2021 年 2 月定例会一般質問 (県政リーダーに対する信頼について、新型コロナ危機について、来年度の少人数学級縮小計画の凍結について、島根原発の基準地震動の再検証、原子力規制委員会のあり方について)
2021-02-26 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
丸山知事、強行日程での政府要請ご苦労さまでした。知事の行動力とご労苦に敬意を表し、質問に入ります。
【1.県政リーダーに対する信頼について】
まず初めに、県政リーダーに対する信頼について伺います。
コロナ対策をはじめ重大な政治課題に取り組む上で、政治家として何よりも大切にしなければならないのは、政治リーダーに対する信頼であります。
しかしながら、国政において、菅首相は「桜を見る会」疑惑で安倍前首相をかばい、1年間も国会でウソの答弁を行い、吉川元農林水産大臣や河井元法務大臣夫妻の贈収賄事件、菅首相長男による総務省幹部への異常な接待漬けの究明に背を向けています。国民には自粛を要請しながら、与党議員の「夜の銀座会食」などは言語道断であります。
そして、迷走を続けるコロナ対策や開催ありきの東京五輪対応など、国の政治に対する信頼は完全に失われていると言っても過言ではありません。
わが党は、夏の東京五輪・パラリンピックは、中止を含めたゼロベースからの検討を求めるものであります。開催には、三つの重大な問題があると考えます。
それは一つに、一部の国でワクチン接種が始まったものの、今年中の世界全体での集団免疫の達成はあり得ず、世界全体の人が守られる水準にはならないとのWHOの警告であります。
二つに、各国の感染状況の違いによる練習環境などの格差、ワクチン接種での先進国と途上国の格差など「アスリート・ファースト」の立場から「フェアな大会」とはなりません。
三つに、大会期間中、熱中症対策だけでも5千人の医療従事者が必要とされ、総勢1万人もの医療従事者を各地の医療現場から引き離して五輪に振り向けることができるでしょうか。
今、必要なことは、「日本と世界のあらゆる力をコロナ収束に集中すること」であります。
島根県において、他の地域と比べて、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑え込むことができているのは、知事と職員の努力はもちろんではありますが、その努力に対する県民の信頼と協力があったからにほかなりません。
しかしながら、こうした県政への信頼は、少人数学級の見直しの際にとられた「福祉を充実するから教育の削減を認めよ」との二者択一を迫り「対立と分断」を持ち込む手法によって大きく揺らぎました。ましてや、原発稼働是非への対応やコロナ対策を見誤れば、瞬く間に失われるものであります。
昨日、知事は上京し、国に対し、コロナ対策の改善・強化について緊急要望をされたところであります。コロナ禍のもと、県民のくらしと命が脅かされている時だからこそ、国の無為無策のコロナ対策や県民の利益に反する政治に対し、県民の立場で立ち向かい、県民から信頼される県政運営にあたっては、「県民のくらしと命を守る」ことを政策判断の基軸とすべきであります。知事の所見を伺います。
新型コロナの影響が長期化する中、多くの県民が精神的にも経済的にも追い込まれつつあります。コロナ禍で苦境にある県民から真に信頼されるリーダーとしてどうあるべきか、知事の決意を伺います。
また、こうした厳しい状況の中で、コロナ対策と島根創生を両立させるためには、その担い手となる県の職員と知事との間で十分な信頼関係が築かれていることが不可欠であります。
任期の折り返しを迎えるにあたって、この間の厳しい県政運営の経験を踏まえ、県庁のトップとして、この先2年間、職員との信頼関係のもと、どのようにリーダーシップを発揮していくのか、所見を伺います。
【2.新型コロナ危機について】
次に、新型コロナ危機についてです。
【(1) 医療機関・福祉施設に対する公費の社会的検査の実施について】
新型コロナの特徴は、無症状感染者が知らず知らずに感染を広げてしまうことにあります。
医療機関、福祉施設でクラスターが発生すると、致命的な打撃となります。医療・福祉施設で集団感染を防止することは、重症者を減らし、医療への負担を軽減する上で決定的に重要であります。
