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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2021 年 9 月定例会一般質問 (知事の政治姿勢について、新型コロナウイルス感染症対策について、豪雨災害について、コロナ禍や自然災害に苦しむ事業者や若者に対する支援について、学校施設の浸水・土砂災害対策について、島根原発について)

2021-09-17 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。

【1.知事の政治姿勢について】
 まず初めに、知事の政治姿勢について伺います。
 新型コロナウイルスの感染拡大と深刻な医療逼迫が続いています。全国では、入院できずに自宅で亡くなったり、救急搬送できなかったりする悲惨な事態が相次ぎました。こうした事態は政治が招いた重大な人災であります。菅首相の退陣は、「こんな政治は許せない」という国民の世論と運動に追い詰められた結果であります。
 また、今夏も記録的豪雨によって、河川氾濫や土砂災害など大きな被害が各地で発生しました。気候災害の激甚化が顕著になっている中、コロナ感染拡大対策と合わせ、災害から県民の命と財産を守る政治の役割が重要になっています。
 目の前にある尊い命をどう救うのか。今、政治に求められているのは、命を守ることを最優先にした施策であり、政治に対する信頼であります。
 この立場から伺います。
 第一に、これまでの県の新型コロナ対策や防災対策について、県民からどのように評価されていると認識していますか。また、国政において、政治の信頼が揺らいでいる中、県政に対する県民の信頼を損なわないために、知事として、いかなるリーダーシップの発揮が求められているのか、所見を伺います。
 第二に、県民の中には、コロナなどの感染症、予期せぬ自然災害、さらに島根原発再稼働によって、命が奪われかねないことへの不安が渦巻いています。
 県民に希望と安全・安心の島根を発信することこそ、県政の使命であり、県民の命を守ることを県政の基軸に据えるべきであります。政策決定において、命を守ることを最優先の判断基準、モノサシとすべきであります。所見を伺います。

【2.新型コロナウイルス感染症対策について】
 次に、新型コロナウイルス感染症対策についてです。
 この間の政府のコロナ対応は、科学を無視したものでありました。
 PCR検査を抑えてきた結果、医療崩壊を起こし、「GoToキャンペーン」をすすめた結果、全国にウイルスを広げてしまいました。そして、国民には自粛を求めながら、五輪・パラリンピックを強行したことが、国民への誤ったメッセージを広げることとなり、人流増加により、国民の命の危険を拡大したのであります。
 県内においても、お盆時期の人流増加や、全国的なアルファ株からデルタ株への置き換わりなどの影響の結果、県内感染者の累計は1500人を超えました。
感染者が増加し、医療が逼迫する中、県は8月18日に突如、「感染者全員を入院させる」としてきた方針から、自宅療養を容認する体制への移行を発表しました。
 自宅療養容認方針への転換に対し、医療関係者や県民からは、次のような怒りと不安の声が寄せられています。

●「デルタ株では、無症状者も短期間で悪化するケースがあり、自覚症状が表れなくても、病状が進行している場合も少なくありません。自宅療養は県民の命を危険にさらすものです」
●「家族への感染防止のためにも、入院や宿泊療養を堅持し、基本とすべきです」
●「自宅療養は、脆弱な在宅医療の体制に大きな負荷をかけます。自宅療養中に重症化する患者を急増させ、かえって医療崩壊を招くことになります」などの声であります。

