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「島根原子力発電所 2 号機の再稼働を了」とした委員長報告に反対する討論

2022-05-26 この記事を印刷
 日本共産党の尾村利成でございます。
 日本共産党県議団を代表して、また多くの県民の願いを代弁して「島根原子力発電所2号機の再稼働を了とした委員長報告に反対する討論を行います。

 今、島根は歴史的岐路に立っています。島根原発2号機の再稼働によって、今後とも原発の危険を抱え、原発依存の島根を続けるのか、それとも、危険な原発とはきっばり決別し、安全・安心の島根の道を歩むのか、大きな分かれ道にあります。
 わが党は、県政が政策決定をする際の土台、根本に、基本的人権を保障した日本国憲法と住民の安全を守ることこそ自治体の使命と規定した地方自治法を据えるべきと考えるものであります。
 それは、すなわち、原発稼働の判断基準として、一つに「県民の命と安全を守ることができるのかどうか」、二つに「県政の主人公である県民の理解と納得、合意が得られているのかどうか」の2点をモノサシとすべきであります。県政の重要課題である原発再稼働に関して、住民意思を正確・的確に把握することなしに、余りにも拙速に表決することには反対であります。
わが党は、県民の命と安全を守ることに責任を持つ議員団として、危険な島根原発2号機再稼働は断じて認めるわけにはなりません。
 以下、理由を申し述べます。
 一つに、原発は技術的に未完成であり、安全な原発などあり得ません。
 今、開発されているどんな形の原子炉も、核エネルギーを取り出す過程で莫大な放射性物質=「死の灰」を生み出します。100万キロワットの原発が1年間稼働すれば、広島型原爆1000発を超える「死の灰」が溜まります。この莫大な「死の灰」をどんな事態が起こっても、原子炉の内部に安全に閉じ込める手段を人類は手に入れていません。
 ここに原発の持つ重大な危険性の本質があります。事実、この40年余りの間にスリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故、福島原発事故と、人類が3回もの重大事故を体験したではありませんか。
 さらに、本年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻の中で、チェルノブイリ原発とサポロジェ原発が攻撃の標的になりました。国際人道法に反する原発への武力攻撃が引き起こされた現実を直視するならば、原発攻撃への県民の不安を払しょくする実効ある対応策が確立されるまで、島根原発2号機の再稼働など絶対にあり得ないことを強調するものであります。
 二つに、福島事故から11年が経過したものの、福島第一原発は「収束」とは程遠く、今もって溶け落ちた核燃料の位置や状態はほとんど分かっていません。事故原因は未解明であります。新規制基準には、福島事故の教訓が反映されていません。事故原因、原子炉の状態も分からないのに、安全な基準などつくれるわけがないではありませんか。
 事実、原子力規制委員会自身、「新規制基準を満たすことによって、絶対的な安全性が確保できるわけではありません」と過酷事故発生があり得るとの立場を取っているのであります。
 三つに、国民との約束を反故にする国への信頼は失墜していることであります。
 福島原発では、破壊された原子炉建屋への地下水流入により、核燃料から溶け出した放射性物質を含む汚染水が増え続けています。このような中、政府と東電は、地元の反対を押し切って、汚染水の海洋放出を決定しました。
 この点で許せないのは、政府と東電は、地元漁業者に対し、「関係者の理解なしに如何なる処分も行いません」と約束していたのであります。
 国民との約束を守らない政府と電力会社が信頼されるはずはありません。汚染水の海洋放出は、環境汚染のみならず、事故後11年にわたる福島の努力を台無しにするものではありませんか。こういう福島への裏切りが、国と電力会社への不信を広げていることを指摘するものであります。
 四つに、為政者は、地震など自然の脅威に対して、謙虚であるべきであります。
 科学者は「日本列島は地震の活動期に入った」と警告しています。原発直下には宍道断層と鳥取沖断層が走り、これら断層が連続・連動すれば、140キロもの活断層となります。
 また、科学者は、鳥取県から島根県にかけての地下には、「ひずみ集中帯」が存在し、未知なる活断層の危険性を指摘しているのであります。島根原発はもちろん、日本列島のどこにも大地震や大津波の危険性のない「安全な土地」と呼べる場所はありません。
 五つに、使用済み核燃料や核のゴミの処理方法は未確立であり、核燃料サイクル・プルトニウム利用計画の破たんは明らかであります。