現在、全国の半数を超える25都府県において、医療機関・福祉施設などで感染者が判明していない場合にも、職員や入所者に対するPCR検査、抗原検査が実施・計画されています。県内の医療機関においても、独自にPCR検査などを実施する施設が増えてきました。
コロナ感染を封じ込めるために、公費でのPCR検査・抗原検査を拡大し、医療機関、福祉施設などの関係者に一斉・定期的な検査を行うべきと考えます。所見を伺います。
【(2)医療機関への財政支援と保健所の体制強化について】
県内でも、医療体制がひっ迫し、医療従事者の疲弊も極限に達しています。コロナによる減収で職員への給与や一時金がカットされる事態が生まれています。医療現場からは「使命感だけで働き続けています」との悲痛な声も寄せられています。保健所においても、業務量が増大する中、懸命なる奮闘が続いています。
コロナ危機を乗り越えるために、すべての医療機関に対して減収補填をはじめ、十分な財政支援を行うべきであり、コロナ対策の要となる保健所の体制を拡充すべきです。所見を伺います。
【(3)事業者への直接給付、消費税減税について】
コロナ禍による自粛要請によって、飲食店をはじめ、多くの事業者が経営困難に陥っています。飲食店からは「次の感染の波が来たら、もうもたない」「コロナ前より、少なくとも2割増しの売り上げを上げない限り、融資の返済は無理」「外食や夜の飲食の自粛要請など、外食自体が悪で感染拡大の原因かのようなアナウンスが続けば、誰も外には出ません」「商売を続けるためにも希望がほしい。展望を与えてほしい」との切実な声が寄せられています。
「Go To事業」などの消費喚起策や融資だけでは、もう乗り越えられないというのが事業者の実態であります。
感染抑止を実効あるものとし、コロナ危機による事業者を救済するために第2弾の持続化給付金、家賃支援給付金などの直接支援を国に強く求めるべきであります。また、県としても事業者への給付金の創設など積極的な支援策を講じるべきです。所見を伺います。
コロナ禍のもと、消費税減税に踏み切った国・地域は、50か国以上に上っています。消費税減税は、所得の低い人ほど恩恵が及び、直接給付と同じ役割を果たし、減収で苦しむ飲食・サービス業への強力な支援策となります。
国民負担を軽減し、消費を刺激し、中小企業などの売り上げに貢献する消費税減税を国に求めるべきと考えますが、所見を伺います。
【3.来年度の少人数学級縮小計画の凍結について】
次に、少人数学級編制についてです。
県は、一昨年11月22日、教育現場の意見を十分に聞くことなく、また市町村との協議も不十分なまま、少人数学級編制の縮小案を公表しました。
その中身は、放課後児童クラブと子どもの医療費助成という「福祉」を充実するから、少人数学級という「教育」の削減を認めよ、という「二者択一」を迫るものであり、県民に「対立と分断」を持ち込みました。
これに対し、「少人数学級守れ」の大運動が巻き起こりました。島根県PTA連合会からは「少人数学級制度の現状維持を求める署名」が約4万5000筆、ゆきとどいた教育をすすめる会からは1万2000筆もの署名が寄せられました。
しかし、知事は「学力や不登校について、投じた財源に見合った効果が出ていない」との費用対効果論まで持ち出し、少人数学級縮小を正当化し、縮小案は昨年2月議会で了承されたところであります。
縮小案決定直後から、新型コロナウイルス感染症が県内はもとより、全国で猛威を振るいはじめました。コロナ危機のもと、学校では、密の回避、マスク着用、手洗いの励行、消毒など児童・生徒の安全を守るための懸命の努力を続けています。
現場教員や保護者は「せめて、コロナが収束するまで、少人数学級の縮小をしないでほしい」と願っています。しかし、県は、この切なる願いに背を向け続けているのであります。
このような中、昨年12月、国において大きな動きがありました。それは、40年ぶりに公立小学校の学級編制の標準を40人から35人へと一律に引き下げ、2025年度までに段階的に35人学級を導入することが決まったのであります。
国が少人数学級の必要性を認めたことに対し、全国の教職員や保護者、地方自治体から喜びの声が上がりました。