 県民の命と健康を守り、医療崩壊を防ぐためには、医療提供体制と感染拡大防止策を抜本的に強化しなければなりません。
 この立場から、伺います。
 第一に、自宅療養の方針は撤回し、症状に応じて必要な医療をすべての患者に提供することを大原則とすべきであります。限られた医療資源を効率的に活用し、医療機能を強化した宿泊療養施設や臨時の医療施設の増設・確保を求めます。所見を伺います。
 第二に、感染者が発生した場合、患者の行動調査、接触者の特定及び健康調査、そして接触者に幅広なPCR検査など必要な検査を実施するという、これまでの積極的疫学調査だけでは不十分であり、さらなる積極的検査戦略が必要であります。感染伝播の鎖を断つために、大規模に検査を拡充することが必要であります。
 ワクチンの迅速・安全な接種とセットで、いつでも、どこでも、誰でもの立場で、無料のPCR検査を大規模に行うこと、特に感染拡大が顕著な事業所、学校、保育園などでは直ちに実施すべきと考えますが、如何ですか。
 第三に、医療供給体制を確保するために、医療・介護の担い手に感染を広げず、クラスター化を防ぐことが必要です。医療・介護施設の職員及び入院患者・入所者を対象にした定期的なPCR検査の実施など、PCR検査体制をさらに強化すべきと考えますが、如何ですか。
 第四に、県が大規模検査の実施に踏み切ってこそ、県民への感染防止の強力なるメッセージとなるはずであります。県民に3密対策や自粛など感染防止対策の協力要請を行う以上、県が積極的に感染防止に取り組む姿勢と決意が県民に伝わることが重要です。県が適切な情報提供と説明責任を果たすとともに、積極的検査を実施してこそ県政への信頼が強まり、感染抑止の大きな力となるのではないでしようか。所見を伺います。
 第五に、すべての感染者が適切な医療を受けられ、救われるべき命が失われることがないようにするため、保健所、医療機関、医師会、看護協会での役割分担と連携の強化、整備を行うことが重要と考えますが、如何ですか。そのためにも、連携の核となる保健所の人的体制の抜本的強化を図るべきと考えます。所見を伺います。

【3.豪雨災害について】
 次に、豪雨災害についてです。
 7月初旬の豪雨により、県内各地で道路の通行止め、浸水被害、家屋の損壊、道路・河川などの崩壊、農地への土砂流入などの大きな被害が発生しました。
 8月の豪雨では、14日に江の川がまたもや氾濫し、住宅や商業施設、農地で浸水被害が発生しました。江の川では、この4年間で3度目の水害であります。
 わが党は、災害発生直後から被災現場に入り、被災された方から様々なご意見を伺ってきました。寄せられた声の一部をご紹介します。

●「自宅の裏山が崩れ、家屋が押しつぶされる寸前まで土砂が迫りました。もうこの家には住むことができず、市営住宅で暮らしています。生活再建への支援をお願いします」
●「松江市の意宇川では、たびたび避難判断水位を超え、避難勧告が発令されます。この度の豪雨で住宅や車まで浸水し、車の修理に30万円かかりました。安心して暮らせる抜本的対策を講じてください」
●「昨年の水害からようやく立ち直りかけたところ、江の川がまたもや氾濫しました。堤防整備、水防災事業の強化を切にお願いします」などの声であります。

 現在、県内の土砂災害要対策箇所の整備率はわずか18.9%、落石等通行危険箇所の整備率は38.3%、県管理河川の整備率は32%に過ぎず、県土は脆弱であります。
 県において、国の国土強靭化対策に呼応し、昨年12月、今後10年間の公共土木事業について、道路維持、橋梁耐震化、落石対策、土砂災害対策などの事業方針、数値目標が設定されたところであります。
 近年、記録的豪雨が頻発し、極めて短時間に住宅浸水や土砂災害が発生し、深刻な被害が多発しています。災害の激甚化・頻発化に備え、一層の防災安全対策の強化と計画前倒しが必要ではないでしょうか。従来の延長線上ではない、防災・減災対策の抜本的な強化が求められているのではないでしょうか。
 私は、防災・減災事業こそ最優先の立場で、既存計画に対して勇断をもってメスを入れるべきと考えます。住民合意がなく、宍道断層近傍に建設予定の松江北道路建設は中止・凍結すべきであります。20年後に完成する道路より、目の前の安全・安心の防災・減災事業こそ優先すべきであります。
 防災・減災事業、インフラや公共施設の維持・更新事業に予算を重点的に配分し、人的資源も建設資材も優先投入すべきと考えます。所見を伺います。
 この間の相次ぐ災害では、土木部職員をはじめ、県職員は被災地、被災自治体へ応援に入り、現場復旧、生活支援への多大なる貢献を続けています。
 この間、自治体リストラによって、土木・建築技術者が削減され、現場の技術力が低下しています。必要な建設・土木技術者が確保できない市町村も生まれています。災害時に十分な機能と役割が発揮できる体制の強化が求められており、技術職員をはじめ、防災担当や専門的な知識と経験を持つ職員を十分に配置、充実すべきであります。所見を伺います。

