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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2023 年 6 月定例会一般質問 (保育所における虐待防止について、マイナ保険証を強要する改定マイナンバー法について、教員の長時間労働と教員不足への対応について、島根創生と全国一律最低賃金制度について、県の正規職員と会計年度任用職員の処遇改善について、大規模風力発電所の設置規制について、島根原発 2 号機再稼働同意の撤回について)

2023-06-21 この記事を印刷

 日本共産党の尾村利成でございます。

【1.保育所における虐待防止について】
 まず、保育所における虐待防止についてです。
 先般、松江市内の方から、子どもが保育園で心理的虐待を受けたとのご相談を受けました。以下、事実に即し、その状況を申します。
 園児の保護者は、保育園、松江市に対し、不適切保育に対する苦情を申し立てられました。
 保護者の苦情をもとに、松江市は2回の一般監査を実施されたところです。
 監査結果について、保護者は情報公開を請求されました。情報公開で明らかになった松江市の監査結果によれば、次の行為を事実認定しているのであります。
 一つは、園児をトイレに閉じ込めて叱ったこと、二つは、テラス等で5分から10分程度立たせた状態で考えさせていたこと、三つは、朝夕に「振り返りの時間」を設け、他の園児の前で自分の失敗や落ち度を指摘されかねない反省会を行っていたこと、四つは、夜9時までに就寝した児童に対して「おやつのおかわりを優先的にあたえる」等の優遇条件を与えていた、ことであります。
 保護者によれば、現在、心の傷を受けた園児は、「フラッシュバックがたびたび起こり、苦しい、息ができないと訴える」「この出来事を思い出し、悪夢にうなされ、明け方に起きて怯えている」とのことであります。
 さて、先月、国は「保育所等における虐待等の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」を公表しました。ガイドラインでは、虐待の具体例として、子どもの自尊心を傷つけるような言動を行うことは「心理的虐待」であり、「別室などに閉じ込める」ことは「ネグレクト」としています。さらに、子どもの心身に有害な影響を与える行為を含め、虐待等と定義する、としているのであります。
 松江市の監査結果では、「トイレに閉じ込めて叱った」こと、他の子どもたちから見られるようなテラスで「立たせた状態で考えさせた」こと、自分の失敗や落ち度を他の子どもたちに晒し、その自尊心を傷つけるような集まりを行っていたこと、夜9時を過ぎて就寝した子どもに劣等感を与えかねない差別的待遇などを認めています。これら一連の行為は、ガイドラインで禁止する子どもへの虐待に該当する可能性が極めて高いのではないでしょうか。
 しかしながら、監査結果の文言をそのまま引用すれば、松江市はこれらの行為について、「立たせる」「反省会を行う」等、「保護者の誤解を招く行為があった」と片付けています。もう一度申し上げます。これらの行為を「誤解を招く行為があった」と片付けているのであります。
 私は、本議場から訴えます。この度の監査は、不十分な監査と疑われかねません。松江市におかれては、再度、精査、検証され、説明責任を果たされること、被害を受けた子どもの心身の回復に努められ、何より子どもを第一にする保育行政をすすめられることを望むものであります。
 県としては、中核市である松江市の事例であり、県の所管外と言えども、こうしたことが県内で発生したことを真摯に受け止めていただきたいのであります。
 3点伺います。
 第一に、保育所は、子どもが安心して成長できる場所であり、子どもへの虐待など絶対にあってはなりません。子どもや保護者が不安を抱えることなく、安心して保育所に通えるよう市町村、保育所への指導、助言を切に願います。知事の所見を伺います。
 第二に、国が示した「ガイドライン」の徹底が求められます。虐待を防止するため、社会福祉法人や保育所等への監査方針を見直し、さらなる適切な監査を実施すべきです。所見を伺います。
 第三に、不適切保育が発生する背景に、子どもの成長と発達を保障できる保育を行う余裕がない過酷な労働環境があるのではないでしょうか。
 子どもの命と安全を守るためにも、配置基準を改善し、保育士の負担を軽減し、抜本的な処遇改善が必要と考えます。所見を伺います。

