりも新型コロナの感染拡大防止と県民の命を守るための責任を全うすることに他なりません。とりわけPCR検査の拡充をはじめとする、公衆衛生体制の強化や危機的状況にある公的医療・福祉サービスに対する強力な支援、地域の産業を守るための施策の拡充、誘致企業頼みではなく、地域内で経済が循環するような産業政策への脱却が強く求められています。
一方、国政では、年金の減額、医療・福祉サービスの縮減と負担増、消費税の増税や大企業だけが潤うアベノミクス、TPP、FTAなどの農産物の輸入自由化が進められてきました。東京一極集中政策とあわせ、これらは、人口減少や中山間地域の衰退にあえぐ地方の再生に逆行し、知事が掲げる「島根創生」とも相反するものと言わざるを得ません。
コロナ禍の下、くらしが大変になっているときだからこそ、国政のようなくらしを圧迫する誤った政治を県政に持ち込むのか、それとも、それに立ちはだかって島根県政が県民のくらしと命を守る防波堤の役割を果たし、「基本的人権の保障」と「住民福祉の増進」を前面に掲げ、自治体としての積極的な政策を立案し実行するのか。このことが鋭く問われています。
以下、県政上の課題及び県政のあるべき方向を11点申し上げます。
【各 論】
第一に、総人件費抑制策や事務事業の見直し・縮小は、職員の士気や組織の活力を低下させ、県民サービスを縮小させるだけでなく、非正規職員の増加や指定管理などの下で低賃金で働く労働者を生み出しています。こうした現状を是正するため、正規職員の増員、あるいは、正規職員だけでなく、非正規で働く職員や公の施設で働く労働者の賃金が引き上げられるよう、県としての積極的な対応を求めるものであります。また、こうした県の事業の見直し・縮小が市町村に負担を転嫁するものであってはなりません。住民に身近なサービスを提供する市町村と固くスクラムを組み、市町村のニーズに沿った支援策を充実すべきであります。
第二に、県税や社会保険料を滞納した低所得者に対する無慈悲な差し押さえが実行されています。令和元年度の個人住民税の差し押さえ件数は1485件、国民健康保険料(税)の差し押さえは720件に及んでいます。生活に困窮した県民への生活再建支援策にこそ力を注ぐべきであります。
第三に、実質所得や年金が減少し生存権が脅かされているもと、民生費、衛生費などの社会保障予算が脆弱であります。
令和元年度、75歳以上が加入する後期高齢者医療保険制度において、保険料未納による制裁措置として230件もの短期保険証が発行されています。
国民健康保険では、本年10月時点で加入世帯の約1割にあたる7683世帯が保険料、税を滞納しています。そして、その制裁の措置として、命綱である保険証の取り上げが347世帯にも達しています。
介護保険では、本年6月の保険料未納者は3199人にも上ります。未納による制裁措置として令和元年度において88人が給付額減額措置となり、3割の利用料負担を課されました。
貧困と格差が拡大し、低所得者や生活困窮者が社会保障制度から排除された結果、必要な医療が受けられず、命を落とした事例など、深刻なる重大事態が起きているではありませんか。県政は、この実態、県民の苦境を直視すべきであります。
こうした悲劇を招く理由の一つには、国民健康保険料が高すぎるという実態があります。保険料を引き下げるため、「均等割」「平等割」などの応益割を廃止するとともに、県による独自財源投入を決断すべきであります。また、介護保険についても保険料や利用者負担の軽減策を講じるなど、人間としての尊厳を守る社会保障を抜本的に充実させるとともに、コロナ禍のもと、奮闘する福祉労働者の処遇を改善すべきであります。
第四に、宍道断層近傍に建設が計画されている松江北道路事業は、県民の理解と合意が得られておらず、中止すべきであります。
こうした不要不急の事業が進められようとする一方で、土砂災害要対策箇所の整備率は18.9%、落石等通行危険箇所の整備率は38.8%、県管理河川の整備率は32.03%でしかありません。このように災害に弱い県土という現実を直視し、防災・減災型公共事業こそ最優先すべきであります。また、県が行う建設事業に対して、市町村へ過大な負担を求めるべきではありません。
第五に、農業においては、TPP11、日欧EPA、日米FTAなど農産物の際限ない輸入自由化路線の中止を国に強く求めるべきであります。持続可能な農業経営の実現、島根農業の再生に向け、価格保障と生産コストをカバーする支援策を講じることを強く求めます。
第六に、企業誘致頼みから脱却し、地域に根を張って頑張る中小企業、地場産業育成にこそ商工予算の柱をシフトすべきであります。コロナで苦境に立たされる業者への支援を拡大するとともに、内発型、循環型の地域振興策の推進を求めるものであります。
また、島根県の最低賃金は時給792円ですが、東京都の最低賃金は1013円であり、200円余りもの大きな開きがあります。さらに、20代、30代男性において、正規雇用の結婚率は27.2%である一方、非正規は6.7%であり、正規と非正規で約4倍もの開きがあります。最低賃金を引き上げ、安定した雇用をつくることこそ、根本的な人口減少対策、結婚対策であることを強調するものであります。
第七に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては同和教育を全ての教育の基底に据え、同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。民間の同和団体への突出した補助金支出が、逆に不公正を生み出しています。同和教育は終結し、運動団体への補助金は他の補助金との公平性を図るべきであります。
第八に、子どもを苦しめ、学校間の序列化を生み、教育現場を競争に駆り立てる、全数調査による学力テストの中止を求めます。ましてや、学校別結果の公表など論外であります。
また、コロナ禍において、少人数学級の取り組みを後退させるようなことは、あってはならないことです。今月になって、出雲市議会と浜田市議会において、少人数学級の見直し凍結を求める請願が委員会で採択されていることを真摯に受け止めるべきであります。
