2021 年 2 月定例会 知事提出議案、請願等に対する討論
2021-03-16 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成です。
日本共産党県議団を代表して、予算案4件、条例案5件、請願1件について委員長報告に反対する討論を行います。
【第6号議案「令和3年度島根県一般会計予算」】
まず、第6号議案「令和3年度島根県一般会計予算」についてであります。
コロナ危機を乗り越え、島根創生を成功させるために何より大切なことは、県政への信頼を勝ち取ることであります。
この間、幾度となく国に対し、コロナ対策の強化、飲食店をはじめ事業者支援強化を堂々と要求する知事の姿勢に、県民の信頼が寄せられています。
しかし、来年度予算案には、多くの県民、教職員、県内市町村の願いに反し、少人数学級を縮小する予算が提案されています。
わが党は、密をさらに拡大させ、学校現場でのコロナ対策を後退させる四月からの少人数学級縮小中止を求めるものであります。県政への信頼を損なわないために、そして、何よりゆき届いた教育を実現し、子どもたちの命を守るためにも、小学2年生の30人学級、中学3年生の35人学級維持を強く求めます。
その他、予算案ならびに施策方向の問題点を何点か指摘いたします。
第一に、事務事業の見直し、スクラップ・アンド・ビルドを進めるにあたっては、市町村や関係団体、現場の意見を丁寧に、真摯に聞くべきであります。
第二に、新型コロナの感染拡大防止と県民の命を守るための責任を全うするために、医療機関・福祉施設に対する公費のPCR等検査を実施するなど、公衆衛生体制の強化や危機的状況にある公的医療・福祉サービスに対する強力な支援策を抜本的に強化すべきであります。
第三に、持続可能な農業経営の実現、島根農業の再生に向け、価格保障と生産コストをカバーする支援策を強化すべきであります。
第四に、コロナ禍の教訓は、安易な企業誘致ではなく、内発的な循環型経済への転換が重要であることを示しました。企業誘致頼みから地域に根を張って頑張る地場産業育成にこそ商工予算の柱をシフトすべきであります。
第五に、土砂災害要対策箇所の整備率は2割にも達しておらず、県土は脆弱です。防災・減災型公共事業こそ最優先すべきであり、住民合意のない松江北道路建設はキッパリ中止するべきであります。
第六に、県民の命と安全を守ることこそ県政の最大の使命であります。県民の笑顔と幸せを奪い去るのが原発事故であります。安全な原発などあり得ず、実効ある避難計画は未策定であり、核燃料サイクルは破綻しています。
「原発ゼロ」を決断し、使用済み核燃料や原子炉の処理が終われば、原子力防災訓練を実施する必要はなくなります。そればかりか、原発事故に備えた避難計画の策定も不必要となります。
県として技術的に未完成な原発からの撤退を決断し、再生可能エネルギーの普及と促進に向けてさらなる知恵と力を注ぐべきであります。
島根県政は、「住民福祉の機関」の役割を発揮し、住民の意思、民意を尊重し、暮らしを守る防波堤の役割を果たすべきであります。
【第12号議案「令和3年度島根県国民健康保険特別会計予算」】
次に、第12号議案「令和3年度島根県国民健康保険特別会計予算」についてです。
国保加入者からは「保険料が払えず、保険証を取り上げられた」「滞納を理由に年金や生命保険を差し押さえられた」との悲鳴が上がっています。
令和2年10月1日現在、県内において8万4223世帯が国保に加入しています。そのうち、保険料滞納世帯は7683世帯にも上っており、国保加入世帯の約1割が保険料を滞納する事態となっています。
また、保険料未納による制裁措置として、約350世帯が命綱である保険証を取り上げられています。さらに、預貯金や給与、年金など720件もの無慈悲な差し押さえが執行されています。
高い国保料を引き下げるためにも、国庫負担金の増額、市町村による一般会計繰り入れ、基金の取り崩しは待ったなしの課題であります。
国保の都道府県化によって、県も保険者となりました。県としての保険者責任を果たし、高い保険料を値下げするため独自財源投入を決断すべきであります。
【第20号議案「令和3年度島根県病院事業会計予算」】
【第38号議案「島根県病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例」】
次に、第20号議案「令和3年度島根県病院事業会計予算」についてです。
県立中央病院では、希望者に対して2交代勤務が行われています。2交代勤務は、看護師の健康悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては安心・安全な看護の提供の面から有害であります。
また、県民誰もが等しく安心して県立病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の徴収など保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証1枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきであります。
次に、第38号議案「島根県病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例」についてです。
本議案は、県立中央病院の一般病床を572床から522床へと50床削減するものであります。