【4.コロナ禍や自然災害に苦しむ事業者や若者に対する支援について】
 次に、コロナ禍や自然災害に苦しむ事業者や若者に対する支援についてです。
 コロナ禍で、多くの中小業者が苦境にある中、消費税の減税を求める切実な声に耳を傾けることなく、10月に、政府は適格請求書、いわゆるインボイスの発行事業者の登録受け付けを始めようとしています。
 インボイスの請求書を発行できるのは、消費税の課税業者だけであり、インボイスでなければ、仕入先に支払った消費税額の控除はできません。つまり、消費税免税業者の請求書では、取引先の課税業者は、仕入税額控除を受けることができなくなります。
 このため、課税業者との取引を継続するためには、免税業者も課税業者にならざるを得なくなります。
 中小業者にさらなる負担増を強いるべきではなく、消費税減税とともに、インボイス制度は中止すべきであります。所見を伺います。
 農家からは「豪雨被害で農地や水路に土砂が流入し、さらに米価も下落続きで、これを機に離農を考えています」との声が出されています。コロナ禍の長期化により、米の需給環境は悪化し、前年比2~3割減もの言われる米価の下落が米づくりの展望を奪っています。
 米と水田は島根の宝であり、農家への営農エールを送るためにも、①過剰在庫を政府が買い取り市場から隔離する、②コロナ禍で苦しむ生活困窮者へ米を大規模に供給する仕組みを創設する、③ミニマム・アクセス米の輸入を中止する、④転作補助金の大幅拡充など、農家への緊急の支援策を講じるべきであります。所見を伺います。
 次に、就職活動に取り組む学生に対する支援についてです。
 島根で教員になることをめざしていた若者が、今年8月の公立学校教員採用試験を受験できない出来事がありました。この方は県外から実家に帰省し、試験を受ける予定でしたが、試験日の数日前に受けたPCR検査の結果、コロナ陽性と判定され、結局、受験が叶いませんでした。
 本人の責めに帰さない事由で受験できない人に対し、再試験などの救済措置を行うべきです。若者定着を最優先の課題としている島根県として、自ら採用する教員試験において、救済措置を講じるべきであります。
 コロナに感染、あるいは、濃厚接触者となった受験者には、再受験の機会を与えるなど、県の職員採用試験、教員採用試験において、若者が安心して受験できる仕組みを構築すべきと考えます。所見を伺います。

【5.学校施設の浸水・土砂災害対策について】
 次に、学校施設の浸水・土砂災害対策についてです。
 学校は子どもたちが安心して学び生活する場であり、災害時には避難所としての役割が求められています。学校の水害・土砂災害に対する防災機能の強化が重要であります。
 2017年の水防法や土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の改正により、市町村の地域防災計画において、要配慮者利用施設に位置付けられた学校の中で、浸水想定及び土砂災害警戒区域に立地している学校は、「避難確保計画」の作成や「避難訓練」の実施が義務化されました。
 そこで、伺います。
 第一に、県内において、浸水想定区域や土砂災害警戒区域に立地する学校は何校ありますか。
 第二に、これらの学校のうち、市町村の地域防災計画において「要配慮者利用施設」として指定され、「避難確保計画」を策定している学校が何校ありますか。この計画に基づく「避難訓練」を実施している学校は何校ありますか。計画作成や避難訓練を実施していない学校の状況についても、お知らせください。
 避難確保計画は、学校で実施した避難訓練等の検証結果や、実際に発生した各地の災害事例の教訓、学校を取り巻く状況の変化などを踏まえ、常に見直しや改善を行うことが重要であります。
 さらに、計画の作成にあたっては、学校のみならず、地元市町村や関係機関とも協議を重ね、計画は担当者だけではなく、学校のすべての教職員、保護者や地域の関係者が日常的に共有できるようにし、学校と家庭・地域が一体となって、子どもの安全を守る体制を構築すべきと考えます。所見を伺います。
 近年の災害は、浸水想定区域や土砂災害警戒区域に立地するかどうかに限らず、どこに立地していても被害を受ける可能性があります。すべての学校管理者が自校においても災害は起こりうると想定しておかなければなりません。
 学校設置者及び学校管理者は、風水害に限らず、火災や地震、原子力災害などあらゆる災害から子どもの命を守る実効ある対策を講じておくべきと考えます。所見を伺います。

