2022 年 2 月定例会一般質問 (未知なる感染症への備えと体制強化について、新自由主義から転換し、県政のあるべき施策方向について、感染症、多発する自然災害を踏まえた原発稼働是非の判断基準について)
2022-02-25 この記事を印刷
日本共産党の尾村利成でございます。
【1.未知なる感染症への備えと体制強化について】
新型コロナウイルスの第6波から県民の命を守るため、日夜ご奮闘されている医療従事者、エッセンシャルワーカー、教職員、そして、自治体関係者のみなさんのご尽力に、心からの敬意を表します。
まず、未知なる感染症への備えと体制強化について伺います。
県内において、昨年末に感染力の強いオミクロン株が確認されて以降、感染が急拡大し、1月には2515人もの感染が確認されました。
この爆発的な感染者数は、昨年9月に収まった第5波を踏まえ、昨年11月に新たに策定した病床確保計画を大きく上回る想定外の事態となりました。
新しい病床確保計画では、最大の推計患者総数を450人としていました。しかし、実際の最大療養者数は1394人に上りました。実に想定の3倍を超す患者数となりました。
また、計画では、最大の宿泊・自宅療養者数を200人と推計していました。しかし、実際の療養者数は、計画の5倍を超す1000人超となったのであります。
この緊急事態に対し、県庁では100人を超す職員を保健所の応援業務に派遣し、全庁的な応援体制によって保健所体制の確保に全力を挙げました。
また、訪問看護ステーションは、病院の面会制限で在宅看護の希望者が増え、業務が逼迫する中、陽性の自宅療養者の健康観察や24時間の電話対応に尽力しました。
病院においては、県の要請に積極的に応え、368床の病床を確保しました。しかし、通常でさえマンパワーが足らない中にあって、コロナ病床を確保したため、一般診療を制限せざるを得ない事態が発生したのであります。
なぜ、このような想定外の事態となったのでしょうか。
それは、一つに、3回目のワクチン接種率が未だに約15%で先進国の中で最下位が続いていること、二つに、検査が逼迫し、必要な検査が受けられない状況が全国的に広がっていることにあります。
ワクチンブースター接種では昨年11月、政府が医学的な根拠もなく、間隔を「原則8か月以上」とし、その原則を1月7日まで変えませんでした。このため、自治体として、接種前倒しへの備えが取れず、準備が追いつかなかったのであります。
検査の問題では、感染が収まっていた昨年10月から12月の間に国の責任で検査能力を拡大しておくべきでした。しかし、政府の対応は「一斉定期検査」の事務連絡を出しただけで、実施判断は、自治体任せにしてしまったのであります。
今こそ、政府は接種を加速するためのワクチン供給を急ぎ、自治体を最大限支援すべきです。そして、「いつでも、誰でも、無料で」受けられるPCR検査体制を確立し、検査キットなど資材の調達、陽性者の保護に責任を持つべきであります。
県民の命を守るためにも、未知なる感染症への備えと体制強化が必要です。そのためには、検査体制、医療機関、保健所の拡充を3点セットで抜本的に強化しなければなりません。以下4点伺います。
第一に、PCR検査を感染症対策の基本に位置づけることです。
PCR検査は、医療だけでなく、農作物、食品の安全性、法医学、疫学など多くの分野で活用されており、日本のPCR検査機器所有数は世界第2位であります。「いつでも、誰でも、無料で」受けられる検査体制を確立するために、検査資源を確保し、検査能力を高めるべきであります。所見を伺います。
第二に、病床削減の「地域医療構想」は見直し、公立・公的病院の統廃合をキッパリ中止すべきです。
2013年度、県内の一般・療養病床数は9175床ありました。それが、2020年度には7958床へと、1217床も減らされました。「地域医療構想」では、2025年度の必要病床数は6569床と想定されており、さらに病床数を減らす計画となっています。
県内368床のコロナ確保病床のうち、国から再編・統廃合と名指しされた、松江医療センター、玉造病院など5つの病院が、58床ものコロナ病床を確保しています。医療機関に病床確保を求めながら、地域の公立・公的病院などの病床減らしをすすめる政策は矛盾しています。公立・公的病院が果たしている役割を評価し、病床削減路線はキッパリ中止すべきです。所見を伺います。
また、今後も予想される未知なる感染症に対応するために必要となる医療・介護、福祉のマンパワーや県民の命と健康を守りきる上での病床数などを再検証すべきと考えますが、如何ですか。