【2.マイナ保険証を強要する改定マイナンバー法について】
 次に、マイナンバーカードについてです。
 6月2日、健康保険証を廃止し、保険証と一体化させ、マイナンバーカードを事実上義務化するマイナンバー法等改定案が国会で成立しました。
 マイナ保険証に別人情報をひも付けた誤登録は7300件、公金受取口座の誤登録、コンビニでの別人の証明書交付、別人へのマイナポイント付与など、個人情報を扱うシステムとして体をなしていません。マイナカードへの信頼は地に落ちています。
 これら重大なるトラブル原因は、最大2万円分を付与する「アメ」政策のマイナポイント事業と来年秋に保険証を廃止するという「ムチ」政策の取得強制政策にあります。
 何より看過できないのは、マイナ保険証に別人の医療情報がひも付けされた誤登録です。
 別人情報に基づいて医療行為や薬剤の投与が行われれば、生死にかかわる問題につながるではありませんか。
 県内の医療機関からは「顔認証ができず、パスワードがわからない方には10割の請求となります。保険証との一体化は断念し、これまで通り保険証を交付しなければ大混乱が起こる」との声が出されています。介護施設からは「カード管理は、施設の責任と負担が大きいです。暗証番号の管理など、とてもできません」との声をお聞きしたところです。
 政府は、マイナカード普及にあたって「高いセキュリティ対策を講じている」と強弁してきました。しかし、個人情報保護の「安全」の論拠は完全に崩壊しています。
 マイナンバー法では、「任意取得の原則」を定めており、取得強制は法律の趣旨に反するものであります。
 知事に伺います。知事は、相次ぐマイナカードのトラブルをどう見ていますか。デジタル化の推進と個人情報保護強化は、一体で進められるべきであります。所見を伺います。
 保険証の廃止は、命にかかわる問題です。保険証廃止は、国民に不利益をもたらし、国民の受療権を侵害し、国民皆保険制度を壊すものではありませんか。保険証廃止は中止、撤回し、存続すべきと考えます。如何ですか。

【3.教員の長時間労働と教員不足への対応について】
 次に、教員の長時間労働と教員不足への対応についてです。
 教員の長時間労働は深刻です。4月に文部科学省が公表した教員勤務実態調査でも、平日の勤務時間は公立小学校教諭が10時間45分、中学校教諭が11時間1分です。
 教員は授業やその準備に加えて、職員会議、研修、保護者への対応、部活指導など、様々な業務に追われており、過酷な働き方が続いています。「いま手を打たないと学校が崩壊する」という声が上がっています。
 県教育委員会は、教職員の働き方について、きめ細かな実態把握を行うこととし、持ち帰り残業や休憩時間等についての把握・分析を行うことを決断されました。他の自治体に先駆けて、持ち帰り残業等の把握に踏み出した県教委に敬意を表するものであります。現場の意見を聞き、正確かつ詳細なる実態把握に努めていただきたいのですが、いかなるスケジュール、方法で実施するのか伺います。
 昨年4月1日における教員の欠員は全体で32人でしたが、本年4月1日時点では37人であります。昨年比5人の欠員増で、改善されていない状況にあります。県教委は、教員確保に向けて、再任用等の促進や働き方改革の推進、他県教員のUターン・Iターン促進など精力的な取り組みを展開しています。
 しかし、私が懸念しているのは、ここ数年の普通辞職の年代別内訳を見た際、20代の教員の中途退職が増加していることであります。教員の中途退職の状況ならびに、辞職理由をどう分析しているのか、お知らせください。
 学校現場では、教員不足とともに教員の多忙化で、いじめや不登校、虐待など早期に見つけ、適切に対応することが難しい現状にあります。未然防止・早期発見・対処するために、心理の専門家であるスクールカウンセラーや福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーを最大限活用することが教員の多忙化の解消の一助となるだけでなく、子どもたちの命を守ることにもつながると考えます。所見を伺います。