 原発を再稼働すれば、使用済み燃料の貯蔵プールはあふれ出し、再処理をすれば、使う当てのないプルトニウムがたまり続け、処理方法のない高レベル放射性廃棄物は増え続けてしまいます。原発推進路線は、あらゆる面で行き詰まり、八方塞がりの状況であります。
 自分が生み出す核廃棄物の後始末ができない原発は完成した技術とは言えないではありませんか。処理方法のない「核のゴミ」を増やし続け、将来世代に押し付けることは許されません。
 六つに、2号機でプルトニウムを燃やす、危険なプルサーマルは認められません。
 2号機では、2008年に国からプルサーマル計画にかかる設置変更が許可され、県は2009年3月にプルサーマル導入を最終了解しました。そして、その2年後、プルサーマル運転を行っていた福島第一原発3号機が爆発したのであります。
 30キロ圏内の出雲、安来、雲南3市が、中電と安全協定を締結したのは福島原発事故後であります。よって、福島事故前に県が了解したプルサーマルについて、これら3市は、全くプルサーマル議論に加わっていないのであります。
 この間の住民説明会でも、3市でのプルサーマル議論はほとんど行われておらず、住民へのプルサーマルの説明責任が果たされていないではありませんか。
 現在、中国電力はプルトニウムを1.4トン保有しており、そのプルトニウムを毎年0.4トン利用する計画を立てています。
 プルサーマルは、ウラン燃料での運転を前提とした原発に、ウランにプルトニウムを混ぜた燃料を使うものであります。これは、灯油ストーブにガソリンを使うようなものであり、大変危険な運転であります。猛毒物質・プルトニウムを島根で燃やすことには断固反対するものであります。
 七つに、住民の命と安全を守る、実効ある避難計画は未策定であります。
 避難計画は、避難を余儀なくされる一人ひとりの理解が得られなければ、実効あるものとは言えません。
 市民団体が学校や病院、福祉施設などに実施したアンケート調査において、約6割から「避難計画に基づく対応は不可能」との回答が寄せられました。住民が避難計画に疑問を持ち、実効性がないと判断している以上、再稼働など認められません。
 さらに、島根地域全体の避難計画である緊急時対応は、新型コロナウイルス感染症の第6波を踏まえたものではありません。
 新型コロナ第5波、第6波では、県内において医療機関のベッド数と医療・福祉のマンパワー不足で入院困難の事態が発生しました。
 第6波を超す感染症が発生し、自然災害も重なれば、ベッド数も医療従事者も大幅に不足することは、火を見るよりも明らかであります。
 私の質問に対し、知事は「感染拡大時、県内のベッドが不足すれば、岡山、広島、山口の山陽3県と調整する」とし、それでも受け入れ困難な場合は「四国や関西地方の府県などとの入院先の調整を行う」と答弁されました。なぜ、病気で苦しみ、重篤な人たちが山陽や四国、関西まで転院・移動しなければならないのですか。「原発を動かさなければいい」という医療機関や入院患者の声を真摯に聞くべきであります。
 八つに、低コスト・安定供給という原発推進の看板は剝がれ落ちています。
 福島事故以降、原発が高コスト電源であることが明白になりました。
 事故以前の政府試算では、原発は1キロワット時あたり5.9円とされていましたが、今では、原発は11.7円以上となり、太陽光や風力発電より高くなりました。しかも、事故賠償費用の上限を見積もることができないため、原発コストには上限がありません。廃炉、賠償、除染費用など福島原発事故の処理費用は20兆円を超え、最大で70兆円を超すとの試算もあります。
 これらすべての費用が税金と電気料金に上乗せされ、国民にツケが回されようとしています。原発ほど国民に巨大な経済負担を、累積的に、かつ半永久的に強要するものなどないではありませんか。
 安定供給という点では、2018年の北海道胆振東部地震で起こった全道停電が重要な教訓を示しています。
 大規模停電になったのは、電力供給を大きく担っていた大規模発電所が地震で停止したためであります。大規模集中発電の危うさと分散型への転換の必要性が浮き彫りになりました。原発は、大規模集中発電の典型であり、電力の安定供給という点で重大なリスクを抱えているではありませんか。
 事実、島根原発2号機は2012年1月27日より停止したままです。10年以上、止まっているのであります。トラブルが発生すれば、発電停止となる原発は、電力の安定供給に資するものでなく、決してベースロード電源とは言えません。原発こそ究極のハイコスト・ハイリスクであります。
 一方、再エネ普及には大きな可能性があります。政府試算でも、日本の再エネ潜在量は、現在の国内の電力需要の5倍であります。2030年までにエネルギー需要の約40%を削減する省エネと、電力の44%を再エネで賄う政策を実現すれば、年間254万人の雇用が生まれ、国内総生産を205兆円押し上げるとの試算もあります。島根の希望ある道は、省エネ・再エネ推進で新たな雇用と産業を創出することであります。