第三に、医療機関にとっては、空床による減収、診察や手術の中止・延期による減収、受診抑制による減収等により、経営が非常に困難になっています。新型コロナ対応と通常医療を確保し、県民の命を守るためにも、減収となった医療・福祉機関に減収補填や財政支援を行うとともに、医療・福祉労働者の抜本的な処遇改善を国に求めるべきと考えます。所見を伺います。
第四に、保健所の恒常的な職員増など体制を抜本的に拡充・強化することです。
感染症の爆発的な流行などの危機管理に対して、保健所が適切に対応する上では、臨時的な応援を前提とした体制には、限界があります。国に対し、保健所の配置基準や定数を抜本的に拡充し、それを保障する地方交付税の配分等の財政支援を強く求めるべきです。所見を伺います。
【2.新自由主義から転換し、県政のあるべき施策方向について】
次に、新自由主義から転換し、県政のあるべき施策方向について伺います。
新自由主義のもとで非正規雇用が増やされ、低賃金を押し付ける労働法制の規制緩和が推進されました。社会保障費の削減で、医療・介護や公衆衛生が切り捨てられ、消費税の連続増税が富裕層・大企業減税と一体で行われました。
今こそ自己責任と自助を押しつけるのではなく、公助を柱に据えた政治へ転換すべきです。社会保障切り捨てから拡充に切り替えるとともに、地域内で経済が循環するシステムへと転換し、人々に対して、やさしく強い経済を目指すべきであります。
自己責任、弱肉強食の新自由主義の転換こそ、真の島根創生につながると考えます。県政のあるべき施策方向について伺います。
第一に、やさしく強い経済の要は、良質な雇用の創出にあります。そのために、中小企業への賃上げ支援を抜本的に強化しながら、最低賃金の引き上げを目指すべきであり、非正規から正社員への流れをつくり、格差を是正する均等待遇を図るべきと考えます。所見を伺います。
また、女性と子どもの貧困問題の解決のためにも、男女間の賃金格差是正に取り組むことが極めて重要であります。女性の雇用環境の抜本的な改善を図り、ジェンダー平等社会の土台とすべきと考えます。所見を伺います。
第二に、2年に及ぶコロナ危機で困難に直面している中小企業、農林水産業を支援し、地域経済を立て直さなければなりません。売り上げ減少、米価や農産物価格下落により、営業・営農意欲が低下している事業者への力強い施策・メッセージを発するべきです。
給付金支給や融資などの支援策は、すべての事業者に行き届いていません。川本町では、コロナ禍で社員の雇用を維持する事業者支援として、国の雇用調整助成金を受給した事業者を対象に社会保険料の事業主負担分を補助しています。コロナ禍で苦境にある中小企業への支援策や消費の活性化策として、社会保険料の事業主負担の軽減や消費税減税を国に求めるべきと考えます。所見を伺います。
農業生産は、市場任せでは維持できません。生産費を償う農産物の価格保障は、農業者に再生産を保障し、意欲と誇りを取り戻す上で決定的に重要と考えます。価格保障を中心に、各種所得補償を組み合わせ、大多数の農業者が営農を続け、暮らしの成り立つ土台を整えるべきです。所見を伺います。
【3.感染症、多発する自然災害を踏まえた原発稼働是非の判断基準について】
最後に、島根原発についてです。
2月15日、松江市長は多くの市民の願いに反し、島根原発2号機の再稼働同意を表明しました。この拙速なる決定に対し、市民から大きな怒りの声が上がっています。
新型コロナウイルス感染症の第6波、オミクロン株の流行から得られた教訓は、危険な原発を動かしてはならないということであります。
第6波の影響は我々の想定を遥かに超えました。多くの事業所の閉鎖をはじめ、様々な分野で社会機能の麻痺をもたらしました。仮に、今回の第6波と同等、あるいは、それを超える新たな感染症が流行した時、島根原発で事故が発生したらどうなるのでしょうか。もはやこれは空想ではなく、十分にあり得ることが明白となったのであります。
中国電力の職員や原発の運転員が感染し、発電所内で大規模クラスターが発生した時、誰が現場での事故対応を行うのでしょうか。
新型コロナウイルスが蔓延した時に医療機関、保健所、福祉事業所に余力がないこともハッキリしました。コロナ感染拡大時、入院患者や施設入所者、コロナ感染者や濃厚接触者への万全なる避難対応ができるのでしょうか。医療機関や保健所のマンパワーが不足しているではありませんか。
さらに、第6波では県庁をはじめ、自治体においても感染が相次ぎました。原発事故時に指令塔となる県庁や自治体が機能不全に陥りかねないことも明らかになったのです。
また、バスやタクシーなどの輸送事業者でクラスターが発生した場合にどうなるのか、避難の受け入れ先である広島や岡山で感染が蔓延し、感染症対応に追われている時、島根県民の円滑なる受け入れ体制が取れるのでしょうか。はなはだ疑問であります。