この間、県立中央病院では、経費削減対策として、令和元年6月に16床、令和元年10月には60床もの病床を削減してきました。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、公立病院の重要性が改めて明白になりました。
県立中央病院は、救急医療、地域医療、災害医療、周産期医療など、政策的医療を推進し、県民にとってかけがえのない命綱の病院であります。
災害拠点病院である中央病院は、大規模災害や感染症蔓延に備えて、病床をしっかり確保し、最後の砦としての役割を果たすべき役割が求められています。
よって、病床数削減には反対であります。
【第23号議案「令和3年度島根県水道事業会計予算」】
次に、第23号議案「令和3年度島根県水道事業会計予算」についてです。
江の川水道用水供給事業や島根県水道用水供給事業の最大の問題点は、積算根拠、需要予測を見誤ったことにあります。そのため、使わない水まで住民負担となり、高い水道料金に住民から悲鳴が上がっています。
県として、受水団体への資本費負担軽減を図るなど、料金軽減策を講じるべきであります。
【第28号議案「会計年度任用職員の報酬、費用弁償及び期末手当支給条例の一部を改正する条例」】
次に、第28号議案「会計年度任用職員の報酬、費用弁償及び期末手当支給条例の一部を改正する条例」についてです。
本議案は、会計年度任用職員の期末手当の支給割合を引き下げるものであります。
会計年度任用職員は、正規職員とともに県民の命と健康を守るため、全力で職務に精励しています。
会計年度任用職員の期末手当引き下げは、民間にも波及し、賃下げの悪循環を招きかねません。職員の努力と奮闘に背を向け、地域経済の停滞につながる、本議案には反対であります。
【第34号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」】
【第35号議案「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」】
次に、第34号議案「島根県指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」ならびに、第35号議案「島根県障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例等の一部を改正する条例」についてです。
これらの議案は、省令改正に伴い、介護・障害福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準を緩和するものであります。
例えば、介護施設におけるユニット定員について、現行基準は「おおむね10人以下」となっています。しかし、この基準を「原則としておおむね10人以下とし、15人を超えないもの」へと基準緩和するものであります。この緩和によって、施設入所者のサービスの質の低下が懸念されます。
また、医療的ケアを必要とする障害児が児童発達支援、放課後等デイサービスを利用する際に配置された看護職員を、児童指導員又は保育士とみなすことを認めるものであります。
障害児の健康を保障するために、看護職員の配置は重要です。しかし、保育士は保育に従事する専門職であり、看護職員は障害児の健康状態を把握し、保健及び看護活動を行う専門職であります。
専門性の異なる看護職員を、保育士や児童指導員の代替とする人員配置基準の後退は、サービス低下につながりかねません。
よって、これら条例案には賛同できません。
【第40号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」】
次に、第40号議案「県立学校の職員定数条例及び市町村立学校の教職員定数条例の一部を改正する条例」についてであります。
本条例は、小学校、中学校及び義務教育学校の少人数学級編制基準の見直し、児童数及び生徒数の変動等に伴う職員定数の改正を行うものであります。
現在の教職員定数は、教員が本来の仕事をする上で絶対的に不足しています。教員の多忙化解消、ゆきとどいた教育の実現、教職員がいじめに向き合う条件を整備するためにも、職員定数の大幅拡充が求められています。
よって、教職員定数を削減する本条例案には反対であります。
【請願第21号「コロナ禍における少人数学級制度維持を求める請願書」】
最後に、請願第21号「コロナ禍における少人数学級制度維持を求める請願書」についてであります。
本請願は、コロナ禍において児童生徒の安全を守るために、来年度も小学校2年生の30人学級、中学校3年生の35人学級を維持することを求めるものであります。
県内の学校現場、教職員からは、「どうして国に先行して少人数学級を実現していたのに、それに逆行するような施策に転じるのか、本当に削るべき財源は教育分野しかなかったのか、まったく納得できません。島根を愛する子どもを育てるのなら、しっかりと一人ひとりの子どもと向き合える環境にすることこそが、一番大切なはずです」、「教室一杯いっぱいに机が並ぶことを考えると恐ろしいです。30人以上の学級がどれだけ大変なのか、現場を見てください。行き届いた教育のため、感染症対策のため、少人数学級編制縮小の凍結を願います」との切実な声が寄せられています。
学校現場では、毎日、感染予防に努め最大限の努力を続けています。このような中で、「少なくとも、教育行政の側が、現行よりも密を拡大することだけはしないでほしい」というのが学校関係者、児童生徒、保護者の切なる願いであります。
県政は、この現場の願意に応えるべきであります。
よって、本請願の採択を強く求めるものであります。
以上で討論を終わります。