 九つに、クリーンエネルギーとは言えない原発を、温暖化対策を口実に推進することは許されません。
 政府は、原発を「脱炭素電源」と位置付け、温暖化対策を原発推進の口実にしています。
 放射性廃棄物を生み出し続ける原発は、クリーンなエネルギーではありません。ウラン原料の採掘・製錬・転換・濃縮工程を経て、発電に使用できるウラン燃料へと加工するまでの電力消費におけるCO2排出、運搬時のCO2排出、さらには廃炉や再処理、放射性廃棄物の処分・管理までのライフサイクル全体でのCO2排出を総合すれば、原発はクリーンエネルギーではなく、温暖化対策を口実に推進する主張は成り立ちません。
 最後に、「全国最多の不正を続ける中電に原発を運転する資格はない」ということであります。
 中電は2010年3月に計511カ所もの点検漏れをはじめ、15年6月に低レベル放射性廃棄物の処理に関する校正記録の偽造、19年8月には放射線量などを測定した資料を保存期間中に誤廃棄、20年2月には放射性廃棄物を保管するサイトバンカ建物の巡視を実施していないのに、実施したと偽った不正事案が発生しました。
 さらに、昨年6月には、中電が秘密保持契約により原子力規制庁から貸与されていた原子力発電所のテロ対策施設に関する非公開文書を無断で廃棄していたことも明らかになりました。
 この点で悪質なのは、中電が2015年4月に廃棄していたにもかかわらず、規制庁に6年間も未報告であったことであります。
 そして、今月には、協力会社から依頼を受けた外部業者が、有効期限を自ら書き換えた身分証明書を使って原発構内に入構していたことが発覚しました。
 身分証明書の偽造を見落とした本事案は、中電の入構者管理に甘さがあり、原発のテロ対策や安全対策が不十分であることを改めて露呈したものではないでしょうか。
 現時点、本事案の原因究明はなされておらず、再発防止対策も示されていません。この現状で拙速に再稼働を認めるならば、県議会が県民の命と安全を守る責任を放棄したこととなり、県議会自身が「原発安全神話」に浸かっているということになるではありませんか。
 「不正続きの中電に原発を運転する資格はない」「中電に命を預けることはできない」「中電は周辺自治体にも事前了解権や原子炉停止要求権を認めよ」との県民の声を受け止めるべきであります。
 以上、10点について原発稼働が認められない理由を述べました。再稼働への県民合意はなく、県民の命と安全を守ることが担保されていない中で、県議会が原発再稼働を了とし、原発事故が起これば、それは「人災」と言わざるを得ません。2号機再稼働は絶対に認められません。

 次に、請願についてです。
 請願第30号、第31号、第32号及び第35号は、再稼働を求めるものであり、不採択とすべきであります。
 請願第38号、第39号、第41号、第42号、第43号は、再稼働判断は工事計画認可及び保安規定変更認可の審査後に行うべきことを求め、再稼働判断にあたっては住民意思を尊重するため、住民投票や意見聴取会、住民アンケートの実施を求めるものであります。そして、再稼働には反対するものであります。これらの願意は採択すべきことを主張します。

 最後に、県の最上位計画である「島根創生計画」の理念と島根原発についてです。
 「島根創生」とは、「笑顔で暮らせる島根をつくる」計画であります。一方、県民の笑顔と幸せを奪い去るのが、原発事故であります。
 原発がある限り、住民は事故の不安を抱えて生活せざるを得ません。事故の不安に怯えながら、島根で生活すること自体、笑顔で暮らせる島根創生とは言えないのではないでしょうか。
 島根原発でひとたび事故が起これば、放射能汚染は島根県内だけにとどまりません。多くの人々が被爆し、故郷を奪われ、いつ戻れるかもわからない避難生活を強いられます。
 宍道湖・中海は死の湖となり、全国に誇るヤマトシジミなどの漁業資源はもとより、観光資源も奪われ、農林水産業、商工業、人々の暮らしに壊滅的な打撃を与え、「島根消失」ともいえる事態になりかねません。
 島根原発ゼロを決断し、島根原発の使用済み核燃料や原子炉の処理が終われば、原子力防災訓練を実施する必要はなくなります。そればかりか、原発事故に備えた避難計画の策定も不必要となるのであります。
 福島県は、原発推進の国のエネルギー政策ときっぱり決別しました。今こそ島根は、福島と固く連帯し、原発ゼロを決断し、島根から安全・安心のエネルギーを発信すべきであります。
 島根原発2号機の再稼働は断じて許されない、認められない、このことを強調して、討論を終わります。
議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画