【6.島根原発について】
 最後に、島根原発についてです。
 今、島根は歴史的岐路に立っています。島根原発2号機の再稼働によって、今後とも原発の危険を抱え、原発依存の島根を続けるのか、それとも、危険な原発とはきっばり決別し、安全・安心の島根の道を歩むのか、大きな分かれ道にあります。
 原子力規制委員会は9月15日、島根原発2号機が新規制基準に適合しているとする審査書を正式に了承しました。
 新規制基準適合をもって、原発が安全であると保障されたわけではありません。新規制基準は、過酷事故発生があり得るとの立場を取っています。
 事実、原子力規制委員会自身、「新規制基準を満たすことによって絶対的な安全性が確保できるわけではありません」と明確に述べています。
 原発には他の事故にはみられない異質の危険があります。一度、重大事故が発生し、放射性物質が外部に放出されると、もはやそれを抑える手段は存在しません。被害は空間的にどこまでも広がり、時間的にも、将来にわたっても危害を及ぼし、地域社会の存続さえ危うくすることを福島は実証したではありませんか。福島事故の教訓は、安全な原発などあり得ないということであります。
 知事に伺います。
 たとえ、新規制基準に適合しても、原発事故が発生する可能性は否定できません。社会を破滅させる事故が起きる危険が「万が一」でもあるならば、原発技術を使用すること自体、許されないと考えます。原発再稼働はやめるべきであります。所見を伺います。
 中国電力は2013年12月に、原子力規制委員会に2号機の適合性審査を申請し、184回の審査会合が開かれました。規制委は審査中、中電に対し、安全追求の甘さや主体性を欠く姿勢を幾度となく指摘し、苦言を呈してきました。
 県民からは、相次ぐ不正を続ける中電に対し、「全国最多の不正を続ける中電は信用できない」との厳しい声が上がり続けています。
 2号機において、2008年10月に経産大臣からプルサーマル計画にかかる設置変更が許可され、県は2009年3月24日にプルサーマル導入について最終的に了解しています。
 県がプルサーマルを了解した前提条件は、安全性については、①国による厳格な安全審査、②中国電力における適正な運転が確保されている、ことでありました。
 この間の中電の安全対策を見た際、果たしてプルサーマル了解条件、すなわち、中電の適正運転が確保されていると言えるでしようか。
 中電は、2010年3月に島根原発1・2号機で計511カ所もの点検漏れが発覚し、15年6月には低レベル放射性廃棄物の処理に関する校正記録の偽造、そして、19年8月には放射線量などを測定した資料を保存期間中に誤廃棄、さらに、20年2月に放射性廃棄物を保管するサイトバンカ建物の巡視を実施していないのに実施したと偽った不正事案が発生しています。
 本年5月17日には、原子炉建物内で労災事故を起こし、その翌日に火災が発生するなど、目に余る不正、不祥事、不適切事案のオンパレードではありませんか。こういう事態を不適正な運転と言うのではないでしょうか。
 さらに、6月23日の定例会合では、秘密保持契約により原子力規制庁から貸与されていた原子力発電所のテロ対策施設に関する非公開文書を無断で廃棄していたことも明らかになりました。この点で悪質なのは、6年間も文書廃棄が未報告であったことであります。
 これに対し、規制庁から「人から借りた大事な文書を誤って捨て、何も報告がないのはおかしい」との怒りの声が上がりました。
このように、再三にわたって中電の安全・保守対策に赤信号が点滅し、島根県自身、幾度となく不正・不祥事による立ち入り調査を実施してきたではありませんか。
 知事に伺います。
 第一に、誰が見ても、中電の安全管理体制は不適切であります。県がプルサーマルを了解した際の「中電の安全管理体制は適切」との判断理由は完全に破綻しています。所見を伺います。
 第二に、中電は今年8月、県内周辺自治体に対し、事前了解権は認められないと回答しました。その理由として、島根原発建設時の水面埋め立てや林地開発の許認可権が立地自治体にしかないことを根拠としました。
 こうした姑息な判断理由を持ち出してまで、周辺自治体に事前了解権を認めない姿勢は、原発再稼働のハードルを上げたくないことの表れではありませんか。
 言い換えれば、安全管理体制に自信がないことを中電自ら認めたのであります。中電に原発を稼働する資格はなく、公益企業としての資質が問われていると考えます。県の評価を伺います。
 最後に、不正・不祥事を続ける中電に県民の命を預けることなど絶対にできません。プルサーマル運転はもちろん、島根原発再稼働など認めないとの判断を下すべきであります。
 知事の英断を求め、質問を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画