【4.島根創生と全国一律最低賃金制度について】
 次に、島根創生と全国一律最低賃金制度についてです。
 物価高騰がとまらない中で、最低賃金の引き上げは極めて切実です。日本の最低賃金は、労働者が自立して生活するには低すぎ、都道府県で大きな地域間格差があるという世界でも異常な特質があります。最低賃金の最高額の東京都の1072円と島根県の857円では2割ほどの差がついています。大都市は住居費が高いものの、島根のような地方は、自動車を利用する人が多く、維持費がかかり、最低生計費は全国ほとんど差がありません。
 国の中央最低賃金審議会は、都道府県別の最低賃金の目安を示すランク付けについて、これまでの4ランクから3ランクに改めることを決定しました。それに伴って、島根県は、4段階で最低のランクのDランクから、3段階で2番目のBランクになりましたが、地域間格差の解決にはなりません。
 島根創生計画では、その柱の一つである「島根を創る人づくり」において、島根の次代を担う若者の「育成」と「還流」を一体的・系統的に取り組むことで、若者の一層の県内定着を進めることを目指しています。
 しかしながら、都市と地方の賃金格差は、若者の都会への流出の大きな要因となっており、この格差を埋めない限り、東京一極集中の流れを変えることは著しく困難であります。
 力強い地域経済を実現し、島根創生が目指す「島根を創る人づくり」を進めるためにも、中小企業への支援策とセットにした全国一律最賃制を確立し、最低時給1500円の実現を国に強く求めるべきであります。所見を伺います。

【5.県の正規職員と会計年度任用職員の処遇改善について】
 次に、県の正規職員と会計年度任用職員の処遇改善についてです。
 会計年度任用職員は、正規職員と同じ公務員として専門的・恒常的な公務・公共サービスを担っています。しかしながら、正規職員と会計年度任用職員の間には賃金をはじめとする処遇に大きな格差があります。雇用形態にかかわらず、県民の福祉増進のために働く職員間で処遇に差があることは、職場内に分断を生じさせ、職員の団結、士気の低下につながりかねません。会計年度任用職員を正規職員に転換していくことこそ、県組織が目指すべき姿であります。
 令和5年4月には、改正地方自治法が成立しました。その内容は、自治体の非常勤職員である会計年度任用職員に対して、令和6年度から勤勉手当の支給を可能とする規定が盛り込まれたのであります。
 そこで伺います。県として、令和6年度から会計年度任用職員の勤勉手当の支給を行うべきです。所見を伺います。また、物価高騰への対応として、令和5年度の人事委員会勧告を反映した報酬及び期末手当の増額については、従来のように翌年度から反映するのではなく、正規職員と同様に、令和5年度中に行うべきであります。所見を伺います。
 次に、若手職員の処遇についてであります。
 大手の民間企業を中心に初任給引き上げの動きが相次ぐ一方で、県では、土木職など、採用試験において、採用予定数に満たない職種が増加しています。県庁の未来を担う若手職員を確保する上で、若年層の処遇改善は急務であります。
 2点伺います。ここ5年の職員採用試験の最終合格者の辞退率をお示しください。また、20代以下の職員の退職状況とその要因についてお示しください。その上で、賃上げなど、若手職員の処遇改善を図っていくべきと考えますが、所見を伺います。