国においては、現在開会中の通常国会で、さらなる少人数学級拡充に向けた議論が続いています。
自民党の二階俊博幹事長は、1月20日の衆議院本会議で「これで終わりではなく、中学校での導入に向けた検討が重要」と述べました。そして管首相は、2月15日の衆議院予算委員会でのわが党の畑野君枝参議院議員の質問に対し「中学校でも35人学級の実施を検討する」と明言しました。
これら国の動きに呼応して、全国各地で少人数学級推進の動きが加速しています。それなのに、島根県はどうでしょうか。
県は、国の制度改正に合わせ、小学3年生から6年生までの35人から38人への見直しは中止し、35人で据え置いたものの、小2と中学は、これまで通り縮小案を強行しようとしています。
国の動きに逆行する県の姿勢に教育現場から怒りと不信、落胆の声が相次いでいます。生の声をご紹介します。
●「どうして国に先行して少人数学級を実現していたのに、それに逆行するような施策に転じるのか、本当に削るべき財源は教育分野しかなかったのか、まったく納得できません。島根を愛する子どもを育てるのなら、しっかりと一人ひとりの子どもと向き合える環境にすることこそが、一番大切なはずです」
●「教室一杯いっぱいに机が並ぶことを考えると恐ろしいです。30人以上の学級がどれだけ大変なのか、現場を見てください。行き届いた教育のため、感染症対策のため、少人数学級編制縮小の凍結を願います」
私は、質問冒頭で、政治家として何よりも大切なのは、政治リーダーへの信頼であると申し上げました。県民の声、教職員の願いを無視し続け、このまま少人数学級縮小を強行するならば、県政への信頼は失墜します。この立場から伺います。
まず、4月から、小学2年生を30人から32人に、中学3年生を35人から38人へと学級編制基準を見直すことによる影響についてです。
削減される予算額と教員数ならびに影響を受ける学校数、児童・生徒数、学級編制基準見直しによる学級数がどうなるかお知らせください。また、縮小の結果、どの程度、教室が密な状態になるのかお示しください。
学校関係者、児童生徒、保護者は「せめて、コロナ禍が続いている間だけでも、現状より教室がさらに密になるようなことは延期してほしい」と切に願っています。この願意をどう受け止めていますか。
県教委は、小3から小6の編制基準の現行維持を1月14日に発表しましたが、その理由は「国の制度改正による」との説明のみであります。国の制度改正で、手のひらを返したかのような対応であり、十分なる説明責任が果たされておらず、余りに不誠実であります。
教育現場からは「この1年3か月の議論は、いったい何だったのか」との声が上がっています。この間の少人数学級縮小議論は結局、県と県教委の信頼を失わせるだけであり、施策立案にあたって、現場の声に耳を傾けることを肝に銘じ、教訓とすべきであります。教育長の所見を伺います。
知事に伺います。
国の少人数学級編制拡充の動きをどう受け止めていますか。また、県内8市町議会が、県に提出した「少人数学級制度縮小計画の凍結を求める意見書」の願意をどう受け止めていますか。
知事は、昨日、国に対し、コロナ対策強化を要望されました。そうであるならば、「密をさらに拡大」させ、学校現場でのコロナ対策を後退させる少人数学級縮小は、きっぱり中止すべきであります。県政への信頼を取り戻し、子どもたちの命を守るためにも、小学2年生の30人学級、中学3年生の35人学級は維持するべきであります。知事の英断を求めます。
【4.島根原発の基準地震動の再検証、原子力規制委員会のあり方について】
次に、島根原発の基準地震動の再検証、原子力規制委員会のあり方について伺います。
今年3月で福島原発事故から10年を迎えます。事故は未だ収束せず、原子力災害による被害は、多くの避難者と関連死、放射性物質による汚染、地域産業の衰退、地域コミュニティーの破壊など甚大で長期に及んでいます。事故はふるさとを壊し、家族をバラバラにし、人々の幸せを奪い去りました。知事は、福島原発事故の現状と課題をどのように認識していますか。
昨年12月、政府は原発を「確立した脱炭素技術」として「最大限活用していく」とし、新型原発の開発も行うとした「グリーン成長戦略」を決定しました。福島の現実を直視すれば、温暖化対策を口実にした原発推進など許されません。