また、第6波の中、太平洋側を中心に津波注意報・警報が発令され、九州では震度5強の地震の被害もありました。新型コロナウイルスの新たな変異株の発生、あるいは、未知なる感染症の驚異はこれからも懸念され、その流行期において、自然災害との複合災害が起こりうることも明白となりました。
そこで、伺います。
県民の命と安全に責任を持つ上で、ウイルスや自然災害の脅威に対して、謙虚であるべきです。危機管理にあたっては、想定外を想定し、最悪の事態に対応できるのかどうか、このことを物差し・基準として原発稼働の是非を考えることが不可欠と考えますが、所見を伺います。
次に、避難計画について伺います。
島根地域全体の避難計画である緊急時対応は、内閣府の原子力防災会議において昨年7月30日に了承されました。しかし、この緊急時対応は、この度の第6波を踏まえた計画とはなっておらず、実効ある計画とは言えません。
一例、申し上げます。
定員177人の鹿島病院の入院患者は、避難先として出雲市の島根大学付属病院や大田市立病院、済生会江津総合病院などが避難先施設になっています。計画では、これら病院が177人の入院患者を受け入れることとなっています。第6波並みの感染症が発生した際、これらの病院が本当に鹿島病院の入院患者を受け入れることができるのでしょうか。
また、原発30キロ圏内のUPZ内にある病床は5835床であり、ここに入院している患者の受け入れ先は、県内23病院で675人を受け入れる計画となっています。そして、それでも不足するベッドについては、岡山、広島、山口3県の空きベッド1万7580床から確保するとされています。
第6波においては、島根をはじめ中国地方各県に、まん延防止等重点措置が適用されました。第6波の状況を踏まえれば、この受け入れ計画は「絵に描いた餅」「机上の空論」と言わざるを得ず、非現実的であります。ましてや、第6波を超す感染症が発生し、かつ自然災害が重なれば、ベッド数もケアに従事する医療従事者も大幅に不足することは、火を見るよりも明らかと考えますが、如何ですか。避難者の受け入れ医療機関の意見を真摯に聞き、現状と課題を把握すべきです。所見を伺います。
政府は、コロナ禍にあっても、「地域医療構想」と公立・公的病院の再編・統廃合で病床削減を推進し、県内外のベッド数は毎年のように減らされています。ベッド削減路線を改めない限り、避難先医療機関における受け入れ見込み数など確定できないと考えます。所見を伺います。
県内外の避難の受け入れ自治体において、新型コロナウイルス感染症の第5波、第6波のような状況下で本当に受け入れが可能なのか、受け入れる上での課題は何であるのかなど、岡山、広島県など受け入れ先自治体への丁寧なヒアリングを行うべきです。所見を伺います。
私はこの間、実効ある避難計画とは「原発の事故時に100%住民の命と安全、健康を守ることができる計画」と指摘してきました。これに対し、知事も「そういったことを実現できる計画であり、その体制が必要である」と答弁されたところであります。
しかし、現場では避難計画への不安が渦巻いています。市民団体が、学校や病院、福祉施設などに実施したアンケート調査において、約6割の施設から避難計画に基づく対応は「不可能」との回答が寄せられているのであります。
避難計画の実効性を客観的に検証するためにも、特に避難が困難な環境に置かれている災害時要援護者やその支援者、病院、福祉事業者、学校に対して、県が直接、丁寧なる説明を行い、その実効性について、当事者が主体的に評価できる機会を設けるべきであります。そして、寄せられた意見を計画に盛り込むべきであります。所見を伺います。
知事は1月27日の定例記者会見において、2月2日と5日に予定していた原子力防災訓練に関連して「県の避難計画で新たにクリアしなければいけない課題が出てきたわけでない」との趣旨の発言をされました。
しかしながら、第6波の教訓を真摯に受け止めるのであれば、クリアしなければならない課題は山積しているのではありませんか。新たな「原発安全神話」とも言うべき認識は撤回されるべきであります。原発再稼働を判断するにあたっては、未知なる感染症の流行と自然災害の同時発生を想定した避難計画の策定及び住民参加の原子力防災訓練を実施するなど、実効性を検証する取り組みを行うべきと考えます。如何ですか。
私は、新型コロナ危機にある今、リスク軽減の上からも、稼働原発の即時運転停止を求めるものであります。想定外の事態が起こりうるという現実に背を向け、机上の空論となりかねない現在の避難計画を根拠に、島根原発2号機の再稼働など断じて許されない、そのことを強調して質問を終わります。