【6.大規模風力発電所の設置規制について】
 次に、大規模風力発電所の規制についてです。
 わが党は、気候危機打開のためには、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの活用が不可欠であると考えます。しかし、今日、大手事業者による地域住民の声を無視した儲け本位の開発による再エネの発電施設建設が全国各地で行われています。大規模なメガソーラーパネルや大型風力発電施設建設などの乱開発によって、森林破壊、土砂災害、住環境悪化、健康被害などの危険を広げていることは、大きな問題であります。
 県内においても、県西部地域では大規模風力発電事業の計画が目白押しで、80基を超す風車建設計画がすすめられています。県東部地域においては、安来市に11基の設置を計画する日向山(ひなやま)風力発電事業のほか、安来市と雲南市の境界に13基を設置する大出日山(おおしびざん)風力発電事業が計画されています。
 私は先日、安来、雲南の施設の現地調査を実施し、住民の切実な懸念の声をお聞きしました。
 住民のみなさんからは「風車の騒音や低周波が心配です」「島根の原風景が素晴らしくて移住を決めたんです。豊かな自然、景観を守ってほしい」「全国でも、前例がない4200kWの大規模発電はいらない」と訴えられました。
 再生可能エネルギーは、消費者の近くに小規模の発電所を設置し、発電所周辺の住民が中心となって電気を使用し、何らかの便益を得られるのが本来の姿ではないでしょうか。地域外や外国資本による乱開発を防止してこそ、域外に利益が流出することを防ぎ、地域の産業として雇用や需要の創出につながると考えるものであります。
 この立場から伺います。
 県企業局においては、2004年から隠岐大峯山風力発電を、そして、2009年から江津高野山風力発電所の営業運転を開始しています。
 江津高野山風力発電事業において、地域住民から生活環境の悪化や健康被害に対する様々な声が寄せられ、住民の不安に対し、企業局は真摯なる対応を続けてこられました。この間の取り組みをどう総括しているのか伺います。
 また、企業局における今後の風力発電事業の課題認識を伺います。
 これまでの地域住民に寄り添った企業局の対応を教訓にして、県として関係住民の切実な声を最大限聴取すべきであり、住民合意のない大規模風力発電計画は認められません。
 民間の県外大手資本に対し、地元住民への説明責任を果たすこと、さらに、住民合意を得ることなしに事業着手は行わないことを強く要請すべきであります。所見を伺います。
 なお、今回の件については、地元で様々な意見がある中、あるIターン者の方からは、「大規模風車は島根の素晴らしい自然、環境を壊してしまう。島根が好きだからこそ、何としても乱開発から美しい島根を守りたい」との声が上がっています。
 島根の自然、環境に限らず、島根に魅力を感じてIターンされた方々の意見を真摯にお聞きし、施策へ反映していくことが、Iターン者の島根愛を育み、Iターン者の増加や定着を促進することにつながると考えます。所見を伺います。

【7.島根原発2号機再稼働同意の撤回について】
 最後に、島根原発2号機再稼働同意の撤回についてです。
 国会では、5月31日に原発を最大限活用し、60年を超える老朽原発運転を認める原発推進等5法案(GX電源法案)が可決、成立しました。日本を危険な原発依存社会へと引き戻す大転換は、福島原発事故を忘れ去ったかの如く、被害者の思い、事故の教訓を踏みにじるものであります。これら原発推進法案は、電力業界・原発メーカーの強い要望であり、国民の世論と願いに真っ向から反するものであります。
 国が強力に原発推進の旗を振るもと、中国電力は、県民の反対を押し切って来年1月にも島根原発2号機の再稼働を強行しようとしています。
 中電は、これまで数多の不適切事案や不祥事を繰り返してきました。直近では、事業者向け電力販売カルテル、新電力顧客情報の不正閲覧などが発覚し、法令軽視の企業体質をもつ中電に、県民からは「全国最多の不正を続ける中電に原発を運転する資格はない」との声が上がっています。原子力規制委員会も、適合性確認審査会合において、中電の安全を追求する認識の甘さや主体性を欠く姿勢を厳しく批判しているのであります。
 私は、中電が不正・不祥事を繰り返すのは、3つの根本的原因があると考えます。それは、一つに、電力業界の利潤第一とする国の原発推進政策、二つに、この地域で電力供給をほぼ独占する特権意識とおごり、三つに、原発は事故を起こさないという「安全神話」に浸っていることであります。
 知事に伺います。
 中電が不正・不祥事を繰り返す根本的原因はどこにあると認識していますか。中電に対する県民の信頼は失墜していると考えますが、如何ですか。
 中電の信頼回復なきまま、2号機再稼働は認められません。再稼働同意は撤回すべきです。知事の所見を伺います。
 県は避難訓練や施設ごとのマニュアル策定時に現場の声を聞くとしています。これまで、医療機関や福祉施設、学校、保育所の何施設から直接の意見を聞き取ったのですか。すべての施設数と意見を聞き取った施設数をそれぞれ伺います。あわせて、いかなる意見、不安の声が出されているのかお示しください。
 知事は昨年6月の再稼働同意コメントにおいて、「一つひとつの声を参考にしながら避難計画の実効性を高める」と約束されました。実効性の有無を判断するのは、避難を余儀なくされる一人ひとりであります。現場の声、課題を掌握することなしに避難の実効性を高めることなどできません。「一つひとつの声を参考にする」と言う以上、徹底して避難を余儀なくされる人、施設、学校の声を聞くべきであります。如何ですか。
 県民の命と安全を守ることは、県政の使命です。県民合意のない危険な島根原発の再稼働は認められません。このことを強調して、質問を終わります。

議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画