今、教育行政に求められていることは、少人数学級の取り組みをさらに進めること、就学援助制度の拡充やさらなる教育費無償化など、経済的困難を抱え、子育てに不安を持つ保護者への支援を充実すること、そして、すべての教室・体育館へのエアコン設置など、子どもたちが安心して学べるよう、教育環境を改善することです。
さらに、多忙をきわめる教職員の勤務環境を改善することが急務であります。また、本県教育が不安定な勤務条件のもとで働いている、多くの臨時的任用教職員によって支えられている現状にも目を向けるべきであります。こうした問題を是正するために、正規教職員の大幅増員、臨時的任用教職員の待遇改善を求めるものであります。
第九に、島根の空の安全を守るためにも、騒音などの住民被害をもたらしている米軍機の無法な低空飛行訓練の中止、美保基地について、軍事基地としての機能強化を行わないことを求めるべきであります。また、米軍に治外法権的な特権を与えている日米地位協定の抜本的な見直しを強く要求することを求めます。
第十に、県民の命と安全を守ることこそ県政の最大の使命でありますが、それを脅かす存在が、島根原発であります。
度重なる法令違反を繰り返す中国電力に、県民の不信感が高まっていることは、周知の事実であります。さらに今月、関西電力大飯原発3、4号機について、原子力規制委員会が与えた設置許可を取り消す判断が出され、原子力規制委員会の信頼性さえも揺らぐ事態になっています。使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物の処理方法は確立されておらず、核燃料サイクルは既に破綻しています。
県民の笑顔と幸せを奪い去るのが原発事故であります。そして、原発がある限り、毎年、原子力防災訓練を続けなければならず、膨大なる準備時間と予算、要員や物資を投入しなければなりません。こうした努力を重ねているにもかかわらず、未だ実効ある避難計画の策定にはめどが立っていないという現実を真摯に受け止めるべきであります。
「原発ゼロ」を決断し、使用済み核燃料の処理が終われば、その数十年後から原子力防災訓練をする必要はなくなります。そればかりか、原発事故に備えた避難計画の策定も不必要になります。地震、豪雨など大規模災害も頻発しており、島根原発の廃止を決断すべきであります。
最後に、島根県政のとるべき方向についてです。
一つは、県民合意のない大型建設事業を中止し、県民のくらしと命を守るための財源を確保することであります。二つに、原発稼働に向けたあらゆる動きを中止することであります。この両立こそ、県民の命と安全を守る基盤であり、島根創生の大道であります。松江北道路建設計画はキッパリ中止し、原発ゼロの島根をつくる、そして、安全・安心の再生可能エネルギー推進を強力にすすめ、新たな雇用と産業を創出すべきです。この針路こそ、中山間地域をはじめ、県内各地を活性化させるものであり、島根創生成功にむけた確かなる道であることを強調するものであります。
【認定第1号議案「令和元年度島根県病院事業会計決算の認定について」】
次に、認定第1号議案「令和元年度島根県病院事業会計決算の認定について」です。
県立中央病院では、希望者に対して2交代勤務が行われています。2交代勤務は、看護師の健康悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては安心・安全な看護の提供の面から有害であります。
県民誰もがひとしく安心して県立病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の徴収など保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証1枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきであります。
県立中央病院は、救急医療、地域医療、災害医療、周産期医療など、県医療計画に基づく政策的医療を推進し、県民にとってかけがえのない命綱の病院、宝の病院であります。コロナ禍の下、県民を命と健康を守るため、懸命の努力が続けられています。心からの感謝と敬意を表するものであり、医療従事者の処遇の改善、医療体制のさらなる強化を求めるものです。
なお、今期の中央病院の控除対象外消費税、いわゆる損税は約7億6千万円にも及んでおり、消費税が病院経営を圧迫する一因となっています。健全な病院経営の観点からも診療報酬のゼロ税率適用ならびに消費税減税が求められていることを強調するものです。
【認定第4号議案「令和元年度島根県水道事業会計決算の認定について」】
最後に、認定第4号議案「令和元年度島根県水道事業会計決算の認定について」です。
大田市、江津市に送水する江の川水道事業の施設利用率は、わずか40.9%です。その結果、大田市や江津市は県下トップクラスの高い水道料金となっています。島根県水道用水供給事業において、飯梨川水道事業の施設利用率は57.2%、同様に斐伊川水道事業は69.1%と低利用率であります。これら県営水道事業は、積算根拠、需要予測を見誤ったため、使わない水まで住民負担となっており、高い水道料金に市民から悲鳴が上がっています。事実、令和元年度、松江市において料金未納による給水停止実施回数は、784回にものぼっています。
地方公営企業法第3条の経営の基本原則には、「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない」と規定されています。それはすなわち、安全な水を住民の負担とならないよう低廉な価格で供給することにあります。
県として、高い水道料金を引き下げるため、受水団体への資本費負担軽減を図るなど、料金軽減策を講じるべきであります。
【終わりに】
日本共産党県議団は、今回の決算審査にあたって、全体会、分科会において250項目を超す資料の提供を求め、質疑を行いました。審査過程において、全ての執行部の皆さんから誠意ある御回答並びに資料の御提供をいただきました。心からの感謝を申し上げ、討論を終わります。