2023 年 6 月定例会 請願に対する討論
2023-07-06 この記事を印刷
【請願第2号「地方財政の充実強化を求める請願」】
日本共産党の大国陽介です。会派を代表して、請願第2号「地方財政の充実強化を求める請願」について、意見を付したうえで、委員長報告に賛成の討論を行います。
本請願は、本県をはじめとする「地方自治体は、急激な少子・高齢化にともなう、社会保障制度の整備、地域活性化対策はもとより、デジタル化、脱炭素化、物価高騰対策など、多岐にわたる役割が求められている」とし、地方の財源が確保されるよう、国への意見書提出を求めるものであります。
我が党は、地方一般財源の確保をはじめ、保健所体制の充実・機能強化に必要な財源の確保、地方交付税の財源保障機能の強化、地方交付税法定率の引き上げなど、本請願が要求するそれぞれの要望事項について賛同するものです。
しかしながら、請願が謳う「デジタル化における自治体業務システムの標準化」については、自治体が独自に提供している住民サービスが、「標準化」によって低下・抑制されはしないかと危惧するものです。
我が党は、住民の暮らしに役立つデジタル化を否定するものではありません。ところが、いま、推し進められている「デジタル改革」は、国や地方自治体がもつ膨大な個人情報の「データ利活用」を成長戦略と位置づけ、企業に開放し、儲けのタネとしていくための「改革」です。
企業が保有する顧客情報などとは比べ物にならないほど膨大で重要な情報が、行政が保有する個人情報であり、この利活用を進めるための準備が国によってすすめられています。これまで自治体が個人情報を守るために制定した個人情報保護条例の自治体ごとの保護規定は既に取り払われ、さらに、自治体が行政運営のために福祉や教育の制度でそれぞれ運用しているコンピュータシステムまでも、統一・標準化されようとしています。
この間、地方自治体は「デジタル改革関連法」によって、デジタル基盤の統一と標準化の具体化に追われています。請願が「相当する財源の確保」を求めている、「地域デジタル社会推進費」は、今年度と来年度は500億円上乗せされ、上乗せ分はカードの交付率に応じて配分するなど、マイナンバーとカードの「利活用」を無理やり推進するために、強権的な施策が進められようとしています。しかし、「デジタル社会のパスポート」として普及に躍起になってきたマイナンバーカードは誤登録や情報漏えいなどのトラブルが多発。カードの返納が相次ぐなど、国民からの信頼は地に落ちています。
自治体情報システム標準化法では、国が示す「標準仕様」にもとづき、全自治体の基幹業務システムを2025年度末までに移行することをめざしています。デジタル庁は、自治体の独自施策の運用方法も示してはいるものの、知事会や市長会、町村会などの地方団体からは、「行政事務に裁量の余地がなくなる懸念があり、地方の創意工夫を可能とする仕組みとすべき」、「自治体の負担とならないようにすべき」、などの厳しい声があがっています。
事実、総務省の「地方公共団体の自治体クラウド導入における情報システムのカスタマイズ抑制等に関する基本方針」では、「首長のリーダーシップの下、パッケージソフトに対するカスタマイズは行わないことを原則とすべきである」、あるいは「地方自治体の情報システムをより広域的なクラウドに移行するためには、地方自治体が行っている情報システムのカスタマイズをなくすことが重要」と明記されています。
このため、「システムの標準化」に対して、自治体が独自で行っている住民サービスなどが低下・抑制することが懸念されています。「標準化」にあたっては、自治体の独自施策を維持・拡充できるようにすることを強く求めるものです。このことを強調し、討論といたします。