島根原発2号機の規制委員会での審査が終盤を迎えています。
県は、原発の再稼働にあたって、規制委員会の審査終了後に規制委から説明を受け、県議会や関係自治体、安対協などの意見を聞いた上で総合的に判断するとしています。
しかし、この判断プロセスには、問題があります。規制委員会での審査が十分なる安全性を担保できるものではないからであります。この間の問題事例として、島根原発2号機の基準地震動ならびにサイトバンカ建物の巡視業務未実施の2点について申し上げます。
まず、基準地震動の評価についてです。
福井県の関西電力大飯原発3、4号機について、昨年12月4日に大阪地裁は、基準地震動が過小評価されているとして、国の設置変更許可を取り消す判決を出しました。
原発は想定される最大の地震の揺れ・基準地震動を計算し、その想定に耐えられる設計になっていなければなりません。
規制委員会が定めた審査のガイドラインは、基準地震動設定にあたって、過去に起きた地震規模の平均値からずれる「ばらつき」を考慮する必要があると定めています。すなわち、平均的な地震規模に修正を加え、高めの地震規模を想定しなければなりません。
しかしながら、関西電力は「ばらつき」を考慮せず、規制委員会もこの点を何ら検討することなく、関電の申請は基準に適合していると認定していたのであります。
このことに対し、判決は「規制委の判断は地震規模の想定で必要な検討をせず、看過しがたい過誤、欠落がある」と断じました。自ら定めたガイドラインを守らず、設置変更を許可した規制委員会の責任は極めて重大ではありませんか。
事実、この10数年前余りで、基準地震動を超える揺れが5件も発生しています。2005年の宮城県沖地震(M7.2)による女川原発、2007年の能登半島地震(M6.9)による志賀原発、2007年の新潟県中越沖地震(M6.8)による柏崎刈羽原発では、想定より小さい地震にもかかわらず、基準地震動を超えたのであります。
規制委員会は2018年2月16日、820ガルとする島根原発2号機の基準地震動を「概ね妥当」と評価しました。しかし、これは「ばらつき」を考慮することなく計算した基準地震動にほかならず、過小に見積もられている可能性を否定できません。規制委員会に対し、基準地震動の再検証を求めるべきであります。所見を伺います。
次に、サイトバンカ建物の巡視業務未実施にかかる規制委員会の検査についてであります。
中国電力が協力会社に委託しているサイトバンカ建物の巡視業務に関し、2002年度以降、8人が計32日、巡視業務を実施していないのに、巡視したとする記録をねつ造していたことが明らかとなりました。
これに対し、県はこの行為を厳しく批判し、立ち入り調査を行い、規制委員会に対し、厳正なる検査を求めていました。しかし、当の規制委員会は如何なる対応を取っているでしょうか。
この問題について、昨年5月の規制委員会の定例会合で、驚くべき発言が行われています。
規制管理官は、保安規定違反としながらも、「未実施であった施設は安全上重要な施設ではない」「安全に及ぼす影響の程度は極めて小さい」と発言しているのであります。
さらに、原子力規制委員長は「点検していないのに、記録が作られ、厳しい言い方をすると、ねつ造されてしまった。そういった意味では悪質」としながらも、「そもそも、こんな点検が必要なのか」と言い放っているのであります。信じ難く、許せない発言ではありませんか。これでは、規制委員会ではなく、“原子力推進委員会”ではありませんか。規制委員会は、事業者の虜になってはなりません。
原子力規制委員会設置法では、「原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならない」とされています。しかしながら、規制委員会の安全軽視の姿勢は、この精神に反するものであります。知事の所見を伺います。
規制委員会が自ら定めたルールさえ守らず、重大なる保安規定違反があるにもかかわらず、十分な検査、そして事業者への指導を怠っている規制委員会の審査に例え合格しようとも、安全は担保されていません。原発再稼働など絶対に認められないと考えます。所見を伺います。
「県民のくらしと命を守る」ことを第一にした、県民から信頼される県政運営こそ、島根創生の要であることを強調して、質問を終わります。